ワンパンマン世界に怪人TS転生だって?   作:八虚空

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十五話 円卓の騎士と伝説の魔術師

 アーサー王物語に登場する円卓の騎士とは、伝説の魔術師マーリンの作り上げた魔法のテーブルに名前の浮かび上がった騎士である。

 魔法の円卓にはアーサー王を含めた13の席が用意されており、アーサー王の配下で最も相応しい者の名が自動で浮かび上がってくるように魔法が掛けられている。

 新たな円卓の騎士は空席が生まれた時のみ迎えられ、その者は以前の騎士より勇気と武勲を示さなければならない。

 

 ラウンドナイトのS級ナイトの証である円卓に名を持つ騎士はアーサー王を除いて12名。

 

 最優の騎士との呼び声の高い湖の騎士ランスロット。

 太陽が出ている限り打倒する事は不可能だと恐れられる陽光の騎士ガウェイン。

 聖杯探索を終え荒廃した漁夫王の地を蘇らせたペリノア王の息子パーシヴァル。

 アーサー王の義理の兄であり巨人戦線で多くの強者を打倒したケイ。

 隻腕のハンデをものともせず円卓の座を勝ち取った男ベディヴィエール。

 怒り狂う災害の化身、ドラゴンを鎮めた戦う吟遊詩人トリスタン。

 暴威の化身。意識を失おうと勝つまでは決して倒れない狂戦士サグラモール。

 父の形見のだぶだぶのコートを常に羽織っている小柄な復讐者ブルーノ。

 災害レベル竜の怪人同士である大蛇と獅子の戦いに介入し、獅子を友としたユーウェイン。

 あらゆる脅威を肉体一つで潜り抜ける鋼の肉体を持つ漆黒の女パロミデス。

 アーサー王の選定の剣カリブルヌスを砕いて勝利を収めた理不尽の権化ペリノア王。

 

 そして、地下牢に閉じ込められて尚、円卓にその名が浮かぶ呪いの騎士ベイリン。

 

 

 彼らがラウンドナイトが誇る決戦戦力。円卓の騎士である。

 A級ナイトにもS級に引けを取らないと謳われるラモラック卿や聖杯探索に同行したボールス卿とガラハッド卿に常にアーサー王の背後に控える全能執事ルーカンと曲者が多いのだが、彼らの名が円卓に浮かぶ事はなかった。

 

 予言に登場するキャメロット崩壊の象徴。反逆の騎士モードレッドの名も同じように。

 そもそもテロリストの代名詞となっているモードレッドを名乗る騎士がラウンドナイトに加入するはずがないのだが、希代の大予言者にして最高峰の魔術師であるマーリンは黙して語らず微笑むばかりであった。

 

(やっべー、この世界ってFateじゃないの? 俺に千里眼がないのってマーリン成り代わりの代償だと思ってたけど違うんじゃ……。そもそも円卓の騎士が別人な時点で気付けよ俺。トリスタンちゃんとか女の子じゃんか)

 

 底知れないマーリンの叡智に多くの円卓の騎士が警戒の目を向ける中、今日もキャメロットはグダグダな日々を過ごしていた。

 

 

 

「そんでね。こう、うーっ、で溜めて。はい! で飛び上がるの。分かる?」

「ニャー! じゃ駄目なんですか?」

「むー。やり過ぎると可愛い子ぶってるとか言われちゃうんだよね。そういうのは猫耳モードの時だけにやるから特別感が演出されると思うの」

「なるほど!」

 

「どうしよう。何でこのやり取りで魔法が使えるようになっていくのか、まるで分からない……」

 

 アイドル候補生としてトリスタンの押し掛け弟子となったシノンは師匠のトリスタンとエレナのやり取りに取り残されていた。

 武術に才能はないと見切りを付けて情報収集のスペシャリストであるカマセ隊に参加をしたり、S級ナイトの一人である吟遊詩人トリスタンに魔法を教えて貰おうと押し掛けたり色々と挑戦はしているのだが、どうしても空回りをしているような虚しさが拭えなかった。

 

「ハハハッ、トリスタンちゃんは波長が合うと魔力の微細な動きだけを集中的に指導して基礎練度を上げようとするからね。普通は演奏や歌唱でジワジワと基礎は固めるものだからシノンちゃんは悪くないよ」

「タリエシンさん」

 

 キャメロットの宮廷詩人タリエシン。3代の王に仕え続けているブリテン五大詩人の一人。

 女神とも混同される魔女ケリドウェンの召使いであった小男グウィオン・バハの生まれ変わりである伝説の魔術師である。

 

 この世の全ての知識を得られるという秘薬を口にして殺害されたグウィオン・バハの魂を持つタリエシンは目の前の事象全てを理解する。

 トリスタンとエレナのやり取りも、エレナの種族も、眷属の長であるカーミラも、力を与えた神も。

 その全てを理解したタリエシンは記憶の中に居る神が自分を覗き返してくるのに身震いして視線を逸らした。

 

 彼の本質は召使いの小男の頃のままだ。怖いもの知らずのマーリンと違って歴史に必要以上に干渉しようとは思わない。

 本当に未来を予知できるから、何も変えようとはしない。それがタリエシンの在り方である。

 

「そうだ。シノンちゃんにトリスタンちゃんに代わって演奏指導して上げようか。君は理屈だって指導された方が伸びるし才能もある。アイドルじゃなく裏方のバンドマンの方が君もやりやすいんじゃないか?」

「い、良いんですか!」

「ああ。可愛い女の子をションボリさせたくないからね」

 

 現実逃避にキャバクラの女の子に注ぎ込むような男。そんなロクデナシがタリエシンなのであった。

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