「はーも遊びたいー!」
合宿二日目でようやく合流した久川颯は、到着するなり早々に駄々をこねていた。
今や飛ぶ鳥を落とす勢いの颯も、合宿へ参加するためのスケジュールを確保していたはずだったのだが、急遽先方の仕事の日程がずれ込んでしまい、お世話になっている番組プロデューサーだったため、神保もやっぱりやめますとは言いづらく、颯と凪を説得して何とか出演してもらうことに成功した。
仕事に対して手を抜かない颯はほぼ完璧とも言える立ち回りで番組を盛り上げたのだが、それとは別に不満は十分に溜まっていたらしく、口を開けば愚痴を漏らしていたのだった。
ただ愚痴とは言っても先のような、海で遊びたい! という主張ばかりで歳相応の可愛らしさが溢れていたのだった。
一方で、姉である凪は自身の感情や思考をさらけ出すことはなく颯の様子を眺めて静観を極めていた。
同じように合宿への参加が遅れたにも関わらず、愚痴の一つもないのはある意味神保を不安にさせたが、そもそも颯と凪のスケジュールの埋まり方に大きな差があるので、凪自身にそこまでの不満は無いのだった。
「明日また時間取ってくれるみたいだから、海行こうね」
レッスンのために部屋を移動しながら我が儘を言う颯を宥めるのは詩緒で、久川姉妹のために明日の午後から時間を作ってもらえるように取り計らったのも彼である。
☆ ☆ ☆
昨日の海での様子を二人に写真付きで報告したところ、颯から羨むようなメッセージが無数に飛んできて、さすがに可哀想だと思ったのか、その日の夜、トレーナーの聖とプロデューサーの神保に直談判に行ったのである。
ダメ元で交渉を行ったが神保はあっさりと了承し、その場にいた今回合宿の専属トレーナーである聖が怪訝な顔をしていたのが詩緒の脳裏に強く焼き付いた。
実のところ神保は会社に多く貢献している多忙なメンバーへの労いを考えていて、どのようにすれば経費で旅費を落とせるのか検討した結果、合宿という名目を使用することにしたと打ち明けた。
詩緒からすればプロデューサー自ら、アイドルの労いになるよう旅行計画を立ててくれたことに感謝したが、巻き込まれたらしいトレーナーの聖からしたら寝耳に水といった様子で、その後眉間に指を当てて俯いていた。
「そしたら何だ、神保プロデューサー、私は彼らの休暇中の留守番を任されるために呼ばれたのか?」
少し怒気を孕んだ口調で、神保を問い詰める聖。
彼女がレッスン中、指導のために発する厳しめの口調とはまた異なる声色に、彼女に尊敬の念を抱いている詩緒もサッと顔を青白くして、脈拍が多少早まる程度にはビビッていた。
「い、いえ、違いますって! ミーティアメンバーのレッスンをしていただけるなら聖さんしかいないって考えていましたし、契約してるトレーナーさんの中でも一番お世話になってるので羽を伸ばしていただければと思いまして、はい、ええ……」
さしものプロデューサーも切れ長の鋭い目つきで睨んでくる美人にあたふたと狼狽えて、早口で言い訳を並べていた。
「なら事前に、私に話すべきじゃないか?」
それはプロデューサーさんが悪いよ、と正論で説教を受ける神保に目をやる。
じんわりと神保の額に汗が滲んでいるのを見て、上司が怒られているという事実に詩緒は居たたまれなくなってくる。
「聖さん、ごめんなさい」
助け舟のつもりではなかったが、自分がきっかけでここまで責められる神保が気の毒で仕方がないうえに罪悪感も肥大化していって、詩緒が神保の隣に正座して頭を下げた。
聖は一瞬驚いたが、詩緒が謝るようなことではなかったし、彼女自身も間接的に詩緒を責めるような言い方をしてしまったことを反省した。
大人で責任者であるプロデューサーを叱るのはまだしも、未成年で仲間想いで交渉しに来た優しいアイドルに説教するのは違う。
正直に言ってしまえば、聖は詩緒に対してそれなりの情を抱いており、それは新人の頃からの頑張りを見ていれば当然ともいえることで、神保との扱いに大きな差が出てしまうのも仕方がないし、それを本人も自覚している。
「いや、今回は事前に伝えていなかった神保に非があるから君は悪くないよ」
ぽんぽんと詩緒の頭を撫でる聖。口調も柔らかく、向ける表情は慈愛を含んだ微笑みだ。
時雨よりも一回り年上の姉がいたらこんな感じなのだろうか、と考えてしまい何となく照れ臭いが、安心できる。
「聖さんも一緒に遊んでくれたら、はーちゃんもなーちゃんも喜んでくれると思います。それに僕も、その、嬉しいです」
素直な気持ちをぶつけてみると、聖はきょとんとしたような顔をしていた。
今日みたいに色んな表情を見せてくれる聖は珍しいなと詩緒は思ったが、神保からしたら呆然とするくらいの衝撃で、改めて彼女から様々な表情を引き出す詩緒に畏怖と尊敬の念を抱く。
あの時彼をスカウトしておいて本当に良かったと思う神保だった。
一方で聖としても詩緒に対して愛おしい気持ちが芽生えており、呆気にとられた表情はみるみるうちに甥っ子を見るようなものへと変わる。
危うく抱きしめるところであったが、邪心を振り払うようわずかに瞑目した。
「水上、ありがとう。私も、君の気持ちが十分嬉しいよ。私が邪魔にならないのであれば、君たちの休暇に同行させてほしい」
「全然! 邪魔だなんて、とんでもないです! 一緒に行きましょう!」
にこにこと笑顔になる詩緒を見て、トレーナー業務以外でも必要とされていることもあるのだなと悪くない気分になった。
☆ ☆ ☆
そういう経緯があったことを特に颯には伝えずに、三日目の午後にちゃんと自由時間が用意されていることを伝えると颯は、やったー! とその決定に諸手を挙げた。
「プロデューサーがせっかく海に来たのに遊ばないで帰るのは勿体ないし、合宿ではあるけど休暇としても過ごしてほしいから聖さんにも許可取ってくれたみたい」
「あ、そうなんだー」
神保が怒られたという情けないエピソードを語るのは憚られたので、あえて伏せることで神保が粋な計らいをしてくれたように説明したものの、当の颯は感謝もなく一言で済ませてしまい、まるで興味がない様子だった。
この場にいない神保を詩緒は気の毒に思いながらもレッスンへのやる気を回復させた颯を見て、ホッと胸を撫で下ろす。
「凪もやる気が満ちてきました。遠泳の準備運動と洒落込みましょう」
レッスンで使用する部屋まで、凪、詩緒、颯が横並びで歩いている最中、凪がむんっと気合を入れる。
海に行くのは明日だし遠泳は危険で疲れるだろうし、相変わらず冗談を言っているなぁとテンションの変わらない彼女にある種尊敬の念を抱く。
「弱冠十四歳のアイドルにして数々の苦難を乗り越え最終的にトライアスロンを制覇する……。今、そんなサクセスストーリーが降りてきています。そしてその主人公の凪をじろじろ見てどうしました?」
クロールのジェスチャーをしながら考えていたらしい妄想をつらつらと述べていたが、詩緒のニコニコとした眼差しを受けて息継ぎのモーションと共に彼に振り返って尋ねる。
なーちゃんが主人公なんだ!? と詩緒は笑いながら驚いていて、凪としても彼のようなリアクションは嫌いではない。
「いつも通りのなーちゃんで安心するよ」
「まるで実家のような安心感でしょう。これからは私を実家と思ってもらってもいいですよ?」
どういうことかよくわからなかった詩緒は小首を傾げて愛想笑いを浮かべるだけで、颯もまた変なことを言っているな、と目を細めて彼女を見る。
凪は、不味っちまったようだと内心で嘯いて現状を投げっぱなしにして次へと進むので、必然的にフォローへと回る颯の話術も鍛えられているのだった。
「いやいや、ウタちゃん全然ピンと来てないじゃん! なーがウタちゃんの実家になるなんて荷が重過ぎるよ!」
もっと砕けて言えばツッコミが上手くなっていた。
二人に挟まれながらそのやり取りを聞いている詩緒は、心底楽しそうな表情で、くすくすと笑い続けていた。
☆ ☆ ☆
合宿三日目は待ちに待った自由時間であったが、午前中のレッスンで疲労を溜め込み、温泉でさっぱり汗を流した後、昼食を終えれば不思議なことに睡眠を司る悪魔がまるで暖簾をくぐるように、やってるー? と顔を覗かせてきた。
ちとせやりあむに加えて、珍しいことにあきらもすっかり睡魔を受け入れて部屋に敷かれた布団へと倒れこむと、ものの数秒で眠りに就く。
「おーい、野比! ……のびのびと寝ておられる」
一緒に部屋へ戻った凪が一瞬で眠る三人を見て思わず昼寝オリンピックでも開催されたのかしらと訝しむほどには驚くべき早業だったと言える。
今日は午後から自由ということもありトレーナーの聖のレッスンもやや厳しめだったように感じるが、なるほど初日から参加しているからか疲労もそれは溜まりますわと凪は納得した。
それにしてもあかりや詩緒は規格外に元気であるな、と凪はこの時驚かされたが、実のところ原因は同部屋の彼女たちが少し遅い時間まで恋愛話に花を咲かせていたことであり、別の部屋で寝ていたあかりや詩緒は十分な睡眠時間を確保していたため、彼らの体力に差があったのだ。
しばらく観察した凪は起こすのも忍びないので、さっさと用意して海へと向かうことにする。
準備中に千夜が部屋へと入ってきたので凪は、一緒に行きますか? と念のため誘っては見たが、案の定ちとせが部屋で寝ているので断られる。
「では千夜さん、皆さんのお守りをお願いしますね」
「凪さん、私はお守りとまでは思ってませんが……」
千夜の言葉を待たずに凪は、行ってきまーす、と言ってから部屋を後にする。
最後まで聞いていない様子の彼女に千夜は言葉を切った。
勝手な人だと思いながらも、行ってらっしゃいませ、とドアの向こうへ消えて聞こえないだろうけど呟いた。
☆ ☆ ☆
「海だー!!」
砂浜へ着くなり走り出して海へ特攻するほど、はしゃいでいるのは久川颯だ。
その後ろをこれまた走って付いて行くのは凪とあかりで、さらに後方から見守るのは詩緒と、彼がダメもとで誘ってみたところ快く付き添ってくれたトレーナーの聖である。
彼女は燦燦と照り付ける日差しに思わず目を閉じ、まるでサンバイザーのように自分の手を額にかざす。
バレ防止と言って似合わないサングラスを掛けていたのに、海を見るや否や詩緒に掛けていたそれを預けて走っていく颯たちをため息交じりに見送った聖は、シートとパラソルの設置を行っていた。
「僕も手伝いますね」
さて、と気合を入れる所でもないが気持ちを切り替えて設置に取り掛かろうとした聖を、詩緒が覗き込むように見上げながらそう気遣った。
「あ、ああ、助かるよ」
ゲレンデマジックとはよく言ったもので、ゲレンデではないが様々な場所によって普段感じる魅力とはまた違った魅力を惹き出すこともあるのだな、と聖は思ったゆえに動揺が声からわずかに漏れた。
普段通りと言えば彼女にとっての詩緒はレッスンを頑張る優しい性格の可愛い男子というい印象であったが、現在、海にいる彼が男性とは頭でわかっていても信じ難いもので、輝く海と陽の光という日常とはかけ離れた背景に、初めて見る新調した水着姿がいつもの数段可愛らしく見える。
基本的に彼とはレッスンくらいの接点しかないものだから、時と場合が違うだけでドキドキさせられるとは聖も思ってみなかったようだ。
悶々とする気持ちが普段彼女に考えさせないようなことを考えさせる。
さすがに十も歳の離れた男子と結婚してもいいだなんて傲慢にも過ぎる、そもそも私が彼に迫ろうものなら犯罪だろう、と自分を律してパラソルの設置を無心で行った。
「聖さん、ご迷惑じゃありませんでしたか?」
皆が戻って来られるようなスペースを作り終えて一息ついていると、詩緒が不意に聖へ問いかけた。
「ん? 別に迷惑などと思っていないが、どうした?」
「いえ、お疲れだったら無理してお誘いして悪いなと思ってしまって……」
変なところに気を回す子供だと思った。
ただ彼の嫌われたくないという思いが伝わってきて、複雑な気持ちになったのは確かである。嫌うわけがないのに、と少しばかりの苛立たしさが腹の底を撫でた。
「君はたまにおかしなことを言い出す。もしそうだとしたら断っているだろう。それに誘われた時は驚いたが、まあ、悪い気もしなかったよ」
つっけんどんな態度になってしまったが聖の言葉は本心であり、またしても見せない表情を詩緒に見せていることに、二人とも気付かずにいる。
すでに遠目に見える位置の颯たちが波から逃げたり、追いかけたりする様子を眺めていると、周囲の人目を引いていることがはっきりと見て取れる。
それもそのはずで、昨日もテレビに出ていたような人気アイドルが海で無邪気に遊んでいるのだから、通りかかる人だって二度も三度も、いや何度でも彼女たちを見るだろう。
昨日の自分もあんな感じだったのだろうか、と自惚れか謙遜かわからない自己評価を詩緒はする。
そのうち声を掛けられそうだなと思った瞬間、別に振り絞らなくていい勇気を持って彼女たちに声を掛けた女性がいて、それを皮切りにあっという間に人が集まってしまった。
詩緒は苦笑して隣に座る聖を見やると、彼女は盛大に溜息を吐いて面倒くさそうに立ち上がった。
「神保プロデューサーに彼女たちのボディガード代でも請求するとしよう」
「あ、プロデューサーさんに連絡しておきます」
聖は渋々と海辺で不自然に群がっている集団へ近寄り、その中心にいる人物を庇うようにして立ち、事情を説明していた。
しばらくすると集団を形成していた人々は残念そうに、それでも納得した様子で散り散りになったため、詩緒は丸く収まって良かったと胸を撫で下ろす。
聖と彼女に甘えるように抱き着く颯、凪、あかりが微笑ましい。
聖は暑苦しそうな表情をしていたが、不安そうだったアイドル達の肩や髪をぽんぽんと撫でており、面倒見の良いお姉さんな一面が見える。
遠巻きに眺めていた詩緒は、月並みにも画になるものだと感じたのだった。
☆ ☆ ☆
十分に遊び終えた詩緒、颯、凪、あかりの四人は聖と共に旅館の部屋へと戻った。
足元しか濡らさなかったため、脚をタオルで拭き、水着の上から一枚羽織る程度でしっかりと着替えてない状態だった。
ちなみにこの旅館に泊まる人は大体が水着を中に着てから海へと行くので、水着姿で戻ったとして然程目立つこともない。目立つとするならば彼女たちが飛び切りの美少女かつ芸能人だからだろう。
詩緒は自分の荷物を置いた部屋で着替えを持つと、すぐに温泉へと向かった。
夏の暑さに晒されて汗をかかない程、代謝は悪くない。
「はーたちも行こう!」
少しだけ顔を日焼けさせた颯はどこにそんな元気があるのかというほど活発であったが、凪やあかりも特に疲れている様子ない。
「僕、プロデューサーさん誘って行ってくるね」
詩緒がしれっとそう言って出ていく。
三人は一瞬、え? と困惑したが、神保がいる方が安心だろうと考え直した。
部屋を出た詩緒が、ついでとばかりに隣の部屋の様子を確認しに行くとさすがにちとせや千夜、りあむ、あきらの四人は起きており、テレビを付けながら――あきらはスマホを操作しながら――談笑しているようだ。
詩緒がノックした後、ドアを開けたことで室内が一瞬静寂に包まれる。
「あ、ウタちゃんだぁ。水着姿、うぇへへ……」
まずりあむが彼を認識してへにゃりと表情を綻ばせ、変な笑い声を出す。心なしかぴょこりと出ている一束の髪の毛も、へにゃへにゃしているように見えた。
「おかえりー」
ちとせやあきらもニコリと笑って迎える。
潮の香りを漂わせる詩緒が洗体セットを抱えていたので温泉にでも行くのだろうと容易に想像できた。
「皆さんも来ればよかったのに」
いつもと変わらない笑顔の詩緒だが、少しだけ残念そうにも見えた。
本当に一緒に遊びたかったという思いが伝わって、部屋で残っていた四人も悪い気はしない。
「今度は海じゃなくても遊びに行きましょうね!」
何しに来たのだろうか、と思うほど慌ただしくやって来て、出て行った詩緒を見送る。
四人は適当に、行ってらっしゃい、と声を掛けて彼の水着姿に話題を移すのだった。
☆ ☆ ☆
さらに隣の部屋は、聖や女性スタッフの部屋らしく、広々と利用できているようだった。
詩緒がノックしてからドアを開けた時に、やはり注目されて見知らぬことはないが、合宿で初めて会う女性スタッフ二人の視線を浴びる。
「あ、こんばんは」
プロデューサーさんの部屋と間違えた、と思ったが目が合えば粗相をするわけにはいかないと思い、ぺこりとお辞儀をして少し会話を試みる。
女性二人は顔を見合わせてから詩緒に向き直り、お疲れ様です、と返事をする。
一言二言、言葉を交わしてそそくさと部屋を出るが、存外スタッフの株が上がったことに詩緒は気付かなかった。
「びっくりした……」
扉を閉めた後に独り言を呟いて、気を取り直して隣の部屋をノックする。
聞き慣れない返事が耳に入り、またやっちゃった……と反省する。
「あれ、ウタちゃんどうしたの?」
向こうからドアが開かれて番組カメラマンの男性が姿を見せる。
詩緒が水着を着ていたままだったことが
適当にはぐらかしても良かったが、変に嘘を吐くのも
「あの、神保さんを温泉に誘おうと思ったんですけど、いますか?」
詩緒が言うと、カメラマンは少しだけ訝しむような表情をした。
その表情は詩緒の前で見せたものの、彼へ向けられたものではないが、すぐに爽やかな笑顔に戻った。
「神保Pはさっき電話してたみたいだったけど、呼んでこようか?」
「ありがとうございます。そしたら神保さんに伝えていただけますか? ……あの、あと、よければ皆さんもご一緒にどうでしょうか?」
男性スタッフは詩緒の最初のお願いには快く承諾したが、二つ目の提案を聞いたときには思わず、え、と声が出て硬直してしまった。
詩緒からすれば、せっかくなので男性同士でコミュニケーションでも取ってみよう、という考えであり、何ともないスキンシップのつもりであるが、慣れない人間にとっては少女から一緒にお風呂に入りませんか? と尋ねられているようで、困惑を隠すことができない。
「……あー、とりあえず、聞いてみるね」
ぜひ一緒に入ろう、という言葉が喉元まで出かかったが何とか押さえ込んで、スタッフは返事を遅らせることを選んだ。
まずは詩緒の提案について神保に確認して、番組Pにも確認して、あわよくば温泉での風景を映像に納めて……と思考を巡らせているが、詩緒は小首を傾げており気が付いていない様子だ。
詩緒を男性であると頭では分かっていても実際に水着姿を見てしまうとその正常な思考もブレてくる。
スタッフは部屋の奥に行くと神保や番組Pに話を通しているみたいで、その後詩緒に向けてオーケーサインを出したため、男性の関係者全員で温泉に入ることになったようだ。
詩緒は半分社交辞令のつもりだったので忙しそうな大人たちが承諾したのに少し驚いたが、断られるよりかは幾らか嬉しく、彼らが準備をしてくるまでしばらく待つことにした。
数分後、神保を含めて四人の男性が部屋から出てくる。
ちなみにスタッフたちは詩緒とのせっかくのチャンスのため、何か良い映像が撮れないかと神保に相談したが、おそらく詩緒が好意で誘ってくれていることを考慮し、仕事抜きで普通に温泉を楽しみましょうと説得していたためプライベートモードだった。
お風呂場では、詩緒の様子にドキドキしたりもするスタッフたちだったが、彼との会話を楽しみ、特に気兼ねなく過ごせたようで詩緒もホッと安堵する。
彼らは温泉から上がり仲を深めたものの、全員で部屋へ戻っている様子を他のメンバーや女性スタッフに目撃され、神保と男性スタッフは合宿最終日まで女性陣から白い目で見られ、詩緒に近付けないように監視されたのであった。
おそらく次回で最終回になりそうです。
早めに投稿できるように頑張ります。