【悲報】転生したらツンツン頭で知らない部屋にいたんだけど 作:現実殺し
なので、気に入らない方は別に飛ばしていただいて構いません。ぶっちゃけ本編と結果は変わらないので。
過程は違うと思いますが。
ここだけの裏話。
一方通行は人質を取られていたという設定になっているが、その人質役は打ち止めだったりする。
「デート……いやいや、そもそも俺に相手なんていないんだが?」
掲示板の唐突なメンテナンスが始まり、特にやることもなくボーっと過ごしていた上条だったが、1000レス目で上里がデートしろとかいうふざけた安価を出して、それが実現してしまった。
安価は絶対。掲示板をするものなら常識……というか、当然のこと。
しかし、相手がいない。つまり、出会いがないのだ。
「宿題はもう終わったし……とりあえず……外に行って、散歩でもしながら考えるか」
そう思った上条は、家を出て、適当に歩きながら、今後について検討する。
(にしても、夏休みだけで随分と濃かったな。インデックスには消し飛ばされそうになるし、学園都市最強と戦う羽目になるし、実家は燃えるし)
というか、後で知ったが、
御坂妹が殺されるということで頭に血が上っていたが、今にして思えばとんでもないことをしていたと思い、血の気が引いたのを覚えている。
まあ、反省はしている。だが後悔はしてない。
「ごめーん、待ったー?」
上条の隣を何かが通りすがるが、大方他のカップルが待ち合わせでもしていたのだろうと思い、無視する。
「待ったー? って言ってんでしょうが無視すんなやゴラァァァ!!!」
「ごぶふぅ――ッ!?!?!?」
その瞬間、御坂の声を聞いた気がした上条は振り返るが、直後にプロ顔負けの強烈なタックルを食らうこととなった。
「「「( ゚д゚)」」」
そして、その光景を見ていた通行人は、全員このような表情をしていた。
「……う、う~ん。……あれ?み、御坂? 何を――」
「お願い……話を合わせて」
顔を真っ赤にして、小さな声でそう頼む御坂。
「いやー、待たせちゃったわねー?お詫びになんか奢るから許してー……なんて」
「え、は、いや……」
唐突過ぎて意味が分からない上条。
だが、頼まれた以上、良くは分からないがやるしかないだろう。
(こういう時、スレ民がいればなー)
「あ、あー!いや俺の方こそ待たせちゃったよなー!?ホントゴメ――」
「ちょっと!私に無断で何をやっているんですのお姉様!」
隣の建物から、そんな声が聞こえた。
上条はその声の主を知っている。一度、公園で出くわした
「……アハハ―」
「ギャアあああああああ――ッッ!?!?!?」
御坂は乾いた笑みを浮かべた後、上条の首根っこを掴み、凄まじい勢いでその場を去っていった。
そして、落ち着いた二人は、状況整理をした。
なんでも、御坂はここ最近、
「ふ~ん、常盤台の理事長の孫……ねぇ。そりゃまた厄介だな」
「そうなのよね。無下には出来ないし」
「誰でもいいから恋人役にして、離れてほしい、ねぇ」
「……しょうがないじゃない」
途中で買ったホットドッグを食べながら、上条は考える。
(……不幸……いや待てよ。寧ろラッキーじゃねえか?)
上条は安価であるデートを、未だに達成できていない。
それは、相手がいないからだ。
「せっかくだし、二度と付きまとわれないようにしたいんだけど……」
「いいぜ」
「そうよね。そんな簡単に……今なんて?」
「ん?だから別に良いって言ったんだけど?」
「ファッ!?」
まるでスレ民のような叫び声をあげて、御坂が立ち上がる。
「え、え? ほ、ホントに? 私と一緒にいたら変な噂立っちゃうかもよ?」
「むしろ変な噂立ったら困るのはお前の方な気もするが……」
「あ! 分かった! さては罰ゲームかなんかでしょ!」
「……うーん、まあ、半分くらい正解?一応誰かとデートしろって言われたんだが、如何せん相手がいなくてな。ほら、WinーWinってやつ?」
「……まあ、そんなことだろうと思ってたわよ」
あからさまに落ち込む御坂。しかし、上条はその理由が一切分からなかった。
「それで? 何すれば良い訳?」
「なにって……」
「恋人っぽい事。まあ、俺の事情を考えれば、デートが一番なんだろうが」
「ででで、デート!?!?」
またいきなり元気よく立ち上がる御坂。
「お前、さっきから忙しすぎじゃね?」
「ううう、うるさいわね!!」
「……そういや、この街にはどれくらいの
すると、御坂が驚いたように問い返した。
「なんであの子たちが学園都市の外にいるって知ってんの?」
あっ、やってしまった。と、上条は自分の迂闊さを後悔する。
そもそも、上条が実験の事や、
当然、こういったところで不自然さが出てくる。
「あー、あれだ。外に出ていくって言う個体の奴に聞いたんだよ」
「……ふーん、まあそうよね」
特に疑うこともなく、それで納得してくれた御坂に、上条はほっと息を吐いた。
上条は知らないが、
なので、別にどの個体と会話していて、どの個体と過ごしていても、不思議ではないのだ。
「あ、私、なんかジュース買ってくるわよ」
「ん? いや、それなら俺が……」
「こういうのは断った方が気まずくなるの。ほら、美琴お姉様に任せなさいって」
そう言って、ジュースを買いに行く御坂。
「ん?」
すると、犬の鳴き声が聞こえた。
声のほうを見てみると、同い年くらいの青年が、リードのついた犬を追いかけていた。その後ろを、小学生くらいの子供が追いかけている。
すぐに犬を捕まえ、子どもに渡す青年。どうやら、散歩の途中でリードを離してしまったようだ。
子どもは青年に感謝を伝えると、犬とともに走り去った。
その後ろ姿を見た青年も、その場を立ち去ろうとし、上条を見て足を止めた。
「……俺?」
「初めまして。自分は、海原光貴といいます」
「あ……」
「少しよろしいでしょうか?」
そう言った海原は、向かいの席に座る。
「……あー、俺は上条当麻だ」
「どうも。……いきなり申し訳ないのですが、貴方は御坂さんのお友達なのでしょうか?」
「気になるのか?」
「ええ。それはもう。自分の好きな人の傍にいる男性なのですから」
思わず海原のほうを見る上条。
「……へえ。本気なんだな」
「分かるんですか?」
「なんとなくな」
「凄いですね。自分にはとても出来ませんよ」
「そうでもねえよ。こういうのは案外……ん?」
そして、上条は見た。ジュースを買うために並んでいる御坂のもとに走っていく
「……」
「どうかしましたか」
「いや……ちょっと付き合ってくれ」
「はい? ……え、あ、ちょっと!?」
「ちょっと! 大変なことが……あれ!? アイツいない!?」
無理やり海原を引きずり、近くの誰もいない路地裏までやってきた上条。
「も、もう。何なんですか一体?」
「いやなに。お前、兄弟とかいる?」
「いえ、自分は一人っ子ですが?」
「ふ~ん。……実は、さっき見たんだよ。お前そっくりな奴が、御坂のとこに駆け寄っていくの」
「……自分そっくりの?」
「ああ」
すると、海原は考え込むような仕草をした後、言った。
「もしかすると、自分に化けて御坂さんに近づこうとしているのでは? 学園都市には肉体を変化させる能力者も……」
「散々避けられてるお前にか? 実は気づいてるんだろ?」
「……」
「……それに、もう一人のお前は、腕に包帯を巻いていた。……そう、
上条はより一層表情を険しくし、海原を睨みつける。
「お前、本当は誰なんだ?」
「……はぁ。上手くいかないものですね。人を騙すのは」
海原はポケットから黒いナイフのようなものを取り出すと、上条へ先端を向ける。
その行為に、猛烈に嫌な予感がした上条は、衝動的に左に避ける。すると、右側に置かれていたゴミ箱が弾け飛んだ。
「な――!? 超能力……いや、魔術か……!?」
思わず冷や汗を流す上条。
一瞬、恐怖が体を縛り付けそうになるが、固まっていては死ぬだけだと、無理やり体を動かす。
「ふっ」
不敵に笑い、攻撃を再開する海原。
そのまま続く第二射、第三射を躱し、逃げていく上条。
すると、誰かから電話がかかってきた。
「くそ、誰だこんな時に!?」
『やあ。その様子だと、ギリギリ間に合ったみたいだね』
「ステイル!?」
電話の主は自身の同類にして、魔術師であるステイル=マグヌスだった。
「なんでお前が……」
『いやなに。掲示板が停止すれば、その状況に対応できないと思ってね』
「俺の状況を把握してんのか!?」
『ああ。君の敵は海原光貴。そしてそいつは、実は魔術師だった』
「話が早ェ! 教えてくれ、あいつ何してんだ!?」
『そいつが使うのはアステカの魔術。攻撃手段は金星の光を黒曜石のナイフで反射しているんだ。変装の手段は、変装したい相手の皮をはいで使う』
「皮!? ……ああ、だからあいつは腕に包帯を」
しかし、ステイルがこのことを予期していたということは。
「これも原作の?」
『ああ。変装を解きたいなら、顔を殴りつけてやればいい。攻撃を防ぎたいなら、むしろ逃げるより立ち向かえ。奴は攻撃する際、角度を調整しなければならない』
「そうか! 常に角度をずらし続ければ! サンキュー!」
『あ、お──』
通話を切り、海原に向き直る上条。
「おや? もう鬼ごっこは終わりですか?」
「ああ。行くぞ!」
「ふっ、いい
ずれる。角度が合わない。
上条が右へ左へとずれながら動くため、調節ができないのだ。
「うぉぉぉぉおおおおお―――!!!」
「くっ!」
あっという間に接近し、上条は拳を振るうが、海原はそれを体を捻って回避する。
「この! くそ!」
「ちっ! しつ…こい!」
何度も振るわれる上条の拳を躱し、海原がカウンターで蹴りを叩き込んだ。
上条の体が吹っ飛び地面に叩きつけられる。
「ガハッ!?」
「ふぅ……終わりです!」
そう言って、海原は上空にナイフを掲げると、ナイフが光を反射した。
回避は出来ない。それをするよりも、海原の攻撃の方がはるかに速い。
ならば、と。上条は己の直感と、体が覚えている経験に従い、右手を盾の様に突き出す。
すると、右手に衝撃が来たと同時に、上条の体に突風が駆け抜けた。
「バカな!? 直撃したはず――!?」
やったという確信があっただけに動揺する海原。
その隙を突き、飛び起きた上条が、一瞬で距離を詰め、海原の顔を右手で殴りつけた。
「がぁぁ……!」
海原の顔が剝がれる。浅く焦げた肌、赤光する瞳。
あらかじめ理解してはいたが、まさかここまで別人だとは思わず上条は内心驚愕した。
「……本当に……海原じゃないんだな」
殴られ、地面に倒れる海原に上条は問いかける。。
「一体、何が目的なんだ? どうして御坂に近づいた……いや、聞くまでもねえか。最初に言ってたもんな。御坂が好きだって。じゃあ、なんで海原を巻き込んだ?」
「都合がよかったから、ただそれだけですよ。そもそも、こうなったのも、すべては貴方が原因!」
「……なに?」
海原の上条を責める発言に、思わず眉を顰める上条。
「貴方は……ステイル=マグヌスや禁書目録などの強力な魔術師、学園都市に7人しかいない
「なんの話だ……っ?」
「惚けても無駄ですよ。それとも、ただ自覚がないのでしょうかねぇ? まあ、貴方にその気がなくとも、既に結果として『それ』は起こっている!」
海原は叫ぶ。
『上条勢力』という一つの団体が出来つつあること。それが魔術と科学を脅かす不安定な存在であること。そして、自分は上条勢力を内部から切り崩すためにやってきた事。
「そのためには……貴方の顔を頂くとしましょうか!」
「ッ!?」
海原が殴られた時落としたナイフを拾い、上空に掲げる。
それを見た上条は前転し、物陰に隠れる。その後、上条が元いた場所が吹き飛んだ。
「なんでだ! お前の御坂への思いは本物だったはずだろ‼ ……ぐっ!」
続く攻撃で、隠れていた場所が破壊され、咄嗟に飛び出して巻き込まれるのを回避する。
だが、好機だった。何故なら、飛び出した先は、海原の近くだった。
(まずは……あのナイフを……!)
スレ民の話によれば、自分の右手、
ならば、あのナイフを破壊できるかもしれない。その望みに賭け、捨て身覚悟で海原へと接近する。
「はぁっ!」
「くっ!」
海原の右足による反撃が上条の脇腹に直撃するのと、上条の右手が海原のナイフを砕くのは、全く同時だった。
「ゲホッ!? ……これで、ハンデは消えたぞ」
「くっ……この程度で!」
海原は拳を握り、上条へと振りかぶる。
それを左手で受け止めた上条は、逆に海原の右頬を殴りつけた。
「ぐはっ!?」
「確かに、お前は偽物だったよ。名前も偽物、姿も偽物、立場も偽物……でも、御坂が好きだっつう思いは……それだけは、本物のはずだろうが!」
「……私だって……こんなことはしたくなかった! けど、『上条勢力』は危険だと、上が判断してしまったから!」
「……」
「貴方が穏便でいてくれたら……問題なしと報告させてくれたら、御坂さんを騙すなんて真似をせず済んだ! ……私は、貴方たちの敵となってしまった!」
「ふざけんな!!」
「ッ!?」
突如怒鳴り声を上げた上条に、海原が僅かに慄き、後退する。
「そんなもん、ただ状況に流されただけだろうが! 責任を俺に押し付けて、自分は何も対策を取らねぇで、思考停止してただけだろうが!」
「な――ッ!?」
「もし御坂がお前と同じ状況に陥っていたとしても、お前みたいに他人に責任を押し付けて、ただ怒り散らすようなことすると思うのか!? 絶対にねえ‼」
御坂は強い。学園都市の闇を一人で駆け抜けていき、一〇〇〇〇人以上の妹を救おうと奔走し、それを誰にも悟らせなかった。
辛かったはずだ。泣き叫んで、誰かに助けを乞いたかったはずだ。
きっと、誰か一人は、彼女を支えてくれたはずだ。
でも、御坂はそうはしなかった。彼女は、強いから。何より、誰かを巻き込むことを良しとしない善人であったから。
「くっ……!」
「結局、テメェは怖かったんだろ。自信が無かったんだろ。だから我が身可愛さに、一番楽な道を選んだ。お前は被害者じゃねえ。ただの臆病者だ!」
「黙れ! 貴方に……何が……!」
「なにも分かんねぇよ。けど、お前が間違ってるのだけは分かる!」
だから、と。上条は拳を握り、それを海原に向ける。
「テメェの勘違いを、幻想を、今ここで砕いてやる。……来いよ偽物。嘘偽りで塗り固めたモノの先にある、お前の本物を……俺にぶつけてみろ!」
「上条ォォォ……当麻ァァァァァァああああああああ―――ッッッ!!!」
凄まじい咆哮とともに、海原が駆ける。
そんな彼の本気に答えるように、僅かに笑みを浮かべた上条は、海原へと突撃する。
「「ォォォぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお――――――ッッッ!!!」」
それぞれの思いを胸に、二つの拳が交差する。
「くっ……」
上条が膝をついた。
その表情は苦痛で歪んでいる。
「……っ」
その姿を見て、笑みを浮かべた海原が言った。
「
海原は背中から地面に倒れた。
勝負を制したのは、上条だ。
「……やはり……偽物では、本物には敵わないのでしょうか?」
「んなこたぁねえよ。偽物が本物に敵わないなんて道理はねえだろ。偽物だろうが何だろうがお前がやりたいこと、やるべきことをお前なりに貫き通しゃいい」
「全く……無茶苦茶なことを言う。そもそも、今あなたに負けたばかりだというのに……」
そもそも、海原が偽物だからと言って、それをどうこう言う権利は上条にはない。
なぜなら、彼もまた、
ただ、偽物として、上条が一枚上手だっただけ。
ならば、いずれは海原が上条を越えるときも来るだろう。
それは上条が考えるより、ずっと早く。
「自分は……本当に出来るのでしょうか。御坂さんを守ることが……。貴方を、越えることが……」
「その答えは、お前が見つけるもんだよ」
「……攻撃は今回限りではありません。貴方や御坂さんは、今後も狙われ続けるでしょう。だから……私がその答えに辿り着くその時まで……彼女を、彼女の世界を……私の代わりに、守って、くださいますか?」
上条は、その海原の問いかけに答えた。
「 、 」
「……全く、最低の返事、だ……」
力尽きたのか、海原はそこで眠りについた。
それを見た上条も、そっとその場を後にした。
あれ?イッチ何処?ここ?
っていうか、あんまデートしてねえ。なので次の話でさせます。
にしても、いつからこんな熱血系になったの?