ワンパンマン世界に怪人TS転生だって?   作:八虚空

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十六話 バンパイア傭兵団の仕事風景

「我々の役目は何時ものように壊滅したカマセ隊とは別方面の哨戒だ。どうやらゲルマン人に巨人王イスバザデンの配下の生き残りが合流したらしい。新たな巨人族の女王となったオルウェンと旦那であり元円卓の騎士であるキルッフが助力すると約束したらしいが、怪人一族である巨人は虎の上位の実力を生まれながらに持ち下級兵士だろうと災害レベル鬼が混ざっている。(しゃく)だがバンパイア一族よりも基本的に格上だ。戦闘は避けろ」

「ノイ部隊長。もしかしてビビッてんすか?」

「格下にはイキっても格上には手を出せない。これが誉れあるバンパイア一族っすかー。幻滅ですわ」

「止めなよ。ノイ部隊長は身体で女王を籠絡しただけの名ばかりの隊長なんだから。それ以上、貶されたら泣いちゃうわ。ププッ」

 

 バンパイアで構成された傭兵部隊としてゲルマン人との戦争に参加したノイは部下の舐め腐った発言に額に青筋を浮かべた。

 村に居た頃と違って気軽に吸血できるようになったカーミラは実戦で戦闘部隊としての強さを高めていく事を選択したノイの為に新たに8人もの吸血鬼を誕生させていた。既存の6人を上回る人数比のバンパイア達はノイの為に生み出したからと名付けすらもノイに一任された事に密かに苛立っていた。戦闘力でノイは部下と変わりないのだ。少し先に生まれたからと言葉の習得すらジェントルより遅いカタコトのノイに指図されたくはない。

 

 特にカーミラ好みの女バンパイアである部下二人はノイの配下でさえなければ寵愛を頂けたはずだと嫉妬で燃えていた。ちょっと物欲しそうにしたカーミラの流し目に言葉にならない叫びを押し殺してノイに頭を下げた屈辱を二人は忘れていない。その上、無意識にだろうがノイはカーミラの寵愛を受けている事で二人にマウントを取ってくるのだ。

 女としての独占欲がドロドロとした陰湿な関係を築かせ、巻き込まれた男達は辟易として遠巻きに見る。ノイのバンパイア部隊はそんな雰囲気で傭兵稼業を熟していた。

 

「あ、巨人族発見。一匹で彷徨いているし、ここで狩っちゃいません?」

「確か巨人族は強さと引き換えに群れの頭数が少ないんだよな。我々より弱い人間の前線部隊を単独で荒らす事が多いらしいし、間引いといた方が良いかもな」

「よし、決定! 俺が一番槍な!」

 

 一部のバンパイアはノイに発見報告をする前に独断で巨人に襲い掛かり、ノイが敵勢力の囮だと警告を発する前に戦闘へと発展していた。

 

【チョロチョロと鬱陶しいんだコビト風情がっ!!】

「グブッ」

「こいつ、腕力だけでカーミラ様謹製の鉄鋼鎧を粉々にしやがった」

「気を付けろ。尋常な強さじゃない!」

 

「この馬鹿者ども! 罠だ。生け捕りにされる前にコウモリになって散れ!」

 

 ノイの警告に一斉にコウモリになって消えたバンパイア一族のいた地点を意思を持った闇が覆っていた。

 コールタールのように粘性のある黒い物体が取り逃がしたレアな餌にグォォッと唸り声を上げるのをキィキィとコウモリ達が騒いで遠巻きにする。

 

「変身能力。羨ましい羨ましいな。そんな力があるなんて妬ましい。私なんて泥を生み出す事しか出来ないのに。欲しい。アレが欲しい!」

 

 物体の中から這い出てきた青白い女がそう言ってノイ達を見た。

 ヘドロみたいにネバネバした女の視線に不利を悟ったバンパイア達が一斉に散らばって逃げていく。これで少なくとも誰かは基地に帰り着ける。

 

 得体の知れない女を鬱陶しいと巨人が蹴り飛ばそうとして、足にへばり付いた泥に引きずられて地面に引きずり倒された。

 ぬぉぉっと手で泥を振りほどこうとするもあっという間に全身を泥で覆われて姿が見えなくなっていく。いや、泥に覆われたのではない。元からその身体は泥で構成されていたのだ。自分が生物であると誤解していた巨人は粘性の泥と化して女に吸い込まれていった。

 

「ああ、これだから巨人は嫌だ。何度、言い聞かせても主の事を忘れる。あの怪人達は頭良さそうだったし教育したら良い部下になりそう。欲しい、欲しいな」

 

 女、アングロ・サクソン七大王が一人、嫉妬のエンヴィーはそう何時ものように他者を妬んだ。

 

 

 

「グゥ、まさか基地にすら手を回していたとは」

 

 ラウンドナイトの前線基地に帰り着いたノイ達は基地を襲う巨大な怪鳥の姿に目を剥いた。

 凄まじい大きさだ。カーミラの世界で最大の大きさを誇る鳥ボロンベ・ティタンの比ではない。体長が3メートル超え、体重650キロ以上というのが地球での鳥類の限界だったが怪人にとっては無意味な制限なのだろう。体長20メートル以上の空飛ぶ鯨とでも言うべき巨大な怪鳥が人間のように笑いながら基地を襲っていた。

 

「ゲッゲッゲ。俺様はアングロ・サクソン七大王が一人、暴食のグラトニー様の配下。怪人ビッグチョー! ヒヨコ時代から豪華な餌を大量に与えられてノビノビと育てられた鳥類界の勝ち組よ! 単なるペットが怪人化してグラトニー様すら驚いていた俺様の勇姿に驚愕するが良い!」

 

 何処か力の抜けるような事実を偉そうに語った怪人ビッグチョーは、しかし洒落にならない速度と巨大さで基地を蹂躙した。

 おそらくは災害レベル鬼。下位の実力だろうと相性によっては格上のS級を狩れる可能性すらある怪人。災害レベル虎でも下位の実力で飛行速度の遅いコウモリであるノイ達に手を出せるような相手ではない。

 

「ケッ。ちまちま配下を送り込んで来やがって。どうせならアングロ・サクソン七大王、本人が来いっつーんだ」

 

 燃えるような赤毛を逆立てた一人の男が巨大な怪鳥の目の前に一人で仁王立ちした。手には剣ではなく、巨大な棍棒を握っている。

 木で出来た簡単に折れそうな棍棒を振りかぶり、男は怪鳥を睨んだ。何の流派も学んでいない我流の構えに怪鳥は馬鹿にしたように笑って男を挽きつぶそうと突撃した。

 

「ビッグスクリュー!!」

 

 高速で回転しながら突撃してきた怪鳥の攻撃を男は笑って迎え撃った。

 

「激・烈・殴・打」

 

 メキャメキャっと膨れ上がっていく筋肉が男の身体を一回り巨大に見せ、振り下ろされた棍棒は怪鳥を粉砕するのみならず地面に数メートルのクレーターを作り上げた。

 あまりの威力に男の身体すら衝撃で傷を追っていたが男は気にする素振りも見せずふぃーっと汗を拭った。

 

「くっそ弱え。ペリノア王なら笑って無防備に受けた後、思ったよりも痛かったと怒り狂ってぶん殴ってくるぞ」

 

 ペッと唾を吐いて男、円卓の騎士が一人、狂戦士サグラモールは吐き捨てた。

 これがS級ナイトである。

 

「次元が違う」

 

 冷や汗をかいてノイは主よりも強い人間がこの世にいる事をやっと認めたのであった。

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