犯罪多重奇頁 米花   作:ゴマ助@中村 繚

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公式さんでぐだぐだしたイベントが始まりましたが、斎藤一実装か……斎藤さんかぁ。
私の中で「斎藤一」といえば某サムズアップが素敵な平成ライダーの中の人が演じられた大河の斎藤一が最高なんですよね。推しの俳優さんも劇中ドラマだけど演じられまして、史実もその死に様とか好きなんですよね、実は生年が沖田さんより年下な斎藤一さん。
つまりは私、新選組の推しは斎藤一です。


狼王と少年探偵団05

 見た目は完全に真っ黒な人型である。殺意が宿った三白眼の両目に、無駄に歯並びの良いむき出しの前歯。鼻も一応あるが、真っ黒に塗り潰されているため顔というよりはデフォルメしたナニかに見える。

 現代日本と限りなく近く、殺人はあってもエネミーは出現しないと完全に油断していたところでの登場だ。バトルが久しぶりすぎて一瞬焦る。

 黒いエネミーが手にしているのは包丁にナイフ、日本刀。鉄パイプにコンクリートブロック、バールのような物、ゴルフクラブと、刺殺と撲殺に特化した武装だった。

 

『エネミー情報が出ました! 霊基はアサシンです!』

「なら、問題ない。ヘシアン! ロボ! お願い!」

 

 立香の声に応えたヘシアンの手に武器が出現する。鎌の形状をした剣を手に、包丁を振り上げたエネミーへ一太刀入れれば、黒い身体は簡単に真っ二つに切り裂かれる。

 人の形はしているが、相手は人ではない。ヘシアンが切り裂き、ロボが噛み殺したエネミーの亡骸はドロりとした粘度の高い液体へと戻り、武器も消えていた。

 

「何だこいつら。耐久はそんなに高くないけど、数が多い」

『先輩、後ろです!』

「っ!」

 

 正面だけではなく、立香の背後にもあの濁った黒い液体が湧き上がる。こちらもやっぱり、包丁や金属バットにと武器……否、人間を殺害するための凶器を手にしている。

 殺意を孕んだ人間が凶器を手にすれば凶行に走る。ヘシアンとロボが最初に湧いたエネミーの相手をしているその背後で、金属バットが立香の頭に向かって振り下ろされる。

 だが、彼の足元から出現した別の黒い人型ことアンリマユが立香の前に出た。撲殺の勢いで脳天を殴られたが、最弱と自称しつつも一応はサーヴァント。ぐらりと身体が揺らぐが、何とか持ちこたえた。

 

「アンリマユ!」

「今日は痛い思いしてばっかだなー……でも、はっきりしたぜ。こいつら、中身は人間だ。人間ならオレに勝てないよなぁ、「自業自得」って言葉知っているよなぁ! 『偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)』!」

 

 殺意をぶつけた攻撃を受けたことにより、アンリマユの宝具が発動する条件が整った。自業自得の呪いが相手に跳ね返る。

 少年の影にも見える真っ黒な身体がイヌ科の獣人の如き姿へ変わると、頭部に受けた攻撃をそのまま金属バットのエネミーの頭部へと返した。

 金属バットを手にしたエネミーを始めとした周囲の黒い頭が殴られ、そのまま弾けて黒い液体に戻った。だが、数は一向に減らない。

 

「痛ってぇ~クッソ、こいつら。真っ黒で目だけって、キャラ被ってんだろ!」

「突っ込むところそこ?!」

「ってか、こいつら属性は人間だけど明らかに人間じゃねぇよ。殺人鬼もうようよしていてこんなのも湧いて出て来るとか、この街ヤバすぎだろ。現代ファンタジー系の特異点かよ」

「1か月ちょっと過ごしたけど、今までこんな異変はなかった……こいつらの出現は、この世界の()()じゃない」

 

 ならば、何故出現した?

 理由は分からない、原因も分らない。けれど、微かな尻尾を見た気がした。

 

「こいつらはきっと、黒幕への手がかりだ!」

 

 立香は右手の甲に貼ってある特殊シールを剥がす。その下には赤く輝く魔力の結晶――三画の令呪が出現した。

 翼の模様が描かれた盾にも似た痕を形作る魔力をロボに注ぎ込む。一時的に偽りの姿を捨てさせ、真の狼王を顕現させる。

 あちらが殺意を向けて攻撃して来るのなら、こちらも殺意をもって出向かえよう。どす黒い液体と共に、その首を落としていけ。

 

「令呪をもって命ずる――疾駆(はし)れ! ヘシアン・ロボ!」

 

 マスターによるブーストがかかり、サーヴァントに魔力が満ちた。ロボの姿は狼の巨体へと変わり、ヘシアンも偽りの頭を捨てマントが翻る。首無しの騎士は憎悪の獣へ騎乗し、首を狩る剣は狼王の牙へと成る。

 人間への憎悪をまき散らす復讐の剣は、雁首揃えたエネミーたちの頭部へと向けられた。

 狙うは黒い首。

 立香(マスター)を取り囲む殺意に満ちた人間たちの首は、瞬く間に全て刈り取られる。

 

遥かなる者への斬罪(フリーレン・シャルフリヒター)

 

 狭い空間を疾駆したヘシアン・ロボの攻撃は、エネミーたちの首を全て刈り取った。

 身体から頭が分離する違和感を覚えたのか。エネミーの一部は、何が起きたのかと言いたそうに目を見開き口を開けて、驚きの形相のまま首が落ちた。

 地面に落ちた首はベシャリと音を立ててどす黒い液体へと戻り、身体も崩れてコンクリートに黒い染みを作る。

 

「やった……っ!」

「マスター!」

 

 いや、一体残っていた。というより、一体だけ液体のまま立香の背後に潜んでいたのだ。

 仲間たちが全滅したタイミングで顕現した残りの一体は、手にした荒縄を立香の首にかけて絞殺しようと力を籠める。しかし、アンリマユの『左歯噛咬(タルウィ)』が縄を切り、立香は咳き込みながらつんのめり、エネミーは背後に仰け反った。

 その時だった。

 エネミーの身体が赫々と燃える炎に包まれたのは。

 驚いたような呻き声を発したエネミーは、現状に対して明らかに混乱している。短くなって使い物にならなくなった縄を手に周囲を見渡すと、その黒い顔に、上から縄が降って来た。

 

『先輩、新手です!』

「いや、マシュ……違う!」

 

 何mもある白い縄は、エネミーの黒い首に何重にも巻き付いてあっと言う間に縊り殺したのだ。首が千切れて黒い液体が飛び散り、赫々とした炎の中に消える。

 敵は全滅した。炎は燃え尽きた。

 エネミーを縊り殺した縄は音を立てながら縮んで上へと戻る。立香は首を上げて縄の行方を追うと、ソレは縄の端を引きずりながらパイプと室外機の道をさっさと逃げて行ったのだ。

 

「待って!」

「オイ! 今の……」

「今の影、人間じゃない。あの大きさ、形……猫だ!」

 

 はっきりとその姿を目にすることはできなかったが、軽やかに動くのは四本の脚。人間ではない、獣だ。

 この特異点に来てからの印象のせいか、四つ足の獣の影の形は立香には猫の形に見えた。

 犯人を告げる猫の声が聞こえる特異点に、炎と縄を携えて現れた猫……絶対に何か関係がある。あるいは、抑止力に召喚されたサーヴァントの可能性もある。

 立香は影を追った。影しか見えない俊敏な獣を見上げながら、コンクリートの地面を駆けた。

 薄暗い路地裏が終わる街頭の灯りの先に影が飛び込むと、立香も裏路地という空間から脱出した。が、そこは事件が起きた住宅街ではなく、米花駅前だった。帰宅の時間帯のためか人々が行き交い、混雑している。

 周囲を見回すが猫の姿はない。後ろを振り返れば、ヘルメットを被ったヘシアンと犬のサイズになったロボが追いついた。影の中にはアンリマユもいる。

 けれども、今までいたはずの裏路地へと続く道はなかった。立香たちは高架下のトンネルに棒立ちしている状態だったのだ。電車が通り、トンネルには激しい音が響くが人々は気にしないで歩いている。

 

「マシュ、俺たちどこにいたの?」

『一時的に別の空間へ飛ばされたようです。米花町には帰って来られましたが、先ほどまで歩いていた場所とは離れています』

 

 こういうのは元の場所に戻るのがお約束ではないのか。元の場所に戻るどころか、雑に人通りの多い場所へと放り込まれている。

 エネミーは全て刈り取った。消えた。だけど猫も消えた。

 あれは本当に猫だったのか、定かではないけれど。

 

「……はぁ? 襲われた!?」

「うん。全身真っ黒な人型のエネミーに」

「……って、オレを見るな!」

 

 その夜、マカロンをお茶請けにコーヒーを飲みながら、遭遇した殺人事件と工藤新一と江戸川コナンの関係と、エネミーと猫のような影を報告した。3人の視線がアンリマユに集中する。

 エドモンとサリエリがお土産に買って来てくれたマカロンは、浮気調査のターゲットが逢引き場所に使っていたホテルの名物らしい。絶句するほど高いが、言葉にならないほど美味しい。

 

『立香君、あの黒い液体の解析が終了したよ。ズバリ、あれはインクだ』

「インク? ペンの?」

『そう。何の変哲のない黒インクだよ』

 

 エネミーを形作り、首を刈られて元に戻ったあの黒い液体は、ヘシアンが咄嗟に回収してくれていた。

 それをカルデアに転送してダ・ヴィンチちゃんに解析してもらったが、特殊な液体でも魔術的な素材でもなかった。成分だけならそこら辺の店で買える黒いインクである。プリンターではなく、万年筆のインクだ。

 そのインクが人型になり、目も口も付いて凶器を手に襲い掛かって来た。素材はただの黒インクだが、何らかの魔術が込められていたのだろう。

 

『恐らく、黒いインクを媒体にした使い魔の類のようです。霊基のクラスがアサシンであり属性は人間。武器というよりは凶器を手にしていたところを見るに、殺人鬼を模したエネミーでしょうか』

『犯罪多重現象が起きている特異点で、殺人鬼を模したエネミーが出現するとは……まさか、これは』

『聖杯の所有者、黒幕の介入に違いない!』

 

 ゴルドルフの発言に立香も頷いた。

 微かにしか存在していないはずの魔術の気配が、今日だけはっきり色濃く姿を見せた。否、立香たち『カルデア探偵局』の存在を視界に入れて、介入を始めたと言った方が良いだろう。

 一体どうしてこのタイミングで?

 心当たりがあるとしたら、米花市における名探偵(シャーロック・ホームズ)の足跡を捉えたぐらいだ。名探偵の推理劇を、代理者がいたとは言え目撃した。

 工藤新一とあのエネミーが関係あるかは分からない、ただの偶然かもしれない。しかし、敵意と殺意を持った殺人鬼(エネミー)が牙をむくなら、こちらも丁重に迎えよう。

 立香の言葉に、「復讐者」たちは頷いた。

 

「とりあえず……エネミーの名前は、(仮称)全身黒タイツってことで」




エネミー名:(仮称)全身黒タイツ
ドロップ素材:どす黒いインク

次回のエピソード、きっと長くなる!
前後編じゃなくて前中後編になりそうな予感しかしないので、最初に言っておきます。
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