ワンパンマン世界に怪人TS転生だって?   作:八虚空

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十三話 幻の強さ

「きひひ。アタシャ怪人、金の亡者。大人しく身包みを置いていきなァ!」

「ノイ。そこそこ溜め込んでるっぽいから拷問して在処を吐き出させて」

「畏まりました」

 

「この、人でなしぃーっ!」

 

 偶に気が向いたら依頼を受けて賞金首討伐の日々を送っていたらあっという間に月日が過ぎていった。

 やはり怪人の方は災害レベル狼が殆どで、虎クラスが偶にって感じ。ドラゴンとかの大物もいるっちゃいるらしいが、そっちはラウンドナイトのS級が出張るみたいね。ゲルマン人との戦争は良いのかしら。

 

 一流の剣術家の癖に妙に三下臭のするハゲ山賊を討伐した後、私は男の魂を参考に幻影飛翔剣を習得すべく研鑽の日々を送っている。

 カマセ隊の隊員が習得していた手習いの爆裂流なら一週間もあればそれ以上の動きが出来るようになっていたし、寝取られ男の異能、嫉妬エネルギーとエネルギーの過剰放出による身体強化も半年で獲得できたから容易く習得できると思っていたのだが。7ヶ月経過した今も同じ動きが出来ていない。

 

「怪人としての生態の一種である異能獲得に時間が掛かるのは分かるけれど、単なる技術の模倣にここまで苦労させられるとはね」

 

 カマセ隊の拙い気の練り方とは練度の違う、複雑で繊細な気の動きは反復訓練を繰り返さないと真似を出来ない次元のものだった。

 ギャグキャラみたいな残念な男だったが練り上げた武は本物だった。キャメロットの各種流派の道場も少し見学してみたけれど、師範代レベルの実力をあの男は備えていたのだ。うーん。道を踏み外すにしても、もうちょっと他にやりようはあった気がするのよね。実力に反して犯した罪がショボ過ぎる。そのせいで普通の山賊討伐と同じ程度の賞金しか手に入らなかった。

 

 いや、或いは才能の問題なのかもしれないのか。私は魂を吸い取った最も頭の良い村人と同程度の頭脳を持っている。故に私の剣術の才能はあのハゲ山賊と同等だろう。30年は修行したとか言ってたのよね、あのハゲ。7ヶ月でそこそこ模倣出来てるのは逆に凄く順調なのかもしれない。

 

 剣を振るう時の体勢や気の動き、視線の向きに咄嗟の判断、頭に浮かぶ幾つもの戦術。

 魂を獲得した事で私はハゲの全てを掌握し理解している。どんなに良い教本や指導者を得るよりも、模倣する事に掛けてなら魂を得る以上の近道はない。

 もっともハゲの技術を模倣仕切ってしまったら、私にそれ以上はないのだけれど。私が普通に訓練しても、単にハゲの身体能力が向上して無限の時間を与えられたのと変わりはない。それでは恐らくS級には勝てない。そういう理不尽な壁がA級とS級の間にはある。

 

「数百年、訓練し続ければ何とか届く。そういう感じね。私が普通に生きたら災害レベル竜になるのに3千年も必要だったように」

 

 遊び呆けただろう私と武にのみ数百年の時間を費やした人間が実力で伯仲するのは不自然じゃない。それでも戦闘になれば私の方が実力が高そうではあるが。

 根性の一言でS級に上り詰めた金属バッドあたりとは生命体としての格が違うわね。

 

 理不尽なまでの才能差。ただの凡人ではA級こそが限界なのだ。これこそが生物の持つ成長リミッター。

 個体毎に成長できる限界は異なる。あのハゲ山賊はそこが強さの上限。逃れるには怪人化をするしかない。

 

 そして、この限界を乗り越えた男こそがサイタマ。あの男に才能なんてものはない。ただ只管に筋トレをして非常識な身体能力を得た。それだけの男。

 まあ、私は精神力で限界突破をする事そのものに別種の才能が必要だと思うけれどね。サイヤ人呼びはそれが理由。

 

 でもサイタマを尊敬する人間の気持ち自体は分かる。不可能を可能にした黄金の精神は人の目を惹き付ける。

 弟子のジェノスなんかはその黄金の輝きに目を焼かれて足下が見えなくなっている典型。彼にリミッター解除は出来ないだろう。サイボーグだから何て理由じゃない。人の真似をして強くなろうとするような精神性では己を乗り越えるリミッター解除は不可能というだけ。

 

 ジェノスが弟子入りすべきだったのは武術家のバングの方だ。合理的な動きを追求する事で只人を圧倒的な強者に変える流派を学ぶ事がジェノスが身体の強化パーツを手に入れる以外の強化法。気を練れるかは不明だが、サイボーグは完全な機械ではない。生身の部分が残っているならば可能性はある。

 

 奇しくもS級ヒーローである戦慄のタツマキの原作での発言通り。

 馴れ合いは個としての力を鍛えるのに邪魔となる。集団で切磋琢磨する事を否定しているのではない。そもそも流派とは集団で各々の力を高め合う形式だ。

 否定しているのは思考停止をして現状に踏み止まる事。ジェノスが常に感じている停滞感は当然だ。強者の傍に居れば強くなれるのなら誰も苦労はしない。

 

 私もまた考え続けなければならない。リミッター解除も怪人化の秘法も都合の良い幻のようなものだ。

 自分もそうなれると夢想して無駄に生命の危機を招いてはならない。

 必要なのは限界を超える為の道筋。冷徹なまでのロジックだ。

 

 とりあえず目指すべきは忍者の里を生みだした『あの御方』と怪人協会のギョロギョロね。

 一桁の年齢の孤児を味のしない食事に死ぬ一歩手前の鍛錬を常に続けさせ意思を根こそぎ奪う事でS級並の暗殺マシーンを大量生産した忍者の里。そこまで無理をしたにも関わらず孤児は忍者の里の秘薬で死ぬことはなく、どんな人間でも超人へと変える技術の粋を凝らした指導法の極致。

 S級でも上位の達人である閃光のフラッシュを最低でもS級下位の実力を持つ音速のソニックと同時に敵に回して、簡単に倒せる実力。複数の心臓を持つとか、他者の皮膚や内蔵を自分に移植したとか、3百年も生きてるとかで『あの御方』は怪人疑惑を持たれているが、おそらくは人間か人間あがりの怪人。ヒーロー狩りのガロウと同じく技術に傾倒し過ぎているもの。純粋な怪人ではない。

 

 そう、極まった才能と研鑽で生物は災害レベル竜上位、もしかしたら竜以上に到達できるのだ。ガロウのように怪人化の秘法を利用したとは思えない。それでは『あの御方』の秘伝の巻物を得ただけの閃光のフラッシュが急激に強くなる訳がない。特定の思想や激情とは対極の冷徹な思考回路が『あの御方』にはあるのが読み取れる。

 この『あの御方』のスタイルにギョロギョロ本人は個体の実力に等しい怪人しか生み出せないとあまり評価していなかった怪人細胞を組み合わせる事で良いラインまでは到達できると思われる。怪人王オロチの肉体を切り取ったものだろう怪人細胞は血液からバンパイアを生み出す真祖の吸血鬼である私なら研鑽で真似できるはず。

 

「とりあえずはシステム的に至れる上限に到達しましょうか。限界を超える方法はそこから改めて考えましょう」

 

 

 

 そうゴチャゴチャと原作知識を思い出しながら結論を出した私はキャメロットを出て最初に訪問した村に里帰りをしていた。

 エレナのラウンドナイト入隊やトリスタンへの押し掛け弟子化とか、ジェントルとソウルの流派への入門に際してのゴタゴタとか、ノイを部隊長とした新しく生みだしたバンパイア一族による傭兵部隊の結成とか、色々あった。色々とあったが、忙しくて性欲を発散する機会が少なくて溜まっているのだ。

 ノイも別口の依頼を受けて不在な事が多いし。シノンはトリスタンにエレナと一緒に弟子入りしたから呼び出すのに躊躇してしまうし。

 

 そういうのが重なってムラムラが限界に来たら思い出したように村に里帰りをして発散するのを繰り返している。

 私単独なら飛行で一日もせずに辿り着けるしね。

 

「んぅーー」

 

 ジュッポジュッポと指を咥えさせたキャサリンの身体を後ろから抱きしめて獣のように背後からのし掛かれば良い声で鳴いてくれるのが堪らない。

 私は完全に女体なので男のモノは生えていないが、身体をコウモリに変えたり無機物を生み出したりと色々と肉体を操作できる。

 それを応用して擬似的なアレを生やしてみたりもしたんだけど、イマイチね。

 

「うーん。豆を単純に大きくしても刺激が強すぎて痛覚として処理されちゃって感覚が鈍くなるのね。喜んでるキャサリンには悪いけれど普通にヤルわよ」

「よ、喜んでなんかァ」

 

 ヘラヘラと笑っている事に気付いてないのか涙目で見上げてくるキャサリンが可愛くてズンズンとリズムよく突き上げてあげた。

 妹のリリシアや新しくハーレムに加わった眷属希望の女が二人、横に限界で倒れているのを見ながら我を忘れて欲に溺れてはならないと改めて自制した。ノイじゃないんだし、本気でヤったらヤリ殺してしまう。リョナは好きじゃない。

 

「じゃ何処を使って欲しい? 指? 舌? キャサリンの好きな所を教えて?」

「――――っ!」

 

 耳元でヒソヒソと囁いてみたら真っ赤な顔で目を泳がせたキャサリンは黙ってハグの体勢になった。

 どうやら恋人のように抱き合ってドロドロに溶かして欲しいようだ。可愛らしい。

 

 実はもうちょっとで人間の眷属化が成功しそうなんだけれど、イワンが見たらなんていうかしらね。フフッ。

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