用務員の日常   作:八雲 紅

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GXといえばカードの精霊


用務員、原作を壊す

「私たちもあの場に居ました、私たちも罰されないとおかしいです!」

 

「お、俺もなんだな」

 

「どういうことですか、説明してください」

 

制裁タッグデュエルを言い渡された瞬間に頭に来たので、その時は購買部の手伝いをしていたがトメさんとセイコさんに途中で抜ける事を告げて校長室へ向かった。その道中に明日香と出会ったので目的が一緒の彼女を伴い殴り込みを掛けると既に十代達のルームメイトである隼人が抗議していたので今はそれに明日香と共に乱入したところだ。

 

「もう委員会で決まったことなんだ」

 

「ドロップアウトボーイ達が深夜に外出していた事だけは庇いきれなかったノーネ」

 

憔悴した表情の鮫島校長とクロノスが続ける。

校長はまだしもクロノスがフォローに入るって珍しくないか?

 

「ドロップアウトボーイだけならともカーク、シニョール健斗を辞めさせるのは我々もおかしいと思ウーノ」

 

あー、あれか。無関係の俺が巻き込まれたうえに詳しく調べられると自分がタイタンを手配したのバレるかもしれないからフォローに回ったのか。俺もクロノスもお互いに自業自得なのが笑える、いや笑えねぇわ。

 

「で、でも、健斗さんは関係無いんだな!」

 

「そうです!それは証明できます!」

 

「委員会が言うには、レッド寮の近くに居ながら生徒の行動を制御できなかった責任がある、との事だ」

 

「そんなの滅茶苦茶です!」

 

「それなら大徳寺先生の責任なんだな!廃寮の事も大徳寺先生から聞いたんだな!」

 

「ありがとう2人とも。もう大丈夫だ」

 

このままだと大徳寺先生にも飛び火しかねないので2人を制止する。

2人は納得いっていない様子だったが渋々引き下がる。

 

「校長に色々言っても仕方ないですし、制裁デュエルまで話を引き下げてくれたのも校長達でしょうし、受けます」

 

自分たちの管理不届きを棚上げして責任を下の人間やあまつさえ守るべき生徒に押し付けてよく委員会が名乗れるな、なんてこれっぽっちも思ってないですし。元凶お前の隣に居るぞとか全然思っていないし。

 

「本当にすまない……。だが今回の事は委員会に対して私も思うところがある。近いうちにオーナーや運営に話してみるよ」

 

「対戦相手を決める権利はこちらが得たから相手は追って伝えルーノ」

 

そこまで言われたら引き下がるしかない、正直完全には納得していないが3人で校長室を後にした。

 

 

「デュエルで勝てばお咎め無しとはいえ、元々健斗さんには関係ないんだな……」

 

「まぁまぁ、大丈夫さ。隼人くんも天上院さんもありがとう」

 

「明日香で大丈夫ですよ。そういえば健斗さんはデッキは……?」

 

明日香の言葉に事情を知っている隼人は「まずい」と言いたげな表情となり明日香はその隼人の様子に首を傾げる。

 

「今から作る」

 

その二人へ向けてキメ顔でそう言った。

 

「……、今からですか!?」

 

俺の言葉に呆ける明日香だがすぐにハッと意識を戻すとそう声を上げた。

 

「給料は少し残ってるから適当なパックと用務員の仕事中に拾ったカードを合わせればなんとか……」

 

そこまで言って気付く。あれ、そういえば購買部のパックって……

 

「購買部のパックはテストの時に誰かが買い占めたから無いんだな」

 

「と、いうことは……」

 

事態を理解した隼人と明日香は暗い表情となりこちらを見やる。

 

「な、なんとか、なるさ……ハハ」

 

流石の俺も苦笑いしかできなかった。

 

 

 

 

 

「ちくしょう、これは予想外だ」

 

校長室を後にし、2人にはカードを探してくると告げて別れた俺は現在、リュックを背負ってぼやきながらアカデミアの森を歩いている。寝起きのテンションに身を任せた自業自得とはいえ本来なら翔と十代の成長とカイザーとの確執について触れる場面なのに俺が翔のポジションを奪いタッグデュエルパートナーになってしまったことで翔は弱気なままパワボンを使わずカイザーも成長した翔を見る機会をなくすというとんでもないやらかしだ。

この辺は知識を生かして原作イベントの無い空白期間にケアするべきかもしれない。

 

それは後で考えるとしてまずは目の前の問題だ。

俺は漂流してきたためデッキが無い。

いや、正確にはある。ここに流れ着いてくる前、本来ならば原作とは関係ない本土で使う予定だったデッキ。何故か手元に集まって来た、前世の自分のデッキ。

上等なデッキケースに入れていたそのデッキは俺が流れ着いた数日後に、まるで導かれるように海岸に流れ着いていた。中身は無事で、40枚構成のそれはEXデッキを使わずともこの時代のカードならば軽く蹴散らせるパワーがある。ここがGXの世界だと分かった時からこのデッキは大事な時にしか使わないと決めた。

俺は十代の助けになりたいのであって十代の立場を奪ったり目立ちたいわけではない。

使うとして、最低でもセブンスターズで闇のデュエルに絡まれた時や精霊界とかダークネスとか、あの辺の本当に命の危機がある時にだろう。

 

「でも背に腹は代えられないよな」

 

現在、向かっている場所はカードが捨てられている枯井戸。

原作だと後に万丈目がおジャマ兄弟を発見し低ステータスデッキを作るために使用した場所である。

サンダーには悪いがこの井戸は本当に有用なカードが多いので先にお借りするという訳だ。

サクリファイスとか図書館捨てるとかほんとあり得ないと思う。

増Gとか落ちてないかなと期待してみたり。

 

そしてとうとう目的地の井戸に到着した。

精霊のイタズラだろうか、近づくにつれ不気味さを増していくその井戸に縄梯子を投げ込み降りてライトを照らす。照らし出されるのは辺り一面に散らばるカード達。そして……

 

『人間めぇ~』

 

『捨てられた恨み~』

 

くねくねと体をくねらせてこちらを睨む、黒色と緑色のナマモノ。もとい、おジャマグリーンとおジャマブラック。

あぁ……見えちまった。

 

『ここは捨てられた精霊たちの力が集まり生まれた現世と精霊界の間~』

 

『素質の無い人間でも俺たちの姿が見えるようになる~』

 

2匹に言われて改めて辺りを見回すとたくさんのモンスターが周りを取り囲んでいた。

 

『怖くて声も出ないな~?』

 

「いや全然」

 

『あれぇ~?』

 

このままだと話が進まない気がするので返事をし、先ほどから踊ったままのおジャマ兄弟と対話を試みる。

 

「デッキを組みたいんだけどカードが無いから君たちをスカウトに来た!」

 

『本当!?』

 

「ああ!とにかく俺は君たちの敵じゃあない」

 

『ささ、ごゆっくり!旦那!じっくり見てってくだせぇ!俺達はあと1人兄弟が居ればかなりやりますぜ!』

 

対話を続ければ態度を一転しておジャマ兄弟は媚を売るように自分達の宣伝をするがそれをスルーして持ってきた荷物の中から更に照明を取り出して目当てのカードを探すのだった。

 

「お、図書館だ。これ捨てるなんて勿体無いな」

 

『そうですよね旦那ぁ!ところでおジャマデッキなんていかが?』

 

「魔法罠も結構あるな」

 

『探せば俺達の魔法罠もありますぜ旦那』

 

「よし、これで大体集まった」

 

『お、俺達はどうなるんですか旦那!?』

 

『また置いてかれちまうのか!?』

 

『『うわぁぁぁぁぁん』』

 

「うるさーい!」

 

カード探しの途中、茶々を入れてくるおジャマ兄弟をスルーしつつ目的のカードを手に入れた事を呟くと兄弟達は泣き始め、その声は井戸に反響して騒音となる。

 

『おやめなさい』

 

突如、辺りに凛とした女性の声が響き渡るとおジャマ兄弟は泣くのを止めて井戸の奥に広がる暗闇へと視線を向けた。釣られて俺もそちらを見る。

 

『姫様!』

 

「姫様?な、貴女は……!?」

 

奥から淡い光と共に現れたのは装飾の施された神々しいローブを着込んだ女性。その背中からは天使のような2対の翼が存在している。

俺は彼女を、このカードを知っている。

 

『初めまして、異界の魂を持つ御方。私はドリアードと申します』

 

「こちらこそ初めまして、デュエルアカデミアの用務員の遊佐健斗と申します」

 

こちらへ柔らかい笑みを向ける彼女におジャマを始めとした他の精霊達も大人しくなる。

 

『姫様はこの井戸を守ってくれてるんだ!失礼は許さないぞ!』

 

なるほど、原作でも思っていたがこの井戸のカードが無事なのは精霊達の力のお陰だったという訳だ。でもドリアードは原作に居なかったし、そもそもこのドリアードがこの世界に居るはずが無いのだが。

 

『貴方の考えている事は分かります。私は本来この世界に存在するカードではありません』

 

「確かに、精霊術師ならまだしも精霊神后の貴女はこの時代には存在しない」

 

『ええ、そしてそれは貴方も同じ筈です』

 

俺は彼女がこの時代に無いカードだと知っている。

そして彼女は俺が異界の魂を持つ者、転生した人間だと分かっている。

……でも十代とユベルもあれ転生だよな、その辺どうなるんだろう。

 

『私は未来の精霊界で過ごしていましたが次元の歪みに巻き込まれ、気付けば過去へと飛ばされていました。カードとしてこの世に顕現したのは良いのですが私はこの島で直ぐに井戸へと捨てられてしまったのです』

 

彼女はこの時代より遥か後に作られたカードだ。

儀式の精霊術師ではなく墓地に存在する属性の数に応じて能力を発動するカード。確かに攻守0ではあるが……まぁ作中でも言われてたパワー主義の時代だからか。

 

『この井戸で精霊達と過ごすうちに私は気付きました。この島の地下に眠る幻魔の力に。三幻魔の復活は私の居た未来の精霊界でも話は伝わっています。全ての精霊の命と引き換えに復活を果たそうとした悪魔がいる、と。予想したのですが私は三幻魔の復活の揺らぎで生まれた歪みに巻き込まれてしまったのでしょう』

 

5D'sでもそうだったけど精霊界ガバガバ過ぎないか?

 

『俺達が兄弟と離ればなれなのもそいつらの仕業か!』

 

「多分関係ないと思うぞ」

 

茶々を入れたおジャマグリーンにそうツッコミを入れて改めてドリアードへと向き直る。

 

「俺は転生した人間です、この世界の事を知っています。貴女が言った三幻魔に対抗出来る人間が今この学園を去るかもしれないピンチなんです。貴女の力をお借りしたい」

 

俺は包み隠さず秘密を打ち明け、同時に協力を申し出た。

恐らく俺やドリアード存在がある以上、これからも原作通りに進むとは限らない。ならば、事情を知っている協力者が欲しいのが本音だ、それが強力なカードの精霊ともなれば尚更だ。

俺の提案にドリアードは柔らかく微笑み手を合わせて祈ると光が集まり形を成していくとそれはカードの形となる。

光が消えればそこには1枚のカード【精霊神后(エレメンタルグレイス) ドリアード】が存在していた。

 

『元よりそのつもりでした。彼の王達に代わり貴方の進む道を照らす光となりましょう。よろしくお願いしますね、健斗』

 

自分の分身であるカードを渡したのが彼女の答え。

こうして俺は精霊の協力者であるドリアードを得たのであった。

 

 

『あれ?俺達はどうなるの?』

 

おジャマ兄弟やその他の精霊達には「いずれ兄弟を引き連れた者が君たちを必要とする時が来る」と説得し、これ以上カードが捨てられないように井戸に立て看板をしビニールシートで水が入らないようにする、週1で顔を見せる事で決着した。

 




十代が可愛いなって動機で描き始めたこの作品ですが十代はヒロインではありません(当然)
次くらいにデュエルします
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