もう既にこのネタ使われてるもんだと思ってたら、どうやら使われていなかったようだったので書いた。
ぶっちゃけ勢いで書いたせいでクソ短い。一応次があればもう少し長くなると思います。
「待たれい」
肺をやられ、呼吸ももう使えず、絶望的な状況。目の前の血を被ったかのような鬼に、あと少しで殺されていたであろう私の運命はそんな声で大きく変えられた。
「何やら騒がしいと思い近くまで来てみたが……なるほど、魑魅魍魎、悪鬼羅刹の類であったか……」
その声の主は、長い髪を一つにまとめた長身の青年だった。その佇まいからはその凄まじい技量のようなものを感じる。その背には、身の丈よりも長い竹刀袋が背負われている。
「悪鬼羅刹とは酷いなぁ、俺程善良な存在はそうそういないぜ?」
「更には狂人ときたか……これは面倒な相手を見つけてしまったらしい」
ニコニコと屈託なく笑う鬼に、現れた青年は仏頂面のままだ。青年は、背に背負う竹刀袋を取り外し、その中からやはりとても長い木刀を取り出した。
「貴様のような化生相手に、このような木刀では殺すに足りぬだろうが、仕方あるまい」
「無駄なことするなぁ。そんなんじゃ俺には傷一つ付けられないぜ?」
そういう鬼を無視して、青年は木刀を構えた。焦って止めようと声を出そうとして、
「秘剣」
瞬間、周囲に剣気が吹き荒れた。
その構えに不思議なところはない。木刀も普通だ。だと言うのに、私はそのあまりの圧に無意識に自分の首に触れていた。そして、その首が繋がっていることに安堵する。そして同時に青年が私では届かない高みにいるのだと気付かされた。
先程まではニコニコと余裕を保っていた鬼も、一瞬だけだが笑みを消した。再び笑みを浮かべてからも武器の鉄扇を構えている。そして────────
「燕返し」
────鬼の彼は、四つの肉塊に変えられていた。
あまりの光景に頭が真っ白になる。青年は、日輪刀でないどころか刃すらないただの木刀で鬼を、それも上弦の弐を斬ったのだ。
気迫、膂力、腕力、その全てが私どころか、私の知る限りの剣士全員を超えていた。
「あ、れ……?」
「殺せずとも斬れるなら、死ぬまで斬ればいいだけのことよ。私ではどうしようと無理だと言うのなら、貴様を殺せる者が現れるまで斬り続けて足留めすればそれで良い」
困惑しながらも再生を始めた鬼にそう告げ、彼は再び木刀を構えた。
「では続きとしよう」
刃が閃き、再生し切っていない鬼の身体を斬り裂いていく。やがてまるで再生が追い付かなくなり、血鬼術を使う暇すらなく刻まれ続ける。あまりにも一方的。もはや戦いではなく蹂躙だ。本来ならもっと伝えるべき事があるはずなのに、私は呆然として何も出来ずにいた。
その蹂躙は、遠くの空が白んできた頃、鬼の頭が突如空中に現れた襖に消えたことで終わった。
────────────
「逃がしたか……」
そんなふうに呟きながら、俺は歯噛みする。出来ればあの野郎はこの場で殺しておきたかった。それによって新たに現れる上弦は厄介かもしれないが、あの野郎よりかはマシなはずだ。しかし取り逃してしまった以上仕方がないと、背後にいる
「すまない。私の実力が及ばず、殺しきることが出来なかった」
「え?は、はい………?」
首を傾げ、俺の言葉に呆然とする彼女の名は胡蝶カナエ。その傍らでまるで意味が分からないといった具合に宇宙猫状態の彼女はその妹の胡蝶しのぶだ。
実際に見ると想像以上の美人姉妹だ。
「ところで、少し話を聞きたい。私は今まであのような化生が存在するなど知りもしなかったのでな。あれだけならば良いが、それならばこれ程の人数が組織立って行動しているのには違和感がある」
その言葉で、胡蝶カナエは再起動して返事をした。
「あ、は、はい!私からも聞きたいことがいくつかあるのですが……」
「構わない。ただ聞くだけでは礼儀に欠ける」
そう返答しながら、俺は月を仰ぎ見た。
「まさかこのようなことになるとはな………」
「えと、何か仰りましたか?」
「いや何、気にするな。ただの一人言よ」
パチクリと不思議そうに瞬きする彼女に笑みを返しながら、近くの壁に身を預ける。
何故この身体なのか、何故この世界に来たのか。何も分からない。だが、己がやるべき事はわかった。ならば、成し遂げよう。
より良い結末を、善人が死ぬ理由など、この世には一欠片も存在しない。緊張の糸が切れ、涙を流して姉の生存を喜ぶ少女を傍目に覚悟を決める。
この光景が、壊されて良いわけがないのだから。
次話は人質に取った!続きが読みたきゃ感想を書いて高評価するんだな!!