ワンパンマン世界に怪人TS転生だって?   作:八虚空

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十四話 清流拳のジェントル、抜剣術のソウル

「止めとけって爺さん。うちの道場は素手で武装した兵士を打倒する事を前提とした実戦武術だ。確かに力で押し切る他流派と違って戦いの流れを制するうちの清流拳は女子供でも習得できるってのが売りだが、衰えていく肉体を抱えて今から学ぼうっつーのは無謀だぞ。健康維持や肉体の若返りに特化した老克流の方が爺さんにはあってるんじゃないか?」

「ほぉ、老いを克服するような武術流派すらキャメロットにはあるのですな。興味深いですが、私の目指すスタイルとは別物でしょうな。なに、身体の丈夫さには自信がありますので、心配しなくても大丈夫」

「うーん。じゃあ試しに軽く型稽古の指導をするが、身体を壊してもキャメロットにゃ教会組織のセインツは進出してないんだぞ?」

 

 清流拳の男の言葉にジェントルは目を光らせた。ラウンドナイトやハンターギルド、傭兵ギルドとはまた別の対怪人組織の名が出て来たからだ。

 

「セインツとは如何なる組織なのですかの? 恥ずかしながら田舎の出で、都会の事は詳しくなくての」

「ローマ帝国のセインツを知らねえの!? あの何処にでも湧いて出る修道士集団を? 爺さんの出身は余程の山奥なんだな。いや、うちは竜を敬い共に生きる竜盟会よりだしな」

「ふむ。竜盟会はセインツとは敵対関係にあるのですな」

「まあな。他にも魔法を操るピクト人なんかとは折り合いが悪い」

「ピクト人」

「アイツらすら知らないのか。キャメロットにだって円卓の騎士のトリスタン様がいらっしゃるだろ」

「あの歌唱魔法は種族由来の力なのですかの」

「んー、アイドルなんてやってるピクト人なんざ初めて見たが、魔法と言えばピクト人だな。呪術ならヘルウェティイ族。奇跡ならセインツ。竜術なら竜盟会。錬金術と黒魔術はローマ帝国。精霊術はドルイド。気功はキャメロット。気功の本場は東方らしいが、キャメロットだって負けん」

 

 スラスラと出てくる異能力者の情報にジェントルは上機嫌で頷いた。

 どうやら、女王の可能性は本人が思っているよりも遙かに高いようであった。眷属としては嬉しい限りだ。

 

「ほっほ。清流拳に入会できたら世間話の相手をこれからもしてもらって良いかの? どうやら世界は思ったより広いようでな」

「話し相手くらいなら構わないんだが、頼むからギックリ腰なんかにゃならんでくれよ?」

 

 やれやれと面倒見の良い門下生の男はジェントルを道場に連れて行き、自分よりも爺さんの方が身体能力が高かった事に世界の広さを思い知ったのであった。

 

 

 

「テメェのような生っちょろい男が抜剣術の期待のホープだぁ? 顔の良さが強さと関係があるとでも思ってんのか?」

「俺は思わないが、どうやらお前は思ってるらしいな」

「ザッケンナよ!? 円卓の騎士がどいつもこいつも美形ばっかなのは明らかに変だっつーの! 絶対に差別されて実力を評価されてないブサイクが影で泣いてるはずだっつーの!」

「俺に文句を言われても困るんだが……」

 

 何時ものように抜剣術の訓練に出向いたソウルは妙な不審者に絡まれて困っていた。

 どうやら自分の事が影で噂になっていたらしく、早朝から出待ちをしていた男が道で通せんぼをしていたのである。ここから先は通さないと言わんばかりに両手を広げて反復横跳びをしている。物取りやチンピラというよりは変質者の一種のようにすら感じる血走った目にソウルは奇妙な寒気を感じた。

 

「あー、何だ。目的や動機がサッパリ分からない」

「へへ。俺は抜剣術の道場の向かいの速剣流の師範代のセガレの友人よ。お前が訓練で休憩をする度にキャーキャーと女性ファンに囲まれているのが妬ましくて遅刻させてやろうと2時間前からスタンバっていたのさ」

「すまん。目的や動機がサッパリ分からない」

 

 話をすればするほど理解が出来なくなっていく不審者の男にソウルは頭を抱えた。

 見てくれはともかく、生まれたばかりのソウルに人間は理解の及ばない不可思議な生き物であったのだ。

 

「つまり、お前は女性と触れ合いたいんだな?」

「そっ、そうに決まってんじゃん! でも、飢えてるみたいで恥ずかしいからオブラートに包んで欲しいじゃん!?」

「そうか」

 

 オブラートもこの時代にあるのかとソウルは感嘆しつつも不審者に告げた。

 

「じゃあ、お前も抜剣術を習えばいいだろう。休憩中に他の門下生も女子マネージャーと会話しているぞ?」

「…………。いーや、騙されないね。どうせお前狙いの娘ばっかりなんだ!」

「確か門下生と付き合い始めた娘もいたと思うが……」

 

 カッと目を見開いた男は流れるように土下座の体勢に移行するとソウルに頭を下げた。

 

「アニキ! 一生、付いて行きやす!」

「困る」

 

 問答無用でぶん殴れば良かったとソウルは後悔の溜息を吐き出した。

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