犯罪多重奇頁 米花   作:ゴマ助@中村 繚

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真名:エドガー・アラン:ポー
 19世紀初頭のアメリカの小説家であり詩人であり、評論家であり、自ら本を作り上げた編集者でもある。
 世界で初めての探偵小説『モルグ街の殺人』を執筆し、世界で初めての名探偵A・デュパンを生み出した。シャーロック・ホームズが世界最高の探偵小説の主人公だとしたら、彼は世界最古の探偵小説の創造主。
 ひいては推理小説並びに探偵小説。それらに登場する名探偵という概念を人類史に植え付け、後世の時代に星の数ほどの名探偵たちを生み出す土壌を開拓した文化人である。
 が、本人は割りとクズの部類。
 酒クズ、借金あり、変人奇人という役満人物。晩年はアルコール依存症に悩まされ、金のトラブルで養父には勘当寸前まで言い渡されていた。
 しかし、詩人・小説家としての才能だけは確か。本来の専門ジャンルはゴシック・ホラー。推理小説だけではなく、暗号解読を物語の趣旨に置いた暗号小説を初めて書いたのもポーである。

 と、ここまでが「魔術師」として召喚された場合のエドガー・アラン・ポー。
 彼は幼少期、父の蒸発と母の病死で両親の知人のアラン家に引き取られイギリスに渡っている。アラン家は商売で成功した裕福な家庭であり、ポーは幼少期から十分な教育を受け成績も優秀だった。その教育の過程で、偶然にも幼少期のポーは外宇宙の存在へ至るための書物を手にしてしまう。
 ナニかを垣間見てしまったポーだったが、彼が接触したモノが比較的無害だったのと、ポー本人が狂気を孕む器であったため何事もなく成人した。
 かつて接触したモノは、深き眠りの世界で幼いポーにかつて存在した地球の神々の物語を面白おかしく、冒涜的に語った。それはまるで、自身が蒐集したコレクションを自慢するかのようだった。幼さ故の狂気と残虐さに満ちた幼少期のポーが一喜一憂するその姿は、一時の享楽に更けるには良い見世物だったのだ。

 なお、ポーが接触した外なる存在は、カルデアに召喚されている「降臨者」たちが干渉を受けた邪神たちとは異なる陣営である。異なる陣営にいるが、同じく外宇宙から飛来した異邦人であるには変わらない。
 彼らは遥か昔から人間たちの営みに干渉し、時には土着の神の信仰をそっくりそのまま飲み込んで地球に足跡を残した。それもこれも、いつか殺し合う邪神たちへの牽制である。
 彼らは()()()人間に友好であるが、完全な人間たちの味方ではない。敵の敵は味方、ではなく。都合のいい時だけ味方面する敵である。
 邪神たちを小馬鹿にする嫌がらせをできるならば人間の味方をする。


4頁

降臨者(フォーリナー)」とは、エクストラクラスの一種である。

 だが、厳密に言えば英霊ではない。サーヴァントとは性質が酷似しているが、本来ならば人類の脅威に該当する存在だ。

 地球の存在する宇宙とは異なる別次元からの来訪者。転じて、その影響を受けている者たち。現在のカルデアには、発端となったアビゲイル・ウィリアムズを始めとした、数騎のフォーリナーの召喚・観測に成功している。

 通常ならば召喚されることもない異常な存在。そう、通常ならば、ポーがそのクラスの存在を知ることも、自らの霊基がそうなることもなかったはずだった。そもそも、ポーが「フォーリナー」という概念そのものを()ることはなかったのだ。

 しかし、楔で繋がっていた少年の状態に引っ張られたという、異常事態における霊基の変化。そして、フォーリナーを有しているカルデアという陣営の観測により()ってしまった。

 異常な霊基の使い方を、根源を、自らの能力を、かつて触れし狂気の発端を。

 

「最初は戸惑ったが、もう慣れたよ。ボクの元々のスキルと統合させて生み出したこいつらは、良い奉仕員だ。行け、夜鬼(ナイトゴーント)

「テケリ・リ、テケリ・リ!」

 

(仮称)全身黒タイツ改め、正式名称夜鬼(ナイトゴーント)

 ポーのそばに侍る竜種の姿をした夜鬼は、不気味な鳴き声を上げながら船を転覆させようと、鋭い爪を振り下ろす。凶器を手にした人型たちは、どこから調達して来たのかモーターボートやジェットスキーなどに騎乗して殺気丸出しにして順動丸へと迫って来た。

 だが、船の持ち主はそれを許さない。家茂が真っ先に船首に立った。

 

「空蝉の 唐織衣 何かせむ 綾も錦も 君ありてこそ……順動丸はマスターの脚、我らが地面、閉ざされた世界を開くための揺り籠。沈めてなるものか。宝具発動! 『菊と葵の契り・空蝉の袈裟』!」

 

 かつて、彼の妻が詠んだ歌を諳んじる。

 家茂は妻に尋ねた、上洛の土産は何が良いかと。妻は答えた、西陣織が良いと……西陣織は届けられたが、家茂は帰って来なかった。家茂の形見として妻に届けられた西陣織は、後に袈裟に仕立てられて寺に奉納された。

 その袈裟のような、家茂が送り届けた西陣織のような柄をした光の障壁が順動丸を囲み、竜種の夜鬼の爪を弾き返す。当然、人型の夜鬼も破ることはできずに門前払いされたのだ。

 サーヴァント、徳川家茂の第二宝具『菊と葵の契り・空蝉の袈裟』は、壁を展開する防御宝具である。しかもただの壁ではない、この防御は袈裟のように着ることができる。

 竜種の夜鬼の爪が弾き返されたタイミングで、慟哭外装を纏ったサリエリが順動丸から飛び出した。燎原の如き鎧の上に、更に空蝉の袈裟を纏えばサーヴァントにも防御を付すことができる。防御力の上昇は元より、一定の攻撃を無力化させ、時には宝具レベルの攻撃さえも防ぐことのできる加護なのだ。

 

「ウォォォォォ……!」

「テケリ・リ……テケリ・リ……!」

 

 サリエリの斬撃で首を落とされた竜種の夜鬼は元の黒いインクに戻り、頁の海を黒く濁した。が、その黒いインクから再び、人型の夜鬼が這い出て来た。

 夜鬼の防御力は据え置き、とことん数で押す。ポーの能力の使い方は、最初にエネミーを観測した時と変わってはいなかった。

 

「フォーリナー、エドガー・アラン・ポー? 霊基が変化して、クラスチェンジしたってことか?」

『元はキャスターだったようだね。それが、犯罪多重現象の途中でフォーリナーとなってしまった。本人でさえ予想外の事態が、あの夜鬼とやらを生み出したんだ!』

「あのドラゴンみてーな化け物の鳴き声、ポーの作品に登場する南極の鳥の鳴き声と同じだ。サーヴァントって、つまり()()()()能力の使い方ができるんだな。自分の著作の登場人物を操ったり、後世の評判をそのまま概念にしたりって!」

「そういうこと。流石、名探偵。理解力高くて助かる」

 

 コナンの言う通り、竜種の夜鬼の鳴き声はポーの小説に登場する不気味な言葉その物だ。だが、ポーの作品に夜鬼という存在は登場しない。ならば、あれはフォーリナーとしてのポーの能力の根源である、外宇宙の存在に由来しているものだと推測できる。

 作り方はカルデア側の実験通りだったが、「夜鬼」という概念を混ぜなかったから完全再現できなかったのだ。

 

「この能力、ボクは結構気に入っている。相性が良かったんだ! なにせ、犯罪と犯人の蒐集は得意だからな。さて、カルデアの諸君。お前らの標的はこれだろう、これが欲しくて探偵として活動していたんだろう」

「っ! あった、聖杯!」

 

 ポーの胸元に光が灯る。薄く、小さな身体の中心に黄金の杯がある。

 犯罪多重現象を引き起こしていた魔力リソースの供給源。ポーの願いを叶えた願望器。やはり、ポーが聖杯の持ち主だった。しかも一体化してしまっている。

 

「「ください」と頭を下げて懇願しても、絶っっっ対にやらないよ。まだだ、まだまだ事件はある、ネタはある! こんな中途半端なところで終わらせられないよ。殺人事件の動機をわんさか蒐集した、テロ事件だってある。飛行機ハイジャックもある! どんどん解いてくれよ探偵! そして最後には、このボク自ら迷宮入り(けちょんけちょん)にしてやるよ! ボクが用意した『究極の謎』の前にひれ伏すが良い!」

「そこまで探偵を求めているのに、何でシャーロック・ホームズを門前払いしたんだ!」

「そういうのが腹立つんだよ! 何でもかんでもあの後輩を持ち出して来やがって! 挙句の果てには、ボクの名前をパクった奴の方が有名とか意味が分からないよ。ボクはあいつ(ホームズ)が嫌い、だからだよ。しゃしゃり出て来たからちょっかい出してやったんだ」

 

 世界最古<<<世界最高

 この方程式が許せなかったばかりにホームズは門前払いされ、事件に首を突っ込んできたから始末してやった。ほら、手がかりを得てしまった探偵役が犯人に襲われるって展開、よくあるじゃないか。

 モリアーティも行動不能となったのは、ホームズの作品というひとくくりで巻き添えを食らったのである。

 このままでは、ポーが満足するまで犯罪は積み重なっていく。探偵たちは事件を解くことを強いられ、犯人は増え、されどもその先には進まない。結末の見えない、終幕まであと10年ぐらいかかり、単行本が100冊を超えてしまう。

 止める。聖杯を回収する。

 狂った物語はもう終わりだ……積み重なる頁から、脱出する。

 

「このまま「探偵」を続けて、物語の登場人物としての役目を全うしてくれればボクはお前らにちょっかいは出さない。楽しかっただろう、探偵ごっこは」

「断る。聖杯は回収させてもらう。米花市を解放して、麟ちゃんと直桜ちゃんが一緒に暮らせる結末(エンド)にする!」

「そうか。なら、お前たちカルデアは必要ない。ボクの物語から退場してもらおう」

「来るぞ、マスター」

「コナン君は、絶対に俺の後ろから離れないで。戦闘開始だ!」

「待っていたわよ、GOサイン!」

 

 景気づけにと、ジャンヌが旗を振り、先ほどよりも殺気立った夜鬼たちに黒炎の槍を飛ばしていく。黒炎の槍に貫かれて黒インクに戻るが、槍から逃れた人型の夜鬼たちは順動丸に群がってくる。

 ヘシアンを乗せたロボが順動丸から飛び出し、『空蝉の袈裟』の加護を受けた状態で夜鬼たちの首を狩りに駆け出した。竜種の夜鬼が再び出現するが、全身に走る目のような器官が瞬く余裕も与えずに、エドモンの放出した暗黒の炎に貫かれ、サリエリの音撃を頭上に受けて海に沈んだ。

 順動丸に張り付いて登ってこようとする個体は、アンリマユが一体ずつ蹴り飛ばし、プルートーが縄で締め上げる。そのプルートーが、首の縄をぶんと振り回しスリングショットの要領で自身の身体を飛ばした。躍り出たのはポーの真正面……創造主と、物語に登場する被害者が鉢合わせたのである。

 

「まさか、お前が召喚されているとは」

「まさか、本当に貴方だったとは。だからでしょうね、ボクが()()()()()()召喚されたのは。ちょっとだけ、本当に虫の知らせレベルでヒゲにビビっと来ていたんですよ……何となく、ソワソワしていました」

「でも、猫に何ができる。犯人を示して鳴くのか? 復讐相手の首を括るのか? お前に何ができる? この創造主(ボク)を相手に!」

「さあ、分からないです。猫ですから。でもきっと、猫の手を借りたい事態だから召喚されたんでしょうね。だから、ボクはボクの役目を全うします」

 

 本来、幻霊であったプルートーが反英霊として召喚されたのは、聖杯の持ち主が創造主たるポーだったからだ。

 プルートーに自覚はなかったが、微かに予感はしていた。確証はなく、ただ、そんな気がするだけ。猫の霊感は当たるかどうか本当に運任せ。ただ毛並みがソワソワするだけでは、はっきりとお前だとは言えない。

 だが、今なら言える。

 プルートーが自身に課せられた役目を全うしようとするが、ポーはそれを許さない。黒い羽ペンを持つ右手を振ると、海面が生き物の内臓のように蠢いた。海を形成していた数多の頁が集まり、巨大な手になってプルートーを叩き落とそうとしたのである。

 

「湯たんぽの役目すら全うできない猫が」

「ボクの炎では……焼死しますよ。何せ、壁に影しか残らないほどの火力ですから」

 

 空中で身を翻したプルートーは、毛玉を吐くように火球を吐いた。




作家として名を残したポーであったが、生前は生活に困窮して暖を取るのにも苦労した。病床にいたポーの妻、ヴァージニア・クレムは飼い猫で暖をとっていたという。


見切り発車で書き始めた時点では、クラスはキャスターだった
 ↓
色々調べて行く内にポーが例の神話と関りあることを知った
例)
・「テケリ・リ」の元ネタ
・某作家はポーの影響を受けている
・作品の中にポーを生き返らせて新作を書いてもらうという物語がある
 ↓
夜鬼=全身黒タイツという方程式ができてしまった
 ↓
新一と同じく幼児化させてクラスチェンジさせたよ!←イマココ

ということで、フォーリナーになりました。
公式様と被るのが恐れ多いので、ポーが接触してきた外宇宙の存在は邪神とは別陣営の存在に。といっても味方してくれる訳でもない。
二次創作なのでそこらへんは好き勝手やっています!
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