リアル結月ゆかりさんアンドロイド概念

ある日、僕は一人の少女(機械)を拾った。

実家を追い出され、日々の銭を求めてバイト先とアパートの一室を往復する日々。

いつか何かを始めて自分を変えると言い続けて将来の不安から目を逸らそうと。

だけれどそんなことが出来るのならばこんな生活をしていないわけで。

そんな僕に出来ることといえば、ほんの少しの寄り道ぐらいで。

僕を変えたのは、結局僕ではなかった。

薄ら明るくなり始めた朝4時半。

終電を逃し、コンビニで時間を潰そうにも携帯の電池が心許なかったので歩いて帰宅。

そんな時にふとした気まぐれでいつも使っていない道で帰ることにした。

よくある○○通りの脇道にそれ、路地裏を不確かな方向感覚を頼りに歩く。

そんな暗い道の突き当りに、ちょっとした空き地があった。

ゴミ捨て場のようだ。

最近見なくなったブラウン管テレビとか、物理ボタンが付いている電子レンジ等が乱雑に重なって置かれている。

その中で、何故だか目立たないように端に立て掛けられている人形があった。

そう、人形。

しかも多分等身大、140㎝ぐらいある。

多分、この時の自分はちょっとおかしかったんだと思う。

普通にスルーしときゃいいのに、脇に添えてあった旅行鞄と一緒にスーツケースに入れて持って帰るだなんて。

というか、その人形を持ち上げたときになんか妙に重いとか触った感触がだだの人形じゃないとかに気付くべきだったのだ。

近づいたのは興味本位。

持って帰ろうと思ったのは、明らかに手が込んだ「2次元的で」「見覚えのある」顔の造形と。

首の後ろに付いている、どう見てもUSBとかのケーブルを挿すための接続端子。

まあ。

試しに家に持ち帰って充電して見たら動いたどころか、

「何見てんですかこの変態！！」

ってぶったたかれるとは思わなかったのだが。

あ、なーんかこの顔見覚えあると思ったら、あれだ。

ボイスロイドの結月ゆかりだわ。

声めっちゃ聞き覚えあるもん。

んん？？？？

あれ、これ結構ヤバいもん拾ってきたんじゃ・・・

因みに。

旅行鞄の中身を見てみると。

どっかで見たような紫を基調としたパーカーを初めとする衣服や、ヘッドホン。

それと、なんかケーブルが何本か束になって入ってる。

こんだけでもあっ・・・てなるのだが。

極めつけにやばそうなプラ製の箱が底の方に隠すかのように入っている。

うん、なんかHDDと、厳重に何層になっている箱とUSBメモリ入ってる。

あと、財布。

2つ折りの長財布。

免許証と保険証入ってるわ。

それと、パスポートっぽい何か。

あ、これマジでやべぇもん拾ったっぽいわ。