用務員の日常   作:八雲 紅

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十代は出ません


用務員の冬休み

制裁タッグデュエルから数日が経過した。

用務員の作業に再び追われる日々を過ごすうちにいつの間にか三沢と万丈目のデュエルは終わっており万丈目は武者修行の旅に出るためアカデミアを去っていった。

万丈目の捜索を十代にお願いされた時にようやく時系列を把握した俺は在学中に万丈目と話してないなと思いつつ協力した。

サルに関してはほぼ原作通りだったが俺としてはサルよりサルが居た施設の方が大事なのでこっそりと、単独行動スキル持ちが判明したドリアードを派遣して施設の場所をマッピングする事に成功。この場所は後でデュエルマッスル野郎のコブラが引きこもるので事前に細工を施しておく事に決めたのだった。

 

何はともあれアカデミアに冬休みがやってきた。

ほとんどの生徒が実家へ帰る中、帰る家が無い俺はレッド寮で大徳寺先生や残った翔と隼人に餅を振舞っているのだった。

 

「やっぱり冬には熱々のお餅だにゃー」

 

「それにしてもアニキが帰るなんて意外だったっスね」

 

「十代くんには十代くんの用事があるんだよ」

 

原作と違う点で云えば、本来は残った十代が実家に帰っている。

俺が精霊についての悩みに答えたからだろう、両親に話を聞くと言って1番の船で島を出た。出る時に直ぐに帰るとも言っていたが。

精霊についてだが、ネオスやユベルの事を十代が早く思い出しても問題は無い。ネオスは味方だし思い出す事によってキモイルカ達が早期参戦してくれるのは全然構わない。

反対にユベルに関しては既に手遅れな上に前世フェイズというどうしようもない問題があるため、ちょっと早く思い出してユベルが苦しんでたのを十代が理解し受け止める心の余裕を作るくらいしか対策が無い。

 

原作については前世含めて何十年も前の記憶だから自信は無いが何とかなるだろう。

そう思いながら餅を頬張っているとレッド寮の入り口のガラスが派手に割れる音が響きブルーの制服姿の男子生徒が飛び込んできた。

何事かと駆け寄る大徳寺先生や翔達に、ブルーの生徒の向田は怯えた様子で「サイコショッカーが……サイコショッカーが……」と呟くだけだった。

その単語により摩耗していた記憶の一旦が蘇る。

そうだ、確か序盤にサイコショッカーの精霊と十代が戦う話があった。

だが今十代は居ない、ならばどうする?

悩んでいる間に向田は事の経緯を大徳寺先生に話していた。

 

『健斗、気をつけてください、精霊の気配がします』

 

ドリアードがわざわざ顕現して注意を促してきた時、部屋の電気が突然切れた。

 

『そこです健斗!』

 

「用務員キック!」

 

翔や隼人や大徳寺先生が騒ぎ出す中、隣のドリアードは向田を捕まえようとするサイコショッカーが居るであろう方を指し示し俺は蹴りを繰り出すが手応えは無かった。

 

『ククク、こいつは頂いていくぞ』

 

怪しい男の声が響き、電気が復旧すると全身黒づくめの男は意識を失っている様子の向田を脇に抱えて逃走した。

 

「なんだあれ!?」

 

「本当にサイコショッカー!?」

 

「俺が行ってくる、大徳寺先生は翔くんと隼人くんを頼みます」

 

「待つのにゃ遊佐くん!」

 

「1時間経っても戻らなかったら人を呼んでください!」

 

大徳寺先生に2人を押し付けて走り出す。

十代が居ない責任の一端が俺にあるならこの事態は俺が解決するしかないだろう。

 

『健斗、あっちに逃げました』

 

「ありがとうドリアード、その前に1度小屋に戻る」

 

ドリアードが指し示す方角は原作通り変電所がある場所だった。

それを確認した俺は変電所には向かわず小屋に戻る。

鍵の掛かった小屋の扉を開け、更に鍵の掛かった机の引き出しを開けて1つのデッキケースを取り出す。

 

『それは……』

 

ドリアードの言葉を無視してケースを開きディスクにそのデッキをセットし小屋を飛び出して今度こそ変電所へ向かう。

ドリアードは何も言わずに黙って後に続いた。

 

走り出して数分で変電所に到着。立ち入り禁止のその場所は扉が開いており不気味に発光しており足を踏み入れるとともに青白い電気が走り始めた。

 

『ククク、人間よ。何をしに来た』

 

「決まってんだろ、生徒を返してもらうためだ」

 

『人間如きが私に勝てるとでも?……ほう、貴様かなりの数の精霊を連れているな。気が変わった、貴様が代わりになるならこの3人は離してやってもいい』

 

そう言うとサイコショッカーは黒づくめの衣装を脱ぎ捨てその姿を晒す。カード通りのグロいデザインを実際に目にすると迫力があるというかなんというかキモさ3割増しだ。

そして電気が照明代わりに辺りを照らすと気絶した3人の生徒が目に入る。

 

「シンプルにデュエルで決めようぜ。俺が勝ったら3人を離す、お前が勝ったら好きにしやがれ」

 

『良いだろう』

 

ごく自然な流れでデュエル。

俺はデュエルディスクを構えサイコショッカーはホログラムのようなカードを展開する。

 

「『決闘(デュエル)!』」

 

『私のターンだ、ドロー。【怨念のキラードール】を召喚し更に永続魔法【エクトプラズマー】を発動する』

 

【怨念のキラードール】

星4/闇属性/悪魔族/攻1600/守1700

 

サイコショッカーのフィールドに斧を持った不気味な人形が現れる。

さて、原作通りなら……

 

『私はこれでターンエンド。この瞬間に【エクトプラズマー】の効果が発動!エンドフェイズ時にフィールドのモンスターを生贄にする事でそのモンスターの攻撃力の半分を相手に与える』

 

キラードールの魂と思われる光がこちらに向かって飛び直撃する。

ソリッドビジョンとは思えない衝撃が身体に襲いかかると共に自分の足元が透けているのを確認した。

 

健斗

LP:4000→3200

 

「それで終わりか」

 

『強がるのはよせ、貴様の足元をよく見てみろ』

 

「透けてるな、じゃあ俺がお前のライフを削れば同じ事がお前に起こるんだな?」

 

『ククク、出来ればな。さぁお前のターンだ』

 

 

サイコショッカー

LP:4000

モンスター:無し

魔法罠:【エクトプラズマー】

手札4

 

 

「俺のターン、ドロー」

 

デッキからカードをドローし手札を確認する。

ああ、最高過ぎる手札だ。

 

「手札からフィールド魔法【王の舞台(ジェネレイド・ステージ)】を発動。更に手札から速攻魔法【手札断殺】を発動。お互いのプレイヤーは手札を2枚捨て2枚ドローする」

 

『いいだろう……!?』

 

辺りは9つの光が輝く空間へと変わる。そしてサイコショッカーがカードをドローした瞬間に光の1つが輝きを増した。

 

「【王の舞台】の効果発動。相手がデッキからカードを手札に加えた場合、俺は【(ジェネレイド)】と名のつくモンスターをデッキから守備表示で特殊召喚する。来い【鉄の王 ドヴェルグス】」

 

【鉄の王 ドヴェルグス】

星9/地属性/機械族/攻1500/守2500

 

現れたのは機械仕掛けの王。その巨体の胸、顔ともとれる部分に光を灯しサイコショッカーを見下ろす。

 

「ドヴェルグスの効果発動。自身をリリースし手札から機械族モンスターか(ジェネレイド)モンスターを特殊召喚する。俺は【王の影 ロプトル】を特殊召喚。特殊召喚したロプトルの効果発動、自分か相手のメインフェイズにこのモンスターをリリースする事で自身以外の王をデッキから特殊召喚する。俺は【轟の王 ハール】を特殊召喚」

 

機械の王が姿を消し次に現れたのは金髪の怪しい青年。

その青年は舞台の裏へと姿を消し再び光が輝くとそこに現れたのは隻眼の巨人。

手に持つ杖を構えて赤き瞳を光らせる。

 

 

【轟の王 ハール】

星9/闇属性/魔法使い族/攻3000/守3000

 

 

『こ、攻撃力3000……!』

 

「だから言っただろ、これで終わりか?ってな。更に俺は手札から2体目の【王の影 ロプトル】を通常召喚」

 

【王の影 ロプトル】

星4/炎属性/天使族/攻1500/守1500

 

金髪の怪しい雰囲気を醸し出す青年は舞台裏からフィールドへ戻る。

怪しい笑みを浮かべてサイコショッカーを見やり更に一層笑みを濃くした。

 

『バカな!認めん、認めんぞ!私は復活して……』

 

「バトルだ。ハールとロプトルでダイレクトアタック」

 

 

サイコショッカー

LP:4000→0

 

 

最後の言葉を残させる前にハールとロプトルの攻撃がサイコショッカーに炸裂しライフを削り切る。

デュエルに敗北したサイコショッカーの身体はみるみるうちに透明になってゆく。

 

『まだだ、まだ諦めん!この人間を生贄に……な、なんだこの力は!?貴様何を……グワァァァァァァ!!!』

 

サイコショッカーは最後の悪あがきなのか、倒れている3人の方へ向かおうとするが足元に突如として開いた裂け目に呑み込まれて消えた。

恐らく精霊界に強制送還されたのだろう。

それと同時に身体から力が抜けてその場にへたり込む。

 

「……疲れた」

 

『大丈夫ですか?』

 

顕現したドリアードがおでこに手を当てたり他にもケガが無いかと呟きながらぺたぺた身体に触れてくる。

 

「大丈夫、ちょっと疲れただけだから」

 

『あまり無茶をしないでください』

 

ドリアードの言葉を受け流し、深呼吸して立ち上がる。

そして倒れた3人の元へ向かおうとすれば変電所の扉が開いた音が響き、振り返る。

 

「遊佐くん、心配したにゃ」

 

「大徳寺先生、まだ1時間も経ってないですよ」

 

「あんな事言われて心配するなって方が無理だにゃ。……どうやら事態は解決したみたいかにゃ?」

 

変電所に入ってきたのは大徳寺先生。先生は倒れている3人に目を向けると全て終わった事を察したようだ。

 

「ええ、あの不審者は本当にサイコショッカーの精霊でした。とりあえず3人を起こして寮に送りましょう」

 

「そうだにゃ、指導はその後にするにゃ」

 

そうしようと決めれば俺と大徳寺先生で3人をたたき起こす。

向田を始めとした3人は襲われた事を覚えており2度と怪しい実験はしないと誓った後に寮へと帰っていった。

 

 

『健斗、少し話があるのですが』

 

大徳寺先生とも別れて小屋へ戻る途中にドリアードが姿を現す。

 

「どうした?」

 

『あの大徳寺という男、ずっと貴方のデュエルを見ていました』

 

「ふーん」

 

ドリアードの言葉に適当に相槌を打つと共にあの人ならやるだろうな、と納得する。

セブンスターズの1人として暗躍していた彼の事だ、要注意人物として俺に目を付けたのだろう。本気のデッキを見られてしまったが元々セブンスターズに巻き込まれた時は使うと決めていたし、彼が1番に目を付けているのは十代だけなのでさほど問題は無いだろう。

 

『前から気になっていましたが、彼は普通の人間ではありませんね?』

 

「正解、ガチの錬金術師だよ」

 

精霊術師(エレメンタルマスター)と呼ばれていたのは伊達ではありません』

 

そう言ってフフン、と胸を張るドリアード。

確かにその道に関わった事がある者なら大徳寺先生の授業がただの現代科学ではなく本当の錬金術だというのが分かるだろう。

 

「大徳寺先生はしばらく放っておいて大丈夫だよ。本当にヤバい時は素直に言うしこのデッキを使う、だからドリアードは心配しなくていいよ」

 

『……分かりました。ですがあまり無闇にそのデッキを使わない事を約束してください』

 

俺の言葉にドリアードは渋々といった様子で頷くが納得はしていない。そして更にジェネレイドを使うなと約束してきた。

 

『そのデッキのモンスターは全て精霊です。今は何らかの理由でその力を失っているみたいですがその力は強大です、先程のように身体に負担が掛かります』

 

「マジか、本土で使ってる時は何も無かったが?」

 

『それは本土と違ってこの島が特殊な場所だからでしょう。元々精霊の力が強まるスポットが多い事に加えて三幻魔の影響もあります。もしこのままそのデッキを使い続けて封印されている王の力が解放され、その力を一身に受ければどうなるか……』

 

真剣な表情で語るドリアードの言葉を聞きながら手元のデッキに目を落とす。

前世で使っていたジェネレイドデッキ。EXデッキを使わずともその1体1体の強力な力で相手を制圧する事が可能なこのテーマは何故か今生の俺の手元に集まって再び組み上げられたものだ。

あれも今考えれば精霊の仕業だったのだろうか、よく分からない。

 

「分かった、約束するよ。その代わりにお前をガンガン使うからな」

 

『ええ、彼の王に代わり貴方を守るという気持ちは今も変わりません。これからもよろしくお願いしますね?』

 

俺の言葉にドリアードは柔らかい微笑みを向けて答える。

厄介な悩みは増えたが俺にはドリアードという心強い味方がいる、その事実に心が軽くなるのを感じながらその日は終わった。

 

 

 




サイコショッカーをリリースし主人公とドリアードの親愛度をアップさせてもらうぞ
という訳で主人公のガチデッキはジェネレイドでした、次回辺りでまたその辺掘り下げます


ドラゴンメイドを組もうと思っていたらジェネレイドが出来上がっていた、そんな経験ありませんか?
「俺もだ」「シャーク!」
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