五等分の家庭教師   作:ドラしん

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初めましての方は初めまして!
もう既に自分の事をご存知の方はこの作品もよろしくお願いします!

さて、モチベーションどこまで持つかなー

まずは記念すべき1話目です。どうぞ!


懐かしき前世の記憶①

それは遠い昔の話。

 

俺は前世、上杉風太郎という名で人生を歩んでいた。

 

母親は幼い時に亡くなり、父親は無駄にテンションが高く適当で、年の少し離れた妹は可愛くて仕方がない。

 

家は決して裕福とは言えずむしろ貧乏。借金だってある程だ。

 

勉強嫌いだった俺はある時から家族の為に(殆ど妹の為)将来の選択肢を増やすべくただひたすらに勉強に打ち込みはじめた。

 

恋愛も娯楽も運動も全て捨てて。

 

恋も友も何もいらない。勉学こそが俺の青春。俺はそう自分に言い聞かせ、そして高校生になった。

 

勉強漬けの日々はいつも通り。一人で過ごす学校生活もいつも通り。毎回学食で焼肉定食焼肉抜きを頼んで冷ややかな目で見られるのもいつも通りだ。

 

しかし、そのいつも通りの日々はとある出会いによって崩された。

 

俺がいつもの様に焼肉定食焼肉抜きを注文しいつもの席に着こうとした時、あいつに話し掛けられたんだ。

 

「私が先でした。隣に移って下さい」

 

「…は?」

 

思わず俺は声を漏らす。

 

目の前にいる前髪に星型の装飾をつけた少女は、少し不機嫌な表情でじーっとこちらを見つめていた。

 

「だから、私が先にこの席に座ろうとしたんです。なので移って下さい」

 

「…ここは俺が毎日座ってる席だ。あんたが移れ」

 

「関係ありません。早いもの勝ちです」

 

第一印象は最悪だった。

 

パッと見外見はかなり整っているがどうやら性格までは整っていないらしい。

 

だが、こんな些細な事でついムキになってしまうのは俺の悪い癖だ。

 

「じゃあ俺の方が早く座りました。はいこれでここは俺の席」

 

「ちょっ…」

 

我ながら幼稚な対抗策だったと思う。

 

だけどパッと思い付いたのがこれだったんだ。

 

その後は彼女は何を思ったか俺の目の前に座りやがった。

 

小さいテーブルに2つしかない椅子。

 

旗から見れば恋人同士に見られてもおかしくない。

 

そしてその後はご飯を食べながら勉強する俺に説教してきたり、俺のテスト用紙を勝手に取って点数を見てきたりとやたら俺に構ってくる。

 

勘弁してくれ。こっちは一人が良いんだ。

 

だが俺の100点の答案を見て悔しそうにこちらを睨んできたのは少し気持ちが良かったけどな。

 

「こっちは勉強苦手なのに…」とぶつぶつ呟く彼女を無視しひたすらに箸を進めていく。

 

このペースで構われたらこっちの身がもたん。

次は一体何をされ何を言われるのか見当もつかない。

 

俺は一刻も早くこの場所を離れるべく更に食べるペースを上げていく。おかげで勉強に全く集中出来ない。

 

そしてようやく全てを食べ終わろうとしたその時、彼女は予想だにしない一言を俺に放った。

 

「そうだ、せっかく相席になったんです」

 

 

 

 

 

 

「勉強、教えて下さいよ」

 

 

 

 

 

 

本当にこいつの言動は理解できない。

 

最初は敵意を剥き出しにして席を取ろうとして初対面で説教してきたり勝手に答案を見てきたと思えば今度は勉強を教えて下さいだ?

 

冗談じゃない。俺にそんな暇は無いしこんな奴に勉強を教えるなんてごめんだ。

 

そう思った俺はごちそうさまでしたと一言だけ言い足早にその場を離れた。

 

彼女のさっきの発言を無視する様に。

 

「ちょ、それだけで足りるんですか!?良かったら私のを…」

 

しかし、彼女はそれを許さなかった。

 

足早に去ろうとする俺を直ぐ様呼び止める。

 

…しつこい。こいつは一体どんな神経をしてやがる。

 

こんなにも不愉快オーラを出しているのにまさか気付いていないのか?

 

「…」

 

ふと彼女が注文したメニューに目を移す。

 

250円のうどんに150円の海老天2つに100円のいか天かしわ天さつまいも天…更には180円のプリンのデザート付きときた。

 

ざっと合わせて1030円。あほか、俺の昼食1週間分じゃねぇか。

 

なるほど。見た感じどうやらこいつはお金持ちっぽいな。道理で馬が合わない訳だ。

 

俺は冷ややかな目を彼女に向けると、

 

「あんたが頼みすぎなんだよ。太るぞ」

 

と言い放った。

 

さすがにこれはダメージが大きかった様で、顔を赤らめ体をぷるぷるさせながら彼女は言った。

 

「無神経すぎます!最低っ!」

 

それは言わばこのやり取りの終点。

 

彼女の口からその言葉が出るならもう話し掛けてくる事は無いだろう。

 

俺は何も言わずにその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

…とまぁこんな感じであいつとの出会いはお互い最悪だった。

 

え?その少女の名前がまだ出てきてないって?まぁそれはこの後にちゃんと出てくるからもう少し待っていてほしい。

 

とにもかくにもこれで平穏な日々が再び訪れ、俺はいつも通りの昼休みを過ごした。

 

しかし、それは長くは続かなかった。

 

もし神様という存在がいたとしたらそいつはとんでもなく意地悪な奴だろう。

 

俺が取り戻したと思っていた平穏な日々は、昼休み終了直前に掛かってきた一本の電話により無様に崩されるのである。

 

「…ん?らいはからか」

 

上杉らいは。前世での俺の可愛い妹。

 

家事も出来、小学生とは思えない程とてもしっかりしていて将来はきっとさぞかし立派なお嫁さんになれる事だろう。

 

その為にはまずらいはに相応しい男を兄である俺が見分けなければ…………ゴホン。すまない少し取り乱した。

 

一先ずらいはからの電話に出た俺が聞かされたのは衝撃の内容だった。

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!借金が無くなるかもしれないよ!」

 

 

 

 

 

 

 

らいはの話を要約すると、父の友人がこの町に最近引っ越してきたらしく、今娘の家庭教師をしてくれる人を探しているらしいのだ。

 

そこで成績学年トップである俺に白羽の矢が立った訳だ。

 

更にはお金持ちの家の様で給料もめちゃくちゃ良い。

 

ただめちゃくちゃ面倒くさそうだった為本当は今すぐにでも断りたかったが一向に減る気配の無い借金に加え可愛い妹からの頼みとなっては断われる訳にもいかなかった。

 

だから俺はその場で引き受けてしまったんだ。

 

俺の人生を大きく変える事になる家庭教師のアルバイトを。

 

しかし、そこからが問題だった。

 

らいはから聞いた教える生徒の情報はただ一つ。【今日俺の学校に転入する】

 

そして、まさにその人は俺のクラスに転入になった。

 

開かれる扉。そこから入ってくる一人の少女の姿。

 

飛び込んできた現実に俺は落胆した。

 

なぜならそれは…

 

 

 

 

 

 

「今日からこのクラスでお世話になります。中野五月です。よろしくお願いします」

 

先程食堂で揉めた少女だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

そしてそこからはひたすら信頼回復に走った。

 

もう後戻り出来ない所まで来た俺は一先ずあの女の子…五月に謝るため次の日食堂へ走った。

 

しかしそこにあったのは異様な光景だった。

 

「…!?…」

 

4人の友達と楽しそうに昼食を取る五月の姿。ここまでは何ら違和感は無い。しかし問題はその友達だ。

 

「…全員…そっくり…」

 

そう、全員付けてる装飾や髪型が微妙に違えど全員同じ顔、同じ体型なのだ。

 

世の中には自分とそっくりな人が3人はいると言われている。

 

だけどこれはその逸話を超えているでは無いか。

 

何だ?どうした?ここはドッペルゲンガーのたまり場か何かなのか?

 

謝罪に来た俺はただただ混乱していた。

 

「…!…」

「…!…」

 

その時、不意に五月と目が合う。

 

しかし五月は直ぐ様不機嫌そうな表情に変わりプイッと俺から目を逸らした。

 

…まずいな。これは相当怒ってる。

 

早い所謝らないと家庭教師どころでは無い。

 

だが今はドッペルゲンガーの友達と一緒でとても謝罪出来る雰囲気では無かった為特にアクションは起こさずいつものメニューを頼みいつもの席で昼食を取った。

 

…いや、取ろうとしたが正しいか。

 

席に座ろうとしたその瞬間、何者かに呼び止められたのだ。

 

「一緒に食べないの?」

 

「…!…」

 

驚いた俺はゆっくりと振り返り声の主を確かめる。

 

そこにいたのはドッペルゲンガー組の一人、ショートカットの少女だった。

 

「席探してたんでしょ?一緒に食べようよ」

 

やたらグイグイ来るショートカットの少女…ドッペルゲンガー1号と名付けよう。

 

1号は柔らかな笑みを浮かべながらこちらに迫ってくる。

 

「く、食えるか!」

 

五月と短時間ではあるが二人で昼食を取った時でさえ落ち着かなかったのにこんな女だらけのテーブルで食える訳がない。

 

しかもその内の一人は絶賛嫌われ中の五月だ。

 

俺は1号からの誘いを直ぐ様断った。

 

「何で?美少女に囲まれてご飯食べたくないの?」

 

ーーーー食べたくない。

 

そう言いたくてもはっきり言えないのが悲しいかな男の性だ。

 

にしてもこいつ自分から美少女って言ったよ…よっぽど自分の容姿に自身があるらしいな。

 

嫌味の一つでも言ってやりたい所だが生憎その容姿は本当に整っているから腹が立つ。

 

「…」

 

口を閉ざした俺を見た1号はクスリと笑うと、ニヤニヤしながら口を開く。

 

「彼女いないのに?」

 

こ、こいつ!グイグイ来るかと思えば煽ってきやがった!

 

これはさすがに何か言い返さないと俺の気が済まない!

 

「き、決めつけんな!」

 

「ん?じゃあいるのかな?」

 

勇気を出して発した俺の反撃はいとも簡単に交わされ逆にカウンターパンチを受ける始末。

 

だがここで引く訳にはいかない。

 

「い、いない…が…勘違いするなよ!?彼女が出来ないんじゃない。作らないだけだ!」

 

…俺はどうにもすぐ頭に血が上る癖があるらしい。

 

予期せず声を張って吐いてしまった言葉に俺はすぐに後悔した。

 

おいおい…この発言は…

 

「…それ、彼女出来ない人が言う言葉だよ?」

 

言われてしまった…

 

初対面の少女にはっきりと言われてしまった。それはもう心を鋭利な刃物で抉られる様にグッサリと。

 

もうエグすぎてもはやチェーンソーで真っ二つにされた気分だ。

 

ああ…穴があったら入りたいとはまさにこの事…

我々の先祖は良くこんな言葉を作ったものだ。

 

「まぁそれはさておいて、五月ちゃんが狙いなんでしょ?」

 

軌道修正と言わんばかりに話題を変えた1号。

 

何だ。あんな恥ずかしい発言をした俺にまだ話し掛けてくんのか。

 

これ以上はやめてくれ。俺は今真っ二つにされた心を修復するのに精一杯なんだ。

 

「…」

 

「黙りって事は図星なのかな?決めてはどこ?真面目な所?そうゆうとこ好きそうだもんねー」

 

どうやら沈黙をこいつはYESと判断したらしい。

 

俺を置いてどんどん進んでいく話は本当に迷惑極まりない。

 

これじゃまるで本当に俺が五月に惚れてるみたいだろ。

 

「別にそんなんじゃない」

 

とりあえずこのままこの話を続けるのは危険だ。一刻も早く切らなければいけない。

 

その前にまずは俺が五月に惚れてる前提を否定しなければ。

 

「あれ、そうなの?」

 

俺が否定すると1号は何だつまんないと言わんばかりにさっきまでの生意気なニヤけ顔が嘘のように消えた。

 

しかし少しするとまたニヤけ顔に戻り再び俺に詰め寄ってきた。

 

「あ、でも五月ちゃんの事気にはなってるでしょ?さっきから五月の事ばかり見てるし」

 

どうやらこいつはどうしても俺が五月に脈有りという事にしたいらしい。

 

確かに五月の方ばかり見てるのは事実ではあるがそれはあくまでも謝罪の機会を伺う為だ。

 

そこに恋愛感情なんという物は一切存在しない。

 

「よし、折角だから私が呼んであげるよ。おーいいつ…」

「待て!!」

 

勘違いのまま話は進みこいつは何を血迷ったか五月を呼ぼうと声を掛け始めた。

 

俺は直ぐ様1号の声がかき消されるくらいの大声で1号の動きを止めた。

 

全く…油断も隙きもあったもんじゃない。

 

「余計な事するな。自分の事は自分で何とかする」

 

俺は真剣な表情で1号に言った。

 

すると1号は一瞬驚いた様な表情をすると、頬を少し明らめ謎に高いテンションで口を開いた。

 

「ガリ勉のくせに男らしい事言うじゃん!」

 

「…ぐっ!?」

 

興奮してるのかは分からないが、中々の勢いで俺の背中に1号の手のひらがぶつかる。

 

高いテンションのまま繰り出された背中への一撃は思ったよりも重いものだった。

 

「おまっ!い、痛いだろうが!」

 

今凄い音したぞ!?バチコーンって今まで聞いたこと無い音が背中から!

 

これは背中に手のひらの跡が残ってるオチじゃないだろうな!?

 

「ガリ勉君」

 

しかし当の本人は全く気にする素振りを見せず、痛がる俺を無視し話を続ける。

 

謝罪の一つくらいあっても良いんじゃないんですかねー?

 

だってバチコーン!だよ?自分の背中からそんな音聞いたことあるか!?

 

「な、何だよ…」

 

でもさすがにこれ以上歯向かう気にはなれない。

 

俺はもう察した。こいつには勝てない。

 

そんな俺をよそに1号はニヤニヤとした表情のまま、俺に言うのだった。

 

「もしも困った時はこの一花お姉さんに相談するんだぞ?何か面白そうだし」

 

1号…もとい一花はそう言うと満足した様に自分の席に戻った。

 

一体なんだったんだ…めちゃくちゃ疲れた…

 

何か自分の事お姉さんとか言ってたけどどう見ても同じ学年だろ…

 

「…」

 

ここで何となく視線を五月に移してみる。他意はない。

 

すると五月もこちらを見ていた様で再び目が合う。

 

「…」

「…」

 

五月のその目は先程よりも鋭い物に変わっており、これ以上近付くなと訴えられている様だった。

 

うん。嫌われたな。

 

先程の一花とのやり取りで五月からの好感度が下がったのは言うまでも無い。

 

「…これも全部あいつのせいだ…」

 

恨めしそうに視線を楽しそうに喋っている一花に向ける。

 

しかしその視線に気付く様子は無く、友達との会話に夢中だった。

 

「…はぁ…」

 

とにもかくにもスタートラインにすら立てていない現状にため息が溢れる。

 

これは前途多難だ…

 

一向に先の見えないビジョンに、俺はただただ絶望するのだった。

 

既に冷めている焼肉定食焼肉抜きが乗ったトレイを持ちながら。

 

 




うん。ここまで長くするつもりは無かった。本当だよ?だってプロローグみたいな物だもん。

でもまた悪い癖が出ちゃったみたいだね…

というわけで次回もプロローグ的な何かが続きます。本編までもう少しお待ちを。
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