犯罪多重奇頁 米花   作:ゴマ助@中村 繚

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私服の描写がめんどくs……洒落のつもりで私服を急募してみたら、場違いだったようです。
すいません!なんかぐだぐだ言っているなーと聞き流してください(土下座)


美天島聖剣伝説殺人事件02

「え、ブリテン島のキャメロット村?」

「いえ、美天島の香女路村です。石川県の本土から船で2時間ほどの日本海にある、私の故郷です」

 

 話は1週間前に遡る。

 以前に知り合った紺野の紹介で『カルデア探偵局』にやって来た依頼人は、円竜(えんりゅう)朝央(ともひろ)(28)と名乗った。隣には恋人の女性がいる。

 相談内容とは『毛利探偵事務所』に来たそれと同じ、美天島の伝説に因んだ脅迫状の件だ。しかし、発端は脅迫状であるが何やら様子が違っていた。

 

「先日、メールと写真ですが父に彼女を紹介しました。結婚を考えている女性だと。島にいる姉の話では、直前に父にその脅迫状が届いていて……どうやら父は、彼女が伝説にある花鞠だと本気で思い込んでいるようなのです」

「笹を手にした花鞠の巫女……彼女を、花井(はない)鞠菜(まりな)さんを?」

「はい」

 

 朝央の恋人であり、彼の隣で俯く女性……伝説の中にある花鞠とよく似た名前を持つ彼女、花井鞠菜(26)の存在が美天島に混乱をもたらしたのだ。

 花鞠の巫女が鬼の大軍の襲来を告げた。イコール、花鞠が島に来たから鬼が攻め込んで来た。花鞠こそが禍を運ぶ疫病神であると考えている者も少なくないようで、朝央の父がその筆頭らしい。

 鞠菜は花鞠の生まれ変わりであり、美天島に禍を運ぶ存在だと島中で喚き立てているというのだ。

 

「父に感化されて、彼女が禍を運ぶと信じている者が増えてきているそうです。彼女と別れろと父に命令されましたが……私は別れるつもりはありません。家族や島と縁を切って、鞠菜と一緒に生きていくと父にはっきりと宣言しました。そうしたら、こんなメールが届いたんです」

「失礼……『お前の覚悟は受け取った。今までの非礼を詫びよう。彼女と一緒に島へ帰って来てくれ。祭りが始まる。歓迎する』……暴君の魂が浄化されたかのような心変わりだな」

「これ、本当にお父様が送ったメールですか?」

「父のスマホから送られてきてはいますが、正直信じられません。でも、本当に鞠菜との結婚を認めてくれるなら……」

「認めて下さるなら、私は挨拶に伺いたいです」

「それに、亡くなった母の墓前にも報告に行きたいんです」

 

 それでも、このメールが……実の親子なのにこんなことを言うのも憚れるが、罠ではないかと疑ってしまう。

 円竜朝央と花井鞠菜からの依頼。彼らと美天島へ行き、脅迫状の送り主を調べると共に、何かがあった時のために身を守ってもらいたい。本格的に探偵業が始まった気分だった。

 

「島の名前といい、聖剣伝説といい、『アーサー王伝説』にそっくりな話だな」

「だったら、彼女を島に連れて行ったら本当にロクでもないことが起きるんじゃないの?」

「確かに」

『酷いなぁ、立香君。それじゃあまるで、私がブリテンに禍を運んだかのような言い振りじゃないか』

『マーリンバーローフォーー!!』

『ぐはぁ?! キャスパリーグ!』

 

 いや、ある意味諸悪の根源だろう。

 依頼人たちが帰った後、ホログラムで出現した花の魔術師ことマーリンへ渾身の飛び蹴りを食らわしたフォウさんに心の中で拍手喝采を送った。

 伝説にある花鞠の巫女が花の魔術師マーリンであるなら、確かに警戒する気持ちも分る。だが、それはあくまでカルデアの話であり、特異点の日本にマーリンはいない。

 花井鞠菜は魔術の気配のない、ただの一般人だ。

 

「で、マーリンは何か用?」

『この前出現した全身黒タイツの件だよ。カバラ師の彼と共に、あのインクを色々と調べてみたんだけど……全身黒タイツの生みの親、兼聖杯の持ち主はキャスタークラスで現界しているかもね』

「キャスター?」

『特異点のどこかに工房を持っている可能性が高いということだ、マスター』

 

(仮称)全身黒タイツは、黒インクを媒介にした使い魔の類ではないかというのがシオンの見立てだ。

 だが、ダ・ヴィンチちゃんがドロップした黒インクを科学的に調べてもそれはただの黒インク。ならばと魔術的に調べてみるとしたら、素材を使ってゴーレムを作成するキャスター、アヴィケブロンが適任という訳だ。

 マーリンと共に、仮面のカバラ師のホログラムが出現した。

 

『僕も黒いインクを調べてみた。ゴーレムの素材にもならない大量生産されたインクだ。こんなもので、映像記録にある全身黒タイツを作成できるとは……必死にゴーレムの素材を集めるこちらが馬鹿らしくなってくるよ』

「そんなこと言わないで! 俺、アヴィケブロンのゴーレム好きだよ。巨大ゴーレムの肩に乗って出撃するのは男子みんなの夢だから!」

『けれども、殺人鬼を模したアレには興味がある。魔術師が作り出したモノに、悪意という心が宿っていたのだからね。そこで考えてみた……その特異点は、並行世界の犯罪が蒐集されて創られたものだ。だとしたら、犯罪と共に()()()も蒐集されているはずだ』

『刺殺犯、撲殺犯、絞殺犯。数多の犯罪者たちの悪意と殺害方法を蒐集し、その概念を黒いインクへ混ぜ混ぜする。そうするとあら不思議、全身黒タイツの完成だ。つまりあれは、犯罪者の現身。起こした事件を再生するように、手にした凶器でただ殺す作業をするだけの量産型犯人さ。全身黒タイツを作成し、犯罪を蒐集し、犯罪多重現象を起こしている拠点が黒幕の工房って訳だ』

『それが僕らの見立てだよ』

 

「魔術師」クラスのサーヴァントの固有スキル「陣地作成」。自分に有利な陣地を作り上げる。

 その工房に引き籠りながら犯罪多重現象を引き起こし、米花市を中心とした日本を特異点と変え、遂には全身黒タイツを作成し始めたということか。

 全身黒タイツがゲシュタルト崩壊しかけている。

 

『まあ、今の段階の予想に過ぎないけどね~ところで、探偵局の仕事で遠出するのかい? 気を付けるんだよ、迷子にならないようにね。あ、おやつは500円までだよ』

「遠足じゃないよ」

「遠足気分で、束の間の余暇を楽しもうとしている奴らもいるようだが」

「む」

「そ、そんな訳ないじゃない!」

 

 通信している横で、ジャンヌとサリエリが石川県のガイドブックを読み込んでいた。至るところに付箋がたくさん貼ってある。

 探偵として依頼人から事件の捜査はしっかりやらなければならない。だが今回は、魔術の気配が少ない世界で何百年も岩に刺さったままという謎の刀の存在も気になるところだ。

 

『マスター、島にあるという刀を調べてはもらえませんでしょうか』

「アルトリアも気になるの?」

『はい。魔術の気配が薄い特異点で、そのような剣が存在しているのは気になります。聖杯への手がかりになるやもしれません』

 

 通信で姿を現したアーサー王こと、アルトリア・ペンゴラゴン――かつて、本物の選定の剣に選ばれしブリテンの王だ。

 島の名前も村の名前も、そこを治めている一族の名前も『アーサー王伝説』と似通っていた。いくら気配が薄いと言っても、この世界には魔術が存在している。

 岩に刺さって抜けない刀と、鬼という化け物の財宝。まさか、その一言が立香に過った。

 

「まさか、伝説にある鬼の財宝は聖杯の可能性ってあるかな?」

『先輩! 美天島の財宝について、清少納言さんと紫式部さんに心当たりがあるそうです』

『やっほーちゃんマスー! もしもーし、なぎこさんだよ! その特異点マジ楽しそうじゃん。プリってタピって映えってきゅんですね~! あたしちゃんもアヴェったら行けたのかな~』

「なぎこさん、どうしたの?」

『さっきの島の伝説にさ、“笹”ってあったじゃん。それきっと笹の葉って意味じゃなくてお宝のことだわー。詳しくは調べてくれたかおるっちからねー!』

『あ、もう……なぎこさん。こほん。僭越ながら、説明させていただきます。「笹を手にした花鞠の巫女」……恐らくこれは、「金塊を手にした花鞠の巫女」という意味です。“笹”とは金塊を差しています』

「金塊?! 鬼の財宝は金銀財宝ってこと?」

『あくまで推測ですが……伝説の時代背景は戦国です。その時代では、採掘した金を竹の筒に流し入れて(インゴット)に鋳造するのが一般的でした。これを「竹流し金」といいます』

「笹は金の隠語。花鞠という女は金塊を奪い、それを島の人間に見せて鬼退治を唆した。鬼とは金塊を所有する戦国大名が率いる軍、大将を殺害して軍を壊滅させて英雄と成った……真の姿はそんなところか。美天島には、島の王が隠した血に塗れた金塊が眠っている」

『そゆこと!』

『今回の事件の舞台は、財宝の伝説が眠る孤島とそれに纏わる一族の諍いですね! 2時間サスペンスドラマのようです』

 

 ホログラムでもいつも通りのテンションな諾子さんこと清少納言、そんな彼女に引っ張られておずおずと前に出て来た香子さんこと紫式部。

 古来より文学に通じる彼女たちの推測と共に、エドモンが伝説に隠された真の姿を推理した。

 島の伝説に隠された財宝、謎の刀、英雄の末裔の一族……マシュの言う通り、2時間ドラマ的な臭いがプンプンする。

 

「よし。今回の『カルデア探偵局』の仕事は、依頼人である朝央さんと鞠菜さんを守り、脅迫状の送り主を見つけ出す。それと、美天島にある岩に刺さった刀の調査と……鬼の財宝とされる、金塊の捜索だ!」

「了解した、マスター!」

 

 こうして、彼らは美天島へと旅立った。

 6月30日の最終連絡船で島に渡り、その日は一泊して翌日に円竜家を訪れた。が、そこでまさか、毛利小五郎を始めとした彼らと出会ってしまうなんて……想像もしていなかったのである。

 

「コナン君に、毛利探偵……何でここに?」

「立香さんこそ、何でこの島に?」

「俺が依頼したんだ。親父が、彼女を連れて挨拶に来いってメールをよこしたから、不審に思って」

「ワシはそんなメールを送っておらん! 放せ! よくもその女を島に入れたな……ワシを破滅させるつもりか! ワシの息子を誑かして、一体何が目的だ!」

 

 ヘシアンに掴まれた手を振り解いた円竜は、鞠菜へ向けて怒声を飛ばした。ただ名前が似ているだけでこのような態度とは、円竜勇朝という人物は立香たちの想像以上に猜疑心を募らせている。

 身を縮ませる鞠菜を朝央が庇い、彼らの前にヘシアンが出る。そして、ヘシアンの前には『カルデア探偵局』の局長である立香が出た。

 

「俺たち『カルデア探偵局』は、朝央さんと鞠菜さんを守るためにこの島に来ました。いくら身内の方でも、俺たちの依頼人に危害を加えるつもりなら……それ相応の行動を取らせてもらいます」

 

 大人でも委縮してしまうほどの殺気の中で、青年にもなり切らないはずの彼は毅然とした態度で円竜にそう言い切った。

「探偵」として、彼らは依頼人を信じて守る。

 まだ少年にしか見えない立香にそう宣言されて居心地が悪くなったのか、円竜は「勝手にしろ」と吐き捨てて玄関から去ってしまった。

 




マーリンお姉さんが登場してびっくりしました。
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