ワンパンマン世界に怪人TS転生だって?   作:八虚空

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二十三話 原作と史実と伝説の闇鍋世界

 ローマ帝国が現代文明並の科学技術を保有している事に最初は驚いたけれど、ここがワンパンマン世界だと思い返せば、これはそう不自然な事態ではない。

 1500年後の原作の時期には戦闘ロボットにサイボーグが一般社会に溶け込み普及しているのは、身体改造者達が戦うサイボーグファイトが行われている事が証明している。ジェノスを改造したクセーノ博士やS級ヒーローのメタルナイトを作り上げたボフォイ博士のような一握りの天才でなくても、ロボットやサイボーグは民間の科学者でも作れるのだ。

 おそらく、性能面では比べ物にならないだろうが。

 

 文明を破壊する者と恐れられたアッティラの襲撃によって科学文明が衰退しても尚、現代の時間軸にはそこまで発展してるなら、理想郷のようにヨーロッパで持ち上げられるローマ帝国が現代社会の文明レベルなのは納得できなくもない。

 近隣にこれ程の文明があってもキャメロット付近が中世の文明レベルなのはアレだ。怪人や人間が強すぎて現代科学程度じゃ力不足で侵略できないんでしょうね。平和裏に飛行機を飛ばして貿易しようとすらしないのは、怪人や山賊が魔法で空を飛行して襲い掛かってくるからかな。防衛都市を作って引き籠もろうって選択するのも分かる。A級賞金首、空賊スカイ団は近隣じゃ実力以上に有名だし。

 

 原作でも災害レベル鬼の強さに過ぎなかった覚醒前のガロウが、A級ヒーローデスガトリングのガトリング砲を防ぎきってるしね。

 おまけにデスシャワーという全ての砲弾を撃ち尽くすあの必殺技は気を込めていたんじゃないかと思う。ネオヒーローズに在籍していた資産家の社長であるゼイダッツは、C級ヒーローがA級ヒーロー並の実力を発揮するバトルスーツを更に大金を掛けて強化した特注装備を纏って戦ったにも関わらず、災害レベル鬼の怪人に瞬殺されている。使う人間によって兵器だろうと性能が大きく変わるのだ。

 一番、分かりやすいのはサイボーグのジェノスね。最初は災害レベル鬼のモスキート娘や深海王に負けていたジェノスが単独で災害レベル竜を倒せるようになるまで成長している。新しいパーツを手に入れたってだけじゃ強化され過ぎているわ。我流で気を兵器に込めて威力も耐久力も底上げしてるんでしょう。

 

 早い話、この世界じゃ銃弾の早さや威力すら使い手によって違うのだ。兵士の促成栽培が近代兵器の取り柄なのに真っ向から否定されている。

 災害レベル竜とすら戦える円卓の騎士に気の補助がない普通の戦車や戦闘機では不利。うーん、もしかしてこれが未来でサイボーグやロボットタイプが兵器の主流になった原因なのかしら。AIだから気は扱えないと決まった訳じゃないし。『組織』のロボット怪人あたりはもう生命体にしか見えないもの。

 

「君がバンパイア傭兵団のカーミラ?」

「ええ、そうよ」

 

 ラウンドナイトとローマ帝国軍の戦闘を考察してるとS級ナイトのブルーノに声を掛けられた。キャメロットに訪れる前に感じた視線の持ち主候補の一人である遠隔透視の魔眼保持者。他の候補は超遠距離の戦闘機を精密狙撃できるベディヴィエール。こっちは本当にただ目が良いだけ。接近戦が苦手で円卓最弱を自称してる馬鹿だ。

 私なら何としてもベディヴィエールを真っ先に殺しに掛かるけれどね。他の円卓の騎士じゃ無双は出来ても戦闘機から配下を庇えないでしょ。戦争には勝てても配下がいなきゃ土地の占拠は出来ない。

 

「幕僚格の捕虜を何人か拿捕した。身代金と引き換えにローマ帝国に引き渡すつもりだけど、君に一人渡すから帝国の内情を出来る限り教えて欲しい」

「構わないわ。でも同じ人間を食料として提供しても心は痛まない?」

「……怪人は似たような事をよく聞くね。ローマ帝国が言うには、ヘルウェティイ族は人間じゃないらしいよ?」

 

 蛮族だと怪人と共に長年苦しめられてきた一族は赤い目でニィっと嗤った。

 うーん。まだ中学生くらいの幼い女の子なのにね。こりゃ修羅道に堕ちちゃってるわ。血の匂いがプンプンする。

 

「それに、裏の世界じゃ食人鬼なんて珍しくないし。人間がやった事に比べればボクにはキミ達の方がマシに見える」

「どういう意味?」

「捕虜の記憶を見れば分かるさ。ローマ帝国は一刻も早く滅ぼさなきゃならない」

 

 ブルーノの意味深なセリフに眉をしかめて私は彼女に付いていった。

 

 

 

「ひっ、ヒィィ。血が、俺の血がっ。金なら幾らでも払うから、助けて……」

「ごめんなさいね。こっちも仕事なの」

「ひょんな」

 

 

 

 口元にベッタリと付着した血を舐めて私はブルーノの意見が正しい事を知った。

 駄目だわローマ帝国。本当に早く滅ぼさないと。

 

 あの国、災害レベル鬼以上が出現したら核兵器で片っ端から滅ぼしてる。

 

 そりゃミサイルを弾くシェルターをぶち抜くような怪物が災害レベル鬼だけどさぁ……。ミサイルの飽和攻撃じゃ死なないんだろうけどさぁ……。

 曲がりなりにも人間だと認めているラウンドナイトには凄い紳士的に振る舞っていたのね。ガリアが不毛の大地になってしまったら戦争をする意味そのものがなくなっちゃうだろうし。でも、結構な範囲が既に核兵器で駄目になってる。

 

 しかも現代社会の核兵器より威力が高い。災害レベル竜にも効果があるよう命中率や運用性よりも威力を高める事を優先して研究し続けて来たのね。それを何千発も生産して躊躇なくバンバン撃ってる。地球の広さとか自然環境の回復とかの知識体系や倫理感が発達してないんだわ。まだ、世界地図すらローマ帝国には存在しないもの。住めなくなったら遷都すれば良いって思ってる。怪人が強すぎて交易網が発達しなかった弊害か。

 

 アレだわ。原作でイケメン仮面アマイマスクが言ってた第一次変革期と第二次変革期。

 

 地球上の複数の国家が土地や資源の奪い合いで大きな世界戦争を何度も繰り返す。やがて人口が減少し種の保存が優先となった人類は言語を統一し包括政府が生まれる。これが第一次変革期。この土地や資源を奪い合った相手は人間だけじゃなく怪人一族も含んでの事だったのね。

 世界戦争の影響で地球が蝕まれ自然環境の毒化や急激な気候変動と海面上昇に害悪生物の大量発生により他の土地を捨て超大陸を重点整備して一斉移住する。これが第二次変革期。

 そして地球意思が人間を滅ぼそうと動き出したのかもしれない自然発生型や突然変異型の怪人大量発生が原作。第三次変革期。

 

 今、私は第一次変革期の大きな世界戦争の只中にいるのか。

 アッティラによるローマ帝国への侵攻やゲルマン人の民族大移動、アーサー王のガリア遠征。中国も前王朝を滅ぼして新たな王朝が生まれるのは日常茶飯事だ。もしその争いに核兵器が使用されていたとしたら……。

 

 そりゃ地球意思もアーサー王に肩入れするわ。早く世界征服して無駄な争いをなくしてくれって思うでしょ。

 湖の乙女を通じてエクスカリバーをアーサー王に渡したって事なら、まだ地球意思は人類を見捨ててない。少なくとも第二次変革期の超大陸の重点整備。これがなきゃ自然環境と一緒に人類は滅びるから災害レベル神が動かなきゃならないような事態には発展しない。

 

「ノイ」

「はっ」

 

 敬礼するノイに私は宣言する。

 

「本格的にアーサー王に肩入れするわよ。とりあえずはローマ帝国を滅ぼすわ」

 

 打倒すべき敵を見付けて薄らと私は笑みを浮かべた。

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