ワンパンマン世界に怪人TS転生だって?   作:八虚空

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二十八話 爆裂流爆破

 バンパイア傭兵団から危うくヘリコプターがアングロ・サクソン七大王である強欲のグリードに奪われそうになったので爆破した。と、聞いて、私は頭を抱えながらも新しい大型ヘリコプターを血液を材料に生成していた。定員20人。9人の少数精鋭であるバンパイア傭兵団には大きすぎるけれど、半分は携帯可能な武器庫を兼用しているから、これで良い。

 本当なら攻撃ヘリコプターとして機関砲・ロケット弾・対戦車ミサイルを搭載したいのだけど、強欲のグリードのせいで生成できずにいる。現代兵器は常に補給が必要な為、威力の低い拳銃あたりは面倒くさがって部下に与えてないようだけれど、攻撃ヘリコプターくらい便利な物を与えてしまったらゲルマン人一族の飛行部隊が戦線に登場するようになると思う。責任追及されたくないし、自重しないといけない。

 

 それにしても怪人の異能が便利すぎる。無限の配下に武装とかチートと言うしかない。いや、私にも当てはまるけれど、血液の補給がないと直ぐにガス欠するのでアングロ・サクソン七大王ほど戦略的な影響力を持ててないのよね。嫉妬のエンヴィーは確保した魂をワザと苦しめて恨み辛みの感情を発生させ、その感情エネルギーを用いて泥を生成しているみたいだし、強欲のグリードは無機物、そこら辺の土でも取り込めば兵器の材料に出来るというズルとしか言いようがない補給を可能にしてる。

 

 まあ、これでも原作に出てた災害レベル竜の怪人、黒い精子ほどのインチキ具合じゃないってのがワンパンマン世界のインフレを現わしてるんだけどね。

 奴は11兆以上もの怪人の群体であり11兆の命のストックを削りきらないと始末できないという怪人バンパイア以上の生命力を持ってる。不死身さだけで見るなら竜以上という評価を下せるのだ。タンパク質を取れば簡単に命のストックは増えるし、単体なら普通の子犬にも勝てないらしいが、修練次第でそれも覆せるんじゃないかと思う。強力すぎる異能に胡坐(あぐら)をかいて偽りの全能感に浸って努力をしない典型的なタイプ。

 調子に乗りやすいのが怪人の致命的な欠点なのよね。向いてない事に挑戦したり限界を乗り越えようとはせず、地道な努力を厭う。だから基本性能では圧倒的な格下であるはずの人間種族に駆逐される。

 

「まあ、精神的な敗北をすると戦闘力すら急激に弱体化する恐れが怪人にはあるし、必要な性質なのだろうけれどね」

 

 それが原因で人間との共存が難しいのもまた事実なのだ。簡単に図に乗るから、暴れて民間人に被害が行く。

 核兵器での自然破壊は人間種族だけの責任とも言えないわね。どんなに弱い怪人だろうと人間と共存しようだなんて自分から言い出した怪人は見た事がないし。怪人としては最低ラインの実力だろうと民間人よりは強いから勘違いをしてしまうのよね。怪人を大人しくさせるには一回シメル必要がある。

 ま、力関係を理解してても私のように潜伏して力を蓄えるようなのもいるけどね。フフッ。

 

 

 

 そう怪人は基本的に自分本意で傍若無人。たとえ元人間だろうと怪人になったのならば怪人の本能とでも言うべきものが備わる。

 誰かの風下に立つのが気に食わない。その性質が気付かれないよう人間に紛れ込もうとするような類いの思考回路を許さないのよね。たとえ元人間の突然変異型だろうと容易には人間社会に溶け込めないだろう。原作のイケメン仮面アマイマスクのように。表向きだろうと人間の序列に従う事は難しいのだ。

 

「それで案の定、問題を起こしたのね。怪人である以上、眷属も何時かは暴走するだろうとは思っていたけれど。よりにもよってゴッサム、人間出身の貴方が、円卓の騎士と繋がりのある爆裂流の道場で、門下生全員を師範代ごと半殺しとは」

「こんなカス共と訓練し続けるくらいなら自主練した方が何倍もマシだ。カーミラ、貴様には感謝してやらん事もない。思った以上に怪人化による強化は効果があった」

「うう……カーミラ。来てくれたか……」

「痛ってぇ。ちくしょう。指導でボロボロにすんならまだしも、ゴッサムの野郎。明らかに、いたぶりやがった」

 

 パワードアーマーの基礎研究はゴッサムの暴走によって爆裂流の道場が半壊した事で一旦、中断する事にした。

 こういう馬鹿を黙らせるだけの圧倒的な力を早急に手に入れなきゃならない。今の私ではまだ良い勝負になってしまうからね。

 ラウンドナイトが駆け付ける前に知らせてくれたジェントルには感謝しないと。以前にも思ったけど、あの執事っぽい爺さんは不死化の秘術が確立したら真っ先に候補に入れて上げましょう。

 

 それにしてもちょっと研究・生産で忙しくて爆裂流の道場に顔を出せていなかったからって、良い練習相手がいなくて暴れるとか、我慢強くないにも程があるわね。コイツは私の言った事を本当に理解してたのかしら?

 

「随分なはしゃぎようだけれど、もしかして今ならパロミデスに勝てる気なの? 私は言ったわよね。千年後は強さが逆転してるかもって。決して今の話じゃないわよ?」

「千年も待てるか。怪人化の秘法だったか? 死を乗り越える事での急激な進化。確証はないが、怪人の情報を調べた限り貴様の言葉を否定するような情報は出てこなかった。幾つかの噂にはそれらしいものもあった」

 

 ならば、そうゴッサムが気炎を吐いた。

 

「爆裂流を潰す事でパロミデスを挑発する。本気で殺しに来るパロミデスを乗り越える事で俺はアイツを超える強さを得る」

「馬鹿が」

 

 コイツも幻の強さに魅せられて無駄死にしようとする夢想家なのね。救いようがないわ。

 私は死ぬレベルの鍛錬を乗り越えろと言っているのに、死ぬ危機を自ら招いてどうするのよ。たとえ偶然、命が助かってもそれだけで強くなれる訳ないじゃない。

 

 都合良く覚醒できるなら誰も苦労はしないんだよ、この現実の見えないクソガキが。

 

「パロミデスの前に私が殺して上げる。現実の見えない甘ったれたガキをね」

「やってみろ。まずはお前を乗り越える」

 

「なあ。私をノケモノにして結論を急がないで欲しいんだけど」

 

 バチバチと闘気の応酬をしていた私とゴッサムは、ドンっと震える大気にバッとそちらを振り返った。

 放出している闘気の量が私達とは比べ物にならない。

 そこには、褐色の肌をした黒い女が、額に青筋を浮かべて佇んでいた。

 

「で、私は誰をぶっ殺せば良いわけ? 立ってるのは全員、始末して良いわよね?」

 

 ラウンドナイトの誇るS級ナイト。誉れ高き円卓の騎士が一人。

 鋼の肉体を持つ漆黒の女パロミデスに敵対宣言された私は溜息を吐いて天を仰ぎ見た。

 

 今日は厄日だ。

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