ペースが落ちてきています(自戒)
早くも明日に迫った夏フェスへ向けて、プロジェクトミーティアのメンバーは相変わらずレッスンに励んでいた。
合宿での練習の効果は実感できているようで、意外にも体力や精神力の向上に繋がっていた。
トレーナーの聖も、この分なら夏の屋外ステージだろうと半日程度は耐えられそうだ、と半ば安心した気持ちで仕事をこなしている。
最初のうちは体力も歌以外のパフォーマンスもボロボロだった詩緒の成長は著しいものだ。
その成長を見る度に聖は、詩緒が男子であるからと色眼鏡で見てしまうのだが、それは違うと冷静になって頭からその考えを追い出した。
よくよく考えれば指導している相手は何も女性に限らず、それなりにプロのパフォーマーを目指す男性にも出会ってきたが、そんな彼らと比較しても詩緒は負けず劣らずであり、間違いなく努力の賜物である。
そもそも運動に関しては才能など皆無に近かったが、諦めずに努力したおかげでわずかな期間での成長を遂げている。
今や彼が不出来だったと信じる者の方が皆無に近いのだろう。
そうだとしても、聖はトレーナーとしてそこそこのキャリアであり、規格外のパフォーマーだって何度も見てきた。
当然、今活躍しているアイドル達の中にもリミッターの外れたような才能の塊がいたりもする。
ただ、それはあくまで舞台上のパフォーマンスの面であり、もちろん、ステージでの演出に優れているのならばそれはまたとない武器になるであろうが、売れるかどうかと言われたらまた話は変わってくる。
その点、美城プロダクションは安定しているなと聖は感じていた。
プロモーションの上手さ、所属しているアイドルの魅力、担当するプロデューサーの手腕。
この三つの条件のどれもが当てはまるので、安定して業界を生き抜いていけるのだ。
資産の規模も大きく、それこそが大企業の強みともいえる。
最近になってようやくミーティアと名付けられたこのプロジェクトのメンバーも例に漏れず、魅力の強いアイドルとして磨きがかかっている。
こればかりはプロデューサーの売り出し方によるが、神保は客を満足させるパフォーマンスを、まずアイドルに身に付けさせるようなスタイルらしい。
一方でプロモーションは小規模であり、売れるまでには長い目で見る必要がある。
アイドルたち本人は売れることを目的にしているなら、さぞかしもどかしい気持ちであるだろうが、幸いにも美城プロ所属ということで、明日の大規模なフェスにも参加できる。
予算を抑えられたプロジェクトの割には順風満帆にもほどがある、と言っても過言ではないくらいの躍進だ。
メディアへの露出は他より少ない分、ファンのリピート率はここ最近では上位をキープするなど、社内でも少しだけ話題になったりする。
それにアイドルたちのモチベーションの維持も上手く、詩緒が泣き出してしまった以降は誰一人辞めるなんて微塵も思っていない様子に聖も多少の驚きを覚えている。
継続することが大事だと、神保は理解しているからこそのプロモーションの小規模感。
徐々に舞台を大きくしていくことでこれからどんどん大きくなっていく期待感と大きくしていく意思を募らせて、やる気を持続させる。つまりはアイドルを継続して続けていく。
聖も、もう少し続けていれば売れるはずだったアイドルや、人気が低迷して辞めてしまったアイドルを何人も見ている。
様々な障害を乗り越えていかなければならない時も多々ある。
そんな彼女たちを見て、自分の指導も無駄になったと嘆くこともあるが、今指導しているメンバーの面構えを確認すると、つい指導にも熱が入ってしまうのだった。
☆ ☆ ☆
「今日の聖さん厳しかったー……」
あかりが美城プロダクション併設のカフェで席に座ると同時に、お疲れモードで愚痴を溢す。
メンバーは明日に夏フェスへ参加するということで、久しぶりに決起会のようなものを開いていた。
「あかりチャン、明日大丈夫?」
夏の大規模なライブ。
その噂を聞くところ、前年も誰かぶっ倒れるほどの猛暑であり、アイドル部門の間では過酷なイベントであるとのこと。
「二日目の夜のラインナップ熱過ぎ!」
珍しくへとへとになっていないりあむがフェスの出演者一覧を確認してボルテージを上げている。
朝から早いし、寝坊しなければいいけどなぁ、と詩緒の心配を余所にお疲れモードのあかりとは正反対なりあむである。
「ふむ、高垣さん、ニュージェネさん、あんきら食べたいさん、とときんさん、蘭子ちゃん……そして永遠のライバル、城ヶ崎シスターズですね」
凪も確かに豪華だと舌を巻く。
ちなみに蘭子は女子寮友達である。
「もう、なーったら……はーたちは莉嘉ちゃんと美嘉ちゃんの足元にも及ばないでしょ。あとあんきら食べたいさんって何? ラジオネームみたいになってるじゃん!」
颯にとって尊敬するアイドルである城ヶ崎姉妹と比較されてしまうと知名度に差がありすぎてさすがに委縮してしまうし、ラジオネームみたいな呼び方にもツッコんでしまう。
そんなやり取りを横目に見ながら、ストローでちうちうとアイスカフェラテを飲む詩緒は意外にも緊張感も無く、フェスを純粋に楽しみにしていた。
プロデューサーに頼んだら家族分の入場チケットも用意してくれたし、今までの経験値が確実に自信に繋がっていた。
当日は男装から女装へ、またその逆も必要になったり、それに合わせたメイクも施していかなければいけないのだが、スタッフを信用している詩緒はその点を危惧していない。
詩緒はストローから口を離して颯の方に振り向く。
彼にピュアな笑顔を向けられて戸惑う颯だが、その困惑気味な表情をしたまま、どうしたの? と問いで返す。
「はーちゃんとなーちゃんはもう凄いアイドルだよ! いっつも練習してるし、明日もきっと大丈夫! 自信持って行こう」
詩緒からこんなポジティブな意見が出てくるとは正直思わなかった颯は、今度は唖然とした表情で凪と顔を見合わせると、すぐにプッと吹き出してクスクスと笑った。
「まさか、ウタちゃんに励まされるなんてねー」
急に笑われてアホ面を晒す詩緒は肩をペシペシと叩かれた。
「さすがはウタちゃん。もう凪たちのアイドル力を見抜いているとは……」
凪の方も珍しく薄い笑みを浮かべており、最近ではファンに喋らなければ清楚と評されている理由を示していた。
「でも、それにしても凄いイベントだよねー」
ちとせがそんなに凄いと思っていないような口ぶりで言うので、千夜以外のメンバーは一斉に彼女に注目しており、ちとせが何? と疑問符を浮かべていた。
や、何でもないデス、とあきらがキャラメルマキアートを口に運んで誤魔化し、他のメンバーも飲み物をストローでちぅと一口吸う。
次にりあむが出演一覧を手に取って、同じ日程の別ステージに出るアイドルをチェックすると、顔がみるみるうちにげんなりしていった。
「ぼくたちと同じ日程に何でこんなメンバー揃ってんの?」
そう言って頭を抱えるりあむが全員に伝えると、確かにメディアでの出演も多いようなアイドルが初日昼の部の別ステージに登場する予定であった。
アイドルに詳しい颯の目から見ても、うわ、と驚いており、錚々たる顔ぶれが並んでいるであろうことが窺える。
残念ながらテレビをあまり見ないため芸能に疎い詩緒には他のアイドルのことはあまり分からなかった。
木場真奈美や東郷あいの名前を見つけられて少し嬉しくなったくらいだ。
「颯さんとりあむさんは何をそんなに嫌がってるのですか?」
詩緒も少し気になっていたところを千夜が聞いた。
りあむによると夏フェスでは毎部に投票があるので、このイベントの本質は簡単な人気投票であり、一つのステージをプロジェクトのメンバーで独占している以上、他のステージに立つアイドルより多くの票を集めないと目立てないのだと言う。
「そんなこと、たった一日のステージでの投票で今後が決まるわけないじゃないですか」
千夜が呆れたとばかりに溜息を吐いた。
どうやら彼女にとってそれは些事であり、颯のやる気やりあむの不安などとの感情のずれが大きいらしい。
「私たちは新参なのですから、大きな舞台に立てることだけでも良い経験になるでしょうし、先輩方に胸を借りる気持ちで勝ち負けとか抜きにして考えればいいのでは?」
千夜が自分の考えをスッと提示する。
いつも流されるようにレッスンや仕事をこなしていた彼女だが、活動していく内にアイドルとして自分なりの信念も身に付けつつあるようだった。
ただ、グラビアの仕事に関しては神保プロデューサーに対して多少文句を言っていたようだが……。
「いや、負けたくないよ!」
颯が千夜に言い返す。
確かに勝ち負けではないことは彼女自身も分かっているつもりではあったが、いざギャラリーの投票となってしまうと得票数、つまり勝敗がチラついてしまって仕方がない。
アイドルでの活動、それも同じ時間、同じ空間に立つような直接的なものに関しては誰にも負けたくないのが颯の本音である。
「投票でぼこぼこに負けてファンも全員離れていってどうしようもないくらい炎上したらどうしよう……やむ! ぼく、病んで死ぬよ!」
りあむは負けたくないというか、負ける前提で話をしており、結局のところ杞憂であると他のメンバーも即刻結論付けた。
颯の気持ちは分からなくもないが、りあむの気持ちに共感できる者が誰一人としていないのだった。
「りあむさん、考えすぎですよ……」
「いっそ『#りあむ炎上』ってハッシュタグ作っちゃって、ネタにしちゃいましょうよ」
あかりとあきらから励ましとも取れなくもない言葉が飛んでくるが、どちらも引き気味で、さすがに擁護できないほどのネガティブっぷりであった。
「僕はずっとファンなので大丈夫ですよ、りあむさん!」
いつものおふざけだと思い、詩緒だけはいつも通り対応している。
りあむは、詩緒を潤んだ瞳で見ながら、やはりいつも通りに拝んでいるようだった。
その様子に千夜は再び溜息を吐いて、そのうちりあむに振り回されるであろう詩緒の身を案じるのであった。
「まあまあ、明日もいつも通りにやっていけばいいから♪ 気負う必要ないって!」
ちとせがリーダーらしく良い具合で纏めると、今日は疲れたし帰ろうか、と飲み物の入ったカップを手に取って席を立った。どうやら飲み物は持って帰るらしい。
「じゃ、お先にお疲れー♪」
明日頑張ろうね♪ と普段と変わらない笑顔を残して去っていく。
千夜もメンバーに向かって一礼するとちとせの後を付いていく。
「やっぱり、ちとせさんって頼もしいですよね」
あかりが感心したように言ってその背中を見送った。
だが、詩緒の目にはその背中が普段よりも小さいような気がして、一抹の不安のような、得体のしれない違和感を抱く。
合宿での出来事を思い出す。
夜の海に点々と輝く星の輝きに、星の海があるのだと錯覚してしまいそうなほど美しい景色だった。
ちとせの心も透かしていたみたいで、彼女が何に怯えていたのか今になっても分からない。
それに分かる気もないし、分かりたくもなかった。
ただ、彼自身がちとせという存在を高みに置いて皆の道標になることを勝手ながらに願っているだけ。
いなくなる、などと自分があたかも消えてしまうことを仄めかすのは許せない。それは詩緒のエゴだ。ちとせの理想像を崩したくないのだ。
きっとファンというのはこんな心理なのだろうと、詩緒は測ることのできない事象について安易に考えた自分自身を傲慢だと戒める。
ただ彼には願って祈ることしかできない。
詩緒がどれだけ背中を押したって、最終的には、ちとせを前に進められる者はきっとちとせ自身なのだから。
☆ ☆ ☆
イベント『ミュージックJAM』の当日になり、普段通り起床をした詩緒は早速スマホからメッセージアプリを起動して電話をかける。
たっぷりと三十秒くらい時間をかけてようやく繋がった電話相手はりあむだった。
電話越しに、んぁー、と寝起きのだらしない声を上げている。
「りあむさん、起きてください。モーニングコールです。夏フェス遅れたらヤバいんですからね!」
『おー、マジでしてくれたの。天使のモーニングコール助かる!』
詩緒は、りあむが徐々に覚醒してくれたようで安心し、また電話します、と伝えてとりあえず通話を終了した。
りあむから泣きながら感謝を伝えるスタンプと、天使のスタンプが送られてきたのを既読スルーして自分も準備を始める。
準備といっても朝食を摂り、弁当を作り、最低限の身だしなみを整えるくらいであり、何か特別なことをするというわけではない。
家族も休みの日だというのに早めに起きてきて、我が子の晴れ舞台を観に行くのだと気合が入っている様子ではあったが、先に出る詩緒をわざわざ見送り、自分たちの準備を後回しにした。
「来れなくなっても、別に大丈夫だからね」
詩緒から招待したくせにそのように気を遣うので、家族全員絶対行くから、と両親と姉に口を揃えて言われた。
そんなに強調しなくても、と思ったが、そのことは顔に出さず、待ってるよと手を振って玄関から出ていくだけであった。
家から出てしばらく歩くと、りあむにもう一度電話すると伝えていたことを思い出す。
立ち止まりスマホを取り出して数コール。
りあむが、暑いー、という第一声で詩緒のコールに応じた。
「もう、お外ですか?」
暑いなら室内じゃないだろうという予想で聞いてみると、案の定すでに外に出ているとのことだった。
もっと家でダラダラ準備してから来るだろうと考えていた詩緒は、りあむの意外な姿勢に感心して思わず、偉いです! と幼い相手にするような褒め方をしてしまう。
しかしながら、りあむは電話越しで明らかにうれしそうな声音を発した。
『うへへ、そうでしょ~? りあむちゃんはやればできる子なのだよ。それに褒めて伸びるタイプだからもっと褒めてね。あとウタちゃんの『偉い』助かる』
調子に乗るタイプでもあったような、とりあむには見えないところで詩緒は苦笑いを浮かべて、偉い偉いと適当に何度か褒めてあげたが、最初ほど心がこもってないと指摘される。
「その調子ならいつものやむやつは大丈夫そうですね。良かった」
大きな舞台の前にもこんなに他人の心配をする詩緒に、りあむはしばらく黙ったままでいた。
詩緒は何も聞こえてこない端末のスピーカーから耳を離して通話状態が切れてないか確認したが、特に不具合もなく繋がっていることからりあむが話していないことに気が付く。
その直後にスピーカーから音が聞こえてきたが、耳を離していたので何を言ったかまでは聞き取れず、何て言いました? と聞き返した。
『えーっと……暑いから倒れないように気を付けないとなぁって』
りあむさんにしては至極まともなことを言うなぁ、と詩緒は失礼な感想を抱いたが、違和感を抱くことは特になかった。
その後、一言二言話してから通話を切り、プロダクションへと向かう。
実はりあむが誤魔化したのは、本気でお礼を言ったのが恥ずかしかったからである。
詩緒が耳を離していたため、彼には聞こえなかったことに安堵して、適当なことを言って誤魔化した。
いつもの言動にも恥ずかしい部分が多い彼女だが、自覚したのは今回が初めてと言ってもいい。
普段のお礼を言うことの何が恥ずかしいのか自分でも分からなかったが、両親に日頃の感謝を伝えるのを躊躇うような気持ちが、詩緒に対しても湧いてきていた。
それに、伝えるのは今じゃない気もした。
今日も大きなステージが控えているし、今後彼はもっと大きくなって、プロダクションのアイドルの中でもトップアイドルになっていくと思ったからだ。
お礼を言うのはプロジェクトが解体された後でいい。
ただ、解体したくないなぁ、と思いながら燦燦と照り付ける日の光を受けて、流れる汗を拭った。
駅の前、詩緒の足音が雑踏に飲み込まれるが、りあむは歩いてくる彼を見つけると目の前で仁王立ちをした。
詩緒はりあむが来ていたことに驚いており、不敵な笑みを浮かべている彼女を見下ろしていた。
「勝つよ、ウタちゃん!」
詩緒を見上げたりあむの瞳は、最近になって詩緒自身も自覚するようになったアイドルのそれだった。
☆ ☆ ☆
会社が用意した発車前のバスの前には、今日の出演者が揃い踏みであり、詩緒も彼女たちの後ろを付いていく形で集合する。
欠席している演者がいないかそれぞれのプロデューサー、あるいはマネージャーが確認し、アイドルたちはバスに乗り込んでいく。
詩緒はその間、やけに落ち着かない様子であった。
理由は明白であり、詩緒と初対面の社員やアイドルからの視線が集まっているからである。
初対面と言えど、男性アイドルが美城プロダクションに所属したという噂はそれなりに広まっているようで、どうやら顔も知られているようだ。
東郷あいや木場真奈美は交流があるため気にしていないが、彼女たち以外の大人たち、他にもちびっ子のアイドルからもじーっと見られており、肩身が狭い思いがしてきているのだ。
「あなたが水上さんですか?」
不意に声をかけられた詩緒はびくりと肩を震わす。
きょろきょろと見回して、少し視線を落とした先に黒髪ロングの少女が詩緒を見上げていた。
そうだよ、と詩緒がアイドル全開で視線を合わせて答えると、訝し気な目を向けられる。
子ども扱いしないでください、とぴしゃりと拒否され面を食らうと共にしょんぼりする詩緒。
「そ、そんなに落ち込まないでくださいよ。男性じゃないんですか?」
申し訳なさそうにして心の内を案じるような態度の女の子はきっと優しい心の持ち主なのだろうと察することができる。
詩緒は気を取り直して、その少女に笑顔を向けた。
「うん、男だよ。そう見られることって少ないけどね。ところであなたのお名前は?」
彼女は橘ありすと名乗った。
プロジェクトクローネの一員であることで有名な彼女だが、現在そのプロジェクトはキリが良く一時的に終了となっており、本日のステージでは他の小学生アイドルとパフォーマンスを行う予定だ。
美城プロ最年少のアイドルグループで一つのステージを盛り上げる役目を与えられていることで、その人気や実力も窺えるものである。
ありすは、唯一の男子がどんなものかと気になって話しかけてきたみたいだが、予想と違ってびっくりしたと話した。
男性とはもっとガサツで、不真面目で、とにかくあまり良くない印象を持っていたようだが、警戒していた自分が馬鹿らしくなるほどに詩緒のイメージは彼女の抱く男性像と180度違うものであったらしい。
詩緒はとりあえず悪印象を与えなくて良かったと思いつつ、背伸びしたがる彼女の頭をぽんぽんと撫でて、今日は一緒に頑張ろうね、と応援した。
ありすは相変わらずムッとした表情で、子ども扱いしないでください、と顔を赤らめながら彼の手を払う。
ありすが恥ずかしがっていることに詩緒は気が付いて謝るが、彼女はさっさとバスへ乗ってしまった。
最近の小学生は気難しいのかもしれない、と何処となく子供を見くびっていた自分を戒めながら、その後に続いて詩緒をじろじろ見ながらバスへ乗るちびっ子たちに手を振ると、可愛らしい笑顔で応えてくれる。
そんな女の子たちはアイドルとしての先輩、詩緒たちと変わらないような活動をしているのだろうと考えて、尊敬の念を抱くと同時に負けていられないな、と対抗心も燃やすことになった。
それから詩緒もバスに乗って、先に乗っていたりあむの隣に断りを入れてから座席へ腰を下ろした。
出発するまでの間にりあむと話しながら待っていると、真奈美とあいもバスに乗ってきて詩緒に声をかける。
「やあ、ウタ。今日は頑張ろうね」
「おはよう。ウタのステージは初めて見るから期待しているよ」
「あいさん、真奈美さん! よろしくお願いします! 僕も二人のステージ見られるの楽しみです」
憧れのあいと真奈美に声をかけられてテンションが上がる。
彼女たちと話しているのを見た他の大人たちが、次第に詩緒に声をかけてくる。おそらくは物珍しさからくるものでもあり、詩緒の雰囲気がそうさせているのかもしれない。
他のアイドルとの交流により多くの刺激を受け、フェスへ向かうバスが出発する頃には、詩緒はしっかりとアイドルの表情になっており、自分ではそのことに気が付かないのだった。
今後の展開や文章をどうしようか無限に悩むので、逆に難しいですが、次回もよろしくお願いいたします。