『人形草紙あやつり左近』
『ミステリー民俗学者八雲樹』
『金田一少年の事件簿』
などを参考に書いています。つまり、どこかで見たようなトリック等が出現します!
Let's closed circle.
その事件は、6月の終わりに1人の男性が探偵事務所のドアを叩いたことから始まった。
「『聖剣を穢す円竜の一族に滅びあれ。円竜勇朝が犯した重罪を悔い改めよ。さもなくば、
「はい。先日、美天島の村長である
「しかし、妙な単語が多いですな。「聖剣」とか「花鞠」とか」
「それに関しましては、美天島の伝説をお話ししなければなりません。その昔、500年ほど前の戦国時代に美天島で実際に起きたことと言い伝えられています」
そう語るのは、事務所にやって来た
鳥栖が小五郎へと見せた脅迫状(コピー)は、彼が住む美天島の伝説に因んだものになっている。鳥栖の口から、まるで吟遊詩人のように伝説が語られた。
昔々、平和に暮らしていた美天島に1人の女が現れた。
笹を手にした女は花鞠の巫女と名乗り、夜明けと共に美天島に鬼の大軍が攻めてくると告げた。
島民たちは花鞠の言ったことを信じなかった。だが、1人の男が花鞠の言葉を信じ刀を手に待ち構えていると、本当に夜明けと共に鬼の大軍が美天島を攻めてきた。
男は奇襲をかけて最初に鬼の大将の首を獲った。大将を失った大軍は乱れ、慌て、あっという間に退治されたのだ。
男は英雄と祀られ、鬼の財宝を得てやがては島の王となった。
王となった男は死に間際、島の岩に鬼退治の刀を突き刺してこう告げた。
「島に更なる災いが訪れる時、この刀を引き抜く者が現れるだろう。刀を手にした者が次の王となり、鬼の財宝を手にするだろう」
王の亡き後、岩に突き刺さった刀を抜く者は現れることはなかった。
「……と、これが美天島に伝わる『聖剣伝説』です。島を代々治める円竜家は、島の王の末裔と言われています」
「どこかで聞いたような話ですな」
「それって、『アーサー王伝説』じゃない?」
「お前、いつのまに。ってか、アーサー王?」
「うん。アーサーって少年が誰も抜けなかった伝説の剣を抜いて、やがてブリテン島……今のイギリスの王様になって、仲間の円卓の騎士たちと数々の冒険をしたっていう話だよ」
小五郎の横にコナンが現れる。
岩に刺さって抜けない刀は『アーサー王伝説』に登場する選定の剣、王に相応しい者しか手にすることができないという聖剣・エクスカリバーを彷彿とさせた。
「よく似ているでしょう。その『アーサー王伝説』にあやかって、島では10年前から『美天島聖剣祭り』というものを開催しています。実際に聖剣を抜くことができた方には、賞金を進呈と謳って結構有名なんですよ。近年では、鬼の財宝の真相を確かめようとトレジャーハンターたちも集まってきていまして、島の観光に一役買っています」
「ん、ちょっと待ってください。その刀って、今もあるんですか?」
「ありますよ。現在も抜けずに岩に刺さっています」
ただの眉唾物の伝説ならとっくの昔に抜けていただろう。しかし、伝説から幾星霜を経ても、美天島には古びた刀が突き刺さっている。
勿論、祭りを始めた10年前から今に至るまで、岩から引き抜けた者は皆無だった。
「実は、脅迫状の心当たりはその祭りなんです。10年前に村長が提案した『聖剣祭り』ですが、開催当初は四方八方からの反対に合ったそうです。由緒正しき聖剣を見世物にするのかと島中から批判を受けましたが、村長は強行しました。結果は成功となりましたが、島の者は基本的に円竜家には逆らえません。村長はワンマン体質でかなり強引な性格をしていまして、先日も島をリゾート開発すると島民に強引な立ち退きを迫りました」
「『聖剣を穢す』は、伝説の刀を観光のために利用したことを指している。そして円竜氏は、各方面から恨みを買っているという訳ですな」
「はい。と、言いつつも、商工会や役場の者はほとんどが悪戯と思っています。けれども村長が過敏に反応しまして……ここだけの話、昨年に軽い心臓発作で倒れて以来、傍若無人に振舞ってはいますが随分と肝が小さくなっています。この脅迫状が届いて、東京の有名な探偵である毛利先生を呼べと騒いだためにお伺いした次第です。なので、捜査とかそういうのはいいですから、島に来て村長のご機嫌とりをしていただきたいのですが」
「はあ」
『よっぽど人望がねぇ村長なんだな……』
小五郎の隣でコナンはこっそり苦笑いをした。
とりあえず、脅迫状が届く心当たりはある村長らしい。好き勝手やっているようだ。
「『聖剣伝祭り』は7月1日から始まります。ただの観光と思って、来てはもらえませんでしょうか。美天島はブドウの栽培に力を入れていまして、島産のブドウを使ったオリジナルワインが名物です。ワインと新鮮な海の幸をご馳走させていただきます」
「ワインに、海の幸っすか」
「ええ」
「良いじゃない。みんなで行こうよ!」
「蘭!?」
美味しいご馳走と酒に小五郎が乗り気になったところで、買い物に出ていた蘭が帰って来た。
のんびり1人旅で羽を伸ばしに行くつもりだったが、彼女にバレてしまってはその計画は十中八九九分九厘おじゃんになるに違いない。ついて行く気満々だ。
「行くったって、学校はどうするんだ?」
「7月1日からでしょ。その日、帝丹高校は記念日でお休みだし、コナン君も次の日は開校記念日でお休みよ。土日で連休になるし、1日ぐらい大丈夫よ」
「お嬢さんたちもご一緒にどうぞ。宿は村長宅の客間になってしまいますが、広い大浴場も完備されていますのでご不便はおかけしません」
「まあ、そういうことなら」
「決まり! 楽しみだね、コナン君」
「うん!」
こうして3人は、美天島へと向かうこととなったのである。
美天島があるのは石川県。本土の港から連絡船で2時間ほど海を渡った日本海上だ。
気候は年間を通じて温暖で日射量が多く、ワインブドウの栽培に適している。十数年前から島興しの事業として取り組んだワインが評価を受け、『美天島聖剣祭り』の集客も重なりそこそこの知名度を得ているらしい。
波に揺られた『毛利探偵事務所』一行が美天島に到着すると、港で出迎えた鳥栖の運転する車で円竜家の屋敷へと向かった。美天島
「毛利先生、ご紹介します。村長の秘書をされています、荒倉さんです」
「荒倉です。この度は、このような辺境の島にご足労いただきありがとうございます」
「いえいえ。事件あるところ、名探偵・毛利小五郎ありです」
「村長は応接間でお待ちです。荷物は家の者に運ばせますので、早速……」
「だから! それじゃあ島のためにならないのよ!」
正門の前で出迎えたのは、秘書の
彼の案内で村長にお目通りをしようとした矢先のことだった、ヒステリックな女性の声が玄関先にまで響いて来たのは。
「この声は?」
「村長のご長女の
鳥栖がこっそり耳打ちで教えてくれた。
応接間では少し派手めの女性と恰幅の良い老人が言い争いをしている。が、女性の方が一方的に捲し立てている光景でもあった。
「リゾート開発よりも、島の人口流出を防ぐ方が大事だって何度言ったら分るのよ! あの区画は、土地を売り出すなり家を建てて移住者を募るために運用した方が、島のためになったのよ!」
「成功するか分からん博打に手を出す馬鹿がどこにいる。金を落とすか分らん移住者よりも、札束を用意してすり寄って来るホテル会社の方がワシに利益になる」
「性根の腐った金の亡者ね……我が父ながら呆れるわ。このまま人が去って子供も減れば、美天島は本当に滅ぶわよ。せめて高校を造れるぐらいまでに立て直さないと。
「お話し中ですが失礼します。村長、毛利先生がいらっしゃいました」
「おお、毛利先生! お待ちしていました。話は終わりだ。消えろ、萌華」
荒倉に連れられた小五郎を目にすると、老人は雑に萌華を追い出した。娘に対する態度にしては、実に悪辣である。
白髪の入り混じった髪をベタベタのポマードで撫でつけた恰幅の良い老人が、香女路村の村長であり依頼人の円竜勇朝(65)だ。
彼の隣には妻の
事前に教えてくれた鳥栖の話によると、円竜には3人の子供がいる。先ほど苛つきながら退場した萌華(33)と、東京にいる長男に、蘭ぐらいの年頃の末娘がいるらしい。
「円竜さん、脅迫状の送り主に誰か心当たりはありますか?」
「……間違いない、あの女だ」
「あの女?」
「息子の
「あなた、まだそんなことをおっしゃっていますの?」
「あの、話が見えないんですが……」
「失礼します」
「来客中だ!」
「と、朝央坊ちゃんがお帰りに。女性を連れて」
「なに……!」
女性の使用人が恐る恐る応接間にやって来てそう告げれば、円竜は弾かれたように部屋を飛び出して行った。
息子がアポなしで帰郷したようだが、小五郎たちにはさっぱり話が見えない。円竜だけが暴走している。
一体どういうことかと、コナンが荒倉に訊こうとしたその時だった。円竜の怒声が耳を劈いたのは。
「この疫病神が! 分かっている、お前はこの島を破滅させる花鞠だ! さっさと朝央から離れろ!」
「やっぱり、あのメールは嘘だったんだな親父。信じた俺が馬鹿だったよ……いや、下らない妄言に怯えるあんたの方がもっと馬鹿か。もういい、親子の縁は切らせてもらう!」
「この、親に向かって……! 全てはお前が原因か!!」
円竜は若い男性と言い争いをしていた。男性が円竜の長男だろう。彼は若い女性を連れて帰ってきたのだ。
だが、円竜は朝央が庇うように肩を抱く女性へ向けて罵詈雑言を吐き続け、ついには手が出た。明らかに攻撃の意志がある手が振り上げられるが、その手は男性の後ろに控えていた者に掴まれる。
フルフェイスのヘルメットを被った大男が円竜の攻撃を受け止めたのだ。
コナンたちはそのタイミングで玄関に駆けつけた。駆けつけて、双方共に驚くこととなる。
「な、何だこいつらは!」
「何かがおかしいと思って、探偵の方々に同行してもらった」
「……え、オルタさん?」
「毛利、さん?」
「コナン君に、毛利探偵……何でここに?」
それはこちらの台詞でもある。
円竜家の長男・朝央と共に美天島へやって来たのは、立香を始めとした『カルデア探偵局』の一行だったのだ。
急募:私服デザイン
―追記―
私服の描写がめんどくs……洒落のつもりで私服を急募してみたら、場違いだったようです。
すいません!なんかぐだぐだ言っているなーと聞き流してください(土下座)