剪定事象。
それがオレの今回の目的だ。
それは完全に別世界になり、いずれ滅びる枝葉の並行世界のことだ。
そして並行世界とは多少の差異はあっても未来は同じになる大幹の並行世界群。
それを編纂事象という。
単純に例えると、編纂事象は正史のメインルートだ。
剪定事象はバッドエンドルートである事が多いが、
剪定事象は単にメインルートから外れすぎて特化した結果、
多くの分岐可能性を失った世界であって、必ずしもバッドというわけではない。
善し悪しに分けるとなると、
善い流れとは「安定した、今後もより多くの派生を生む可能性に満ちた流れ」であり、
悪い流れは「先鋭しすぎたため、もう道を変えられない一本道の流れ」を指す。
剪定事象の中には編纂事象にあるどんな世界よりも先に進み、
希望と幸福に満ちた理想世界もあったが
「それだけでもう完成し、終わるもの」である為、
理想世界の条件が確定した段階で「剪定」されてしまう。
樹を育てる時、不要な枝を切り落とすように、
基本軸である『幹』から離れすぎた世界はたとえ理想郷であろうと「打ち切り」になる。
もう何をしても滅亡が決定したもの、どれほど発展していようと進化が止まったもの、
といった『先の展望が見えた』世界を続けていくほどこの宇宙は寛容ではないからだ。
まだ誰も知りえない未来のために宇宙が膨張する以上、
分かりきった結末のためにエネルギーを使うことはない。
重要なことだが、「先の発展の可能性が存在する事が大事」なのであって、
編纂事象の世界と比べて著しく繁栄や衰退してる事、
それ自体が剪定の対象になり得る訳ではない。
剪定事象が確定する世界を根源から把握し剪定される前に資源を回収する。
それはこれまで行ってきた何よりも規模の大きい事象となるだろう。
これまで抑止力の判定からグレーゾーンで回避してきたが、その対策も必要だ。
抑止力は強大だ。しかしこれもまた完全無欠ではない。
そのために剪定事象を利用する。
そのための準備はすでに整った。
オレが創り上げた二体目の人形には外付けの魔術回路、即ち魔眼が搭載されている。
それも他者の運命への介入を可能とする強力な魔眼であるノウブルカラーだ。
それゆえに魔術回路としての質も量も十分なものがある。
これまで魔術回路の量がE評価でありながらも、万能と呼べる振る舞いができた。
ならばその量が増えればどうなるのか?
それは、全能というカタログスペックをより発揮できるということだ。
さらに言えることがあるとすれば、聖杯とは魔力の塊だ。
そして聖杯とはあらゆる願いを叶える代物だということ。
ならばより多くの魔力を手に入ればどうなるのか?
想像するだけでも愉快だ。オレは自由に使える莫大な魔力を手に入れる。
そのための手段はもうオレの手の内にある。
ターゲットは月の聖杯戦争の勝者に与えられる勝利者の証―――完全なレガリアだ。