用務員の日常   作:八雲 紅

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おい、会話しろよフェイズ(遊戯王ではよくあること)
漫画版キャラが出ますが十代は出ません


用務員、観戦する

神楽坂のデッキ作りから数日。

武藤遊戯のデッキ展覧会も無事終わった。

神楽坂はあれから調子を上げておりレッドへの降格はギリギリ免れた。

そして神楽坂は今、教育実習で高等部に来ている先生のデュエル相手に指名されたらしい。

なんでも教育実習生は決まった回数デュエルするルールがあるらしく神楽坂はその相手に選ばれたという訳だ。

 

俺は店番をセイコさんに任せて作業服にエプロンのいつもの購買部スタイルで神楽坂の勇姿を見届けるためデュエルフィールドに来ていた。

ちなみにこの間に早乙女レイの転入から送還という一連の原作イベントがあったが全てスルーした、というかいつの間にか終わっていた。関わる理由も必要もきっかけも無いから仕方ない。

あとノース校との代表を賭けた十代と三沢のデュエルも終わっていた。結果は原作通り十代が勝ったので復活のサンダーと十代が戦う事になる。

 

何はともあれ弟子1号の新デッキお披露目会だ、師匠として見届けなければならぬと決めて席を探すために移動。

席は余っており周りに生徒の居ない席を確保して試合開始を待つ。

 

「隣、いいかしら?」

 

妙に聞き覚えのある落ち着いた女性の声が隣から聞こえれば声の主は俺の返事も聞かずに隣の席へ座る、聞いた意味とは。

 

「何か用かな藤原さん」

 

「購買部のボウヤがここに居たから、ではダメかしら?」

 

俺の問いかけにくすりと笑って答えるのは遊戯王界の跡部景吾こと藤原雪乃。両方青いし金持ちだしおもしれー奴好きだから実質一緒だろ(適当)

彼女については以前に購買部で明日香に紹介されてから挨拶を交わす程度……まぁ知り合いレベルにはなっている。

もちろん向こうは俺をボウヤ呼びである、俺歳上なんですがね。

 

「ご自由にどうぞ」

 

「つれないわねぇ」

 

向こうは俺の返答に不満そうに唇を尖らせるが知らん俺の管轄外だ。

 

「珍しい組み合わせね。私もいいかしら」

 

「失礼します」

 

「……どうも」

 

「あら、委員長に明日香と、レインさん?」

 

次に声を掛けてきたのは明日香。珍しく委員長こと原麗華とレイン恵を連れている。

明日香は俺の隣、委員長とレインが後ろの席へ座る。女子率が高い。

 

「健斗さんはどうしてここに?」

 

「神楽坂の応援だよ。今日デュエルするって聞いたからさ」

 

「知り合いだったのね、それなら少し話しておきたい事があるの」

 

「なにかしら?気になるわね」

 

「真剣な話なので藤原さんはお静かに」

 

明日香が真剣な顔つきで俺にそう言い、雪乃が茶化し、それを委員長が制する。

間を見計らうと明日香は再び口を開く。

 

「相手の教育実習生なんだけど、対戦相手の生徒からカードを奪っているらしいの」

 

「は?」

 

「しかも生徒の話だと、教育実習生とのデュエルの時だけ魔法カードが発動できなくなるらしいの」

 

「【魔法族の里】とか【ホルスの黒炎龍】の効果とかではなく?」

 

「ええ、まるでデュエルディスクが故障したみたいにカードの発動が出来なくなるって聞いたわ」

 

「十中八九、イカサマ……」

 

「でもレインさん、デュエルディスクにはイカサマ防止機能があるはずよ」

 

みんなの話を聞きながら、記憶の断片に引っかかる物を感じ、頭をひねる。

教育実習生、魔法カード使用不能、なんだか覚えがある。なんだったっけ……。

 

「あら、始まるわ」

 

「真偽はこのデュエルで見極めるしかないわね」

 

雪乃と明日香と言葉に意識を会場に戻すとフィールドにライトが灯りクロノスが壇上に上がる。

 

「それではただいまよーリ教育実習生のシニョール龍牙とラー・イエローのシニョール神楽坂のデュエルを始めるーノ!両者入場ナノーネ!」

 

入場したのはアカデミア教師のコートを着た眼鏡姿で長身の男性。

なんか見覚えがあるが思い出せない。

そして神楽坂が反対側から入場するが、その表情は険しく睨み付けるように対戦相手の龍牙先生を見据えている。

 

「よろしくお願いしますよ、神楽坂くん」

 

「俺は、絶対に負けない!」

 

「もちろん、約束は守りますので貴方も約束を守ってくださいね」

 

なにやら穏やかでない会話を繰り広げ、2人はデュエルディスクを構える。

 

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

龍牙

LP:4000

 

神楽坂

LP:4000

 

 

「先攻は俺だ!ドロー!速攻魔法【手札断殺】をはつど……」

 

神楽坂は魔法を発動するためディスクにカードをセットするが反応は無い。

 

「あれ!?なんで発動しない!?」

 

「いけませんねぇ、メンテナンスはキチンとしないと。自己責任ですよ」

 

動揺する神楽坂に龍牙先生は眼鏡をくいっと上げながらそう口にする。

クロノスが何も言わないということは本当に自己責任なんだろうか。

 

「くっ、なら俺は【レベル・スティーラー】を守備表示で召喚しカードを2枚セットしてターンエンド!」

 

 

【レベル・スティーラー】

星1/闇属性/昆虫族/攻 600/守 0

 

 

神楽坂

LP:4000

手札:3

モンスター:【レベル・スティーラー】

魔法罠:セット2

 

 

「やっぱり発動しない……」

 

「怪しいわね」

 

「まずいな、もし魔法が使えないなら神楽坂のデッキはかなりキツい戦いになる」

 

デッキ内容を知っているからこそ神楽坂が焦っているのが分かる。

だがまだ勝負は分からない、諦めるなよ神楽坂。

 

「では私のターン、ドロー。手札より【俊足のギラザウルス】を特殊召喚。この方法で特殊召喚に成功した時、相手は墓地のモンスターを特殊召喚できますが君の墓地にはモンスターが存在しないので続けますよ。さらに【猛進する剣角獣】を召喚しバトルへ入ります」

 

 

【猛進する剣角獣】

星4/地属性/恐竜族/攻1400/守1200

 

【俊足のギラザウルス】

星3/地属性/恐竜族/攻1400/守 400

 

 

「そうはさせない!メインフェイズ終了前に罠【威嚇する咆哮】を発動する!これであんたは攻撃宣言を行うことが出来ない!」

 

「【猛進する剣角獣】の貫通効果は分かっていましたか。でも罠とモンスターが使えて良かったですね」

 

「てめぇ……!」

 

「永続魔法【つまずき】を発動してターンエンドしますよ」

 

 

龍牙

LP:4000

手札:3

モンスター:【俊足のギラザウルス】【猛進する剣角獣】

魔法罠:【つまずき】

 

 

あれは召喚されたモンスターを守備表示にするカードだ。

いったい何を狙っている?

 

 

「俺のターンドロー!……くっ、カードを2枚セットし【素早いモモンガ】を召喚!【つまずき】の効果で守備表示になる。これでターンエンド」

 

 

【素早いモモンガ】

星2/地属性/獣族/攻1000/守 100

 

 

神楽坂

LP:4000

手札:1

モンスター:【レベル・スティーラー】【素早いモモンガ】

魔法罠:セット4

 

 

「あのボウヤ、苦しそうね」

 

「やっぱりあの先生は怪しいわ」

 

神楽坂はガチャガチャとディスクを弄るがやはり魔法は発動せず焦っている。

恐竜族で魔法封じ……でも後で剣山が来るから少なくとも原作には居ないはず。なら漫画かタッグフォースか……いや、待てよ確か……!

 

「……!思い出したぞこいつ!」

 

「なにか分かったの?」

 

龍牙の正体に行き付いたところ、声に出ていたらしく明日香をはじめとした女子勢の視線が集まる。

 

「ゴメン、思い出したのは大した事じゃないよ。でもあいつがイカサマしてるのは確実だと思う」

 

思い出したぞ、こいつ漫画版の序盤で出てきた奴だ。十代がデュエルディスクをフリスビーにして遊んでたか何かでイカサマには気づかなかったけど指輪か何かの電波でデュエルディスクを妨害して魔法だけ使えなくしてるはずだ。

十代がフリスビーしてる事しか印象になかったから思い出すのに時間掛かった。

 

 

「私のターン、ドロー」

 

そして龍牙の声でデュエルに意識を戻す。

そうだ、今は神楽坂の勝利を信じるんだ。

 

「永続魔法【一族の結束】を発動。そして魔法【強欲な壺】を発動し2枚ドロー、更に【俊足のギラザウルス】を生贄にし【大進化薬】を発動。発動から相手ターンで数えて3ターンフィールドに残り、私はその間レベル5以上の恐竜族を生贄無しで召喚できる。そしてギラザウルスが墓地へ行ったことにより【一族の結束】の効果で恐竜族モンスターの攻撃力は800上昇します」

 

【猛進する剣角獣】

攻:1400→2200

 

まるであてつけの様に龍牙は魔法カードを発動する。

実際にあてつけなのだろう、悦に浸った笑みを相手は浮かべている。

 

「では生贄無しで私は【暗黒ドリケラトプス】を召喚。【つまずき】の効果で守備表示に」

 

【暗黒ドリケラトプス】

星6/地属性/恐竜族/攻2400/守1500

攻:2400→3200

 

 

「また貫通効果持ちか……!」

 

「バトル、【猛進する剣角獣】で【レベル・スティーラー】に攻撃!」

 

「ダメージ計算時に罠【ガード・ブロック】を発動!戦闘ダメージを0にし1枚ドロー!」

 

レベル・スティーラーは剣角獣に突進され串刺しにされ爆散するがその爆風が神楽坂に1枚のカードを届ける。

 

「足掻きますね、カードを1枚伏せてターンエンドです」

 

 

龍牙

LP:4000

手札:1

モンスター:【暗黒ドリケラトプス】【猛進する剣角獣】

魔法罠:セット1【つまずき】【一族の結束】【大進化薬】

 

 

「強いな……」

 

見たところ相手は貫通効果を持つ恐竜で削るデッキのようだ。

教員を目指すだけあって中々やる……これで卑怯な事してなかったら良かったんだが。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

だが神楽坂は諦めていない、ドローには熱が残っている。

 

「【俊足のギラザウルス】を守備表示で特殊召喚!効果はわかってるよな?」

 

「ええ、もちろん。墓地から【俊足のギラザウルス】を特殊召喚し【つまずき】で守備表示に。そして【一族の結束】の効果が無くなり攻撃力が戻る」

 

 

【俊足のギラザウルス】

星3/地属性/恐竜族/攻1400/守 400

 

 

「俺はフィールドのモンスター2体を生贄にしてモンスターをセット!ターンエンドだ!」

 

 

神楽坂

LP:4000

手札:1

モンスター:セット1

魔法罠:セット3

 

 

「わざわざモンスターをセットしたわね」

 

「俺の予想ならあれは【禁忌の壺】だな」

 

「なるほど、それならリバース効果でモンスターの一掃が狙えますね」

 

神楽坂のあの表情はまだ勝負を諦めていない。

相手の盤面は確かに強力だが場を一掃し場を繋げばまだ勝機はある。

 

 

「私のターン、ドロー。どうやら君はそのモンスターに相当自信があるようだ」

 

「だったらなんだ、攻撃してみろよ」

 

「焦らずとも攻撃してあげよう、それでこのデュエルは幕引きだ。手札から速攻魔法【非常食】を発動。【大進化薬】と【つまずき】を墓地へ送りライフを2000回復する」

 

 

龍牙

LP:4000→6000

 

 

「【つまずき】は当然として【大進化薬】まで墓地に送ったわね」

 

「多分……結束の効果のため」

 

「あと罠を警戒してライフを回復したんだろうな」

 

仮に【魔法の筒】や【ディメンションウォール】が発動しても耐えられるようにしたんだろう、意外と考えている。

 

「【猛進する剣角獣】と【俊足のギラザウルス】を生贄にし、現れよ【暗黒恐獣】!」

 

 

【暗黒恐獣】

星7/地属性/恐竜族/攻2600/守1800

 

 

「そいつは!」

 

「このモンスターは相手のモンスターが全て守備表示の場合、プレイヤーにダイレクトアタックすることが出来る。では更に罠【生存競争】を【暗黒恐獣】に発動。このカードは発動後に恐竜族モンスターの攻撃力を1000上昇させる装備カードとなる。さて、私の墓地には生贄となった2体のモンスターがいるおかげで【一族の結束】が適用され攻撃力が800上昇しています」

 

 

【暗黒恐獣】

攻:2600→3400→4400

 

「攻撃力4400……!」

 

「では終わりです。【暗黒ドリケラトプス】を攻撃表示にしてバトル!【暗黒恐獣】でダイレクトアタック!」

 

「ぐっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

神楽坂

LP:4000→0

 

 

暗黒恐獣の突進をまともに受けた神楽坂はソリッドビジョンとはいえ派手に吹き飛ばされ、辺りにライフが無くなった機械音が響く。

 

「勝者、シニョール龍牙!」

 

クロノスが勝利を告げると龍牙は眼鏡をくいっと上げ、倒れた神楽坂を一瞥した後にフィールドを去っていった。

残された神楽坂は悔しそうに顔を歪めるて床を叩く。

 

「くそっ、くそっ、くそぉぉぉぉ!」

 

「あ、あのーシニョール神楽坂?早く戻ってほしいのーネ」

 

クロノスにそう言われた神楽坂は起き上がると脇目も振らずに駆け出した。

 

「行ってくる」

 

席を立ち、周りの女子にそう告げ俺は神楽坂を追いかけるため観客席を後にした。

 

 

 

 

「神楽坂の場所分かるか?」

 

『私のこと便利屋か何かだと思ってます?』

 

アカデミアの中を駆けながら傍で浮いているドリアードに問いかけるとそう返答される。

 

『まぁ分かりますけど。そこの角を曲がってください』

 

案内通りに進むと人通りの少ない廊下に神楽坂は居た。

だが彼だけでは無かった。

 

「返せ!それは俺達の大事なカードだ!」

 

「おいおい約束が違うだろう?私が勝ったらカードを譲ってくれると言ったじゃないか」

 

「何が約束だ、インチキした上に脅して他の生徒からもカードを巻き上げてる奴が偉そうに!」

 

「人聞きが悪い。私がいずれ教師になった時の事を考えて生徒達と仲良くさせてもらってるのさ。カードはその証だよ、心配しなくても君の【バーサーク・デッド・ドラゴン】は私が有効活用してあげるよ」

 

どうやらこいつは漫画と同じく巻き上げとインチキを行っているようだ。

 

「神楽坂から離れろ」

 

瞬時に理解した俺は2人の方へ進み声を上げると2人の注目が集まる。

 

「し、師匠……」

 

「やっとお出ましか」

 

俺の登場に龍牙は怯むどころか笑みを深めてこちらを見つめてくる。

その口ぶりからして俺の事を知っているらしい。

 

「こいつ、今まで他の生徒を脅してデュエルしてカードを奪ってるんです!それだけじゃなくてこいつ師匠の事を暴君とか非道とか有る事無い事言ってバカにして……!」

 

「分かった、落ち着け」

 

「クク、俺は知っているぞ。かつて【暴君】と呼ばれたお前を。それが今はただの作業員とは、堕ちるところまで堕ちたな」

 

悪いが本土に居た頃からそういう風評被害味わってんだよ。今更なんだよ。

 

「誰目線だよ、あと現在進行形で堕ちてんのはお前だよインチキ眼鏡」

 

「お前を倒せば俺のアカデミア統一も完璧なものになる。喜べ、お前を最後の決闘相手に指名してやろう」

 

「どこに喜ぶ要素があるんだよ、ちゃんと頭で考えたか?頭までダイナソーか?」

 

「俺と決闘しろ遊佐健斗。俺が勝ったらお前のデッキを頂く」

 

「いいぞ、俺が勝ったら奪ったカード全部返して生徒一人一人に謝罪したあと校長に自首しろ」

 

「いいだろう」

 

「いいことを教えてやる、俺を【暴君】と蔑んで無事で済んだ奴は一人も居ない」

 

「それは怖い怖い。では対戦は明日の夕方にでも」

 

そう言うと龍牙はコートを翻して去っていく。

去ったのを確認した俺は神楽坂に向き直る。

 

「大丈夫か?」

 

「師匠、俺、俺……!みんながあいつにカード奪われてるって知って許せなかった!師匠の事もバカにしやがった!でも、でも、勝てなかった……!」

 

神楽坂は溜まった感情が溢れ出したように涙を流しながら悔しがり床を叩く。

デュエル開始前から神楽坂の様子がおかしかった理由が分かった。神楽坂はあいつに対して怒りを燃やしていたんだ。

 

「ありがとう、俺のために怒ってくれて」

 

俺は涙を流す神楽坂の頭に手を置く。

 

「それにみんなのために戦ったんだろ?偉いぞ、師匠として俺も鼻が高い」

 

「ししょう……」

 

「後は俺に任せてくれ」

 

笑顔でそう慰め神楽坂を寮まで送る。

 

さて、可愛い弟子を泣かせたアイツをどうしてやろうか。

 

 

 




こいつこんな強かったっけ……?
?「俺より強いなんて許せんザウルス!」

ちゃうねん、こうでもしないと神楽坂が勝っちゃうねん……
ちなみに神楽坂のデッキは【冥界軸最上級】です

主人公は普通の人には普通に、慕ってくる人には優しく、敵意や悪意ある相手はDisる、鏡の様な人間です
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