ワンパンマン世界に怪人TS転生だって?   作:八虚空

5 / 40
四話 最強の種族

 イワン。怪人、寝取られ男の魂を取り込んでから未亡人となったキャサリンは塞ぎ込んでいたけれど、私なら眷属として復活させる事が出来ると囁いたら以前にも増して私に奉仕するようになった。亡き夫に対する愛情と、快楽に乱れる事への罪悪感に対する免罪符を手に入れたのが理由かしらね。

 調教が進んだキャサリンはもう内心では私に抱かれる事を嫌がってない。そんな自分への自己嫌悪が塞ぎ込んでいた理由。

 

 良いわね。生前は理解が出来なかった寝取り物が人気な訳が分かった気がする。

 

「どうでしょうか。オリーブの実を石臼でひいて圧縮機で油を搾油した物です。マッサージオイルの再現が出来てますでしょうか」

「ええ、良い感じね。フフッ。でも胸で性的マッサージをするなんて変な知識が伝わったものよね」

 

 私がキャサリンに夢中になっているのが気に食わなかったのか、眷属のノイも競うように私に奉仕をするようになった。

 どうやら眷属の吸血鬼ではなく、人間が寵愛を受けていることにプライドを刺激されたらしい。積極的に性に関する知識を現代日本の記憶から掘り起こしているようだ。

 良い感じにエロくて退廃的な組織になって来ている。やっぱり吸血鬼とはこうでなくてはいけない。強くて美しくて残酷で、だけど何処か救いがあって。呑み込まれてしまうような妖しい魅力がある。悪だと分かりきっているのに人間達が自ら望んで血を献上しに来るようなそんな存在。

 

 拠点としている村にも何人か吸血鬼の眷属になりたいと自ら私のハーレムに加わろうと模索してる女性がいることを知っている。

 別に隠すように言っていないからキャサリンから人間が吸血鬼へ生まれ変われる事を聞いたのだろう。密かに色めきだっている。不老不死。遙か太古から人間が求めてやまない物だ。

 

「人間の眷属化は魂に関する秘術だから研鑽しても私にしか出来ないのよね。何とかバンパイア一族全体へ伝えられたら良いのだけれど」

「……その必要があるでしょうか」

「眷属同士で普通に子供を産む事は可能だと思うけれど、それだと普通の怪人一族と変わらないのよね。吸血鬼って人間を仲間に引きずり込めるようになってやっと一人前だと思うの」

「何故、あのような弱者を仲間などに」

「クスクス。不満そうね?」

 

 確かに人間、いや一般人は弱い。怪人で最弱の災害レベル狼を相手に人を集めて武装を整えて包囲してやっと打倒できる戦力バランスだ。

 だが、それは単に非戦闘員と最弱の兵士との戦力比較をしたというだけの話に過ぎない。

 

 ワンパンマンの原作に登場した地底人に深海族は明らかに生まれながらの怪人一族であり、王を考慮に入れなくても一体一体が災害レベル狼以上の実力を持っていた。地底人は単体で災害レベル虎で、深海族は10体で虎クラスになるんだったかな。この差は軍隊としての練度や生物的ステータス、種族内での序列闘争を考慮に入れれば不自然ではない。地底人は後で内乱が勃発したようだしね。武力を尊ぶ種族だったのでしょう。

 

 それにも関わらず彼らは素では災害レベル狼に敵わないはずの人間に追いやられて地底や深海に隠れ住んでいた。いや、他にも竜クラスの怪人が何人もいたにも関わらずヒーロー協会を潰す為に怪人が集まって怪人協会を結成するくらいに怪人は人間に追い詰められている。

 これは明らかにサイタマ一人の功績ではない。

 

 S級ヒーローは確かに災害レベル鬼にすら負ける事のある人間の弱さの象徴であるが、同時に災害レベル竜を葬る事の出来る人間が何人もいるという人間の強さの象徴でもある。

 地球に生息する何十種族もの怪人の強者を集めただろう怪人協会に複数の惑星から人材を集めただろう怪人ボロスの暗黒盗賊団ダークマター。

 怪人のトップ層を集めただろう組織の幹部達が災害レベル竜である。そしてそれに対抗していたヒーロー協会は基本的には人間だけで構成された3年前に発足したばかりの組織である。

 

 明らかに人間が強すぎるのだ。サイタマがいなければ人間は滅んでいたとワンパンマンのファンはよく言うが、本当にそうか?

 災害レベル竜であるムカデ長老はS級ヒーロー1位であるブラストに負けて逃走したという。サイタマ以外にも災害レベル竜が泣いて逃げ出す強さの人間はいるのだ。

 

 それに天才科学者のジーナス博士。若返りの研究を成功させて老いに打ち勝ったばかりか、自らのクローンを作成して共に研究したというマッドサイエンティスト。

 彼の組織、進化の家は災害レベル鬼がゴロゴロしていた。強すぎて制御できなかったとはいえ、災害レベル竜である阿修羅カブトを作成できた。3千年を生き抜いた私と同等の怪人を生み出したジーナス博士はまごう事なき大天才と言って良いだろう。

 だが、ジーナス博士は確かに天才ではあるが、科学によって尋常でない成果を残した人間は他にもいる。

 

 一発屋だが、科学者フケガオの開発した究極のステロイド『上腕二頭キング』を摂取した弟のマルゴリは災害レベル鬼、もしくは竜クラスの巨人へと変貌した。

 S級ヒーローのメタルナイト・駆動騎士はそれぞれ別の科学者が生み出した災害レベル竜に届きうる機械だ。機械であるからには量産できる可能性がある。

 他にもS級ヒーローの参謀である童帝は天才的頭脳を持ちS級に相応しい成果を上げているにも関わらず、未だに10歳の少年なのだ。

 

 サイタマの弟子であるジェノスはクセーノ博士に改造されたサイボーグだ。確かに本人の経験や努力もS級ヒーローになれた大きな要因だろうが、クセーノ博士はその気になれば何人ものサイボーグを生み出せるだろう。S級ヒーローのサイボーグ集団。悪夢かな?

 

 ジェノスの故郷を滅ぼした狂サイボーグをサイタマが既に倒した可能性があるかという話になったとき、ジェノスは倒したのならその強さでサイタマの記憶に残っているはずだと答えた。思い出補正を加味してもそんなサイボーグを生み出せる人間がいることを示唆している。

 狂サイボーグを生み出した候補である「組織」と呼ばれるロボット怪人を送り込んだウィラン組織は機神ヅシモフと機神G5という災害レベル鬼の機械を作製可能だ。おそらくは人間が背後にいるものと思われる。

 

 S級ヒーロー2位、戦慄のタツマキは災害レベル竜を容易く倒す圧倒的な超能力を誇る。研究機関で英才教育を受けていた過去があるが、妹であるフブキは姉とは比べ物にならないショボい超能力しか扱えていない事から、超能力は血筋で遺伝はするが努力よりも才能で出力が決まるものと思われる。人間種族は災害レベル竜に匹敵する才能を持つ異能者が突然、生まれてくるのだ。

 

 S級ヒーローの武術家バングは竜以上の怪人ガロウを育て上げた事で有名だが、本人も災害レベル竜の怪人を打倒できる強さを持つ。兄に己と同じ実力を持つボンブがいて別流派の達人同士である。素手で災害レベル竜を打倒可能な流派が2つも人間社会にはあるのだ。

 同じくS級ヒーローのアトミック侍は3人のA級ヒーローを育て上げている。体系化された流派は間違いなく人間を圧倒的な強者に変える。

 

 災害レベル竜を打倒できる可能性を持つのはヒーロー協会だけじゃない。

 S級賞金首、音速のソニック。彼はS級ヒーローに匹敵する忍者の里で育成された暗殺者だ。

 非人道的な手段を用いたのだろうと定期的にA級やS級の卵を育成して世に送り出す隠れ里が存在した時点でもう怪人と人間の戦力比を比べる事自体が間違っている。

 

「人間が弱い、ねぇ……」

 

 笑ってしまう話だ。単に人間の敵を人間が生み出しているだけで最初から怪人と人間の間にはかけ離れた断絶がある。

 だが、だから怪人側から人間側に鞍替えすれば良いかと言えば話が違う。

 

 怪人側のラスボスは少なくとも地球では災害レベル神だろう。宇宙規模の話になると神以上なんて新たな階級が出てくるのかもしれないが、それは置いておいて。

 怪人ワクチンマンは地球意思によって生み出されたと語った。地球意思と神がイコールではない可能性はあるが、もしイコールであったのなら。

 神を滅ぼせば地球も一緒に滅ぶのでは? そういう疑問を抱かずにはいられない。

 

 少なくとも地球意思は死ぬだろう。普通に意思のなくなった地球が残るのかもしれないが、それはつまり地球の死骸の上で暮らすということだ。

 サイタマがそれで困るシーンが漫画で描かれるとは思えないから人間の一生分の時間は間違いなく平穏に過ぎる。でも、その後は?

 

 吸血鬼は不老不死なんだぞ。地球が死んで自然が消えて生物のいなくなった星でそれでも生きろというのか。

 駄目だ。サイタマ陣営には決して入れない。認めるわけには行かない。

 

「覚悟しなさいノイ。これから嫌でも人間の強さを思い知る羽目になるわ」

 

 強くなる必要がある。最悪の場合に備えて他の星へ渡る術を手に入れる必要がある。

 その為にはやはり人間を仲間に引き入れなければならない。

 

 人間を滅ぼす為に。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。