ロナルド・ゴールドマン。
新人モデル。イギリス出身同地在住の22歳。
趣味はガーデニングと旅行。日本の景色や伝統的な建物に興味があって、いつか来日してみたい。日本語を勉強中。実は母方の祖母が貴族の出身で、血縁を遡ると王族と親類になる。
これが今回のために用意した “設定”だ。
プロフィールページには、圧倒的な王子様オーラを放つ白いタキシードの金髪碧眼の白人男性の写真が掲載されている。顔面偏差値が同じ人間とは思えない。
「祖父の若い頃が美形すぎる」的な文書と共に投稿されていたこの写真をネット上で発見して即保存した。過去の人物の写真は非常にありがたい。使っても足が付きにくいからだ。
この写真のお陰か、日本人女性からのフォローとメッセージの数が過去最高だった。いや、イギリス貴族の血筋というオマケ肩書を追加する判断をした自分もよくやった。流石、と自画自賛する。
「ロナルド・ゴールドマン」目当てに寄って来た女たちの内、恋愛関係へと発展させるための獲物を吟味する。
投稿写真や文書がキラキラすぎない。彼氏がいることを匂わせていない。盛りに盛った自撮り写真をこれでもか!と投稿していない。この三点を重要視して、何人かにメッセージを返す。
一番良い獲物は、景色や動物の写真を主に投稿し、派手な趣味もなさそうで、真面目に仕事に打ち込んでいます系の発言が隙間にある女だ。こういう女ほど、恋愛にのめり込むと周りが見えなくなる。
ある時は、この見極めで1人のアラフォー女が何千万もの“結婚資金”を振り込んでくれたことがある。勿論、全て振り込まれたことを確認してから即姿を消した。引き際が肝心である。
今回は、年上の女を中心に売れない新人モデルとして交流し、頃合いを見てレッスン料が払えないと弱音のジャブを入れようか。家族思いの好青年キャラも付け足して、祖母の手術費でも良いだろう。
時差を確認しながら今後のプランを練っていると、腹が鳴る……遅ぇな、と思ったそのタイミングで来客を告げるインターフォンが鳴った。
「すいませーん。サンデーイーツです。牛丼をお届けに参りました」
「ったく、遅ぇよ」
ドアスコープの向こうには見慣れた配達業者の帽子が見えた。
いつもより遅い。この配達員、新人だな。
若干苛つきながら玄関のドアを開けると、配達員から差し出されたのはチーズ牛丼大盛温玉乗せ……ではなく、刑事ドラマとかでよく見るあの手帳と一枚の紙だった。
「ロナルド・ゴールドマン。いや、
「っ! 警察!?」
警察手帳と逮捕状。男が配達員の帽子とジャケットを脱げば、一瞬でスーツ姿に戻った。その姿はどう見ても刑事である。
バレた、足が付いた!
ロナルド・ゴールドマンを始めとした様々な外国人男性の名を騙り、女性から多額の金を騙し取っていた国際ロマンス詐欺師こと金山は、体型に見合わぬ反射速度で逃亡を図った。SNSの写真とは似ても似つかない肥満体型だ。
窓から逃げよう。自宅アパートは二階だが、下の階の室外機を足場にすれば飛び降りられる。
詐欺が順調になって来たとき、見栄を張って高層マンションに引っ越さなかったあの時の自分、GOOD JOB!
と、頭の片隅で自画自賛していたが、そうは簡単に逃亡できやしない。
窓を開けると、下にはスーツ姿の厳つい男たちの集団……後ろからも同じ集団が迫っている。その中の1人が金山の肩を掴んだので思わず振り解くと、軽い力で手は離れたが刑事がわざとらしく痛がった。
「あ、いったー! はい、公務執行妨害の現行犯を追加!」
「パソコンとその他諸々、全部押収しろ!」
「な、何だよ! たかが詐欺ぐらいで、何でこんなに警察が!」
「たかが詐欺で、被害総額1億円以上とは恐れ入った。連れて行け」
白昼堂々の逮捕劇はあっという間の出来事であった。
金山がパトカーに押し込まれて連行されるのを見届けると、配達員に扮していた刑事――警視庁公安警察、風見裕也はアパートの裏の駐車場に停まる白のRX-7に乗り込んだ。
「降谷さん、指示通り金山のパソコンは全て押収しました。通帳と明細書、クレジットカードも全て押さえています。他、金山以外の詐欺グループも捜査二課が摘発済みです」
「ご苦労、風見」
この逮捕劇は安室透――否、警察庁公安警察、降谷零が仕掛けた摘発であった。
紫織がSNSの運営に通報したからか、正体がバレたと勘付かれたのか。「マイケル・グリーンマン」はすぐにアカウントを削除して姿を消した。
手口を見るに犯人は国際ロマンス詐欺に慣れている。今までにもSNS上で多くの犯罪を繰り返していたのだろう。
引き際は弁えている。が、自重はしない。
またすぐに別人のアカウントでネットの海に現れるだろうと考えた降谷は、エドモンから預かった「アーサー」なる人物の写真に足跡を残すウイルスを仕込んでネット上に流した。
ほんの一瞬の投稿であったが、それで十分だった。その一瞬で、王子様のような美しい男性の写真は数多複製され、仕込まれたウイルスも各地に散った。
後は、「アーサー」を自撮り写真として掲載しているアカウントを片っ端からピックアップするだけだ。海外のサーバーを経由していても、感染したウイルスが目印になるためすぐに身元は判明する。
その中で、「マイケル・グリーンマン」と非常によく似た手口で浮上してきた「ロナルド・ゴールドマン」というアカウントを発見。プロフィールの写真は、ネットに流した「アーサー」であった。
犯人の尻尾を掴み、これにて御用。しかも、「アーサー」の写真は他の婚活サイトや出会い系サイトでも悪用されていたので、本命である金山以外にも多数の詐欺グループが一網打尽となったのだ。
これにて一件落着……ではあるが、何故、国際ロマンス詐欺如きで風見を始めとした公安警察が動いたのか?
それは、風見自身が疑問に感じていた。
「金山は、女性たちから騙し取った金のほとんどをあるソーシャルゲームへの課金に費やしていた」
「ええ。確か、『ALCOHOLIC』とかいうゲームです」
「そのゲームの運営会社は、“組織”のフロント企業だ」
「何ですって!? つまり、詐欺被害者の金が“組織”に流れていたということですか?」
「そうだ。ゲームを開発した会社や末端の社員は、自分たちが“組織”に使われているという自覚すらない。多数ある資金源の一つだが、これで動く口実ができた」
金山の金の流れを調べて驚いた。まさか、奴が熱中していたゲームが組織の息がかかった会社のものであったとは。
運営会社に警察の手が入っても、たった一つの資金源がなくなっただけで組織の財政が困窮することはない。詐欺被害に遭った被害者たちに金が戻って来ることはない。しかし、黒の組織へ流れる金のルートの一つは確実に潰せるのだ。
「探偵エドモン・ダンテス、『捜査解明機関カルデア探偵局』……彼らは、何者でしょう」
「さあ。でも、彼らと気が合うことはないだろう。何せ、僕は犬派だからね」
現状は探偵を名乗っているが、自分は常人よりも思考の回転が速いだけだ。そう言って、エドモン・ダンテスは黒猫と共にポアロを後にした。あれから暫くは顔を見ていない。
後日、金山の逮捕と、国際ロマンス詐欺及び結婚詐欺グループが一気に摘発されたとニュースで報道された。
一方、『カルデア探偵局』では……。
「江戸川コナンは、学校が終わるとアガサ博士という方の家をよく訪れるそうです。時には泊まりになることも」
「アガサ……阿笠博士って、杯戸町のショッピングモールで子供たちの引率をしていたあの人!」
「阿笠
「蘭ちゃんの話によると、工藤家とは隣人兼遠縁だそうよ。江戸川コナンは、両親の急な入院と海外赴任を理由に親類の阿笠博士に預けられていたけれど、江戸川コナン自身の意志で毛利家へと転がり込んだ」
「職業は発明家。いくつかの企業と契約も交わし、発明品の特許も得ている。その特許の中に、持ち運びのできる小型ボイスチェンジャー……すなわち、変声機がある」
「コナン君が眠りの小五郎を演じている際に使用していた変声機は、その阿笠博士が作ったもの。つまり……彼が、工藤新一の協力者」
江戸川コナンの正体を知る者。お誂え向きに、コナンの影武者になれそうな同じ背格好の少女――灰原哀もいる。
随分と大人びた少女だと感じていたが、彼女もコナン……否、工藤新一の協力者と言われれば妙に納得してしまう。
プルートーとエドモンが得た阿笠の情報。
ジャンヌが蘭から得た情報。
サリエリが阿笠の発明品から得た情報。
皆が集めた情報を統合し、立香が結論を出した。
しかし、
恋人の如き国を守る者
白紙化された世界を取り戻す者たち
【次回予告】
G.W
5月3日
連続放火事件
プラスチック爆弾
東都環状線
西多摩市都市再開発計画
シンメトリー
ラッキーカラー
米花シティービル
赤と青
3分間
―――ハッピーバースデー
時計じかけの摩天楼Case by Chaldea
Coming Soon……
と、いうことで、劇場版第一作目を現代にリブート……まではいきませんが、原作介入しちゃいます。
大まかな流れはそのままですが、当時は登場していなかったキャラクターが登場したりしなかったりする予定です。
例:哀ちゃんが登場する、白鳥刑事が既に警部に昇格している など
書いている人が原作沿い苦手な癖に「やってみてー!」とテンション上がって決定しちゃったことなので、更新速度が停滞する可能性が多いにあるため先に謝っておきます。
よろしくお願いしまぁぁぁぁす!!