犯罪多重奇頁 米花   作:ゴマ助@中村 繚

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『捜査解明機関カルデア探偵局』の役割について

・ぐだ男→局長(マスター)
・エドモン→探偵。丸眼鏡が探偵スイッチ
・邪ンヌちゃん→探偵助手兼潜入捜査員。JKライフ満喫中
・サリエリ先生→オーナー。眼鏡がオーナースイッチ
・アンリマユ→マスターの護衛。漫画雑誌はサンデー派
・ヘシアン→実働部隊兼運転手。免許証偽造済み
・ロボ→主

こんな感じでぐだぐだやっていく。


狼王と少年探偵団01

『カルデア探偵局』開局にして初の殺人事件を解決してから多少の知名度を得たようで、依頼の数が増えて来た。

 それでも主な収入源はやはり迷子のペット探しが現状だ。真実への到達へはまだまだ遠い。

 本日のみんなの予定は、ジャンヌは学校、エドモンとサリエリは都心の某経営者宅へ赴いて浮気調査の相談に。そして、立香とアンリマユ、ヘシアン・ロボは捜し出した迷子の仔犬を連れて依頼人宅を訪ねていた。

 

「まあ、ケンちゃん! ママ心配していたのよ~! ありがとうございます」

「いいえ。怪我もなく無事に発見できて良かったです」

「報酬は、後日口座に振り込ませていただきます。さあケンちゃん、お風呂の時間でちゅよ~」

「ありがとうございました岡田様!」

 

 元気な黒いポメラニアンを依頼人へと引き渡し、迷子になったペットの仔犬探しはこれにて完了。ケンちゃんという名前の黒いポメラニアンを飼っている岡田さんという、何だか引っかかるお宅からお邪魔した。

 

「ありがとうロボ。ロボのお陰でペットたちの捜索が楽になったよ」

 

 立香の言葉にロボは顔を逸らした。照れているのではない、彼はこの世界で演じている「探偵」というものに興味がないのだ。興味がないから、無反応なのである。

 それでも、狼であるが故に動物と意思疎通ができるロボが捜索に加わってくれたことで、迷子のペット探しにかかる時間が飛躍的に短縮され探偵局に大いに貢献してくれている。

 しかし忘れてはならない。憎悪を向けるべき人間の頼みを聞いて、人間たちを助けるというこの仕事は、本来ならば彼の腸が煮えくり返るほどの屈辱であるということを。

 狼王の寛容さに甘えてはならない。彼が立香に向けてくれる信頼を、裏切ってはならない。

 こうして、大型犬を装って大人しく首輪とリードを着けてくれている姿に頭が下がる。確か市内に広大な敷地のドッグランがあったはずだ。そこなら思い切り走れるはずだ。

 

「今度、ドッグランに行こう」

「オレも思いっ切り外を歩きたいんだけど」

「駄目です」

「ちぇー」

 

 全身真っ黒だから駄目です。

 住宅地を抜けて拠点のあるマンションへ帰る途中、家と家の隙間にあるような小さな公園を見つけた。遊具もなく、金網で仕切られた一角にバスケットゴールと壁に描かれたサッカーゴールがあるだけの空間から、子供たちの声が聞こえて来る。

 そうか、もう小学生は下校時間かと思って時計を確認すると、その公園からサッカーボールが飛んで来た。

 

「痛っ!」

「アンリマユ!」

「なにするんだー! 影の中にも人がいる可能性があるんだぞ!」

 

 飛んで来たサッカーボールは立香には当たらなかったが、立香の影には当たった……つまり、影の中にいたアンリマユに命中した。影から出ては来ないが、両手を動かしてプンプン怒っている。

 命中してバウンドしたサッカーボールは、ヘシアンが胸でトラップして回収した。

 

「どこに蹴っているんですか、元太君!」

「悪い悪い」

「すみませーん、大丈夫でしたか?」

「はーい……あれ、コナン君!」

「立香さん!?」

「あー! ショッピングモールにいたお兄さん!」

 

 サッカーボールを飛ばしてきた少年少女たちの中に見覚えのある顔を発見。彼らとは以前出会っていた。杯戸町ショッピングモールで、コナンと一緒にいた少年探偵団を名乗った子供たちだ。

 

「学校帰り?」

「うん。立香さんは探偵のお仕事?」

「俺たちも終わって帰りだよ」

「……(はいどうぞ)」

「あ……どうもありがとう」

 

 ヘシアンが無言でサッカーボールを返せばちょっと困惑して受け取った。

 ショッピングモールの時、ヘシアン・ロボは霊体化して見えなくなっていたので彼らとは初対面だ。仮の頭をプラスしたら2m近くの大男なので、警戒しているのかもしれない。

 

「うわ~! おっきいワンちゃんだ!」

「……」

「ひぃ……!」

 

 少年探偵団の少女が無邪気にロボに近付いて来るが、愛玩を良しとしない獣の睨みに当てられて身体を強張らせる。小さな唸り声を上げて微かに牙を見せれば、小さな少女には十分だった。

 少女は怯えながらコナンの後ろに隠れてしまったのである。

 

「このワンちゃん、怖い……」

「ごめんね。ロボは他人が好きじゃないんだ」

「ふ~ん。ほら、お手」

「元太君!」

 

 坊主頭の大柄の少年は、少女の静止も聞かずに無謀にもロボへ手を出した。彼が犬に仕込まれた芸などするはずがない。

 大きな右前足を振り上げたロボを見て、立香は咄嗟に間に入ろうとしたが……杞憂であった。ロボの右前足は少年の手ではなく、触り心地の良さそうな坊主頭の上にぼすんと置かれたのだ。

 

「……(ふん!)」

「元太君、完全に下に見られてますね」

「ちぇー」

「やめておきなさい。人間の都合で可愛がられるのは、動物にとって迷惑な話よ」

 

 狼王は子供の戯れを鼻で笑った。

 人間たちは憎悪の対象ではあるが、その雛である子供は取るに足らない存在であるということだろう。立香もヘシアンも、子供たちの見ていない陰でホっと胸を撫でおろした。

 

「自己紹介をしていませんでしたね。ボクは円谷光彦です」

「わたし、吉田歩美!」

「小嶋元太だ」

「灰原哀よ。よろしくね」

「よろしく。少年探偵団のみんな」

 

 利口そうな子、無邪気な子、生意気そうなガキ大将、大人っぽい子。彼らにコナンを加えれば、大人顔負けの活躍を見せる『少年探偵団』であると、初対面の際に教えてくれた。

 

「改めまして、『捜査解明機関カルデア探偵局』の局長、藤丸立香です。彼はロボで、こっちはヘシアン」

「お兄さんたちも探偵なの?」

「じゃあ、ボクたちのライバルですね!」

「ライバル認定なんだ」

「こいつ、ロボって変な名前。ロボットなのか?」

「違うよ。「ロボ」はスペイン語で「狼」って意味なんだ」

「『シートン動物記』だね」

「その通り。学校の図書室で読んだことあった?」

「う、うん」

 

 やはりコナンは知っていた。子供たちの反応を見るに、哀や光彦も読んだことがあるようだ。

 

「イートイン動物記って何だ?」

「イートインじゃなくて、『シートン動物記』ですよ元太君。動物学者のアーネスト・シートンが、今まで出会って来た動物たちの姿を書いた物語です」

「そこに登場する「ロボ」っていう、誇り高くて愛妻家な狼の王なんだ」

「人間に媚びず、矜持を選んで餓死した狼王ね。貴方も王の風格を纏った素敵な「ロボ」だわ。ほら吉田さん、怖くないわよ」

「うん、カッコいいね!」

 

 灰原哀という子はコナンとは別ベクトルで大人っぽい子だと思ったが想像以上だった。小学生から「媚びる」という言葉が出るとは、思ってもいなかった。非常に不思議な光景ではあるが、何故か違和感はない。

 先ほどの発言といい、彼女を見ていると子供の姿だけど中身は大人なサーヴァントたちを思い出す。

 それでも歩美とは仲が良いようだ。哀が手を引いてくれれば、怖がっていたロボのことは平気だった。

 

『マスター、聞こえるでござるか』

「え、ティーチ? どうしたの」

『あのロリ2人がきゃっきゃしている光景がもっと見たいので、好きそうなアニメの話題でも振ってくだちい』

 

 無視した。

 

『マスター、聞こえますか?』

「今度はバーソロミュー?」

『あの赤みがかった茶髪の子……前髪が長めで非常に良い。分け目を変えてメカクレを勧めてもらえませんでしょうか』

 

 無視した。

 ノンホールピアス型の通信機から聞こえる海賊の声は無視して子供たちと話をすれば、みんなでサッカーの練習をしていたらしい。いつも使っている公園のゴールが他校の子たちに先に使われていたので、少し足を延ばしてこの小さな公園までやって来たというのだ。

 そうか、小学1年生なら授業はお昼すぎまで。時間割によっては給食を食べて掃除をして終わりか……友達と遊ぶ放課後の景色を懐かしく感じるのは、立香が長いこと学業という日常から遠ざかっているからなのだろう。

 つい3年前までは、学校帰りに友達と寄り道をしてこんな小さな公園に立ち寄ってストリートバスケなんてやっていたのだ。

 失って実感する。学生時代というのは、非常に楽しい時間であったということを。

 

「キャアァァァーーー!」

 

 が、この日常の象徴もぶち壊れるのが特異点の毎日である!

 絹を裂くという表現そのものの女性の悲鳴が聞こえた。発生源はすぐ近く、公園の裏の一軒家からだ。

 悲鳴に真っ先に動いたのはコナンだった。撃鉄で叩かれた弾丸のように走り出した少年は、悲鳴が聞こえた一軒家の玄関に鍵がかかっていないのに気付く。躊躇せずに家の中へ飛び込んだ小さな身体を立香も追った。

 悲鳴が出た場所はリビング。そこでは、倒れている老年の男性に必死に呼びかける女性がいた。

 

「お父さん! しっかりして、お父さん!」

「……駄目だ。亡くなっている」

「そ、そんな!」

「立香さん、警察に連絡をして」

「う、うん」

 

 彼は、あまりにも冷静に男性の脈を確認すれば、既にこと切れている事実を女性へと伝えた。

 コナンの指示に従って110番をした立香は、改めて現場を見渡してみる。

 老年の男性はリビングの中央に倒れており、姿は動きやすそうなジャージ姿。傍らにはテニスラケットが落ちていて……男性の顔には、VRゴーグルが装着されていた。

 

『……この子、どうしてこんなにも冷静なんだ?』

 

 探偵業を始めて1か月以上が経ったが、間近で遺体を見るのは初めてだった。

 戦争の中で、魔獣に襲われて、弱肉強食の闘争に敗れて……そんな世界に潰された人間の遺体ではない、立香が知る日常の中で実感した“死”の気配。

 その“死”がある中で、この少年はどうしてここまで冷静になれるのだろうか。




本編と全然関係ない話ですけど、京極さんがサーヴァントとして召喚されたら拳と蹴りの風圧を飛ばすタイプのアーチャーになると思っています。
遠距離攻撃に弓も銃も魔術もイルカも不要!
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