全てのリハーサルを終えた頃には日が傾き始めており、長丁場のイベントも明日の本番を迎えるのみとなっていた。
ステージの最初に一仕事を終え、後のほとんどの時間をお客さんとして過ごしていた詩緒たちは、イベント最後の演者全員による幕引きをしたことで、リハーサルの最終工程を完全に終わらせた。
詩緒の場合、衣装替えは男性更衣室でスタッフに手伝ってもらいながら行ったのだが、体格のしっかりした長身揃いの男性芸能人に紛れて、華奢な自分が混ざっていることが、慣れているとはいえ少し居心地が悪かったようだ。
早く着替え、そそくさと去ろうとした詩緒だったが、冬馬を見かけたので挨拶をしておこうと思い、踵を返した。
「冬馬さん、お疲れ様です!」
微笑む詩緒は、男性アイドルの中ではまるで紅一点のような華やかさがあり、周囲の共演者は眩しい光を見たかのように目を伏せる。
「おう、お疲れさん。詩緒たちのステージ、カッコ良かったぜ。俺たちも負けてられねーな」
憧れのアイドルからの賛辞を受けて詩緒は少し驚くが、すぐに照れ笑いへと変えながらお礼を言った。
しばらくお互いのステージの感想を言い合ったり、褒め合ったり、改善点を出し合ったりしながら、詩緒を前にして気にせず着替える。
冬馬が上半身の衣装を脱いだ時、その肉体美に詩緒は目を輝かせて釘付けとなった。
「冬馬さん、すごいですね! こんなに綺麗に腹筋って割れるんですか? シックスパックって言うんですよね」
少し遠慮がちに、触ってもいいですか? と詩緒が尋ねる。
冬馬はやや困惑し、どうすべきかと一瞬悩んだが、友人に対して断るようなことでもなく、詩緒の目があまりにも無邪気に輝いていたものだから、つい許してしまうのだ。
傍から見て彼に触られること自体に問題は無いはずだが、詩緒の容姿を鑑みればいかがわしいことをしているようにも見えて、ある意味で問題的な絵面である。それに冬馬の心持としても彼を少なからず意識してしまうので、内心では別の事を考えて煩悩を鎮めようと必死だった。
そんな中、当の詩緒はというと、冬馬のシックスパックの凹凸を指で撫でたり、筋肉の硬さを確かめたりしながら、感心するように息を吐く。
普段は女の園である美城プロダクションに所属し仕事をこなしている詩緒は、男子同士でトレーニングの成果を確認するなど、男性ならではのスキンシップに対して強い憧れを持っているようで、遠慮無しに悶々とする友人の肌にペタペタと触れる。
「なあ、そろそろいいか?」
男の子とはいえ見た目美少女のアイドルに身体をまさぐられるという絵面は大変危険であり、やましい連想をさせてしまう。
その状況を他の出演者やスタッフが生唾を飲んで見守っており、冬馬は慌てて詩緒のスキンシップを中断させるように声を掛けた。
詩緒は自分ばかり触って迷惑をかけてしまったと感じたようで、ごめんなさい! と謝る。少しバツが悪そうに冬馬を見上げるが、やはり逞しく鍛えられた肉体に興味があるのか、詩緒の視線は冬馬の瞳や腕、お腹あたりを行ったり来たりしていた。
しばらくすると何かに気が付いたようにハッとした詩緒は、自分の着ているシャツをおもむろに捲り上げた。
「僕ばかり触っちゃって不公平ですよね。僕のも触ってください。腹筋どうですか? これでも結構トレーニングしてる方なんですよ? 力入れたらちょっとだけ割れてるように見えますか?」
そう言いながらぎゅっとお腹に力を入れているのか、口を引き結んでぷるぷると震えているが、ただ単に瘦せ細っているわけではなく、見た感じは引き締まっており、非常に健康的で美しい肉体をしていると思わせるものの、彼自身の理想とするものとは大分かけ離れているだろうということが窺えた。
冬馬が言葉に窮したのは、褒めようとして何か発言をしても悉くセクハラになるのではないかという懸念と、感想が『可愛い』しか出てこないため詩緒の求める回答とはずれていると考えたためである。
冬馬は嘘を付くのがあまり得意ではないため、何を言うか思案しながらも詩緒の腹部を軽く押すと彼の口から、あっ、と甘い吐息が漏れた。
冬馬はビクッとして慌てて手を引っ込める。詩緒の様子を見ると、恥ずかしく感じているのか、手で口を押さえており、捲っていたシャツもするりと元の着られた状態へと戻る。
「人に直接お腹触られるのってちょっとくすぐったいんですね……」
そう言ってはにかみつつも苦笑している詩緒は本日二度目の赤面タイムを迎えた。
階段から落ちかけて咲耶に抱えてもらった時と比べたらまだまだ余裕はありそうに見えたが、実際にそんなことはなく、詩緒はすぐに挨拶をするとその場を後にした。
そんな詩緒の華奢で小さな背中を、動揺しているのか、放心しているのか自分でも分からない状態の冬馬が見送る。
スタッフにぶつかりそうになってぺこぺこと頭を下げる詩緒が印象的で、その映像が記憶の中で何度も再生されるのだった。
☆ ☆ ☆
「ウタチャン、ちょっと変じゃない?」
あきらにそう言われて、詩緒は初めて自分が平常心ではないことを自覚した。
彼女に心の内を探るように見つめられると、詩緒はしどろもどろになり、あちこちへと目を泳がせていたので、メンバーからの疑惑の念が強まった。
「ウタちゃんが珍しく動揺してる? 妙だな……。犯人はこの会場の中にいる。その犯人とは甘党ですね? ほら、ウタちゃん、吐いた方が楽ですよ。胃の中空っぽにして一緒にカツ丼食べましょう」
「いや、吐いた後は何も食べたくないんご……」
「いやいや、アイドルらしからぬ会話だよ!?」
何を想像したのか、あかりはげんなりとして口とお腹を手で押さえ、それを見た颯がギョッとしながら汚い話に慌てて蓋をする。
会話を聞いていたりあむも、あかりと同じく青褪めたが、男子更衣室から帰ってきた詩緒の様子がおかしいことに一抹の不安を覚える。
「ウタちゃん、どうしたの? 嫌なことあった? りあむちゃんに話してごらん? 天ヶ崎でしょ? 天ヶ崎のせいでしょ? りあむちゃんが守ってあげるからね?」
勘違いナイト気取りのりあむが、ここぞとばかりに年長であることを鼻に掛けてお姉さん面をしていたが、守ってあげると嘯いている彼女の下心が透けて見えており、傍から見ていたあきらや千夜は軽く引いていた。
「ありがとう、りあむさん。でも天ヶ崎じゃなくて天ヶ瀬ですから、本人の前では間違えないようにしてくださいね。失礼になっちゃいますからね。それと冬馬さんとは別に何も無いです」
やんわりと注意され、先程まで気の大きかったりあむは、みるみるうちにちんまりとしていくようで、普段の身長よりも小さくなったように錯覚させられる。
彼女に嫌な想いをさせてしまったと詩緒は一瞬焦ったが、りあむさんみたいな素敵なお姉さんに守ってもらえるの嬉しいな、と歯の浮くようなセリフではあるもののそれなりに本心から出た言葉を口にすると、簡単にりあむの機嫌が直ったのでホッと胸を撫で下ろした。
聞いていたメンバーは、ちょろすぎる……と思っていたが、りあむと詩緒の様子を見ているちとせとしてはそのやり取りが羨ましく、楽しくなくなっていくのが顔に表れ始めている。
お姉さんと呼ばれているのが特に羨ましいし、だらしないりあむの表情がちとせを少しだけ苛立たせた。
一連の会話の中で詩緒の様子が変だったという話題を上手く誤魔化せたようで、彼は男子更衣室での出来事を詳細に語るどころか、無かったことのように話題を移していた。
すでにリハーサルを終えたメンバーは、神保プロデューサーが車で送迎してくれるということなので、しばらく話し込みながら待っていると、またしても詩緒を呼ぶ声が聞こえてきた。
ウタちゃーん! と良く通る声が聞こえる方へメンバー全員が振り向くと、ステージに立つ前に詩緒と階段でぶつかりそうになった双子の大崎姉妹と、彼を支えた長身の咲耶がこちらへと訪ねてきたようだ。
「リハ前はごめんね! 甘奈、ちゃんと謝れてなかったから……」
申し訳なさそうに詩緒に謝る甘奈から滲み出る雰囲気を言葉にするとしたら、感じが良い、根明、陽気といった、まさにポジティブが服を着て歩いているような人柄である。
「甜花からも、ごめんなさい……! でも、なーちゃんもちゃんと、反省してるから……嫌いにならないでもらえると、嬉しいなって……」
甘奈の少し後ろからおずおずと、双子の姉である甜花も一緒に謝り、甘奈の負担を少しでも請け負おうとしていた。
「いいえ、凪は反省してません。反省してないですけど、凪の事を嫌いにならないでください。代わりにウタちゃんのことは嫌いになってもいいですよ」
不意に割り込んできたのは凪で、颯からは『なー』呼び、詩緒からは『なーちゃん』呼びのため、甘奈が甜花に呼ばれる『なーちゃん』というあだ名に反応してすかさず登場したのだ。
ここぞとばかりのタイミングに、ドヤ顔まで決めているところを見ると本人的には『なーちゃん』と呼ばれて出てこれたのが大変満足な様子である。
「双子のなーちゃんのことじゃないよ! ……あれ? 甘奈さんも双子だし、なーちゃんも双子で……というか僕のこと嫌いになってもいいって何!? 今日は当たり強くない、なーちゃん? ……あ、違います! 甘奈さんじゃなくて!」
りあむが言われたら病みそうなことを何故か凪に言われて、慌てた詩緒は支離滅裂な言動になってしまう。
あたふたしている詩緒が珍しいのか大崎姉妹と咲耶は目を丸くしていたが、彼の素が垣間見えたようで得をした気分になる。
「ウタちゃん、大丈夫だから落ち着いて! そう言えば凪ちゃんも『なーちゃん』って呼ばれてるんだね。甘奈と一緒だ」
そんな彼を笑顔で宥める甘奈は、プロジェクトミーティアのメンバーと仲良くなれるチャンスと思い、距離を縮めて話を続ける。
そんな彼女に引っ張られるように、普段は引っ込み思案な甜花も詩緒にそっと近づいたが、少しだけ物理的な距離を短くしたのみで、そこから先へ踏み出すことを躊躇している様子だった。
詩緒は、どことなくそわそわしている甜花が気になり、大丈夫だろうかと思いながら歩み寄る。
「甜花さん、大丈夫ですか? 僕たちの空気感にあんまり慣れなくて居心地悪いですよね」
急に話しかけられたからか、肩をびくりと震わせて反射的に甘奈の背に隠れるが、詩緒は構わずに甘奈の背後を覗き、めげずに話しかける。
「僕が言うのも変かもしれないですけど、みんな癖強いんですよ。特になーちゃんとか、りあむさんとか、なーちゃんとか、なーちゃんとか!」
知り合ったばかりなのにぐいぐいと来る詩緒に口をわなわなと震わせて、詩緒への感謝の気持ちが沸き上がりつつも、人見知り特有のどう接していいか分からない不安や、彼を前にして昂る気持ちやらが渋滞して複雑な表情になっていた。
「ウタちゃんもなかなか言いますね。根に持つタイプでしたか。恨みを買っているなこれは。今ならりあむさんに安値で売りますよ」
「え、ぼく? いらないけど……。それにりあむちゃんってあんまり打たれ強くないのよね。それにウタちゃんにハードル上げられたらやむしかないんだよね」
商人と化した凪は詩緒の心を売り捌こうとしていたが、どうやら買い手どころかお取り扱いすらないようだ。
そして詩緒にさらりと癖強い認定されていたりあむは、自分の事を常識人と思っていたのか、しっとりと落ち着いた様子を見せつつ病んでいた。
「恨みなんかないよ! りあむさんも病んじゃダメです! 二人とも付き合いも長くて、あんまり気を遣わなくっていいから、ちょっと甘えちゃったかもしれません……」
一度甜花から離れ、照れ臭そうに言った詩緒の言葉でりあむのやみメーターがぐんぐんと下がる。
凪も最初から冗談を言っており、詩緒もそのことには気付いていたので彼女のノリに合わせており、詩緒の本心がちらりと見えたところで冗談を言い合うのをやめて、三人で子供のようにはしゃいでいた。
他のメンバーも詩緒、凪、りあむが仲良くしている光景が微笑ましく、尊い友情と表現すると同時にメンバー内でも一段と癖が強いため、プロジェクトミーティアの三馬鹿だと勝手に思っている。
ちなみに口裏を合わせて三馬鹿と呼んでいる訳ではなく、詩緒、凪、りあむ以外のメンバー全員が内心で命名しており、メンバー全員、自分以外が三馬鹿という愛称を付けて呼んでいるとは考えていなかった。
詩緒たちの名誉にも関わるからか他のメンバーは口には出さず、彼らはそんなチーム名を付けられているなどと思いもよらない。
それを傍から見ていた283プロの面々は、三人の阿保らしいやり取りと、それを生温かい目で見るメンバーが客観的に視界に映り、改めて良いユニットだと直感のように感じ取った。
しばらくして詩緒は再び大崎姉妹の元へと近寄り、衣装やステージの演出など、三人の持つであろう共通の話題に花を咲かせる。
甜花は甘奈が緩衝材になることですぐに詩緒と打ち解けていき、徐々に積極的に話も出来るようになっていた。会話が弾み、時折笑顔さえ見せるようになった甜花に、甘奈が目を丸くする。
引っ込み思案の甜花がこんなにも早く異性に心を開き始めており、やはり水上詩緒のコミュニケーション能力がいかに高いか、甘奈は甜花を通して体験していたが、甜花が慣れていく様子を見れば見るほど、目の前にいる人気アイドルが男性であるということを余計に信じられなくなっていった。
しかしながら、咲耶が詩緒へ挨拶をした瞬間から雰囲気ががらりと変わってしまうのをその場にいる誰もが実感することとなる。
「水上さん、お疲れ様」
先程までミーティアの他のメンバーに挨拶をしていた咲耶は、最後に詩緒へ挨拶をしにやって来たのだが、詩緒が彼女の存在を認識した途端に会話がピタリとやんだ。
「……おつかれさまです」
ぼそぼそと咲耶に聞こえるか聞こえないかくらいの声量となり、彼女から顔を逸らしていた。
顔を赤くして照れている様子なのは分かるが、天国から地獄のようなテンションの変化については、今までにそんな反応を見せたことがないためメンバー全員が目を見張った。
嫌われているのだろうか、と少し気に病む咲耶であったが、初めて会った時の件で彼に怪我がないか改めて尋ねる。
「あれからどこか痛むところは無いかな?」
詩緒は首を小さく縦に振り、はい、と素っ気ない口調で返す。
「すまない、私が水上さんを不快にさせるようなことを言ってしまっただろうか?」
申し訳なさそうな声色で咲耶が聞いてくることに詩緒はハッとして、そんなことは全くないということを伝えようとするが、咲耶の顔を見ると動悸が激しくなって上手く話すことができなかった。
「ち、違います……。咲耶さんを見ると何故かすごくドキドキしちゃって、言葉が出てこないんです……」
詩緒の発言はまるで咲耶に告白するような誤解を周囲に与えており、彼の表情から察しても惚れているのではないかと思わせるには十分な要素を孕んでいた。
正直にそんなことを言われてしまった咲耶も次に出てくる言葉が見つからず黙ってしまい、周囲に微妙な空気が漂い始める。
気が気でなかったのは彼らだけではなく、ちとせやりあむはポカンと口を半開きにして放心していた。
アイドル活動を始めてから女性に対して赤面する詩緒が見られるのは非常にレアなケースではあるが、その相手が長身でスタイルも良いクール系のお姉さん風イケメン美女となれば、詩緒の憧れている人物像に合致しているためもしかしたら恋に落ちても仕方ないことなのではないかと納得してしまう。
「えぇ……。咲耶さん、詩緒くんに何したんですか?」
メンバー間では年長組であるちとせとりあむが機能停止しており、それを見かねた千夜が困惑しながらも咲耶に問う。そもそもりあむには期待していなかったが……。
千夜からの質問には甘奈が経緯を話し、最終的に咲耶と冬馬が詩緒を支えてくれたことまで伝えると、千夜と他のメンバーもその内容に得心した。
「階段から落ちそうになった時、咲耶さんに助けてもらったから、その時のドキドキを思い出しちゃって……」
少なくとも今日は治りそうにないかも、と詩緒は困った顔で答える。
どうやら咲耶を前にして動悸が激しくなり、しどろもどろになるのは、階段から落ちかけた時のことがフラッシュバックするからであり、咲耶というフィルターを通すことでその時の恐怖感が取り除かれ、純粋なドキドキのみが残ったという訳であった。
「なるほど。つまり吊り橋効果ってやつだね、多分。自分、身近で掛かってる人初めて見たかも。じゃあ咲耶サンに恋しちゃったって訳じゃないってことデスね」
あきらが言うように理屈が分かってしまえば恋心に発展することもなく、詩緒は咲耶に対してデバフを獲得しただけであり、ちとせはとにかくホッと安堵するのであった。
「とにかく、明日になったら治ってると思うので、咲耶さんに改めてお礼させてください」
詩緒は何とか荒ぶる鼓動を抑えつけながら咲耶の目を真っ直ぐ見上げて、明日の本番できっちりとお礼を伝えることを約束した。
「うん、わかった。じゃあまた明日会えるのを楽しみにしてるよ」
覚悟を決めた様子の詩緒へ咲耶は笑顔を携えて楽しみだと口にする。
二人が今までで一番長く目と目を合わせていると、やはりというか、詩緒は徐々に顔を赤くしていく。
その気恥ずかしさを我慢して無理に目を合わせてくれる詩緒が愛らしく、まるで愛玩動物を愛でたくなるような気持ちになった咲耶だったが、衝動をグッと堪えてその場を後にすることにした。
「バイバイ、ウタちゃん!」
「またね」
甘奈と甜花も手を振って咲耶と一緒に帰っていった。
残されたミーティアの面々は共演するアイドル達のポテンシャルに戦々恐々とするも、良い出会いだったと振り返る。
そしてちとせは警戒すべき人物として白瀬咲耶を記憶に刻むのであった。
☆ ☆ ☆
「お帰りー」
詩緒が帰って来るやいなや、出迎えたのは姉の時雨だ。
今日の実姉はどこか様子がおかしい、と実弟の詩緒は怪訝に思っていた。
メッセージでいつ帰ってくるのか尋ねてくるし、何やら詩緒を気遣うようなメッセージばかりが数件ほど送られてきていたため、何か裏があることは明白である。
たった今も媚びるような態度で近づいてくる時雨に軽く戦慄したが、玄関から踵を返して逃げ出すわけにもいかず、引き攣った表情で何かと尋ねる。
「ウタさぁ、出るじゃん? 運動会」
まどろっこしい言い方で絶妙なウザさを醸し出しており、早く言わないかなぁ、と詩緒の気持ちは急いてしまうが、うん、ととりあえず相槌を打っておく。
「お姉ちゃんも行きたいなぁ!」
普段は一人称『私』の時雨であるが、姉という立場を利用しようとする際は『お姉ちゃん』と称して詩緒への頼みを断りにくくさせようとしており、小賢しいというか、その卑怯さに詩緒の表情もやや曇った。
「うん、来れば?」
その一言だけ返事をして、そそくさと自室へ戻ろうとする詩緒だったが、時雨は身体を入れて必死にブロックした。
「待って待って! 話し終わってないから!」
「えー、なぁに? どうせ僕の伝手で席用意してほしいとか言うんでしょ?」
時雨はズバリと言い当てられ、図星を突かれました、とありえないほど綺麗な文字で顔に書かれていた。
目を泳がせて明らかに動揺しているのだが、言い当てられては真っ直ぐにお願いせざるを得ないということを悟ったのか、両手を合わせる。
「詩緒様、お願いします! どうか私と友達の分の席を用意していただけないでしょうか!」
様付けに敬語というありきたりな三下ムーブをかましながら頭を下げる。
「えぇー……何人?」
詩緒は姉の熱意に圧されて、渋々ながらも必要枚数をまず確認する。
「合わせて二人です!」
弟の嫌々ながらも席を用意してくれようとしている姿勢に、風向きは良さそうだと内心でほくそ笑む時雨だが、詩緒のどこか訝しむような視線で一瞥されると緊張感が走る。
「二人ね。チケット買えばよかったのに」
「それがね、お友達が外しちゃってさ。我が最愛の弟にお願いするのもちょーっとだけ憚られたんだけれどもね? どうしても私も弟の晴れ舞台を見たいと思ったし、友達の悲しむ姿を見ちゃったら何とかならないかと思ってさぁ」
ごちゃごちゃと言い訳がましく御託を並べている時雨を面倒に思い、途中で聞くのを止めて、すぐにプロデューサーへ連絡することにした。
履歴から選択し、携帯を耳に寄せると無機質なコール音が聞こえてきた。数コールで神保に通話が繋がり、安堵と同時に感謝と罪悪感も押し寄せた。
「もしもし、神保です。どうしたの?」
詩緒の番号が登録されているのか、着信の時点で彼から掛かっていると察した神保の一言目は普段の業務を見ている詩緒からしてもフランクなものである。
「もしもし、水上です。プロデューサーさん、夜分にすみません」
「いや、全然いいよ。夜分というかまだ十八時くらいだし」
声音は優しく、全く苦にしていない様子に胸を撫で下ろした。
「明日のイベントなんですけど、関係者席って空いてますか?」
「ちょっと待ってて、確認してみる……」
まだイベント会場にいるのか、恐らく責任者に直接話を聞くことが可能な位置にいるようだ。ざわざわとした喧騒が電話越しに聞こえており、神保は誰かと話をしているようだった。
待つこと一分程度が経った頃、もしもし、という神保の声が携帯端末から聞こえてきた。
「席空いてるみたい」
「本当ですか!? 良かったです!」
その吉報が影響するのは自分の事ではないにしろ、席に空きがあることを知ると嬉しくなってテンションも上がってしまう。
「それで、何席必要?」
詩緒の嬉しそうな声色が伝わったことで、神保の声も幾分か柔らかくなったのが分かるが、さすがに仕事中だけあって聞くべきポイントはしっかりと尋ねる神保。
「えーっと、ちょっと待ってください。……お姉ちゃん」
姉と友達で二席分が必要になることは分かっていたのだが、姉に念のため尋ねる。
「ん、何?」
詩緒の方をずっと窺っていた時雨は秒で返事をする。
「お母さんたち来るか聞いてみて?」
念のために尋ねたいことは両親の事で、家族分も用意できるならばと考えて時雨に確認させることにしたのだ。
「了解!」
ビシッと敬礼しながらリビングへと戻っていき、何回か会話のラリーが聞こえてきた後、時雨がリビングからひょこりと顔を出した。
「ウター、お母さんたち行きたいって!」
彼女からの報告を聞いてから、神保にもしもしと声を掛ける。
はい、と神保からの返事を受けて、確保してほしい席数を伝えた。
「プロデューサーさん、四席お願いします」
「おう、わかった」
すぐに答えてくれるプロデューサーに感謝していると、詩緒にはどこの部署か分からないが、関係者席を担当する部署と話をしている様子が電話越しに聞こえてきていた。
「あ、すみません、四席大丈夫ですよね? はい。ありがとうございます。……うちの水上です。水上詩緒。……今繋がってますよ。話しますか? ……まあ、そうですね。彼は大丈夫だと思いますけど。……いえ、男の子ですよ。……ああ、お子さんが……そうですか。本人も喜ぶと思います。……そうですね。いえ、快く引き受けてくれると思いますよ。……はい、では、失礼します」
どうやら話が弾んでいたようで、詩緒の名前が何回か出ていたことにそわそわしてしまう。
話しは付いたようで、もしもし、と再び神保から声が掛かり、詩緒もそれに応答する。
「座席は確保できたよ」
「ありがとうございます!」
会話の内容から問題ないだろうとは感じていたが、確定したことで肩の荷が下りる。
感謝の念は強くなり、目の前に神保はいないにも関わらず頭を下げてしまうほどだ。
「それで席の用意をしてくれる人のお子さんがウタのファンらしくて、代わりにサインいただけないかって……」
「もちろんです!」
先方からお願いされていた事について、少し言いづらそうな神保だったが、詩緒は二つ返事で、それも食い気味に了承する。
「ああ、ありがとう。勝手に引き受けちゃったから断られたらどうしようかと思った」
神保の安堵した声音が聞こえる。
せっかく席を予約してもらったのにそんな程度のお願いを無下にするはずない、と思った詩緒は狭量な人間と評価されたのではないかと少し複雑な気持ちになったが、神保がそのようなことを考えるわけがない。
「や、断るわけないじゃないですか。こちらこそありがとうございます」
故に詩緒もいつも通りの返事をする。
「とんでもない! 他に何かやっておいてほしいこととかある?」
他にも用件はないか気遣う神保に、詩緒は携帯を持っていない方の手を振る。
話す時に多少ジェスチャーが出てしまうのは詩緒のちょっとした癖である。
「いえ、もう十分過ぎます!」
「そうか。それじゃあ、明日はよろしくな」
神保の安心したような、少し寂しいような雰囲気が電話越しに伝わってくる。
「はい、よろしくお願いします! それでは、失礼します」
神保の心情に引っ張られるように、詩緒の声のトーンもわずかに下がってしまう。
「はーい、お疲れー」
まだ忙しいことは会場側の喧騒から明らかであったが、気負ったような態度を見せずに淡々と仕事をこなしているであろう神保をふと想うと、明日の本番へのモチベーションも上がってくるのであった。
「あのー、詩緒様、どうでしょうか?」
おずおずと尋ねてくるのは神保へ電話するきっかけを作った時雨だ。
舎弟のように下手から出ているものの、図々しくも頼みごとをした手前バツが悪そうに見えたのも束の間、腹の内では弟が人気アイドルでラッキーと小躍りしそうなほどの笑みへと変わった。
恐らく時雨は、詩緒の電話をしている様子から、明日のイベントの席を関係者席という名の特等席で拝めるだろうと十中八九確信していた。
「席取れたよー。多分、僕と一緒に行けば大丈夫なところ」
「詩緒様~!」
調子のいい姉だと呆れる詩緒であったが、まあ喜んでくれるならいいやと気にしないように努めたが、姉自身はチケットの抽選をしなかったのかふと気になってしまった。
そのため詩緒は、ところで、と前置きをする。
「お姉ちゃんもチケット外しちゃったの?」
確かに、様々な事務所のアイドルやアーティストが出演するイベントとなれば、ファンの層も広くなるため、当選倍率も高くなったのかもしれないと思案する。
しかし時雨はしばらく悩むように口元に手を当てて、うーん、とじっくり何かを考えていた。
「……実はそうなんだよね。チケット外しちゃってやむを得ずウタにお願いした次第なんだよね」
姉の証言が嘘だ、と詩緒は直感で悟るとすぐに時雨へと詰め寄った。
「本当は?」
水上姉弟はどちらも同程度の身長だが、詩緒の圧が時雨にかかる分、弟の方が幾らか大きそうに見える。
「や、やだなぁ……本当だよ。二人分抽選したけど当たらなかったんだって……」
明らかに目が泳いでいて、口はわなわなと震えている姿は誰がどう見ても動揺している姿だと答えるだろう。
「じゃあ、お姉ちゃんも抽選はしたってことでいいんだよね?」
瞳の奥に闇をじっと覗かせた詩緒の鋭い眼光が、姉の嘘を見抜いているのだと物語っている。
それは半ば確信に近い直感であったものの、時雨は観念したように肩を落とした。
「すみません。抽選してないです……」
何故虚言を見抜かれたのか、という考えにも至らないまま時雨は言い訳を止めて正直に謝ることで彼の留飲を下げようと試みたが、そう上手くはいかない様子である。
「へーぇ……ふーん……。お姉ちゃんは、僕が関係者だからって、チケットが貰えると高を括っていたんだね」
詩緒のチクチク言葉が時雨の胸に突き刺さる。
図星であるため言い返すことができなかったが、珍しくネチネチと小言を言う詩緒の気持ちを汲むとしたら、彼の立場を利用した時雨に問題があることは明白であり、彼女も悪いことをしたという自覚は持っていた。
実際に自分の計画していたことを指摘されては何も言い返せず、弟に軽蔑の視線にしばらく晒された後、大きな溜息を吐かれ、時雨は心に小さな傷を負った。
「もう、今度は前もって頼んでほしいな。あと、次からこういうイベントとかライブがある時は僕からも声かけた方がいいかな?」
「ウタ~! ありがと~!」
姉としては泣き言を聞かせるのと同等のレベルで、詩緒にしがみつくという情けない姿で感謝の意を示す。
詩緒からの提案に対しては、声を掛けてほしいと答え、今後は家族とその友人くらいまではチケットが取れるようにしてみるということを詩緒から言ってもらえたことが、アイドルオタクの姉としては何より嬉しいことであった。
「明日、ウタのことたくさん応援するからねぇ!」
手を揉んで弟に媚を売る時雨の姿はあまりにも滑稽であったが、応援という言葉が詩緒としてはどこか引っかかる。
「ありがと。でも僕、司会席のゲストだから競技には出ないよ?」
お礼は言うものの、一つ鎌をかけるように明日の役割をそれとなく彼女に伝える。
「あ、そうなんだ!」
素で出てしまった時雨の回答に、詩緒の周囲の空気が少し冷えるのが分かる。
詩緒の演技力が高かったせいか、あまりにも自然に彼の立場を知らなかったことを伝えてしまった。
そのことに気付いた時雨はハッとして、恐る恐る詩緒の方を見るが時すでに遅く、彼はニコリと口元に笑みを浮かべていたのだが、全く目が笑っていなかった。
「……お姉ちゃんって、僕の活動には全然興味ないんだね」
怒っているような、あるいは悲しんでいるような表情、声色で姉の罪悪感を十分に引き上げさせると、詩緒は足早に自室へと戻っていく。
慌てて時雨が彼の背を追いかけ、臍を曲げた詩緒の機嫌取りに必死になるのだった。
☆ ☆ ☆
『芸能人事務所対抗運動会』開催日。
開場が朝早い時間とはいえ、イベント会場には十分な来場者がすでに集まっており、続々と会場入りしていた。
詩緒の両親と、姉の時雨とその友人が待機列から離れた所で待っているのは、詩緒から案内してあげるという旨の連絡が入ったからである。
「ウタちゃんが来てくれるの!? 凄い!」
時雨の友人は詩緒に会える未来を想像して、興奮気味に目を輝かせている。
彼女と時雨は大学からの友人であり、学内、学外問わず一番付き合いが多く、いわば親友という立ち位置にいる人物でもあるが、詩緒とは今まで一度も会ったことがない。
もちろん詩緒が親友の弟であるという事実は知っていたが、水上家に招待された時も詩緒は仕事やレッスンで忙しく、ニアミスはしたものの実際に話したことはない。せいぜいステージの上で見たことがあるくらいであった。
水上家と姉の友人でしばらく談笑していると、不意に関係者以外立ち入り禁止と書かれた仕切りの奥にある扉が開かれる。
すでにスタイリストやメイクなどのスタッフによってばっちりとおしゃれを決めた詩緒がひょっこりと顔を出して外の様子を慎重に窺っていた。
暖色のシュシュで髪を二つ結びにしており、イベントでは珍しくツインテールを携えている。どうやら本日は可愛さに重点を置いた容姿になっている。
基本的に詩緒は衣装やメイクをその日の仕事に合わせてスタッフと考えているが、今日はあまりカメラにも映らないであろうことから、担当したスタッフに全面的に任せたところ、詩緒にやってほしい髪型などを完全に現場の趣味で決められた結果、物品販売でも購入可能な体操服と、ツインテールという子供っぽい雰囲気となっていた。
しかしながら運動会というイベントは大人よりも子供の方が身近であるため、テーマに合った雰囲気とも言える。
詩緒はキョロキョロと周囲を見渡し、両親と姉の存在に気が付くと小走りで駆け寄った。
一緒に付き添いのスタッフも彼の後ろから小走りでやって来る。
「みんな、こっちこっち!」
仕切りを挟んで家族に声を掛けると、付き添いのスタッフがササっと関係者立ち入り禁止場所への仕切りを開き、詩緒が早く早く、と招き入れた。
「ウタちゃん! 本物!? がわいいぃぃ!!」
姉の友人の興奮っぷりに詩緒の両親は優しい顔で微笑むが、どことなく引き気味でもあり、複雑な面持ちをしていた。
一方で詩緒は、彼女の反応がファンのものであると同時に姉の友達だと理解したので、ファンに向ける笑顔を見せて、姉がお世話になっていることを伝えると、彼女は喜びに打ち震えて時雨に対してしきりに、ありがとうとお礼を言っていた。
その姉の友人の声が原因となったのだろうか、急なアイドルの登場に気が付いた一般の来場者たちから徐々に喧騒が広がり始める。
「急ぎましょう」
冷静に告げるスタッフの声に引き込まれるように、詩緒たちも早歩きで関係者専用の入り口から会場へと足を踏み入れる。
会場内にはすでに多くの客が入っており、さらに人数が増え続ける。
先程まで入場口の行列を横目にしていた時雨は、スムーズに関係者席まで案内してもらっていることに優越感を得ながら、まるでテーマパークのファストパスみたいだ、と他人事のように考えていた。
「じゃあ、僕こっちだから……」
案内の途中で詩緒は関係者用の扉を開いており、楽しんでね、と一言添えて消えていく。
芸能人なんだな、と両親や姉がふと思ったのは、今まで身内に世間でも人気のアイドルがいるということに現実味を帯びていなかったからだろう。
テレビに詩緒が出ている時も、家にいる詩緒と見比べ、メディアの詩緒と肉親の詩緒が一致しているようにも乖離しているようにも感じ、不思議に思っていたのだが、たった今、楽しんでと言った彼を遠くに感じるのだった。
☆ ☆ ☆
開演時間となり、芸能人事務所対抗運動会が始まるとスタジアムの熱気がまた一段、二段と上がる。
司会進行のアナウンサーが挨拶をして、続いてゲストの詩緒と夢子が紹介される。
スクリーンに映し出される詩緒と夢子に会場も異様な盛り上がりを見せているのは、普段とは違う髪型をしているからだ。
詩緒はメディアでは滅多に見せないツインテールで、男の子らしさは霧散していると言っても過言ではないが、年齢よりもやや幼く見える可愛さが新鮮である。
夢子の髪型はいつものサイドテールではなく、三つ編みで一つ結びにした後ろ髪を肩に掛けており、サイドテールの時の溌剌とした感じよりも大人っぽい印象だった。
「そんな髪型でまた可愛らしくなっちゃって……」
「ありがとう。夢子ちゃんもすごい印象変わるね。お姉さんみたい」
今日のお互いの容姿から会話が始まり、共演はIU以来であることや、競技自体に不参加の理由、アナウンサーからの質問を交え、しばしの雑談タイムで場を繋ぎ、プログラム通り選手入場へと移る。
詩緒と夢子が各選手と各チームの紹介をすると共に、競技参加者が続々と入場する。
あらゆるアイドルそれぞれにファンは付き物であるため、いろんな場所から声援が聞こえており、会場のボルテージは早くも最高潮に到達しようとしていた。
「続いては美城プロダクションより、プロジェクトミーティア! ゲストの水上さんも所属しているチームですね。よければチームメンバーの皆さんへ一言お願いします」
詩緒もメンバーの一人として認識されているためコメントを求められる。
子の晴れ舞台を待っていた親のような気持ちになり、声のトーンも無意識だがわずかに上がる。
「一番応援してるから、みんな頑張ってー! 皆さんも応援のほどよろしくお願いします! 一緒に応援してくれる同志を募集中です!」
「実況側は中立なんだから平等に応援しなさいよ! ……ちょっと、りあむさんが何か言ってないかしら?」
依怙贔屓を公言する詩緒を注意しつつ、りあむが実況席に向かって何か言っているのを目敏く見つける夢子。
彼女の発言を受けて、カメラはりあむにアップしていき、確かに何かしら喚いている映像がスクリーンに映し出されていた。
「ねえ詩緒、あんた、りあむさんが何て言ってるか分かる?」
競技参加者にはピンマイクなどは付いていないので、あちらこちらのスクリーンにりあむが映し出されているのだが声は入っていない。
読唇術でも使えればりあむが何を言っているのか分かるだろうが、詩緒はスクリーンに映るりあむの様子をしばらく見て、彼女が喋り終えるのを確認すると、マイクを通して詩緒がメッセージを送る。
「りあむさん、ありがとー! 髪型いいでしょ? 今日はスタイリストさんにお任せでやってもらったんだ。りあむさんのこともいっぱい応援するから頑張ってください! 後で写真も撮りましょうね」
詩緒からの返事をもらったりあむはそのまま後ろに倒れるが、あかりとあきらに呆れられながらも、しっかりと支えられ起こされる。
「結局何て言ってたの?」
詩緒が正しい返事をしているかも分からなかったが、夢子はとりあえず、りあむが何と言ったのか聞いてみることにした。
「うーん、多分『髪型似合ってる』とか、『実況頑張れ』とかだと思う」
「あんたよく分かるわね……」
「あはは、みんなと仲良いからねー。……では次のチームの紹介をお願いします」
引き気味な夢子を軽く流し、次のアイドルを紹介しようと会話のボールをアナウンサーへと渡した。
以降も恙無く進行していき、全ての出場者を紹介し終えた後、運動会らしく選手宣誓を961プロの玲音が行う。
本日のプログラムは、十種目の競技を実施することになっているが、五種目で昼休憩を挟みつつ参加者によるチアリーディング、そして残りの五種目を消化し、表彰へと移る予定である。