アケチゴロウのカルデア録   作:向柑

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独 自 設 定
よろしいですか⁈

前のやつと比べて割と別物になって…ないな。



     
正気に戻って目の前には赤に沈む2つのナニカ。

それが何であるかと考えるより、ここにいる自分が気持ち悪かった。



空調の有り難さを知る

 

 

 

 

 

 

マリスビリー・アニムスフィアが死んだ。

 

医療担当のトップ曰く、不審死と。

何故、どうしてと戸惑う娘のオルガマリーが次の所長らしい。

 

 

 

この機関、カルデアは閉鎖的だ。

極寒の地にあるこの施設でヒトが死んだ。少なからず原因はカルデア内に存在する。

なんて恐ろしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

この施設には様々な分野の精鋭が集まる。

変人奇人問わず集められたエリート達。

 

魔術の知らぬ一般人がいるからと言っても、異常者闊歩する時計塔と大差ないのだ。

後から気付くも手遅れ。

組織という規律によって縛られているようで、暗躍できる程度の余裕がある。

気を抜いていれば半日後の自分の生存が確信できない。

魔術の沼にそこそこ嵌っている僕は、早々に死にたくないので周りの顔色を伺う日々である。

 

いい顔(好青年)被って面倒事や雑用を引き受けるのは慣れている。

 

と、いうか死にたく無くてもその道のプロに掛かったら自分なんて1分と掛からず解体されそうだ。

魔術に関して雑魚でも先祖を辿れば魔性が入り混じる家系だ。

それなりに貴重な素材だという自覚がある。

 

 

 

そんな事を考えながら手を動かす。

やっている事はバイタルデータ入力。まぁ、雑用に分類される事である。

こんな下っ端でも数多くある組織の機密の一つに関わっている。

 

 

 

 

 

 

 

Aチームのマスターに芥ヒナコというマスターがいる事を知っているか?

2020年の夏イベントをクリアしたマスター達ならご存知だと思う。

 

 

 

 

簡潔に表すとこんなことが起こった。

 

1、僕の担当時に彼女の検査があった

2、なんか知らないけど所長いる

3、彼女は人間ではなかった

 

 

詳細を説明しよう。

 

自分は非凡な下っ端職員(笑)であるが彼女の検査は自分が担当した。

 

初めて検査を請け負ったので珍しく所長が出張っている事をなんて知らず、疑問に思わなかった。

厄介ごとだと気付くべきだったと後悔している。

彼女は検査において異常な数値を叩き出し続け、出された数値から導き出される結論は人外。普通に驚いた。

思考がショートしている内に自分は彼女の経歴からバイタルデータまで、ありとあらゆる数値を改竄する仕事をする事を約束していた。周りもグルだったかもなあれ。

結果として自分は所長の共犯者にされてしまった。

おのれ亡き所長。

 

 

 

「本当になんでこうなったんだか…よし、これでいいかな」

 

この作業をするにあたって入力用の共用ノートPCを自室へ持ち帰っている。

既に終わっている他の用件で申請を出して持ち帰ったのだ。

 

人力によるデータ入力(および修正)は基本的に暇な技術部門の職員がやっていた。

今は暇な職員はほぼいないので、自分だけしかやって無い。

この薄いノートPCを私物化してる節がある。

暇でない、優秀な職員はグランドオーダーの準備に勤しんでいる。

 

データ入力といっても、コピペするだけなんだが。

 

 

自分が年若い事も手伝ってか、ちょっと終わらないので持ち帰っていいですかー?と今の上司に聞くと快諾してくれる。

 

偏見だが、彼は時計塔から召集された人物であると予測している。タイピングが遅いので。

ほら、魔術師って機械で出来る事を魔術で済ませるところあるから。

 

にこやかな笑顔を浮かべているつもりだろうがどちらかというと嘲笑寄りの顔をしている。あっやっぱり終わらないよね(笑)みたいな。隠せていないですよ。お前俺より作業遅いだろ。

貴方歳食ってる癖にこんな雑務ばかりの作業していませんか?何?どこかの部署リストラされてたんですか?お前が他の職員やマスター候補にペコペコしてるの知ってるんだ。写真でも撮って煽ってやろうか。

 

 

 

ちょっと凹みながらシャワーを浴びる。

今のはブーメランだ、自分にも刺さる。

 

まず、僕はここに来る前は自分は優秀だという自負があった。

事実として僕は優秀な人材だ。

 

ここカルデアは個々が特定の分野に特化した人間ばかりが集まっている。

自分もプロジェクトの為に召集されたが、その研究は途中で凍結された。

 

優秀な大人は他に振り分けられたが、最も若い僕だけ微妙な配置をされた。

負傷者なんて今の所いないので仕事が無くて暇である。

雑用を引き受けているのは他者からの印象を良くしたいという思いがあるが、暇である事も影響しているのかもしれない。

ワーカーホリックだっけ?仕事が無いと落ち着かないやつって。

 

僕がいなくてもカルデアは回ると思うがまだ僕はカルデアにいる。

正直な話、形を変えて引き継がれた研究に万が一のことがあったら、という保険としてカルデアに自分は残されているのだと思う。

何かあったら研究に携わった一人として責任を追及される。

せめて正面からそう言ってくれればいいものを。

大人ってそういう事を過剰に包んで見えなくするよな。舐められているのがよくわかるし腹が立つ。

 

 

 

パキリ

見やると無意識に手に力を込めていた様でシャワーヘッドが割れていた。

そのまま使い続けるのも面倒なのでヘッドを外してホースを直接持つ。

ため息を吐いて石鹸を手に取る。

 

今じゃ自分より立場が上の人間の機嫌を損なわない様に、周囲の顔色を伺いながら過ごす毎日である。

自分でやっている事ながらムカつく。

しかし他の職員に逆ギレされて外になんか放り出されたら確実に死ぬ。寒さで。

 

人と対面で接する時はにこにこしていたので話しかけ易いと、舐めた時計塔出身のマスター候補がレポートの清書を頼んできたりした。

完璧に仕上げで USBで渡した。

相手は使い方が分からなくて赤っ恥をかいたらしい。

ざまぁみろ。

その内容に興味を示した英霊に突撃されたのは余談である。

 

いつの間にか排水口を落ちたタオルが塞いでいた様で、お湯が足元に溜まっていた。

ストレスが溜まっていたのか、緩んでるなぁと思いながらタオルを絞る。水滴は暖かい。

施設の外が極寒であるのにお湯が使える事は素晴らしいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝。いわゆる早朝。

このまま無気力に立っていてもいいが好青年の外面は大事なので起きる。

寝癖を直す自分の目つきは悪い。

意識して眼鏡をかけた顔に笑いかける。モブの完成です。

 

食事を流し込んだら仕事を始める。

そろそろマスター達を使ったレイシフトが本格的に行われる筈だ。

ファースト・オーダーだっけ?

 

 

「いたっ」

 

指を切った。

カッターの刃を折ったまま放置していたな。傷は浅そうだ。

何か違和感があると思ったがいつも着用している薄手のグローブをしていなかった。

最近ミスばかりだな本当に。そのうち暗殺でもされないか心配になってきた。

 

ポケットからハンカチを取り出して圧迫。片手で作業を続ける為に近くにあったマスキングテープで固定する。ちょっと大袈裟だな。

いい加減カウンセリングしてもらった方がいいかと考えたとき。

 

 

 

 

遠方からの轟音。近距離の衝突音。

 

 

 

 

 

なんか近くにぶつかったな。

 

 

 

「うわ。なんだ…?ぁ、」

 

 

 

 

衝撃で机に置いていたものがひっくり返っている。中には衝撃で割れたものも。

それよりも頭痛。

 

 

 

 

地面に蹲る。

何かが自分の頭蓋をこじ開けようとしている。

そうとしか表現できない痛み。

パニックになり頭を掻き毟る。()()()()()()()()()()()いつの間にか爪が手袋の素材を突き破り頭皮を傷付けていた。

 

ナニカが徐々に埋まっていく。麻痺したように。

 そして視界が霞み 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一先ず状況確認の為に廊下へ出た。

 

 

壁板が外れている。基礎が歪んでいる。

一瞬にしてカルデアは準廃墟になってしまった。

そこかしこで配線のショートによるボヤが起こっている。

 

見回すと奇妙なものがあった。

奇妙というかどう見ても天井の板。壁板もだけどこれってあっさり落ちるものだっただろうか。

同時に、複数箇所で、爆発が起こったのだと思う。

割と勘であるが。

 

 

 

負傷者が何十人も出ていると思うので本格的に仕事になりそうだ。

一先ず近くに置いておいたトランクを手に取る。

包帯に消毒液といった家の救急箱に入っていそうなものしか入っていないが、無いよりはマシだろう。

殆どの職員がレイシフトに立ち会うために集中しているはずだ。

 

 

 

 

歩き出す方向を変える。

 

技術スタッフよりも優先しなくてはいけないのはレイシフト適性のあるマスター達だ。

もしコフィンごと爆破されていたらどうにもならないが、現場から離れていた職員のどれくらいが救命活動に当たれるだろうか。

中身を凍結できれば1番良いが、確か犯罪になるはずだ。

デミ・サーヴァントの問題だけでいっぱいいっぱいになっているオルガマリーがそんな決断をできるだろうか。

 

大量の死者を出すよりはマシだと考え、実行するかもしれない。

その場合は行く意味が無くなってしまう。

…やはり職員を優先しようか、サポート役も大切な人材であるし。

 

 

 

 

 

 

悩んでいると前方から誰かが駆けてくる。

ゆるふわポニテの職員は今の所ロマニ・アーキマンしか居ないはずなので彼だと思う。

 

 

「君は…アケチ君!無事だったのかい⁈」

 

「ドクターこそ、ご無事で…一体何が?」

 

「わからない。手が空いているなら医務室に向かってくれ、職員の手当てを頼みたい。」

 

「わかりました…て。あれ?マスター達は、」

 

「コフィンの側で爆発がおこったみたいで…所長が凍結を指示したよ。じゃあ、よろしく頼んだ!」

 

「はい!」

 

真面目な顔をして返事をしたけど所長レイシフトルームにいた筈。

あれ、爆心地って言っても良い所に居たのに何で生きているんだ…?

後ロマニどこに行くんだお前…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案の定、所長は亡くなっていた。

肉体があったレイシフトできなかった所長が魂だけになったからレイシフト出来たなんて皮肉だと思う。

 

レフが人外だろうとは思っていた。

何というか、気配が人間と違ったからだ。あの程度ならただ単に個性的な人かと思っていた。

後全く関係ないけど声。なんか腹が立つという理不尽な理由だが。

フラウロス、と聞いてヒョウの頭部の剥製が胸に張り付いた人型を頭に浮かべた自分はおかしい。ヒョウはわかるが何で胸に付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じくらいの歳の職員の方が安心できるだろうと人類最後のマスターの検査を請け負う事になった。

笑顔、笑顔。

 

 

「こんにちは。

昨日はよく寝れたかな?これからの検査を担当します、技師のアケチゴロウです。

アケチって呼んでくれると嬉しいな。

若いけど一通り医者っぽい事できるから何でも言ってね。これカルテね。パソコンで打ち込んじゃいます。

さて、まずはお名前をどうぞ。」

 

「えっと…藤丸立香です。あ、花の藤に丸いの丸、起立の立に香るって書いてふじまるりつかです。これから何をするんですか?」

 

「健康診断と体力測定のミックスみたいな事かな。今日1日で調べきるからがんばろうね。

予定では…はいこの一覧ね。身長体重から採血まで午前中にやって、午後に視力検査とか持久走になっているよ。

日本の学校とか病院でやっている事とほとんど変わらないから安心してね。」

 

「はい。あれ日本語…?」

 

「僕、生まれは日本なのさ。育ったのは他の国だけども。

…早速始めるよ。まず最初に服はそこの患者衣来てもらって良いかな。いろいろ燃えちゃって1番マシなのがそれなんだ。」

 

 

 

 

 

 

何となく、かれとは違う腹立たしさを覚えた。

 

 




メモに書き出す前はコメディしてるんです…
うっかり眼鏡のレンズ割って素顔!あら美人みたいなの入れたかったんです…
お茶目だったのに…のに…


アビーかわいいなぁ…
パンケーキとホットケーキの違いって…?
触媒に焼こうと思ったけどホットケーキミックスしかなかった。

誤字多いのでちまちま直しています。

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