十代は少し出ます
おかしい。絶対におかしい。
「じゃあよろしく頼むわねボウヤたち」
今日はおジャマを組んだ万丈目ことおジャ万丈目とデュエルする約束の日だった筈だ。
「貴方とは一度戦ってみたかったの」
なんで向こうにデュエルディスク構えてやる気の明日香とゆきのんが居る。
「こっちこそ天上院くんと戦えるなんて光栄さ!さぁ行きますよ健斗さん!」
隣には今日戦う予定だった万丈目が居る。しかもノリノリで共闘するつもりだ。
「明日香も健斗さんも頑張れー!」
「師匠の足引っ張るなよ万丈目ー!」
「応援してますよ明日香さーん!」
「アカデミアの女王と女帝は伊達ではありませんわー!」
「……ふぁいと」
観客席には十代達レッドのいつメンと神楽坂と三沢。
明日香の取り巻きであるももえやジュンコ、更にはレイン恵や委員長などのブルー女子も居る。
なぜこういう状況に陥ったのか、時間は少し遡る。
「こんにちは、健斗さん」
「こんにちは。今日はどうしたんだい?」
約束の日、予約が取れたデュエルフィールドでセットアップ等の準備をしていたら明日香がやってきた。
「雪乃に呼ばれて来たんです。でも早く来過ぎたみたいね」
「明日香さんが一番乗りだね」
ゆきのんが呼んだのか―、確かに昨日居たし万丈目とのデュエルを教えててもおかしくないか。
そう判断した俺はそう返して作業を再開し、数分でセットを終える。
「これでよし」
「お疲れ様です」
「大人の仕事だからね。じゃあ皆が集まるまで待とうか」
フィールドの傍で待機しながら新しく調整したデッキをディスクにセットすると明日香が興味ありげにそれを見つめているのが分かる。
「気になる?」
「ええ、今度はどんなデッキなのか気になりますね」
「これはね、みんなが融合してるから俺も融合したいなーって事で組んだデッキ」
「融合ですか。私も新しく自分のデッキを調整し直したので楽しみですね」
楽しみ?まぁ他人のデッキから学ぶとかそんな感じかな?
若干の引っ掛かりを覚えながらもそのまま他愛もない話を続けているとゆきのんと万丈目が一緒にやってきた。
何故、万丈目が凄い浮かれた表情なのか。
何故、ゆきのんの笑顔がいつもの三割増しで怪しいのか。
引っ掛かりがどんどん増えていく。
「健斗さん、いま藤原くんと話していたんだが」
「今回のデュエル、貴方と万丈目のボウヤのタッグで私と明日香のタッグと戦って欲しいの」
「は?」
「……雪乃、貴女まさか健斗さんに伝えていなかったの?」
「ふふ、思いついた時には伝えるタイミングがなかったのよ」
どうやら俺はゆきのんに謀られたらしい。
昨日の怪しい気配はこれか、ってことはこいつはじめから俺に伝える気は無かっただろうし万丈目を釣るために明日香誘ったなこれ。
「本来は俺と万丈目くんのデュエルだったんだが」
「俺は全然構いませんよ!健斗さんも構いませんよね!?」
「まぁ……万丈目くんが良いなら俺も良いけど」
「ふふふ、天上院くんとデュエルできるとは藤原くんに感謝しないとな」
万丈目が明日香に惚れているのは大体の奴が知っている。
哀れ万丈目、君の恋心はこの女悪魔ゆきのんに利用されているとも知らずに。
「じゃあ、決まりね」
俺が渋々了承したのを見ればゆきのんはにこやかに笑みを浮かべてデュエルフィールドへ上がる。
そしていつの間にか集結していたギャラリーに囲まれ俺と万丈目の即席タッグが誕生した。
以上、現実逃避終了。
正直ゆきのんのおもしれーやつカウンターを甘く見ていた。まさかこんな事になると誰が予想できようか。
でもまぁ別に驚いただけで嫌という訳ではない。明日香とデュエルしたことないしこのタッグを機に万丈目と仲良くなれるなら良い。おもしれーやつカウンターが乗り続ける未来?知らん、俺の管轄外だ。
「では、ルールは最近制定されたタッグフォースルールにしましょう」
現実逃避していた耳にゆきのんの言葉が入り意識を現実に戻す。
タッグフォースルールとは、ゲームのルールまんまのアレだ。
新しいルールとして成立しているのを最近知った。
「ライフと墓地とフィールドは共有でLPは8000」
「交互にターンプレイヤーが交代しカードの発動やプレイはその時のターンプレイヤーに決定権があり、カードの効果はその時のターンプレイヤーが受ける」
「お互いのアドバイスや手札公開は原則禁止、かな」
「説明の必要は無さそうね、それなら早速始めましょうか」
俺達の簡単な補足で納得するとゆきのんはデュエルディスクを構え、明日香もそれに続く。
「行きますよ健斗さん!」
「足引っ張ったらごめんね」
「その時は貴方を引きずりながらでも前に進みますよ」
「頼もしい」
そんな会話をしながら俺達はタッグ用に増設された台にデュエルディスクを嵌め込む。これはタッグデュエルを円滑にするために開発されたようでデュエルディスクと連動しタッグパートナーとフィールドの情報を公開しつつ墓地や除外はディスク内では無く台の所定の場所に設置する事で効果等の処理もしやすくなるという訳だ。
ゲームやアニメだとその辺でデュエルディスク片手にタッグデュエルしてた?知らん、俺の管轄外だ。
お互いの準備が整い、向こうも準備が終わった様子。
そして少しの間を置いた後に全員が宣言を放った。
「「「「
明日香・雪乃
LP:8000
万丈目・健斗
LP:8000
「最初は万丈目くんに任せるよ」
「わかりました。先攻はレディファーストでそちらからどうぞ」
俺が先攻を譲ると万丈目は更にそれを明日香に譲った。
おジャマは先攻の方が良くないかと思わなくも無いが彼はそういう人間なので問題はない。
「いくわよ、私のターン。ドロー!【サイバー・ジムナティクス】を守備表示で召喚!カードを2枚セットしターンエンド!」
【サイバー・ジムナティクス】
星4/地属性/戦士族/攻 800/守1800
明日香
LP:8000
手札:3
モンスター:【サイバー・ジムナティクス】
魔法罠:セット2
先攻だし様子見といったところかな。
「俺のターン、ドロー!永続魔法【凡骨の意地】を発動し手札から【魂虎】を守備表示で召喚。カードを1枚セットしてターンエンド。本来ならこのターンから攻撃は可能だが今は動かないでおく」
【魂虎】
星4/地属性/獣族/攻 0/守2100
万丈目
LP:8000
手札:3
モンスター:【魂虎】
魔法罠:セット1【凡骨の意地】
「そのカードは……」
万丈目が今召喚したモンスター、記憶違いでなければ井戸のカードだった筈だ。
俺の呟きが聞こえたのか万丈目はフンと鼻を鳴らしながら口を開く。
「あのザコどもだけではマトモなデッキなど組めないのは明白。それならザコはザコで纏めて使う方が効率が良いと思ったまでです」
『そんなこと言ってサンダーのアニキはおいら達が居ないとだめなんでしょ~?』
万丈目は無言で茶々を入れてきたイエローを手で払う。
召喚された【魂虎】が張り切っているのを見る限り、なんだかんだで残りの精霊もデッキに入れて面倒みるつもりなんだろう。
「随分と慎重ね。でも時には激しくしないとダメよ?私のターン、ドロー」
さて、ゆきのんのデュエルはなんだかんだ見るのが初めてだ。
だが彼女のデッキは控えめに見積もっても候補が3つある。
【リチュア】【推理ゲート】【デミスドーザー】だが、どれだ、どのデッキだ?
ていうかどれも強いから嫌なんだが。
「カードを2枚セットして魔法【手札抹殺】を発動。この場合は万丈目のボウヤが対象ね。3枚捨てて同じ数ドローするわ」
「わかった、こっちも3枚捨ててドローする」
お互いが捨てたカードをすぐさま確認する。万丈目は……お、マジック落ちてる。
「墓地へ送られた【おジャマジック】の効果発動。このカードがフィールドまたは手札から墓地へ送られた時デッキから【おジャマ・グリーン】【おジャマ・ブラック】【おジャマ・イエロー】を手札に加える。こいおジャマども!」
『がってん!』
おジャマ兄弟が万丈目の手札に加わり勇ましく構えるが手札に加わっただけだからな、君たち。
「ふふ、中々運が良いわね。伏せていた魔法【儀式の準備】を発動。デッキからレベル7の儀式モンスター【救世の美神 ノースウェムコ】を手札に加え、更に墓地の儀式魔法【救世の儀式】を手札に加えてそのまま発動」
ノースウェムコ?デミスでもリチュアでもないのか。しかも墓地に儀式魔人落ちてるし初めて見るぞこのデッキ。
「墓地にある【儀式魔人プレサイダー】【儀式魔人プレコグスター】の効果でこのカードを除外することにより儀式召喚の生贄にすることが出来るわ。現れなさい【救世の美神 ノースウェムコ】」
【救世の美神 ノースウェムコ】
星7/光属性/魔法使い族/攻2700/守1200
「ノースウェムコが儀式召喚に成功した時、儀式の生贄にしたモンスターの数だけフィールドの表側表示のカードを選ぶ事が可能。選んだカードがフィールドに存在する限りこのカードは効果で破壊されなくなるわ。じゃあ私はそっちの【凡骨の意地】とこっちの【サイバー・ジムナティクス】を選ぶわね。更に生贄となった儀式魔人は儀式モンスターに新たな力を与える。プレサイダーは戦闘でモンスターを破壊した時にドローする効果を。プレコグスターは戦闘ダメージを与えたときに相手の手札をランダムで1枚捨てさせるわ」
「リリーサーじゃなくて良かった」
つい本音が口から漏れる。この環境でも特殊召喚封じは普通にキツイ。
「あら、用務員のボウヤは知ってるの。流石ね」
俺の呟きが聞こえたのか彼女はふっと笑みを浮かべる。
どう見ても獲物を狙う捕食者のソレにしか見えない。
「バトルよ、【救世の美神 ノースウェムコ】で【魂虎】に攻撃」
ノースウェムコの杖から光が放たれるとそれは魂虎に直撃して爆散。
「では効果で1枚ドローしてターンエンドね」
雪乃
LP:8000
手札:4
モンスター:【サイバー・ジムナティクス】【救世の美神 ノースウェムコ】
魔法罠:セット3
いきなり耐性持ち上級モンスターが出てくるが対処出来ないわけではない。
そしてこれはタッグデュエル、お互いのサポートを上手く行うことも勝利につながる。
ぶっちゃけ明日香と万丈目のカードパワーはそれほど高くないが肝心な時に必要なカードを引く運命力の強さはズバ抜けている。この2人の実力が同じならあとは俺とゆきのんの実力比べだ。
「俺のターン、ドロー!」
ドローしたカードを見て笑みを深める。
このデッキは「みんなが融合してるから俺も融合使う」という理由で組んだデッキだ。
不純極まりない理由だが、俺には精霊が付いている。力を貸してくれる。
つまり、活躍したいというカード達と勝ちたいという俺の思いが重なった時にデッキは応えてくれる。
「【凡骨の意地】の効果発動!今ドローしたカードが通常モンスターの場合、それを公開する事で追加ドローする事が出来る!今ドローした【フレイムキラー】を公開しドロー!モンスターカード【エンシェント・エルフ】!ドロー!モンスターカード【斬首の美女】!ドロー!モン……じゃないので終了」
大量ドローで潤った手札を見ながら展開を考える。
ウェムコは力押しで行くしか無いとしてジムナティクスは残したくない。だがあの伏せ、絶対ドゥーブルパッセだよな。明日香の伏せって言ったらパッセのイメージ強いし。
でも動くしかない。
「手札から【融合】発動!手札の【エンシェント・エルフ】と【心眼の女神】を素材に【砂の魔女】を融合召喚!更に手札から【融合回収】を発動し墓地の【融合】と【心眼の女神】を手札に加えおまけに装備魔法【フュージョン・ウェポン】を【砂の魔女】に装備させ攻撃力と守備力を1500アップさせる!」
【砂の魔女】
星6/地属性/岩石族/攻2100/守1700
攻:2100→3600
守:1700→3200
「永続魔法【ブランチ】を発動し再び【融合】発動!手札の【心眼の女神】と【女王の影武者】を素材に【裁きを下す女帝】を融合召喚!」
【裁きを下す女帝】
星6/地属性/戦士族/攻2100/守1700
フィールドに現れたのは赤い外套にとんがり帽子で箒に跨る魔女と黄金の衣装に身を包んだ厳格な女性。
どちらも初期から存在する融合モンスターだ。このデッキは彼女達初期融合モンスターを軸に組んだ融合デッキで、高速化していないこの時代でしか出来ないと俺自身思っている。
「ふふ、来るのかしら?」
「勿論。バトル、【砂の魔女】で【救世の美神 ノースウェムコ】に攻撃!」
箒に跨った砂の魔女が指を鳴らすとウェムコの周囲に砂の嵐が巻き起こりゆきのんごと包み込んだ。
「明日香、使わせてもらうわね。罠【ドゥーブル・パッセ】発動。相手モンスターの攻撃の対象を自分に変更するわ。……あぁん」
雪乃
LP:8000→4400
やっぱりパッセかと思いながら見守っているとゆきのんが砂嵐に巻き込まれながら変な声を上げている。
色々と危険が危ないのでやめてほしい、深夜42時には早すぎる。
「ふぅ……その後、攻撃対象にされていたモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与え、次のターンそのモンスターは相手に直接攻撃が可能になるわ」
「くっ」
健斗
LP:8000→5300
「バトル続行!【裁きを下す女帝】で【サイバー・ジムナティクス】に攻撃!」
こちらをチラリと確認した女帝はダメージの礼だと言わんばかりに錫杖型の武器を振り回しモンスターを破壊する。
ウェムコは破壊できなかったが大ダメージを与える事は出来た、それで良しとしよう。
「カードを1枚セットしてターンエンド」
健斗
LP:5300
手札:2
モンスター:【裁きを下す女帝】【砂の魔女】
魔法罠:セット2【凡骨の意地】【ブランチ】【フュージョン・ウェポン】
激動の初ターンが終わる。
ゆきのんはガチカード使っても違和感無いから一番書きやすいのは内緒