「コォーッ」
深呼吸を一つして、腰を落とし右肘を背後に構えた。
体内のエネルギーを一ヶ所に集めるように意識をすると右肘から鋭利な鎌が生え始める。原作の怪人バンパイア(血統書付き)も行っていた武器生成。
吸血鬼は血を材料に衣服や武装といった無機物を生成できるのだ。肉体のコウモリ化も含めた生まれながらの異能。
私が生み出した眷属達も可能な基礎技能だが、習熟度があるらしく現状では意識を集中させないと行えない。
「シッ」
気合いと共に右腕を振り回せば周囲に生えていた樹木が一瞬で輪切りになった。
刃の届いていないはずの樹木すら切れている事から衝撃波が発生したのだと思われる。災害レベル鬼の身体能力は物理法則を凌駕するのだろう。
「おおっ!」
見学していた眷属と人間達から歓声が上がった。彼らからすれば視認できない速度で一瞬で樹木をぶつ切りにされたのだ。畏敬の念が湧き上がってもおかしくはない。
私はそれを微妙な顔で見て、切り倒した樹木を小屋に運んでおくよう言いつけた。樵としての稼業は既に破綻しているが暖を取る為の薪や新たな家の建築材など需要は多いし、無駄な自然破壊をしていると判断されたら後が怖い。
まあ工業廃水なんかの分かりやすい自然破壊じゃなきゃOKだとは思うけれどね。それでも樹木怪人なんかが仲間の敵とか言いながら生まれる可能性はあるが、それは単なる生存競争なので踏みにじって良い。
問題なのは。
「カーミラ様どうぞ。お飲み物です」
「ありがとう。ねぇ、ノイ。貴女は今の動きが見えた?」
「いえ、私などにはとても」
「そう……」
災害レベル虎であるノイに視認できないのはある意味、仕方ない話ではある。そもそも真祖の吸血鬼である私がノイを生みだしてから、まだ一月も経ってないのだ。
その上、材料は猿の群れの血液。食料として計算したら人間の集落を一週間も養えないだろう。破格である。
十分チートだ。美女だし、素直で健気だし。
でも、S級ヒーローのアトミック侍なら今の一瞬で周囲の樹木を粉微塵にしてタバコを吸う余裕があったはずだ。武器も長物なら何でも良い。爪楊枝で怪人をバラバラにした描写があったしね。
私の実力はせいぜいアトミック侍の弟子であるA級ヒーローの一人と同等といったあたり。この実力で周囲の誰も付いてこれないのはマズい。
「怪人化の秘法か」
怪人協会のギョロギョロが語っていた怪人化で起こる細胞変異の繰り返し。人としての死を繰り返す事で上位の怪人へと変異するサイタマのリミッター解除の怪人版。地球の全ての生物が健常な営みを続けていけるよう存在する神様の設計図、成長リミッター。これを解除しないままに爆発的な成長をするもう一つのバグ技。
おそらくこっちなら理論上は私達でも真似できる。問題は吸血鬼の再生能力が逆に足枷になって尋常な地獄では起こらないだろうという事か。
「いや、まだ早い。吸血による強化も技術の研鑽による強化も試していない。それで外法に手を出しても三流怪人にしかならない」
原作で起こった怪人の急激な弱体化を思い出して私は首を振った。
ワンパンマン世界はおそらく、ドラゴンボール世界と同じく鍛錬での強化にこそ重きを置かれている。精神的なベクトルがプラスかマイナスかでリミッター解除か怪人化か分かれるんだろう。原作に登場した怪人王オロチ・ヒーロー狩りガロウ・ハゲマントのサイタマは全員が同じサイヤ人的な人種なのだと思う。似たような魂を持っているのだ。
彼らと同じように壁を乗り越える為には正攻法での鍛錬の下積みが必要不可欠。
「面倒くさ」
別に私って強くなる事にカタルシスを覚えるような人間じゃないのよね。
エロと蹂躙は大好きだけれど。もっと楽にチート転生者としてブイブイ言わせたい。
いいや、どうせ時間は唸るほどある。百年くらい遊ぼう。
「リリシアを呼んできて。ロリを楽しみたい気分」
「かしこまりました」
「あの。その。お友達を呼んでも良いでしょうか」
「ん? 家の前で様子を窺ってる娘達? いいわよ」
「ありがとうございますっ」
キャサリンの妹であるリリシアを伽に呼んだらオマケに数人の女の子が付いてきた。
全員がリリシアと同じ年頃で、吸血鬼の眷属になりたいとハーレム入りを目指している女性達とは別人。
何が目的なのか最初は首を傾げたが、オズオズとこちらを見上げてくる態度でピンと来た。こりゃ性に対する好奇心ね。
リリシアから色んな話を聞いて耳年増になって身体を持て余したんでしょう。この年齢なら年上のお姉さんに憧れる事も多い。
私は美男美女がデフォルトのバンパイアの真祖だし、魅了の異能を持たずとも素の魅力で人間がなびいても不思議じゃないしね。
流石にバンパイアの眷属レベルの美貌の持ち主はキャサリンとリリシア姉妹だけだったが、頬を赤らめて見上げてくる様は可愛らしくて魅力的に映る。
一夜の相手くらいはしても良いわね。どうせならお互いに慰め合わせて性癖をねじ曲げて上げよう。
「フフッ。今日は特別にうんと優しくしてあげる。皆、こっちにおいで」
「「は、はい」」
脱水症状が起きないよう果物を絞った果実水を寝床に持ち込んで、一晩中、楽しんだ。
こういう日が続けば良いのに。