犯罪多重奇頁 米花   作:ゴマ助@中村 繚

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ノリと勢い!!


8頁

「……」

「……」

「……これが、オレの。工藤新一(江戸川コナン)が出した推理です」

 

 アメリカの酒場の中心で、コナンとポーの間に沈黙が続く。

 コナンが導き出した推理(答え)を何度も噛み締めるように、その身に沁み込ませて脳に伝達させるかのように、ポーは瞼を閉じて沈黙を保った。

 出題者であるポーでさえ、『究極の謎』の答えを知らない。歴史の闇に埋没された未解決事件。それも、証拠も何も残っていない歴史の(ミステリー)

 コナンの中で出した精一杯の推理を披露した。その推理が正解かどうかではない、ポーが納得するかが“答え”だ。

 

「……ありがとう」

「え」

「真実は闇の中。しかし、私は君の出した推理(真実)()()()()。そうだ、納得こそが正解だ。ああ、そうか……そうだったのか……!」

 

 顔を両手で覆ったポーは感極まってずるずると床に座り込んだ。

 出題者であるポーでさえ、『究極の謎』の答えを知らない。しかし、コナンが導き出した推理は、ポーが大きく頷くに値するものだったのだ。

 最初に望んでいた結末ではなかった。研究者たちが唱える考察ではなかった。

 だが、被害者本人(エドガー・アラン・ポー)は名探偵の推理を受け入れたのだ。

 

「君の仮名が「江戸川」なのが不服だな。「コナン」でもいいなら、「エドガー」と名乗っても良かっただろうに」

「それは、書斎の本の並びを決めたうちの父さんに言ってくれよ」

「もう一度、言わせてもらう。合格だ、名探偵(江戸川コナン)

 

『究極の謎』は解決した。しかし、一つ問題が残っている。

 大人のポーがコナンの推理を認めても、子供のポーが認めるかどうかが分からないのだ。

 

「子供の私なら、認めないだろうね。彼が想定していた真実とは違うからだ。たった一つの真実ですら不明なこの事件において、被害者である私が納得すればそれが真実になる。自分に都合のいい真実でなければ納得しないだろうな……子供だし」

「じゃあ、どうしたら?」

「カルデアに、もう一度(ボク)を殺してもらうしかない。本当に死した者は、蘇ってはいけないんだよ……探偵である君の前で殺しが行われるなど、許せない場面かもしれないが」

「……それで貴方は英霊の座とやらに戻るんだろう」

「そう。サーヴァントとして召喚されれば、こき使われる運命だ。芸術家系のサーヴァントなんて、需要が高い訳でもないのに」

 

 ポーは酒場の出入り口を指差した。先の見えない白い空間に暗闇が広がっている。あの先には、ポーの書斎がある。

 

「あちらから出れば戻れる。こことあちらの時間の流れは異なっているから、君が消えてからそう時間は経っていない。すぐにカルデアと合流できる。さあ、行ってくれ」

「貴方は?」

「私はここでのみ存在している残留思念だ。だから、(ボク)と一緒に死ぬしかない。今度こそ、納得する死を迎えなければならないんだ」

「……こちらこそ。どうもありがとうございました。できることなら、貴方の新作――オーギュスト・デュパンの新たなる事件を、拝読したかったです」

 

 ポーが生み出した物語は、名探偵の血脈は、延々と後の時代に受け継がれている。

 枯れることのない、途切れることのない、幾重にも枝分かれを続ける「名探偵」という概念は、この先も繁栄し続けるだろう。その始まりとなった創造主に、コナンは感謝の言葉を述べた。

 そして、コナンの後の世代も、これから生み出されるはずだ。

 

「ありがとう。名探偵……愛しき孫よ」

 

 ポーの言葉を背に受けて、コナンはキック力増強シューズのダイヤルを回す。

 ダイヤルを最大値まで設定し、筋力を極限まで高めた状態でベルトからボールを射出し、元の世界に戻るためにサッカーボールを蹴り飛ばした。

 

「いっけぇぇぇーーー!!」

 

 

 

***

 

 

 

 ポーにガンドのスタンが入った。ガンドが撃てる距離までヘシアン・ロボに連れて行ってもらうなど、カルデアの礼装で立香の身を守護できる前提があっての特攻作戦だ。

 結果は成功だ。渾身のガンドによって緩んだ黒い触手は、飛び出て来たサッカーボールによって蹴散らされたのだ。

 彼が帰って来る。『究極の謎』を解決した名探偵だ。

 

「コナン君! 掴まれ!」

「立香さん!」

 

 サッカーボールの後に飛び出て来たコナンの身体は、重力に従って落下しそうになるが、彼よりも先に落下していた立香に抱えられる。そして、立香の身体はヘシアンによって受け止められ、ロボが彼らを回収したのだ。

 

「う、嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!! お前の推理……認めない!」

「大人のお前は認めたぞ! 被害者本人に認められた真実だ。オレが探偵として出した真実だ!」

「違う、ボクは納得しない!!」

 

 癇癪を起した子供が白い髪を振り乱して喚き散らす。

 湧き出て来た竜種型の夜鬼がガバリと大きく(アギト)を裂き、青白い光を纏う豪速の水流を吐き出した。狙うは順動丸……それも、コナンをピンポイントで狙って攻撃してきたのだ。

 憤怒と癇癪に塗れた攻撃は家茂の宝具で堰き止められるが、水流が止まらない。西陣織模様の壁にヒビが入り、守りの加護の耐久を超えようとしていた。

 

『お待たせ立香君!』

「ダ・ヴィンチちゃん!」

『折角の龍脈だ、利用させてもらおう。()んでくれ!』

 

 そうだ。自分たちは『捜査解明機関カルデア探偵局』だ……現地のメンバーだけではない、立香の背後には頼もしい仲間がいる。

 

「来てくれ、マシュ!!」

 

 新たなサーヴァントが召喚される。

霊基外骨骼(オルテナウス)』 オールグリーン。霊基覚醒率……60%を維持。

 

「……真名、凍結展開。これは多くの道、多くの願いを受けた幻想の城。呼応せよ、『いまは脆き夢想の城(モールド・キャメロット)』!」

 

 立香とコナンの目の前に出現する青く光る円の盾。それはまるで、宇宙から眺めた地球の如き生命の青。

 西陣織の壁だけでは防げない猛攻を前に展開されたのは、テクスチャの乱れた城塞……立香と共に数多の世界を旅し、その度に守ってくれた彼女の盾。彼女の意志。

 怒涛の水流を防ぎきり、船も、戦力も、人も、マスターも守り抜いた。

 かつてはただの高校生でしかなかった藤丸立香の旅路は、彼女から始まったのだ。

 

「マスター! シールダー、マシュ・キリエライト参陣しました。初めまして、ミスター・江戸川コナン。貴方のご活躍は存じております」

「……っ、は、ははは。そういや、まだ言ってなかったな。魔術師とか聖杯とか、到底信じられることじゃねーけど、こうして目の前に女の子が現れて守られて。信じるしかねーな! カルデア! 藤丸立香!」

 

霊基外骨骼(オルテナウス)』装備のマシュの登場に、コナンは腹を括ったようにそう叫んだ。立香たちを信じると、カルデアを信じると言ってくれたのだ。

 

「『究極の謎』は解明した。後は、あいつを倒すだけだ!」

「倒す? なら、その自慢の推理力で教えてくれよ。どうやって? え、どんな死因でボクを倒すつもりなんだ? 聖杯がある限り、ボクは埋葬されない(死なない)。無駄なんだよ……!」

 

 ニャーーーーーン

 

「……は?」

「声……マスター! 猫の声だ!」

 

 か細く、甲高い、それでいて不気味な猫の鳴き声。悲鳴にも似た奇妙な音を、サリエリが聞き取った。

 弱々しいその声は、ポーの内側から響いている。立香との魔力パスはまだ繋がっている……鳴いているんだ、プルートーが。

 

 ニャーーーーーン

 

「ええ、ええ! 聞こえるわ! 刻限よ! 冥界より蘇りし黒猫よ、復讐に嘶きなさい! アンタの憎悪は、それっぽっちなの!?」

「令呪をもって命ずる!」

 

 そうだ、ジャンヌの言う通りだ。

 プルートーの能力はそんなものじゃない。創造主に吸収されたからって、完全に消滅した訳じゃない!

 そもそも、彼は殺されても蘇った。復讐のために、悪魔に転生してまでも蘇った被害者。読者によって植え付けられた復讐者。その概念の結晶だ。

 

「その声をもって、自身を殺した犯人を示せ! 壁の向こうで鳴け! 黒猫プルートー!!」

 

 最後の令呪、最後の一画。

 さあ、告発せよ。

 宝具、発動――『壁の向こう、死体の上で復讐に嘶く(THE BLACK CAT)

 

「ニ゙ャーーーーーン!!」

「ま、まさか……黒猫!?」

「さあ、我らの憎悪に喝采を!」

 

 ジャンヌが振るう旗に鼓舞されるように、か細い声は次第に音量を増し濁った嘶きが響き渡った。

 こいつが犯人だと、「明かす者(探偵)」に告発したのだ。

 

「っ、そうか! この世界は、ポーによって(ルール)が敷かれている。「犯人」は「探偵」によって暴かれるっていう、世界の根本原理がある! だよな、立香!」

「そうだ! この特異点にいる限り、みんな(ルール)に縛られる。それは聖杯の持ち主であるポーも同じだ!」

 

 今、この瞬間、ポーは黒猫プルートー殺害の犯人だと被害者本人(猫)に告発された。

 特異点に敷かれた(ルール)に従い、「犯人」は「探偵」に()()()()()()()()()

 

被害者(プルートー)は告発した。証言した!」

「お前が最初に持ち出したんだ。従ってもらうぜ! エドガー・アラン・ポー!」

 

 

「「お前が犯人だ!!」」

 

 

 立香とコナンの声が重なった。彼らが真っ直ぐに指差した先には、エドガー・アラン・ポー……そうだ、彼こそが犯罪多重現象を引き起こし、黒猫プルートーを殺害した「犯人」だ。

 ポーが乗る、本で出来た戦車を内側から喰い破って巨大な黒猫の首が出現した。虚の右目から血を垂れ流す首は、残る左目を爛々と光らせて裂けた赤い口から牙を剥いて、命ある限り鳴き続ける。

「犯人」は「探偵」に暴かれる。被害者の声を耳にした2人の探偵によって暴かれたポーは、自身が敷いた物語の洗礼を受けることとなる。




【書きたかった場面】
・マシュから始まった『FGO』の物語。魔術とか聖杯とか、突拍子もない別世界の話を彼女が登場したからこそ「信じる」と言った。あと、本格的な戦闘に入ると、どうしても非戦闘員であるコナンの守りが手薄になってしまうのでシールダーが欲しかったのです。
・ぐだ男とコナン、2人の「明かす者」が揃って「犯人」を指し示す。『お前が犯人だ』と、真っ直ぐ突き付ける。
・最後の令呪は犯人を告発するために。ってか、黒猫はこのために召喚された。創造主ですら犯人だと告発する猫、殺されても蘇る。壁の向こうで、化け物の腹の向こうでも鳴く猫。

ノリと勢い!!

【証拠も根拠も学説もなく私が妄想と想像を膨らませたエドガー・アラン・ポー殺人事件の真実】
その①
 犯人はポーを発見した知己の文学者。動機は、A・デュパンの新作のネタにされかけたから。
 ポーとグリスウォルドは、かつてある1人の女性詩人、フランシス・サージェント・オズグットに夢中になっていた。彼女を巡り最悪の関係を築いていたと言ってもいい。知己の文学者もまた、陰ながらフランシスに好意を抱いていた。
 だが、ポーは初恋の女性と再会し、結婚を約束した。実際の事件さえも小説のネタにする抜け目のないポーは、デュパンの新作にフランシスをモデルにした女性を中心にした愛憎劇を書こうとしていた。
 その登場人物の1人に、知己の文学者を出すつもりだった。名前を「レイノルズ」とかに変えて……偶然再会し、酒を飲み交わして酔ったポーからそれを聞かされ、自身のフランシスへの想いを踏み躙られたと感じた「犯人」はポーの酒に薬物を混入し、身元を隠すために服を着替えさせて都市の片隅に捨て置いた。
 しかし、ポーの死体発見の一報がないのを不審に思って捜しに行ったら、実はまだ息のあったポーを発見した。
 第一発見者が犯人だったVer.

その②
 犯人はポーの熱狂的なファン。動機は、A・デュパンの新作を書こうとしたから。
 ポーが創造した「名探偵」と推理小説に魅せられた犯人は、偶然にも旅行中のポーと出会い酒を飲み交わして歓談する幸運に恵まれる。その中で、ポーが酒の勢いで新作の構想を犯人に話してしまうが、その内容は相応しくなかった。
 ポーが書こうとしているA・デュパンの新たなる事件は、犯人曰く「名探偵に相応しくない事件」……そんな駄作は認めない。尊敬と憧れは、軽蔑と絶望へと変わった。
「犯人」……レイノルズはポーに粗悪なアルコールを飲ませて意識混濁状態にして、服を着替えさせて都市の片隅に捨て置いた。不正投票に巻き込まれた浮浪者に見せかけるため。
 歴史に犯人の名が残ることもない、行きずりの犯行Ver.

その③
 犯人は幼少期に接触した外宇宙の存在。動機は、魔改造しようとしたらできなかったから。
 かつて幼少期のポーを接触した外宇宙の存在――ポーには「レイノルズ」と名乗っていた何者かは、対立する邪神たちへの対抗手段として、ポーをキャトって因子を植え付けて魔改造しようとしたら耐えられなかった。
 大人のポーではフォーリナーになれない、フォーリナーの適正があるのは子供のポーである。かつては適正があっても、成長して狂気を吞み込めなくなってしまったポーは器には不十分だった。計画は失敗、ポーは発狂し正常な状態には戻れない。
 そのまま地上に廃棄された。しかし、この接触は座に持ち込まれ、子供の霊基ならばフォーリナーで顕現することになった。
 突拍子なさすぎるVer.

と、色々と考えてはみましたが、下手に答えを出しても「何かが違う」と感じたため、真実は探偵と被害者だけのものに。
歴史の謎は未だ解明されず。真実は闇の中……。
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