犯罪多重奇頁 米花   作:ゴマ助@中村 繚

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※ポーの死に対する当時の状況やらは、作者が勝手に考えたものなので史実的根拠はありません。真実は闇の中かもしれない、解いてはいけない謎もある。
あと、多分外宇宙とかから電波とか受け取っていませんので。偶然の一致ってものがあるだけなので……(震)


7頁

 発見当時のポーの状況は、「意識混濁」もしくは「泥酔状態」。

 前者のみの情報では、彼の身に起きた異変を特定することは困難だ。後者は、彼の酒癖の悪さ故に噂が広まった可能性もある。つまり、本当にポーがアルコールを摂取していたかどうかは不明なのだ。

 薬物によるものか、粗悪なアルコールによる中毒か。はたまた、外部からの衝撃で脳になんらかの損傷が起きたのか?

 死因はまだ特定できない。では、ポーの身体以外の状況はどうだろうか。

 

「身体に合わないサイズの衣服の他に、所持品の情報は?」

「いや、発見当初の私の記憶からはそこまで再現できない。しかし、スキルで蒐集した犯罪のデータから、ボルティモアに到着した当初の所持品を再現することは可能だ」

「それを調べさせて!」

 

 ポーが羽飾りを振ると、アメリカの酒場の真ん中に古びたトランクケースが出現する。ニューヨークへ向かっていたポーの荷物だ。パカっとひとりでに口を開き、コナンは中に詰められていた所持品を確認する。

 

「衣服、身分証、それに……原稿?」

「ニューヨークへの旅は、選集の出版のためにルーファス・グリスウォルドを訪ねるためだった。本当はめっっっっっちゃ不本意だったけど、結婚資金が欲しかったんだ」

「編集者、グリスウォルドか。確か、仲が悪かったって」

「あいつの特技は死人蹴り」

「……っ! これは」

 

 ポーの荷物には、何枚かの書きかけの原稿があった。不自然ではない、2日もの船旅の間に詩編の一つでも書くだろう。

 だが、原稿の束を一枚一枚読んで行くと、そこにあった名前に目がいった。

 

「パリ市警警視総監、G……彼は、()()オーギュスト・デュパンの助言を得るために屋敷を訪れる。これは、オーギュスト・デュパンの新作?!」

「っ! わ、私は新作を書こうとしていたのか? お、覚えていない」

 

 ポーが書いた探偵、C・オーギュスト・デュパンの作品は『モルグ街の殺人』、『マリー・ロジェの謎』、『盗まれた手紙』の三作品のみだ。だが、コナンの持つ原稿用紙には、デュパンの新作と思わしきアイディアが書き連ねられている。

 前作、前々作同様、パリの警視総監がデュパンの知恵を借りるために、彼と語り手が住む屋敷を訪ねて来るのが導入部だ。文章となっているのはその冒頭のみ。どんな事件なのか、犯人は誰なのか、デュパンはいったいどのような推理をしたのかは書かれていない。

 確認できるのは、乱暴に書き殴られたいくつかの単語だけだが、殆どが滲んで読めなくなってしまっている。

 

「私は何を書こうとしていたんだ……? デュパンの新たな事件? ネタ元は? マリー・ロジェのように実際の事件をモデルにしたのか??」

「幻の第四作目、事件は不明、犯人も不明……レイノルズ。普通に考えれば人名だが……無次元数のレイノルズ数が発表されたのは、事件当時よりも後の時代だ。「レイノルズ」は、元はアイルランド語が変化した言葉だったよな」

 

 混乱するポー、思考するコナン。そして、名探偵の第四作目。

 推理を組み立てるための情報が圧倒的に足りない。

 

 

 

***

 

 

 

 フォーリナーのポーによるカルデアへの攻撃は未だに続いている、敵性意思を持つサーヴァントとの戦闘が続行していた。

 名探偵による推理ショーの終焉を待っていられない。否、最初(ハナ)から推理ショーを開幕できないと決め付けている。解けるはずはないと高を括っているのだ。

 

「工藤新一への課題はまだ途中だ! 中途半端な高校生探偵に、あの『究極の謎』が解けるもんか! ボクは、あいつが「名探偵(C・オーギュスト・デュパン)」と認めない!」

「アンタが認めなくても、アイツはあの子の名探偵なのよ!」

 

 隆起した(ページ)で形成された巨大な腕に、イソギンチャクのような黒い触手が巻き付いた。筋肉繊維がむき出しの猿人類のような腕には、ポーの腕に浮き上がる縄のような青白い紋様が走る。

 異形の腕は、ポーが鎮座する本が積み重なった戦車から生えている。二本どころか四本も生えた異形の腕は、ジャンヌが降らせる炎の槍を薙ぎ払い、海面から飛沫が飛んだ。

 ジャンヌの剣が力任せに振り回される腕を斬りつけるが、触手を何本か切断するぐらいしかダメージを与えられない。しかも、相手にできるのは一本のみ……彼女の横を通り抜け、ポーが狙ったのはカルデアの足場である順動丸であった。

 

「行ったわよ後輩!」

「『菊と葵の契り・空蝉の袈裟』!」

 

 順動丸の周囲に展開された西陣織柄の防御が異形の腕を跳ね返す。女神の加護の如き絶対的な防御を前にポーが舌打ちをすると、家茂の魔力が跳ね上がる……正面からの攻撃を空蝉の袈裟で受け止め、背後を取る。

 海面を突き破って出現してポーの背後を取ったのは、竜種型の夜鬼(ナイトゴーンド)をひと飲みにしてしまいそうなほど巨大な金魚。家茂が持てる限りの魔力を注いで生み出した巨大な使い魔が、巨大な口を開いてバクン!とポーを飲み込んだ。

 だが、沈黙は一瞬だった。飲み込まれた金魚の腹を突き破って現れたのは、かつて包帯男と呼ばれた犯人の概念を取り込んだ人型の夜鬼だ。斧で金魚の腹を裂き、包帯男に続くように人型の夜鬼たちがわらわらと湧き出て来た。

 斧やら鉈やらの凶器を手に、巨大な金魚だった肉塊を袋叩きにし始めるが、背後から脳天を撃ち抜かれる。

 巨大金魚ごと夜鬼とポーを取り囲む灰色の男たちによる一斉射撃。マスケット銃の弾丸は、ポーの脳天を狙って射殺したのだ。

 

「『カルデアと敵対して、アントニオ・サリエリの指揮する灰色の男たちによる射殺』……は、蒐集済みだ」

「そうか。ならば、殺意の旋律で昇天させてやろう。『至高の神よ、(ディオ・サンティシモ・)我を憐れみたまえ(ミゼルコディア・ディ・ミ)』!」

 

 脳天を撃ち抜かれたポーの穴が塞がり、宝具『早すぎた埋葬(The Premature Burial)』によって蘇生する。

 間髪入れずにサリエリの宝具が発動。広範囲に殺意の演奏をまき散らす攻撃は、本来ならばポーの鼓膜から脳を、肉体を蝕むはずだが、やはりポーはすぐに宝具を発動させて蘇生した。

 

「何度も言わせるな。お前らの攻撃による死因は蒐集済みだ」

「あれが、聖杯からの魔力リソースですか……底が見えません」

「ええ、そうよ。皮肉ね。聖杯の無尽蔵さを、私はよく知っているのに」

「マスター、次の一手は?」

「……みんな、ちょっと止まって」

 

 立香はサリエリとジャンヌの剣を収めさせる。

 ポー自身は気付いているのだろうか?

 ふんぞり返っている積み重なった本の内、一冊にぼんやりと白い光が灯っているのを。

 順動丸のメインマストの上に着地したエドモンも、白い光の先に視線を向ける。コナンが『究極の謎』を解決するために飛び込んで、ほんの数分しか経っていない……だが、名探偵にとってはそれだけで十分だったのだ。

 

「……来るぞマスター! あいつめ、解いたな! 『究極の謎』を!」

「ハァ、何を言っているん、だ……!!」

 

 ドン!と、白く光る一冊の本が内側から鼓動した。

 本の中に閉じ込められた物語が、登場人物が、頁から脱出して自由になろうとしているかのように。内側からナニかが本を突き破ろうとしているのだ。

 エドモンは確信した。あれは、『究極の謎』を解決した名探偵が、創造主の内側から脱出しようとしているのだ。

 

「解いた、解けた?! あいつが、あの事件を解いただと……っ、いや、違う! 違う違う!! ボクは、()()()()()()()()()! そんな結末、認めるか!!」

「解けたんだ。コナン君が『究極の謎』を解決したんだ!」

「違う! 解けてない! ボク()はその推理に()()()()()()()!」

 

 ポーの触手が光る本に絡みつく。

 事件を解決した名探偵――コナンを認めないと、凱旋は許さないと。本の内側にある事件現場から脱出させることは許さぬと、本を雁字搦めにして脱出を防いだ。

 

「何か叫んでるぜ。認めないとか、納得しないとか。まさか……出題しておいて、自分で答えが分かっていないとかないですよねー」

「コナン君の推理にポーが動揺している。彼は脱出しようとしている。ロボ! 彼の元に駆けてくれ!!」

 

 今が好機だ。

 自縛状態で半狂乱になりながら叫び続けるポーを前にして、エドモンの呪いの炎が燃え盛る。海面に立ち上る炎の渦で夜鬼たちだけが逃げ惑い、竜種型――というより、ゴメラ姿の夜鬼は悶絶しながら暴れ出した。

 

「行ってください!」

「……っ!」

 

 空蝉の袈裟を纏ったヘシアン・ロボが駆け出した。

 逃げ惑いつつ、こちらに特攻をしかけてくる人型の夜鬼たちは家茂の金魚が個別に対応していく。その金魚を足場に使い、ヘシアン・ロボはゴメラ姿の夜鬼とポーの首を射程範囲に捕らえた。

 四本の腕が暴れるが、『菊と葵の契り・空蝉の袈裟』の効果で攻撃は無効化される。

 腕を掻い潜ってゴメラの首を狩り取った後、その人間の首を狩った。

 

遥かなる者への斬罪(フリーレン・シャルフリヒター)

 

 ポーの首がズレて、落ちた……と思ったら、黒い触手が小さな頭を元の位置に戻した。

 

「無駄だって言っているだろ! 『カルデアと敵対して、ヘシアン・ロボの剣で首を狩られる』も蒐集済み、だ……」

 

 蘇生し、首の位置が元に戻ったポーの正面に現れたのは立香だった。

 どうやって現れた?

 どうして現れた?

 まさか、ロボに跨り、ヘシアンのマントの陰に隠れてここまで突入して来たのか?

 それとも、ロボに乗ることによって透明化で自身を透明にしたというのか?

 生身の身体で??

 

『あいつはどうして、()()でボクの前に現れたんだ……!』

 

 立香の指先はポーに狙いを定めている。一工程(シングルアクション)という単純な動作故に発動が早い……この近距離ならば外さない。連射も必要ない。

 宝具が発動するほどの致命傷は与えない。ただ、ポーを怯ませられればいい。一瞬の隙さえできればいい。

 

「ガンド!!」

 

 立香の指先から発射された呪いがポーに麻痺(スタン)をもたらした。本体が痺れて動けなくなった一瞬、本を雁字搦めにしていた黒い触手が緩み、内側から蹴破られる。

 白い光の向こうから本を突き破って出現したのは、真っ直ぐ蹴られたサッカーボールだった。




ポーと繋がった外宇宙の存在って、ケルトの神の神性を飲み込んで成り代わったとか。多分、そんな関係。
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