犯罪多重奇頁 米花   作:ゴマ助@中村 繚

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浪速の立て籠もり事件、思わぬ再会03

 スリ集団が持ち出したナイフ相手に抜刀してしまったため、銃刀法違反によって武蔵が現行犯逮捕されたのは昨日の出来事である。よく見たら、手錠がかけられた右手には抜き身の太刀が握られていた。

 このまま連行させる訳にも行かなかったので、何とか武蔵を釈放してもらおうと、その場の勢いで口八丁の嘘八百を並べた。彼女は殺陣のパフォーマーでこの姿はパフォーマンスの衣装で、しばらく海外で活動していたためあちらの感覚のまま帰国してしまった。とか、etc,etc……

 最終的には、スリの標的となっていた女性が武蔵のお陰で被害はなかったと証言したこともあり、渋々手錠は外され厳重注意で終わったのである。あの瞬間なら、口の上手さでカエサルにも勝てる気がする。

 と言うことで、大阪での編成に武蔵が加わった。彼女がまた別の世界へ移動するまでの仮加入である。

 

「いやー、すっかりお世話になっちゃったわね。ご飯や着物だけじゃなくて、宿まで」

「マスターの指示ですから。折角良いホテルを予約したのに、まさか相部屋になるなんて……!」

 

 武蔵と思わぬ再会をして翌日、滞在先である関西ステラプリンセスホテルの一室にて。男女の人数の関係でジャンヌと武蔵が相部屋になってしまったのは仕方ないとして、勿論、タダでという訳ではない。

 一宿一飯の恩義は、彼女の刀で返してもらうことにしよう。

 

「俺たちがこの特異点で「探偵」として行動している目的は、今までの説明の通りだ。女剣士……おまえには、マスターの剣となってもらおう」

「立香君の護衛と、敵が出現した際の撃退ね。一宿一飯の恩義、この剣で返させていただきます」

 

 二振りの太刀は竹刀袋に入れ、武蔵にはジーンズとスニーカー、動きやすいカットソーに星条旗柄のブルゾンという現代の衣服に着替えてもらった。アウターの柄は大阪の商店街で目にして気に入ったらしい。

 彼女が再び世界を移動する兆しが見せるまでは、マスターの身に降りかかる危険を払ってもらおう。着替えや宿だけではなく、うどんとテッチリの分は働いてもらうのである。

 

「宮本武蔵って、女性の方だったんですね」

「それは、少し長い話になるんだけど……」

「ところで、今日の予定はどうします? ボクとしては、外は寒いのでベッドの上でゴロゴロしていたいのですが」

「U●Jでも行くか? 一応魔術師の集団ですし~」

「米花のライダーに変化があった。奴がこの地に縁があるのならば、真名を奪還する手がかりになるやもしれん」

 

 少し長くなる話は置いておいて、清水が昨日見せた反応を頼りに大阪を巡り、彼の真名の手がかりを捜すことになった。早い話が大阪観光2日目である。

 ということでホテルのロビーに出たら、旅行先で『毛利探偵事務所』の一行と遭遇したのだ。前もあったな、こんなこと。しかも、今回は小五郎やコナンだけではなく、もう1人探偵がいた。

 服部平次。大阪府警本部長を父に持ち、彼自身も高校生にして関西を中心とした様々な難事件を解決している探偵である。剣士としてもその実力は知れ渡っており、公式の大会だけではなく、大阪府警の警官たちを相手にもその実力を轟かせている。

 少し前までは、西の服部・東の工藤と東西の高校生探偵としてメディアで騒がれることもあったが、現在は東の工藤新一が表舞台から姿を消している。それでも、新一と平次は時には協力して同じ事件を解決しているので、東西の高校生探偵は対立関係という訳ではないようである。

 こうして、物語に新たな探偵が増えた。増えたと思ったら、事件が発生した。

 探偵がいるホテルで事件が起きたのである。

 

「武蔵ちゃんは、犯人が武装していることに気付いていた。彼女の話が本当なら、あの犯人……剣の心得のある人間だ」

「腕に自信がなければ、業物などという扱い難い武器を手にするはずない。だが、拳銃と業物か……厄介だな」

 

 武蔵は立て籠もり犯に声をかける前に、立香とエドモンにこう言った。「相当な実力者がいる」と。その相当な実力者が本命武器である刀だけではなく、拳銃まで持ち出して人質を取りホテルのレストランバーに立て籠もったのである。

 小五郎の通報で大阪府警が臨場。ホテルの一室に捜査本部を設け、特殊部隊もレストランバー周辺を取り囲み始めた。

 

「平ちゃん! 和葉ちゃんが人質に取られたって、どういうこっちゃ?!」

「大滝ハン。和葉だけやない、最初の人質のオッサンを含めて、何人もあのレストランに取り残されとる」

「なんやて……人質の身元は?」

「和葉と、あちらの『カルデア探偵局』さんの身内が2人。1人は宮本っちゅう姉ちゃんと、もう1人は清水っちゅう東京の男子高校生や」

「立て籠もっているレストランバーは、本日は空調の故障のため閉店していたが、修理業者とホテルの職員が中にいたらしい。防犯カメラは設置されているが、入り口付近の一台のみ。店内全体を映してはおらず、内部の正確な状況は分からず仕舞いだ」

「ええと、お宅らが東京の探偵さんか。えらいこっちゃ……遠山のおやっさんになんて言えば」

 

 大阪府警の身内。それも、刑事部長の娘が人質に取られているとなれば警察の面子にも関わって来る。

 最初に人質に取られていた老年男性に和葉、清水、そして武蔵と、最低でも4人の人質があのレストランバーに取り残されている。だが、正確な人数も彼らの身元も把握できていなかった。

 ホテルに臨場した大滝警部を始めとした刑事たちは、突破口を掴みかねていた。

 そんな大阪府警の陰で、こちらは独自に動くことにする。『探偵七つ道具』No.5を起動させた。

 ふわりふわりと、蝶の形をした紙が床を滑るように飛んで行く。現場となっているレストランバーの正面に待機する機動隊の合間を縫って飛ぶ蝶が、扉の僅かな隙間から中に滑り込むと、ふわりと滑空して清水の肩に貼り付いたのだ。

 

『No.5は私、タマモちゃんが監修しました盗聴&発信機式神です。本職とは外れていますが、これぐらいは朝飯前! 勿論、お役目を終えたら自動炎上消滅するお片付け後始末機能も備わっております』

『傍受した会話は、先輩の通信機にそのまま転送されます』

「了解」

 

 清水には『探偵七つ道具』の性能を説明済みだ。肩に貼り付いた蝶の形の紙を目にした清水は、犯人に気付かれぬように小さくボソボソと現場の状況を立香に伝えた。

 

『所持していない武蔵さん以外は全員のスマホを没収されました。人質は、遠山さんと武蔵さん、僕と、最初に犯人に連れられていた男性。それ以外には、もう4人います』

「人質は全部で8人か」

『他の人質は、作業着を着た中年男性。レストランの空調を修理していた業者の方と思われます。ホテルの制服の若い女性は、業者さんと共に最初からレストラン内にいました。レストランの前にいた眼鏡をかけた中年女性と、同じくレストランの入り口前にいたタクシーの会社バッジを胸に着けた男性は、犯人から逃げようとしてレストラン内に駆け込んだようです』

「タクシー会社? 運転手かな」

「タクシー運転手、業者、ホテルの従業員ならば、幾名かの身元を割ることができるな」

 

 魔術的な手段により人質の数を把握できたが、この情報を警察に届けることはできなかった。では、警察側はどうやって人質の安否を確認するかと様子を窺えば、早速探偵から助言が出たのだ。

 

「あれを使ってみたら? ほら、人間の体温を感知して赤くなるカメラがあるでしょ」

「赤くなるカメラって、サーモグラフィーのことかボウズ?」

「うん。あれを使えば、レストランの外からでも人質が何人いるか分るんじゃないかな?」

「そうか! 急いで科研に連絡せぇ!」

「はい!」

 

 コナンの無邪気な助言により、警察は人質の人数把握の糸口を掴み始めていた。後は身元。人質はもとより、犯人の身元も捜査しなくてはならない。

 

「うーん……」

「どうしたの、お父さん?」

「最初に人質に取られていた男、どこかで見たことあるような気がするんだよな……」

「大滝警部! 人質の秘書だという男が、来ています!」

「秘書?」

「っ、思い出した! あの人質、近畿堺大病院の岩代副医院長じゃねえか! 今、違法献金で騒がれている」

「何やて?! その副医院長、持病の治療ゆうて入院中やなかったんか」

「そんなの嘘に決まってんだろ。そうか、このホテルに隠れていたのか」

 

 小五郎の言う通り、最初に人質に取られていた老年男性は、世間を騒がれているゴシップの渦中人物だったのだ。

 近畿堺大学付属病院が副医院長、岩代(いわしろ)信博(のぶひろ)は、政治家への違法献金を告発されて連日マスコミに追われていた。持病の治療のために入院したと発表して姿を消していたのだが、実はこのホテルに隠れていたと、捜査本部に駆け込んだ男性秘書がそう証言したのだ。

 

「ですが、持病の治療中なのは本当です。副医院長は糖尿病を患っておりまして、1日に数回のインスリン注射が必要です。後1時間ほどで投与の時間です」

「犯人に心当たりは?」

「それが、全く……」

 

 犯人の身元が分からないまま、科捜研がセッティングしたサーモグラフィーカメラの映像が捜査本部に転送された。レストランバーを壁越しに撮影した映像は、青々とした背景に九つの赤い人型が映し出されている。

 人質の人数は8人。うち、4人の身元は判明している。

 だが、これだけの数の人間を人質に取って立て籠もっている犯人の目的は分からない。まだ何も要求を出していないのだ。

 

『犯人が、何かをセッティングし始めました……あれは、カメラとノートパソコン?』

「え?」

『何か、撮影……いえ、Wi-Fiを使ってネットに配信を始めました』

 

 盗聴中の式神越しの清水の報告に変化が現れた。数分後に、ネットの動画配信サイトにLIVE中継が投稿されて日本中が大騒ぎになる。

 中継画面の中央には、レストランのソファーに座らされて後頭部に拳銃を突き付けられた岩代と背後の犯人。他の人質の姿は見えない。

 

『近畿堺大病院副医院長、岩代信博。俺はお前を告発する……一昨年のクリスマスイヴ、お前はある母娘を殺した! その罪の謝罪を要求する!!』

 

 岩代の背後にいる黒いマスクの犯人は、日本中に聞こえるようにこう、要求したのだ。




魔術礼装『カルデア式探偵七つ道具』

No,1シュっとひと吹き、指紋採取スプレー
No.2シュっとひと吹きパート2、血痕採取スプレー
No.3浮かび出た線の種類で特定、毒物検出紙
No.4どんな証拠も鮮度?そのまま、採取キット&保存瓶
No.5後始末消滅機能付き、盗聴&発信機式神
No.6大体の鍵はコレで開く、アルティメット・オールマイティーキー
No.7テレビでよく見るデジタル情報のコピーはこれ一本、刺すだけ簡単コピー機能USB

ねぇこれ持っていて良いの?(滝汗)
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