ボーイ・イン・ザ・シンデレラ   作:しらかわP

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9th stage : “Girls and a boy will enjoy summer !!”

夏休み。

それは誰しもが待ち望む学生限定モラトリアム的長期休暇のことである。

ただし社会人には存在しない。

 

八月の初旬、神保は毎年夏に行われる美城プロダクションアイドル部門合同夏フェスティバルの全体会議に出席していた。

事務所と同じ階にある大会議室の上座には切れ長な目で資料を見ている綺麗な女性が座っており、どことなく威圧感がある。

彼女は美城の名を冠する当プロダクションの会長の娘であり、海外で研鑽したその手腕から美城プロダクションアイドル部門の統括重役を任された、専務の役職を持つエリートだ。

 

その彼女の目に留まるのは新たに発足されたプロジェクト。

最終的に承認をしたのは確かに彼女自身に他ならないが、この方針というかプロジェクトメンバーの一人、とあるアイドルについての扱いを聞きださねばなるまいと考えていた。

 

現在、目を通している書類は美城プロ初の男性アイドル、いや見た目は女性と遜色ないため普通の男性アイドルの売り出し方とは何もかも違っているが……。

そのことを大変興味深く考えており、なおかつ今までと差が無い売り出し方のようにも感じるため、果たしてこのプロジェクトは成功するのだろうかという思いが、しこりのようにして彼女の心の中に少なからず残っている。

 

しかしながらこのプロジェクトの統括である神保という男、まだプロジェクト名を決めていないらしく(仮)と不格好にも記載があるのだが、この際プロジェクト名は置いておこう。実際の評価には何ら関係が無い。

冷静に考えて有能であることは間違いない。

短期間でのCDや関連グッズの売り上げ、企業からのオファーもすでに数件交渉しており、発足から間もないアイドルグループとしてはほぼ最速と言っても過言ではない。

このまま行けば自身が手掛けたプロジェクトクローネと引けを取らない業績になる。

今回の夏フェスでもそのプロジェクトからの全員参加は一月ほど前から確定している。

 

目を見張るものがあるな、と美城専務は不敵に微笑んだ。

 

☆ ☆ ☆

 

神保からの呼び出しは急なことが多く、今回も一度メッセージで概要は話してあったが、本日夕方に集合するように、とのお達しが来た。

 

休みの日もレッスンルームやトレーニングルームに籠りいろいろと自分に磨きをかけている詩緒はだらだらと汗をかいて荒い呼吸を吐きながら、クールダウンをしていた。

普段は颯や凪と一緒にいて、競い合いながら練習に励んでいるのだが、こうして来ないことも当然ある。

神保からは女性的な見た目を保つためあまり筋肉をつけないように注意されているが、体質なのか美しく引き締まる一方で一向に筋肉が肥大化するような事態には陥っていない。

詩緒本人は悲しそうな眼をすることもあるのだが、トレーナーの聖に話しても男性とは思えないような美しいバランスと評されており、最低でも以前のもやしっ子からはレベルアップしているらしい。

 

「ウタ、呼吸が乱れているな。だらしないぞ」

 

そう言って詩緒の背中を叩くのは、トレーニングしている中で最近仲良くなったアイドルの木場真奈美だった。

詩緒が練習中に声をかけられて、トレーニング器具の使い方を教えてもらったり、アイドルの先輩としていろんなことを教わっている。

 

詩緒は真奈美さんと呼んで慕っており、とにかく肉体美が凄い、というのが小学生並の詩緒の感想である。それ以外にも歌に料理に何でもござれの万能アイドルで、どんな現場でも卒なくこなせて欠点が無い人という印象を抱いている。

 

負荷の強い器具を用い、綺麗な姿勢で軽々とこなしてしまう姿はカッコいいの一言に尽きる。

こればかりは詩緒も自身が参加しているプロジェクトのクール&ビューティー担当である千夜やトレーナーである聖を凌駕していると思ってしまう。

 

「真奈美さん! おはようございます。来てたんですね」

 

「ああ、おはよう。急に元気になったね」

 

そう言うと周囲を見渡して、颯と凪が来ていないことについて詩緒に尋ねた。

二人も一緒に見てもらうことがよくあるので、三人まとめてお世話になっており、詩緒たちから真奈美の方によく話しかけに行くのだが、寄っても邪険にされることはない。

詩緒が最も憧れるアイドルの一人である。そんな人に会えれば、詩緒の疲れも吹っ飛ぶというものであった。

 

本日、颯と凪は休日を満喫しておりどこに行っているかはSNSをチェックすれば分かることを、詩緒は真奈美に教えた。

休憩がてら詩緒は自分のスマホ画面を真奈美の方に傾けて、颯のSNSアカウントを二人で見ていた。

どうやら原宿に来ているらしい。竹下通りの人込みを背景にしてクレープをもって自撮りしており、隣にはカメラ目線の凪がクレープを頬張っている姿が映っていた。相変わらず仲良しだな、と詩緒は微笑ましく思った。

 

「私もアカウントはあるがあんまり活用していないからな。うちのプロデューサーに任せてるから宣伝ばかりだよ」

 

隣で同じように微笑む真奈美がSNS事情を話す。

詩緒もあまり更新するタイプではなかったが、颯やあきらと一緒にいることが多いのもあり、最近は新しい投稿も目立ってきたようだ。

 

「僕、真奈美さんのアカウントフォローしてるから、真奈美さんもぜひフォローしてください!」

 

弟のように可愛がっている詩緒に純粋な目で言われると断りづらく、スマホを取り出してすぐに詩緒のアカウントをフォローした。

フォローされたという通知が届いて無邪気に喜ぶ詩緒に笑みがこぼれる。

 

「せっかくだから更新しませんか?」

 

いつもトレーニングの合間や前後では颯も撮影はしないので、そういった日常の風景を切り取ってファンに届けることは今までしていなかった。

名案が浮かんだとばかりに詩緒のテンションは上がり、自撮りを構えるも慣れてないためブレたりフレームからはみ出たりと上手くいかない。

 

「おや、真奈美さんとウタ。また自身の研鑽をしているのか? ……そんなこともなさそうだね」

 

そこに現れたのはアイドルの東郷あい。

真奈美と同じ詩緒のトレーニング仲間だが、あいの方が会う頻度は少ない。

美城プロの中でも真奈美と並ぶくらいのイケメンアイドルであり、今日は仕事の打ち合わせでもあったのか、おしゃれな格好をしていた。

彼女も詩緒が最も憧れるアイドルの一人である。そんな人に会えれば、詩緒の表情もより一層明るくなるというものであった。

あいは詩緒に、いつもにこにこしてるね君は、と言ってクールな笑顔を返す。

詩緒は少し照れ気味に、そんなことないです、と答えた後さっきまで真奈美と自撮りしていた経緯を話す。

 

「珍しいね、真奈美さんとウタがSNSに自撮りアップするの。でも二人は積極的に投稿していった方がいいと思うよ。何より私が見たい。私も君たちのファンの一人なんだ」

 

お世辞でもすごい嬉しい詩緒は喜びを隠せない。

その様子を見たあいが可笑しそうに笑う。ファンにはあまり見せない姿なのだが、詩緒の前だとどうも可笑しいと思ってしまうことが多いらしい。

あいは一通りくすくす笑うと、苦戦してたなら撮ってあげようか、と提案した。

いいんですか? と詩緒が聞き返すと、私とも撮ってくれるならいいよ、と返されて思わずドキッとしてしまう。

 

そして、詩緒と真奈美、詩緒とあい、ついでに真奈美とあいの組み合わせでそれぞれ写真を撮って、最後に三人が映ったものをあいの自撮りで撮った。

 

「今アップしちゃいます!」

 

ウキウキ気分で詩緒がアップロードしたのを真奈美とあいが見守る。

その後詩緒は神保に呼び出されていた集会に行く準備を始めるのだった。

 

☆ ☆ ☆

 

集会と言っても、詩緒たちが集められた場所はアイドル部の応接室で、だいぶこじんまりとした所である。

 

詩緒が最初に着いて待っていると、次にあかりとあきらが一緒にやってきた。

おはようと挨拶を交わして、詩緒の隣に座る。

 

「ウタチャン、見たよ!」

 

あきらが突然そう言ってきたが、詩緒には何のことかさっぱり分からない。

何を? と聞き返すと、スマホの画面を見せられる。映っていたのは真奈美やあいと撮った写真で、すでにそこそこのいいねとリツイート数が付けられてあった。

 

「ウタちゃんいいなぁ。私も真奈美さんとか、あいさんと写真撮りたいんご!」

 

あかりもその投稿を見ながら、羨ましそうにしていた。

 

続いて部屋に入ってきた颯と凪も原宿に行ってきたことと、詩緒のSNSの話題で盛り上がっているようで、颯にもわざわざスマホ画面を見せられた詩緒である。

 

「あはは! 『木場さんと東郷さんの方が漢気あるように見える』だって」

 

颯が面白そうなメッセージを拾って読み上げる。

普通に男子の詩緒はあんまりいい気はしないが、あの二人と比べられたら沈黙せざるを得なかった。

 

「ウタちゃん、私たちとも一緒に撮ろう?」

 

詩緒はあかりとはあまり撮っていないことを思い出し、彼女の提案にオーケーを出す。

唐突なお願いではあったが、前々から撮りたいと思っていたあかりはこのタイミングなら行けそうだと思ったようだ。

 

「同い年組で撮りましょう」

 

あきらも詩緒とあかりに並び、三人が画角に収まる。

颯が、はーも! と映り込めば、凪もちらりと画面の隅から顔を出す。

 

ちょうどそこにちとせと千夜が入室してきて、何やってるの? と詩緒たちの後ろに二人も加わった。

結局、七人集まった自撮り写真をアップロードする。

しばらくして神保が扉を開けて入ってきて、普通に遅刻してりあむがやってきた。

すませーん、と反省しているのかしていないのか分からないような謝り方だったが、肩身狭そうにしていたので、きっと反省しているのだろう。

 

神保が、仲が良いようで何よりです、と一言置いてから本題を話し始める。

 

「今度の夏フェスは決定しているのですが、それに向けての合宿と撮影を同時に行うことになりまして、これが今回の概要です」

 

恒例になりつつあるスケジュールやらをまとめた小冊子。

見やすいように修学旅行のしおりみたいになっており、少し子供っぽいがとても手間と時間のかかった便利なアイテムだ。

 

合宿が一週間程度で、その間に近くの施設でレッスン、撮影、営業もこなすような日程になっている。

負担も大きくなるが、夏場に集中して仕事やレッスンをすることで集中力などを養っていくのが目的になっている。

 

一通り説明が終わり、何か分からないことがあれば適宜メッセージで質問をしてください、と神保が補足した。

 

「P、質問です」

 

凪が挙手する。まるで本当に修学旅行に行く生徒のようだ。

 

「合宿の部屋割りはどうなりますか? はい、じゃあここで班を作りましょう、的な。先生、りあむちゃんが余っちゃいました」

 

「やめて! ぼくを置いて行かないで! ていうかどうして当時のりあむちゃんを見てきたかのように再現できるの?」

 

りあむが必死に凪に縋りながらも、過去に同じ出来事があったことを認める。

凪は、知らんがな、と言って縋り付くりあむの頭をなでなでし、懐柔していた。

 

「先生、しかたないから凪の班に入れてあげます」

 

「嫌々な慈悲!!」

 

スクールカーストで言うと完全に凪が上位の構図である。

冗談はそこまで、と言うように神保が咳払いをする。

確かに男子の詩緒をどういう部屋割りにするかという問題は発生するが、神保は簡単に決めており、まるで懸念していることがない。

 

「詩緒くんは私と同室です。異性と一晩を共に過ごすとなると彼も委縮してしまいますし、同性の方が何かと気楽だと思います」

 

確かに男のことについては同性の神保が一番よく知っているし、ファンに見られたとしても男同士だから問題ないで済むが、男女で一緒だと知られたときに邪推されてしまう可能性が高いという理由があった。

詩緒とプロデューサーでも変に詮索される可能性はあるが、一般的に考えて男性同士なら大丈夫だという考えである。

詩緒に確認すると、彼もホッとしたように何度も頷く。やはり女性と同部屋で宿泊するのには気の知れた仲間と言えど抵抗があるらしい。

 

「えー、私ウタちゃんとが良かったんだけどな。千夜ちゃんだってそう思うでしょ?」

 

男性同士の方が良いかと思います、と自分の意見をすぐに述べた千夜。

男子と同部屋は冗談じゃないとでも言いたげに詩緒を一瞥し、……別に詩緒くんならいいか、とその時思ってしまったのは胸の内に閉まっておくことにした。

危うく手のひらを返しそうになった千夜は、詩緒から少し距離をとる。

 

「他に二部屋予約しているので、そちらは残りの方で三人と四人になるように分かれてほしいのですが、決めていただいても私が割り振っても構いません。どうしますか?」

 

神保の提案で部屋割りをどうしようかということになったが、結局ランダムで決めることになり、グーかパーを出すじゃんけん方式で人数を分ける。

今決めるのか、と神保は困惑した。後で送ってもらってもいいのだが、勝手に戻るのは忍びないので待つことにする。

ただ、部屋割りはすぐに決まった。

 

「颯ちゃんと凪ちゃんって本当に双子? 双子なら普通は同じ手を出すはずじゃない?」

 

「凪とはーちゃんは生物学的には双子であるというだけです。一卵性の」

 

というわけで双子の部屋は離れたわけだが、そんなやり取りを羨ましそうに見ていたのが詩緒であった。

何も双子が羨ましいのではなく、友達とお泊りするというお楽しみイベントに参加できる皆が羨ましいのだ。

 

「詩緒くん、どうしました?」

 

そんな羨望の眼差しを見た神保が不審に思い尋ねるも詩緒は、何でもありません、と気丈に振る舞うのだった。

 

その後、質問もなく終えると全員が帰ろうと席を立つ。

じゃあお疲れ様です、と詩緒が言おうとすると、あー! と部屋に響く大きさの声量でりあむが叫んだ。

 

メンバーが困惑する最中、りあむは自分の持ってるスマホの画面を指差しながら、これいつ撮ったの? と恐る恐る尋ねる。

 

「ぼくハブられてるじゃん! ていうかリプにも『一人ハブられてて草』とか『新人アイドルの闇』とか書かれてるし!」

 

そういえば忘れてました、とナチュラルに忘却していたあかりの言葉により傷付いたが、詩緒の、もう一回撮りましょう、という提案によって撮り直すことにした。

りあむを真ん中に置いて、囲むように他のメンバーは位置を取る。

 

『もう遅刻しちゃダメですよ』という一文と共に詩緒は写真をアップロードした。

 

☆ ☆ ☆

 

夏休みが始まってから早くも合宿の初日まで時は過ぎ去る。

この夏休みの詩緒の基本スケジュールといえば、朝のルーティンをこなして、少し宿題、出かける準備をして美城プロでレッスンや自主練、帰って夜のルーティンから少し宿題、PCでアニメを見て、スマホを弄りながら寝落ちというサイクルであった。

ルーティンの部分は料理や洗面、お風呂、ストレッチ、その他諸々生活に必要なことが含まれる。

 

しかしそのスケジュールともしばらくお別れで、詩緒はいろいろと荷物を確認して朝からスーツケースをゴロゴロ転がし、時雨に見送られながら家を出ていった。

親が車で集合場所である事務所前まで送っていくと言ったが、詩緒は近いから必要ないという理由で断った。

真夏の暑さでじんわりと汗をかき、肌にTシャツがペタついてくるのを感じると、やっぱり送ってもらえばよかったなと少しだけ後悔する。

 

梅雨が明けて暑い日差しが顔を覗かせるようになってからは神保に日焼け止めは塗るよう言われていて、今日も露出する部分は塗っておいてあるが、それも汗で流れていくとなるとちょっと勿体ない気分にさせられた。

 

時雨に選んでもらった帽子も暑さで少し蒸れているような感じはするが、熱中症対策と言われて無理矢理被せられたため外すのを躊躇う。荷物にもなるし被っていた方がいいだろう。

長めの髪は後ろに一つで纏めて正解だったかもしれない。下ろしていたら首に髪の毛が張り付いていたに違いない。ただ伸縮性の乏しいジーンズは失敗だったかもしれない。

 

「暑い~♪」

 

暑いを歌詞にしてフンフンと鼻歌交じりで歌いながらスーツケースを引っ張っていると、道行く人の視線が詩緒に向いていることに気が付いた。

そんなに大きな声で歌ってたかな、と少し恥ずかしくなり歌うのをピタと止めた。

 

「ウタちゃん、やっほー!」

 

急に後ろから声をかけられた詩緒はビクッとして振り返る。

大きなボストンバッグを肩に背負ってサングラスをかけていたりあむが、そのサングラスを外して襟にかけ、上機嫌なテンションの割に不機嫌そうな表情で詩緒の横に並ぶ。

会社への往路で出会うのは珍しいが、今までも無いわけではない。

おはようございます、と詩緒も挨拶を交わす。

 

「上機嫌だったねぇ」

 

さっきまでの暑い歌を聞いていたのか早速茶化してきたのだが、歌詞は上機嫌じゃなかったけど、とツッコミもしっかり入れていくりあむ。

 

「暑いですけど、みんなで合宿楽しみです! 暑いですけど!」

 

太陽の日差しに負けないような眩しい表情にりあむの目が眩む。詩緒を直視できないとばかりに片手の甲で軽く目を覆い、暑いことを強調してくるので、暑いね! とだけ返答した。

 

「マジで日差しキツイ……」

 

暑さにはめっぽう弱いのか、りあむの表情がげっそりとしている。

一方で詩緒は汗を流してはいるが、楽しそうな笑顔だ。

 

「ですねー。日焼け止め一本じゃ足りなくなっちゃいそうで……」

 

何本か持ってきました、と詩緒が言おうとしたが、りあむが、あ、と一文字だけ発音して足を止めたので、続きを話すことを止めた。

どうかしたのかと思って詩緒が振り向くと、分かりやすく絶望した表情を作っている。

日焼け止め塗り忘れたのかな、と大体予想の付きそうな落ちを彼女が言う前にスーツケースとは別に持っている肩掛けのバッグから取り出して、りあむに渡す。

 

「忘れちゃったんですよね? 事務所までちょっとだけ歩きますし、今塗っておきます?」

 

りあむは詩緒をまるで聖母が現れたかのような感涙の表情で見つめると、彼の手をぎゅっと両手で握って、ありがとう神様、と日焼け止めを受け取った。

 

「やー、本当に危ないところだったよ。ちょっと寝坊しかけたから忘れちってた。りあむちゃんお肌も弱弱だからね」

 

肌が露出した部分にクリームを塗りたくっていくりあむ。

第三者から見たら、遠慮したら? というくらい贅沢な塗り方をしているように見えるが詩緒は、りあむが日焼けしなくて良かったと安堵する。

ついでとばかりに、りあむは服の下にも日焼け止めを塗っていた。

 

☆ ☆ ☆

 

「詩緒くん、夢見さん、おはようございます」

 

出迎えてくれたのは神保で、他のメンバーはすでに車に乗っていることを二人に教えてくれた。

 

「ちょっとギリギリだったんですね」

 

「いえ、集合時間の十分前なので問題ありません」

 

そんな会話をして乗る車まで向かう。

顔馴染みになりつつあるメンバーが挨拶と共に出迎えてくれて、りあむと二人で座席に座った。

いつもと違う服装のスタイルをお互いに褒め合う。

他のメンバーも普段とはまた違った装いで、髪留めやアクセ類なども新調しているようだ。

合宿と言えど、女子のお泊り会でもあるので多少気合は入るものらしい。

特に日差し避けに帽子は必須アイテムとなっており、全員が帽子を膝や荷物の上に置いていた。

ちなみにサングラスはりあむ以外にもちとせと颯が用意していた。

 

「ウタちゃんとりあむさんは二人で来たんですか?」

 

あかりの質問に、途中で会ったから、と答える詩緒。

りあむが詩緒から日焼け止めを貸してくれたことを興奮気味に伝える。

 

「りあむサン、年上の自覚あります?」

 

あきらの鋭利なツッコミがりあむを襲う。

そんな時もりあむの心を癒すのは詩緒であって、彼はバッグからハンディファンを取り出すとりあむに向けて風を浴びせる。

 

「涼しいですか? 汗かいてたので……。お姉ちゃんが持って行けって無理矢理渡してきたんですけど、早速役に立ってるみたいでお姉ちゃんも嬉しいと思います」

 

りあむはそんな詩緒を女神が降臨したような感動の表情で見つめると、天使、と言って詩緒の肩に自分の頭をこてんと乗せる。

詩緒は、りあむさん暑いです、と少し離れてほしそうにするのだった。

 

 

【おまけ】

詩緒のアップした写真を見たファンの反応

 

【真奈美とあい、それぞれとのツーショット】

 

『もうどっちが男でどっちが女かわかんねぇな』

 

『ウタちゃん、イケメンな彼氏さんがいて羨ましいです!』

 

『完全にお兄ちゃんと妹』

 

『おっ○いのついたイケメンと、ち○ち○のついた美少女』

 

 

【遅刻コメント付きセンターりあむ集合写真】

 

『お前遅刻してたんかい』

 

『センターで美少女に囲まれて良かったね』

 

『私もウタちゃんにダメって言われたい』

 

『りあむが幸せそうで嬉しい』


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