「フハハハッ。我は数千年を生きる真祖の吸血鬼。たかが人間如きが敵うとでも思ったか!」
「ふーん。そっか」
「泣け、叫べ。絶望に打ちひしがれろ。生まれてきたことを後悔するが良い。見逃して貰えるなどと考えぬ事だ!」
「どうでもいいけど話なげぇな」
「何だと、このハゲマントめ。お前こそ額が眩しくて直視出来ぬわ。グハハッ」
「髪の話はするな!」
「ひでぶっ」
笑った3メートル近くの化物をマントを羽織ったハゲヒーローが一発ぶん殴った。それだけで化物の上半身が消し飛ぶ。
まるでギャグアニメのような光景だ。凄く見覚えがあるのは気のせいだろうか。
ワンパンで散った吸血鬼の親玉を指さして神様は俺に言った。
「あれが君の転生先ね」
「いやー、勘弁して欲しいっす」
ども。テンプレなチート転生者です。
例のごとくトラックにはねられて死んで神様と会って新しい人生を貰う所です。転生先は吸血鬼の真祖だそうです。
なんと吸血鬼の弱点は全て克服済みの上、血を吸って長生きすればするほど強くなる最強生物なのだとか。オマケに美形。
いやー、勝ち組で悪いね。最強系転生者としてブイブイ言わせて貰うわって感じだったんだけど。
転生する世界がワンパンマンでした。しかも怪人。
え、何その死亡フラグ。サイタマに勝てるわけがないじゃん。相手は地球をパンチで粉砕するような化物だよ。
しかも確か苦戦すれば更に強くなるって設定のサイヤ人的な人じゃなかった?
念の為に俺vsサイタマで対決したらどうなるか神様に見せて貰ったけど、お試し動画じゃ数千年も生きたせいで前世の記憶が薄れた俺がサイタマにワンパンで片付けられる光景が映っていた。おい。血を吸って長生きすりゃ強くなるんじゃなかったのか。
「強くなっとるよ? 災害レベル竜クラスはあるじゃろうな」
「最初は竜ですらないのかよ……」
「そりゃ地底王や深海王が災害レベル鬼なんじゃし」
確かに一種族の王がその強さなら、吸血鬼の王である真祖が災害レベル鬼なのは道理か?
ちなみに災害レベルってのは怪人の強さのランクな。狼・虎・鬼・竜・竜以上・神と強さが上がっていく。
ヒーローはC・B・A・S級。最強のS級ヒーローでも竜には苦戦したり敗北したりする。いや場合によっちゃ鬼に負けるパターンもあったな。
まあ、所詮は目安に過ぎないから相性があったり同ランクでも強さに開きがあるんだ。
「そういや吸血鬼って作中に登場してた気がする」
「バンパイア(血統書付)じゃな」
「確か災害レベル鬼だったよな。おい、子孫と同じ強さって真祖としてどうなんだよ」
「子孫も長生きしちょったか努力したんじゃろ」
「覚醒すりゃ急に強くなるもんなワンパンマン世界って」
死んでもおかしくない状態を潜り抜けたら急激に強くなる事がワンパンマン世界じゃある。代償に確か欲求が希薄になるとか言ってた気もするが。
怪人細胞つー特殊な生肉を食った人間が怪人になる時なんかも急激なレベルアップをしてるし身体の細胞が変異してんのかね。それか怪人を食ったら強くなるのかも。人間じゃ腹を下すらしいが。
「蚊の怪人のモスキート娘も血を吸ってパワーアップしてたし怪人流の強化方法も確かにあんだよな。もしや人より怪人の血を吸った方が強化されるのか?」
「場合によるの。毒で死ぬ可能性も無視は出来んし。まあ数千年を生きたお主がああなんじゃし誤差だと思うんじゃが……」
「だよな!」
そもそも比較対象にサイタマを出すことがオカシイのだ。アイツは竜クラスの怪人を相手にして他の怪人よりも強かった気がする。多分?とか言っちゃう奴なのだ。
サイタマにとって本当に他の怪人と違うと理解できるのは竜以上の怪人だけだ。それすらもリップサービスの可能性があるが。
複数の町が壊滅する竜クラスを越えるって国家滅亡レベルの大災害だよな。有名な竜以上の怪人のボロスとか数多の星で略奪するドラゴンボールのフリーザみたいな奴だったし。
だからサイタマと敵対するのは死亡届にサインするのと変わらない。関わらないのが吉だ。でもな。
「なあ神様、人類を滅ぼせとか言っちゃったりする?」
ワンパンマン世界じゃラスボスとして作中に神の存在が示唆されている。最初に出てくるワクチンマンという怪人は環境破壊を繰り返す人類を病原菌と見なし地球の意思によって生み出されたと語っていた。つまり俺の目の前にいる神様こそがワンパンマン世界のラスボスである可能性があるのだった。
「いや? 好きにすりゃ良いんじゃないかの?」
「あ、そうなんだ。怪人に転生させるから、てっきり人類を敵視してるのかと」
「向こうの神様が転生者を送るなら怪人以外は認めんと言っておってな」
「なるほど」
たとえ人類側に味方をしても神様が力を取り上げるなんて事はないらしい。向こうの神様に睨まれるかもしれないらしいが。
いやいや、十分アウトだよ。災害レベル神とかサイタマのマジ殴りで死ぬのかもしれんが、俺にとっちゃ絶対強者なのは変わらないんだ。
人間側に立ってもヤバい。怪人側に立ってもヤバい。どないしろと。
「何ならチート能力を増やすかの?」
「マジで? 良いの?」
「一個増やす度に千年間、生まれるのが遅くなるがの」
「そんくらい……いや、配下組織の結成に支障が出るのか」
大昔に生まれるってのは不老不死の奴にとっちゃアドバンテージなんだよな。過去から歴史知識でカンニングして有利な行動が出来るし。
ま、俺ってそんなに歴史に詳しくないし、いいか。ワンパンマン世界で有象無象の配下とか無意味だし。
「準備期間として現代の千年くらい前に生まれるとして何個チートを貰える?」
「2つじゃな」
「3千年も生きてワンパンで死んだのか俺」
貰えるチート候補は。
1.眷属が血を吸えば俺も少し成長する。
2.俺が血を吸ったら魂を獲得できる。
3.目を合わせたら魅了できる。
4.状態異常に強くなる。
5.使い魔を作成できる。
以上だ。
なんというか地味。
「魂を獲得しても多少の知識と技術が手に入るだけって。もうちょっと何とかならない?」
「研鑽すりゃ魂を利用して元人間の眷属を配下に出来たり魂の所持しとる異能を手に入れたりも出来る優良チートじゃぞ。これ以上は無理じゃわい」
ちなみにノーマル状態だと眷属はランダムな人型イエスマンを血液を代償にして生み出す感じだ。5の使い魔を選べば眷属作成に自由度が出るみたいだな。
バンパイア(血統書付)は眷属同士の子孫なのかもな。人間要素はないらしいし。
この中じゃ1と2かな。基本的なスペックが足りない。
でもワンパンマン世界で小手先の技術はなぁ……。
いや、サイタマが変なだけで武術や科学でS級になったヒーローもいるし捨てたもんじゃないか。
うん。人間の可能性を信じろ。基本性能の違う怪人とサイタマなしで何千年も対峙してきたんだ。やれるって。
ま、俺がその対峙する怪人なんですが。
「じゃ1と2で」
「うむ、それじゃ送り込むぞい」
「色々と便宜を図ってくれてサンキューな爺さん」
地獄に落とされるようなもんだが、神様に礼を言っておこう。チート能力は素直に嬉しいし。
ボンッと煙に包まれて目を開けたら薄暗い森の中だった。初期地点としてはまぁまぁだな。下手に城の中とかだと逆にやりづらい。
「ククク。サイタマが生まれる千年後まではやりたい放題なのよね。何をしようかしら」
ん? 口調がおかしくね?
確かめてみたら物の見事にTSしてました。銀髪赤眼のボンキュッボン東欧美女です。
動画じゃ美形の男だったのに何で……。