We are born, so to speak, twice over; born into existence, and born into life.   作:Towelie

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 夜空に瞬く星よりも眩い光の束。

 それは星の気配を消してしまうほど強く、月の光さえも遮ってしまうほどの明るさで地上をそれこそ夢の世界のように彩っていた。

 駅前のショッピングモールにある巨大なツリーは星をちりばめたようなLEDライトの電球で眩いほどにデコレートしてあった。

 ベンチの周りにあるポインセチアを植えたプランターにも小さな電灯が真珠のように添えられている。

 どこもかしこもクリスマスムードで彩られていた。

 毎年やっているのでそれほどの変化はないはずなのだが、今年は異様なほど人出が多く、なにやら異様な雰囲気に包まれていた。

「ねぇ、蛍ちゃん。本当にここでいいの?」

「まあ、ちょっと離れてるけどここなら人気も少なそうだしいいんじゃない」

「確かに、今のところはそんなにいないね」

 蛍と燐はクリスマスの喧騒から少し離れた場所にある白いベンチに腰かけていた。
 駅前の煌びやかなスポットとは違って、ここには光は届いていない。

 夜の闇とさほど変わらない冷たいベンチの周りには今のところそれほど人は集まっていなかった。
 
 ここからだとツリーは柱の影から微かに見える程度で、それは首を傾けてもそれほど変わりはない。

 氷で作られたみたいな冷たいベンチに腰掛けるのにはちょっと無理がありそうなので、ブランケットを下に引いてその上から座った。

 それでもなんとなくまだ冷たい気がする。

 燐も蛍も同じ思いなのか、どちらともなく身を寄せ合って肩をぴったりと並べて座る。
 お互いの肩が触れ合う距離まで近づいたことで、ようやく暖かさを感じることができた。

 ネイティブ柄の生地の厚いブランケットを持っていたのは、燐ではなく蛍だった。
 裏地にも刺繍が施してあり、リバーシブルで使うことが出来るアウトドア仕様。

「これ、結構いいやつだよね。わざわざ買いに行ったの?」

「うん、冬場でアウトドアするとき役立つかと思って」

 蛍はベンチに引いたブランケットの感触を確かめる様になぞった。

 フリース素材で出来たブランケットは二人で腰掛けるにはちょうどいい大判サイズで、赤と白のネイティブ柄はイブの日にちょうど合っていた。

「蛍ちゃん、冬でもトレッキングとかに行くつもりなの?」

「うん、最近は冬でもキャンプとかアウトドアするのが流行ってるんだって。人気(ひとけ )も少ないし虫はいないしで夏よりも快適みたいだし。ほら、この雑誌の表紙」

 蛍は用意周到とばかりにアウトドア雑誌を見せてくる。
 表紙には”寒いからこそ冬キャンが熱い!!”と大きく書いてあった。

(寒いのか熱いのか良く分からないよ、これじゃ……)

 燐は支離滅裂とも言える文言を訝しそうに眺めていた。
 中を見ると蛍の言う通り数ページも渡って特集してあった。

 だが、冬場でのキャンプのことばかりが書いてあったので、冬のトレッキングの敷居は高いがキャンプだけならばそうでもない、つまりはそう言う事なんだろうと燐は一人で納得していた。

「だからさ」

 蛍が雑誌の横から顔を覗き込んでくる。
 珍しく食い気味の蛍に、燐は少し驚いた。

「今度さ、燐も一緒に行かない? トレッキングかハイキング」

「あんまり遠くだと雪があったりして大変だけど、近場ならいい気がするんだ。燐。最近山に行ってないでしょ。だから日帰りでちょっとした山にでもどうかなって」

「確かに最近は行ってないけど……」

 興奮気味に話す蛍に、燐は一言答えると、困った顔で微笑む。

 てっきり燐が即答するかと思っていただけに、勢いを削がれたように蛍はきょとんとしてしまった。

(燐、もしかしてまだ聡さんのこと気にしてるのかな? もう吹っ切れたからって燐は言ってたけど……)

 つい余計な事を考えてしまう。

 時期早々だったのかもしれない、と蛍は後悔した。

「ごめんね。無理に誘っちゃて、わたしと一緒じゃ嫌だよね。足手まといになるし」

 自身の身勝手な憶測も含めた謝罪を燐にした。

「あっ、全然そんなことないよ! ただ、休日もやることがいっぱいで暇があんまりないだけで、もう少ししたら落ち着くとは思うから」

 蛍が気を遣って言ってくれているのに無下に断った気がして、燐は慌てて訂正した。

「そうだよね。部活もやって家の手伝いもしなくちゃならないんだもんね。ごめんね、燐の都合も聞かないで勝手なことばかりいって」

 蛍はいたわるように燐の手に触れる。
 手袋越しでも蛍の気持ちが伝わってくるようで安堵する。

「あ、でもでも、蛍ちゃんに誘ってもらえてすっごく嬉しいからねっ! それにしてもさ、蛍ちゃんすっかりアウトドアにハマっちゃったよねぇ。今はわたしより詳しいんじゃない?」

「さすがにそれはないよ~。まだ半年もやってないし。でも……自分でもこんなにハマるとは思わなかったよ」

 そう言った蛍の顔は以前よりもずっときらきらしていた。

 前はどちらかというとガーリーな女の子らしい服を着ていたが、最近の蛍はアウトドアで着れる機能的は服を着ることが多くなっていた。

 制服の下も燐と同じような長袖のベースレイヤーを重ね着して、足元もローファーではなく、ズレのないしっかりとしたトレッキングシューズを履いて登校するようになっていた。

 燐と並べばペアルック、もしくは双子コーデともとれる格好だったが。
 周囲に何と言われようとも二人は気にせず、むしろ真似するものも出てきたほどであった。

 蛍のトレードマークとも言える二つに結わいた髪も前よりかは短くなっていた。
 トレッキングするときに邪魔だからと、ある日突然短くしてしまっていた。

 そのおかげなのか、蛍は以前よりも活発になってきたと思う。
 価値観が変わったというか、ちゃんとした趣味が出来たからだろうと燐は思っていた。

 だいぶ変わった印象になった蛍だったが、あのキンセンカの髪飾りだけはまだ自分の髪に付けていた。

 捨ててしまおうかと思ったこともあった。
 けれども結局元の蛍の髪に収まっている。

 それは貰った吉村さんに悪いと思ったし、それに自分の事を間近で見てたのはこの髪飾りだけなんだと思ったから。

 多分、燐でも吉村さんでもないと思う。
 わたしが最後に残るのは、この悲しい花言葉を持つ髪飾りだけ。

 そんな気がしたから。


「とりあえず今一番気になるのはうちの店のことかなぁ。トレッキングを再開するのはその後だね」

 燐は自分に言い聞かせるように言った。

 自分でも分かっている。
 まだ心の中に煮え切らない思いがあることを。

「それにさ、蛍ちゃんがいるから大丈夫だよ。わたしは蛍ちゃんがいればそれでいいんだよ」

 燐の長い髪が優しく揺れる。

 肩口程度までしか伸ばしていなかった燐の髪は、今は背中の辺りまで伸びていて、燐の印象を変わったものにしていた。

 落ち着いて見られるというか、大人っぽくなったなんて、クラスや部活のみんなに言われたこともあった。

 何も変わっていないのにね。

 ただ長い髪は部活の時邪魔になるのでカチューシャで止めた後、更にゴムで縛ったりしていた。

 髪が長くなったせいでホッケー部の連中に遊ばれることもあった。
 時に三つ編みにされたり、ショートツインにされたりと格好の玩具にされていた。

 燐はその度に違った自分を見た気がして、少しむくれたりもしたが、満更でもなかったらしい。

 蛍は燐の髪型が変わるたび、嬉々として写真を撮りにくるのだが、それが無性に恥ずかしかった。

 でも、髪型を変えても特に何が変わるわけでもない。
 引っ搔き傷はずっと心の奥に残ったまま。

 唯一変わったことと言えば……。
  
 燐は考え深い表情になったかと思うと、困った顔で笑いながら答えた。
 
「お兄ちゃん向こうで上手くやってるみたいだし、これで良かったんだと思う。でも北海道ってすっごく雪降るから、今頃は大変なんじゃないかなぁ? うー、考えただけで身震いしてくるよぉー」

 燐はわざとらしく体を震わせて、どこか客観的に笑い飛ばした。

 自分でもバレバレな態度だと思っているが、適切な言葉が浮かんでこなかった。

 だったら笑い話のほうがいい。
 その方がまだ少しだけ救われる、そんな気がするから。

「燐……」

 蛍は胸元で手を握る。

 燐の手を今すぐにも握ってあげたかったが、燐を傷付けた自分にその資格はないと思ったから。

(やっぱり聞かなければ良かった。燐はまだ聡さんの事を忘れられずにいるんだ……そうだよね、あんなに好きだったんだもんね。わたしって無神経だな……)

 燐を気持ちを代弁するかのように蛍は膝の上に手を乗せて俯いてしまった。
 
 燐は何とも言えず困ってしまった。

 蛍が共感してくれるのは嬉しいけど、自分の道化っぷりが無意味になってしまう。

 結局蛍にも気を遣わせてしまった。

 だから燐は蛍の手に掌を重ねてもう一度笑った。

 今度は少し自然な感じで。

「わたしが今気がかりなのはね、家のことと……蛍ちゃん。ね、せっかくの二人っきりのイブなんだから笑って欲しいなぁ。ちょっとだけでいいから」

 俯いた視線を上げると燐の笑顔があった。
 ちょっと無理してるのが分かるけど、そこがとても愛おしい。

 蛍も少し無理をして笑ってみせた。

「あ、えっと……うん、イブだもんね。ごめんね、変なこと言っちゃって」

「ううん。こっちこそごめんね。近いうちにトレッキングもやるようにするから、それまで待っててほしいな」

「わたしいつまでも待ってるよ、燐と一緒にトレッキングするの楽しみだから」

「蛍ちゃんも言うようになったねぇ」

「そうだよ。わたし我慢せずに言うようにしたんだ。その方が楽だと思ったから」

 蛍は目元をこっそり拭いながら照れたように笑った。

「へぇー、蛍ちゃんは成長したんだねぇ。そういえば胸も大きくなったような……」

 燐はわざとらしく両手をわきわきと蠢かせた。
 それはあからさますぎる行為だった。 

「燐。女の子同士でもセクハラは成立するんだよ」

 蛍は真顔で燐をたしなめる。

「もぅ、蛍ちゃんは手厳しいなあ。ちょっとしたスキンシップがしたいだけなのに」

 残念と言った顔で燐は手を引っ込めた。
 触れ合いたいのはわりと本心だったけど。

「燐はそんなことばっかり言ってるんだから。恋なんて当分無理だよね」

「くすっ、まあね」

 燐と蛍は顔を見合わせて笑った。



「そういえばさ、今日ってクリスマスイヴでしょ。燐、”青パン”の手伝いはしなくてもいいの? 結構お客さん来てそうだし」

「もう、蛍ちゃんその名前は止めてよ~。ちゃんと”青いドアのパン屋さん”って可愛い名前があるんだからぁ! それに店のことは多分大丈夫だと思う。確か今日は吉村さんがシフトに入ってくれてるし」

 三間坂家の専属といっていいほど献身的に世話をしてくれた吉村は、最近家政婦業を辞めていた。

 理由のひとつに蛍の自立があった。

 自分一人で何でもやってみたいという蛍の意見と、蛍自身に収入がないことから自分が辞めるのが妥当だと思っていた。

 それでも吉村との交流は続いており、吉村は何かにつけて三間坂家を訪問していた。

 そんな吉村が新しい勤務先に選んだのが燐の家がやっている”青いドアのパン屋さん”。

 新しい人を雇うだけの予算はまだぎりぎりだったが、燐が学校に行ってしまう以上、母が一人で切り盛りしなくてはならなくなる。

 辺鄙な田舎町のパン屋でもやることは山の様にあるのだと母、咲良は今更のようにため息をついていた。

 そんな時に渡りに船とばかりに吉村が求人を申し込んでくれたので、咲良は即採用した。
 知り合いが少ない小平口町で、娘の友達の知り合いというのはとても心強かったから。

 たちまち二人は意気投合して、その日のから仕事をすることになった。

 吉村は家政婦の経験のおかげで大変良く働いてくれた。

 ”燐が居なくても十分やっていける”、ある日燐が遅くに帰ると、母がアルコールを煽りながらのたまったので、燐は憮然として訝しんだが、とりあえず言うように任せることにした。

 それは思ったよりも上手くいっていて、多分今日も大丈夫だとは思う。
 蛍も吉村さんが別に仕事に就けたことをとても喜んでいた。

「まあ、吉村さんがいるなら大丈夫そうだね、今日の”青パン”」

 蛍は何気なくその名を口にしているが、燐には思いのほか心苦しく聞こえてしまう。

 ”青いドアのパン屋さん”は、店の命名権を母と争ってなんとか無理やり勝ち取った、名誉ある名前だった。

 故に燐には店の名前にこだわりがあった。
 ちゃんと正式名称で呼んでほしい、と常々思っていて周囲にも話しているのだが、それは親友の蛍にすら伝わっていない。

「でもみんな”青パン”って呼んでるよ。その方が覚えやすいみたいだし、わたしも青パンの方が親しみやすくて好きだなぁ」

 紅葉が落ち始める頃、帰り道で蛍が何気なく言ったこと。

 結局それは燐の周りだけでなく、町内でもその呼び名が定着してしまった。

 誰が最初にその名で呼んだのかは分からないが、今や小平口町の青パンになってしまっていた。

 あまりにも定番化したので、いっそのこと店名も”青パン”に変えようかと母に議論を持ち出されたが、燐は断固として譲らずその意見を速やかに却下した。

「青パンって言い方さ、なんかすっごく胡散臭くない? なんか下着売ってるお店っていうか、いかがわしいお店みたいでさあ……確かに最近は変な名前のパン屋さんが流行ってるとはいえ、やっぱり青パンはないよ~」

 そんなことを蛍に言っても意味はないのだが、当事者としては愚痴を零さずにはいられなかった。

「でも言いやすいし、可愛くない? 語感もいいし。それにこの前、人に尋ねられたよ。”青パンって店はどこですか”って。わたしはちゃんと燐の家を教えてあげたからね」

 蛍はそれが総意であるかのように少し胸をはった。
 ただでさえ大き目のバストが更に強調されて、燐は圧倒的なものを感じて閉口した。

「なんか複雑な気分だなあ……有名になるのはいいんだけどねぇ」

 しっくりこないとばかりに首をかしげる燐。

「でも有名になることは悪いことじゃないんじゃない? いっそのこと本当にパンツの形したパンでも売ってみるとか」

「ふぇ~、そんなの作ったら大炎上だよー!! 今だと女性軽視とか言われそうだし……」

 蛍の突飛すぎるアイデアは燐に即座に否定された。

「えー、良いと思うんだけどなあ。ほら今って、色々売ってるパン屋さんよりも、特化型のパン屋さんが増えて来てるじゃない? 食パンしか売ってない店とか、ベーグルだけの店とかもあるし」

「そういった専門の店って増えて来てるよね、駅前にもあるし」

 小平口町と違って、この駅周辺は明らかに都会であるためそういった専門店も割とそこらじゅうにあった。

 界隈で新しいパン屋が出来ると燐は自分の店でも使えるものがないかと足繁く通い、何らかのアイデアを模索しているのだが。

 そういった専門店の台頭はここ最近増え続けていて、それは確かに一定の人気を得ていた。

「だからパンツ型のパン専門店にしてみたらどう? 青だけじゃなく白とか黒とかボーダー柄とか……それこそ燐の好きなベーグルみたいに色とりどりにしてみたら可愛くないかな?」

 蛍の言う、謎のアイデアを頭の中で思い浮かべてみる燐。

 逆三角形のパンをトングで掴み、それをレジに持っていく客……。

 ……どうみてもありえないし、いかがわしいとしか表現しようがない。
 
 燐は軽い眩暈をおこしたように額に手をあてていた。

「ごめん、蛍ちゃん。とてもじゃないけど受けないよそれ……もしかして、わざと変なアイデア出して楽しんでない?」

「あ、バレた? わたしね青パンにちょっと変わったパンとかあったらいいなぁって前から思ってたんだ。看板商品みたいなの」

 肩をすくめる燐には蛍は小さく舌を出して笑った。

「変わってるっていうか、マニアックすぎるっ。そんな看板商品作ったら別の意味で有名になっちゃうよ~!」

「あははっ、でも注目を浴びることはいいことだと思うよ。お店は宣伝が第一だし。それにもし取材が来て本に載るようになったら、”お願いだから青パンって呼ばないでください”って書いてもらえばいいんじゃない」

「うー、余計に呼ばれそうな気がするし、そもそも取材になんてこないよ~。うちは普通だし」

「だから新商品開発しよっ。わたしも協力するから。みんなで青パンを盛り上げていけばきっと取材がやってくるよ」

 蛍は嬉しそうに燐に提案する。

 何を張り切っているのは分からないが、蛍は燐の家、青パンに並々ならぬものがあるようだった。

 燐はなんとも複雑な気持ちになる。
 蛍とは違って燐はささやかなものしか求めていなかったから。

(蛍ちゃんには悪いけど、わたしは素朴なパン屋さんがいいんだよね)

 燐はそこまでのものをパン屋に求めてはいなかった。
 もともと母が趣味で始めたようなものだし、母子二人で暮らしていけるだけの収入があればいいと思っていた。

 確かに店としては客がより多く来た方がいいのは当たり前とは思う。
 知名度があがるのも悪くないとは思わない。

 でも燐は今のままで十分と思っていた。

 背伸びしない、身の丈に合った生活とちょっとした幸せがあればそれで。

 ……多分母はそう思ってはいないだろうが。

「わたしは田舎の素朴なパン屋さんでいいんだよ。そんなに有名にならなくても、蛍ちゃんとか友達とか、近所の人たちパンを買ってもらえればね」

「でも、それじゃあ赤字になるんじゃない? 店のパンが結構売れ残ってるの見るよ」

 急に現実的な意見を言う蛍に、燐は開いた口が塞がらなかった。

「ほ、蛍ちゃん、痛いとこつくね。でも、最近はちゃんと計算して焼いてるからロスは少なくなってるんだよ」

 いつまでも売れ残りのパンで腹を満たすわけにもいかないので、燐は母と二人で夜通しリサーチと試作品の開発をしていた。

「そうなの? わたし、売れ残りのパンを一つの袋にまとめて売るのが好きだから、売れ残りが減るのはちょっと残念だなあ」

 一時期、売れ残ったパンを蛍にあげてたこともあったが、それは悪いからといつしか蛍はお金を払うようになっていた。

 そのおかげで助かったと言えばそうなのだが。

食品廃棄(フードロス)問題のこともあるし、売れ残りは減らしていかないとね」

 燐は人差し指をくるりと回して、聞きかじりの知識を披露する。

「だったらやっぱり有名になったほうがいいんじゃない? お客さんが来てくれて、売れ残りもゼロ。一石二鳥ってやつじゃないかな」

「あっ、そういうこと、なの……?」

 蛍に上手く丸め込まれて、燐は小首を曲げて考え込む。

「ねっ、燐。みんなで青パンを盛り上げて行こう。町おこしの一環として、ねっ」

 燐の手をとりながら蛍が明るい声で提案してくる。

 蛍としては同じ町に親友が移り住んでくれたのだから、なんとしても協力してあげたかった。

 燐は蛍の気持ちを汲んで優しく微笑み返す。

「ありがとう蛍ちゃん、その気持ちだけで嬉しいよ。でもね……」

「ん?」

「やっぱり青パンはちょっとね」
 
 それだけはどうしても譲れなかった。

 そして二人は顔を見合わせると、くすくすと笑い合った。

 何気ないやり取り。
 それが二人にとって何よりも楽しく、心地よかったから。



「ねぇ、燐。まだちょっと時間あるし今のうちにプレゼント交換しない? 燐はちゃんとプレゼント持ってきてくれたよね?」

 蛍はきらきらした瞳で燐に尋ねる。

 それはどんなイルミネーションよりも綺麗で透き通って見えた。
 その瞳の前にはどんな嘘も見破られそうで。

 だから燐は誤魔化すことなく正直に蛍に話した。
 
「ごめん……実はわたし直前になるまですっかり忘れたよ。でも、ちゃんと用意したからね」

「うん、だったら問題ないよ、えらいえらい」

 蛍はにっこりと笑って燐の頭を撫でた。

 突然のことだったが、蛍が屈託のない笑顔だったので、燐は何も言わずなすがままに撫でられていた。

「燐は賢いねー、よしよし」

 ペットにするような可愛らしい声で蛍が言うので、燐はさすがに恥ずかしくなってきた。

「も、もう蛍ちゃん、撫ですぎっ。さすがに恥ずかしいよー」

 燐は頭に乗せられた蛍の手を払いのけた。
 と言ってもそこまで力は入れておらず、軽く押した程度であったが。

「燐、照れなくてもいいのに」

 燐が手加減してくれたことを知っていて、蛍は再度燐の頭に手を乗せようとする。

「もー、撫でることがプレゼントじゃないでしょ。どうかしちゃったの蛍ちゃん?」

 燐は蛍の手を両手で受け止めると、どこか浮足立っている蛍に首を傾げた。

「ほんとにね。クリスマスイブだからなのかな」

 蛍は他人事のように言って、頬に指をあてた。

 なんとなくだが、今日の蛍はいつもと勝手が違う気がする。

 上手くは言えないけど、どこかふわふわとして定まらない感じがする。
 イルミネーションの明かりが蛍をいつも以上に活発にさせている、そんな気がした。

「蛍ちゃん。早く交換しよう。なんか人出が増えてきているし」

 確かに燐の言う通り、誰も居ないと思ったベンチの周りには人が集まってきていた。

 待ちきれないとばかりに燐はいそいそとバックパックを下すと、中から赤いリボンにくるまれた紙袋を取り出す。

「あ……そうだね」

 少しぼおっとしていた蛍も隣に置いたカバンからプレゼント用の紙袋を取り出す。
 それは赤いリボンにくるまれた少し大きめの包装紙だった。

 奇しくも燐と同じようなものを手に取っていた。

「じゃあ、はい! 蛍ちゃんメリークリスマス!」

 燐は少し頬を染めて、プレゼントを蛍に渡す。

「うん、メリークリスマス、燐」

 蛍も顔を赤くして言うと、赤いリボンにくるまれたプレゼントを燐に手渡した。
 
(あれれ?)

 二人は同時に同じ違和感を覚えていた。

 燐から蛍に、蛍から燐にプレゼント交換がなされたはずだったが、それは何も変わっていない様に見えた。

 間違い探しというにはあまりに同じもの。
 リボンの結び方も包装紙もほとんど変わりはない。

 燐の手の中のプレゼントのほうが若干大きく見える程度の差異しかなかった。

 蛍はせっかく渡したものを突き返されたような、何とも言えないショックを受けて、自分のと燐のプレゼントをしばし交互に眺めていた。

(これってどういうことなんだろう? もしかして燐と被っちゃった?)

 燐も同じことを思ったのか、顔を見合わせると大きく頷いた。

 二人は照らし合わせたように同じタイミングでプレゼントの中身を確認する。

「あっ」

「あ……」

 リボンを解いて紙袋を上げた時、小さな歓声が二つ、同時に沸き起こった。
 そこには驚きと、小さな喜びが含まれていた。

「やっぱりこれって……」

 燐は包み紙の上の薄いベージュ色のものに見覚えがあった。

「クレープ、だよね。これ、もしかしてパステルの……」

 蛍もそれを知っていた。
 中身を落とさない様に気を付けながら、包装紙のロゴを確認する。

 そこにはゴシック体で”Pastel”の文字のロゴが書いてあった。
 もちろん燐のものにも。

「あ~、やっぱりパステルかぁ。この辺のクレープ店ってパステルしかないもんね」

 燐は諦めたような声を出す。

「燐、ごめん。被っちゃったね」

 蛍が本当に申し訳なく謝ってきたので、燐は慌てて返答する。

「蛍ちゃんが悪いんじゃないよ。事前に聞かなかったわたしが悪いんだからっ。だからごめんね」

 燐と蛍はベンチの上で向かい合ってお互いに謝罪した。

 二人がプレゼントに選んだのは、偶然にも同じもの。

 クレープショップPastelの”デラックスぱすてるクレープ”だった。

 これが新作で売り出したときはまだ初夏の頃、二人にとって忘れがたい季節の頃だった。

 そのボリューム感から当初は敬遠されがちだったのだが、夏の休みに入ってからは急に売り上げが伸びてきて、いまやPastelの定番商品となっていた。

 それでもあくまでシェア向けで、シングルで頼む人はあまりいなかった。

 しかし燐と蛍の手にはそのクレープが握られ、いや割と重そうに持っていた。

 いかもトッピングも全く同じ、アイスもストロベリーも、チョコレートソースも全ては過剰に盛られている。

 優に3人前はあろうかと思われる大きなクレープは見た目だけでなく中身もしっかり3人前だった。

 もちろんカロリーも3人前。
 今日の体重計が怖いぐらいだった。

「蛍ちゃん……これ食べきれるの?」

「もぐもぐ、うん。わたしは大丈夫みたい」

「あぁ、そう……」

 黙々と食べ始める蛍に尻込みしながら、燐は端っこの方から少しづつかじりついた。
 生地の暖かさと、中のアイスが絶妙なアクセントになっていて確かに美味しいのだが。

「でも、良かった。燐のプレゼントがクレープでわたしてっきり」

「てっきり?」

「ブーメランかと思っちゃったよ」

「ふぇっ!? なんでブーメラン?」

「小説でさ、わたしたちと同じように女の子同士でプレゼント交換するの。で、その子の渡したのがブーメランだったんだよ」

「ブーメランねぇ……あ、もしかしてファンタジー小説とかで良くあるバトル系の話?」

 燐はその手の話を何度か読んだことがあったので蛍が言っているのはそーゆー系の話だと思っていた。

 それならブーメランを貰ってもそれほどおかしくはない。
 剣でも槍でもなくブーメランなのはちょっと斬新だとは思うけれど。

「ううん、違うよ。わたし達と同じ高校生で普通の話だったなあ。敵とかそういうのは出てこなかったし」

 蛍はさも美味しそうにクレープを食べながら燐の期待をあっさりと否定した。

「そうなんだ……だったら余計に不思議だねぇ」

 燐は少しがっかりすると蛍と同じようにクレープを食べる。
 この量の多さは一種のファンタジーだと思った。

「でも、燐から貰ったら嬉しいかもね。たとえそれがブーメランだったとしても。……あ、きっとそういうことなのかもね」

「ん? しょうゆうこと?」

 燐は口の中ではもはもと苺を転がしながら蛍に聞き返す。

「きっと燐には分からないことだよ」

 ハムスターのように口いっぱいに頬張る燐の顔が可笑しくて、蛍は楽しそうに答えた。

「??」

 燐はなぜ蛍が笑っているのか分からず首を捻る。
 尚も笑っている蛍に肩をすくめると、クレープを食べる作業に戻った。

「んー、それにしてもさ、これボリュームがあるよねぇ。なんか飲み物欲しくならない?」

「そう思って買っておいたんだ。はいこれ燐の分」

 蛍は傍らに置いた青いバックバックから小さなペットボトルを取り出す。
 オレンジのキャップのそれは人肌程度の暖かさがあり、自販機等で良く見る飲み物だった。

 少し茶色がかったペットボトルを手に取ると燐はしげしげとラベルを見つめる。

「蛍ちゃんこれって……」

「うん、()()()()ミルクティーだよ。わたしのおごりだから遠慮せずに飲んでね」

 やはり予想通りミルクティーだった。
 ラベルには”ミルク20%増量”とおまけ書きまでしてある。

 ただでさえ甘いミルクティーにミルクの追加がしてあり。
 完全に甘党向けのテイストになっていた。

 つまりそれは蛍向けの飲み物と言うことで。

 考えてみたら蛍が買う飲み物は殆どが甘味系の飲み物だった気がする。
 知っててやってるなら分かるが悪意がまったくない分、余計にたちが悪いとも言えた。

「えっと、その……さ」
 
「どうしたの?」

 出来れば甘くない飲み物が良かったんだけど……と燐は言おうとしたが、隣の蛍が普通にミルクティーを飲みながらクレープを食べているのを見たら何も言えなくなってしまった。

(もしかして、蛍ちゃん、わたしを甘さでころそうとしてる!?)

 燐の脳裡にあり得ないけど、あり得そうな考えが浮かんでしまう。

「燐、あまり進んでないけど……途中で何か食べてきたの?」

 蛍は少し心配そうに燐を見つめる。

 蛍のクレープはすでに四分の一程度まで減っていた。
 それに対して燐のクレープはまだ半分以上も残っている。

 いくら甘いのが好きだからってこれでは……。
 蛍が心配するのも無理はなかった。

「あ、いや、そんなことないんだけど」

 比喩だけでなく実際の腹の内も探られてるみたいで、燐は思わずギクリとした。

 さっきから頑張って食べているのだが一向に減る気配がない。
 そのことにずっと疑問を感じていた。

 行儀悪いとは思いつつ、クレープの中を指で開いて見てみる燐。
 量といい重さといい、いくらなんでも多すぎる気がしたからだ。

 中を開いてみて燐は声も出せず仰天してしまった。

 そこには大量の生クリームソースと過剰ともとれるフルーツがぎっしりと詰まっていたからだ。

 これは燐の知っている特製クレープではない、ここまで過剰に盛り付けることはなかったはず。

 特製クレープを食べるのはこれが初めてではないのだから。

 燐は横目でちらりとクレープを食べる蛍を見る。
 相変わらず美味しそうに食べているが、そこまでボリューム感はなさそうに見える。

 対して自分のは明らかに分厚い、この差は一体なんなんだろうか?

 燐が手を休めて考え込んでいると一つの答えに辿り着いた。

 それは、単純なことだった。

(あっ! そうか。わたしの買ったものは蛍ちゃん用にホイップクリームを抜いてもらうように言っておいたから、それほどでもないけど)

 蛍はそんなことを気にする必要がないのだから、量に差が出るのは当然だった。

 でも。

(なぁんか、中のフルーツも多いんだよねぇ、苺なんて食べても食べても後から出てくるし……いくらなんでも多すぎだよー)
 
 盛りだくさんなフルーツのトッピングに燐は泣きそうになってしまう。

 そんな燐の手がまた止まっていたので、蛍が心配そうに見つめていた。

(そういえば、蛍ちゃん。クレープ店の人と仲良くなったって言ってたっけ……)

 もしかしたら”コレ”は特製的なものなのかもしれない。

 急場でプレゼントを決めた燐と違って、蛍はこのクレープを最初から渡そうとしていたわけだし、前もって準備していた可能性が高い。

 いや多分そうなのだろう。

 どちらにせよ、燐には過剰すぎるサービスだった。

「燐、大丈夫? やっぱり体調が悪いの?」

 さっきから手が止まっていることに蛍が見かねて声をかける。

 蛍の手にあのクレープは握られておらず、代わりに綺麗にたたまれた包み紙を手にしていた。

 蛍のあまりの速さに燐はしどろもどろになって言う。

「あ……だ、大丈夫っ。全然何ともないよ。ただちょっと量が多いなーって思っただけで」

「あぁ、それ、ひかりさん……その、クレープ店の人に頼んで特別に作ってもらったんだ。大切な人に渡したいって」

「やっぱりそうなんだ……」

 燐は自分の予想が当たっていたことを呪った。

 そして、こんなことになるのなら事前に胃薬を飲んでおけばよかったと胸中で後悔する。

「あのさ、蛍ちゃん良かったら少し食べない? わたしひとりじゃ食べきれそうにないんだ」

 燐はそうそうにギブアップ宣言をした。
 無理すればなんとか食べられないことはないが、それには時間もかかるしなにより色々と過剰に摂取することになる。

 ただでさえこの時期は食べ物が美味しくてついつい食べ過ぎてしまうのに、このままだと冬の休みを待たずしてダイエットをしなければならなくなってしまう。

 燐の必死の懇願に蛍は首を振って苦笑いする。

「ごめん燐。わたし、生クリームダメだから。それに燐の為に作ってもらったんだから全部食べて欲しいなって……ダメ? わたしってわがままかなぁ?」

 二人の会話は意図せずにしてカップル的なものになってしまっていた。

 そのことに気付いた燐は顔を赤くしてしまう。

 突然押し黙った燐に蛍は疑問を感じたが、自分の言ったことに気付いて口に手を当てると、同じように顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 傍から見れば微笑ましい光景にみえるのだが、当の本人たちは恥ずかしさで死にたい気持ちになっていた。

(どうしよう、燐に誤解与えちゃったかな)

 蛍は片目を空けて燐の様子を窺う。

 燐はしばらくクレープを見つめていたが、意を決したのか、凄い勢いでクレープを食べ始めた。

 驚いた蛍は慌てて声をかける。

「ちょっと燐! 無理しなくてもいいよ」

 蛍の制止も聞かず燐はクレープを口の中に運ぶ。
 その度に甘さが口いっぱいに広がってきて、もはや何の味か分からなくなっていた。

 それでも燐は止めることはしなかった。

 それは恥ずかしさを隠す為か、蛍の期待に応えるためか、もしくは両方かもしれない。

 今できることがこれを食べることだとするならばそれをするしかない。

 燐は余計な事も考えず、ただひたすらにクレープを胃袋の中に押し込んでいた。

 蛍は固唾を飲んでその様子を見守っている。
 アスリートが完走する瞬間を見届けるように心の中で声援を送っていた。

 蛍の応援が通じたのか、ついにその時が訪れる。

「ぷふぁ~、なんとか、全部食べたー」

 一仕事終えたように疲れ切った声をあげた。
 そのことを示すように冬だと言うのに燐はすっかり汗だくになってしまった。

 部活でもここまで疲れた覚えはそうそう無い。

 左手をぱたぱたと振りながら燐はマフラーを取って火照った体に冷気を送った。
 それは残さず食べたことよりも、苦痛から解放されたような優越感で満ちた表情だった。

「燐、お疲れさまー」

 蛍がぱちぱちと手を叩いて燐の健闘を称える。

 大層大げさな様子に何事かと振り返ってこちらを見るものもいたが、二人は特に気にせず微笑み合っていた。

「いや~、わたしも甘いものは嫌いじゃないんだけど、これは苦労したよー。当分クレープは見たくないかも」

 本気でそう思っているらしく、燐は包み紙を忌み嫌うもののように丸めながら自身のバックパックにしまい込んだ。

 甘味で痺れた舌を潤すべく、燐はミルクティーを流し込む。
 甘さ以外の味覚を忘れてしまったようで、何の味も舌先に残らなかった。
 
「でもさ、やっぱりPastelのクレープって美味しいよね。燐の食べっぷりをみてたらまた食べたくなっちゃった」

 蛍が笑顔のままで怖いことを言ってきたので、燐は身震いしてしまう。
 甘いものは別腹というが、蛍のそれには際限がなさそうに思えた。

「でも、燐とこうしてイブの日にクレープを一緒に食べられるなんて夢みたい。燐が約束を覚えてくれてたからだね。ありがとう燐」

 イルミネーションに彩られて幸せそうな表情で蛍が笑っていた。

 約束の時間にはちょっと遅れてしまったが、彼女に最高のプレゼントを渡すことが出来て、燐も同じ気持ちで微笑んだ。

 きっと物事に遅いも早いもないんだと思う。
 大切なのは、やるかやらないかだけだと。

 これは良かったんだと思う。
 彼女の笑顔がわたしにとって最高のプレゼントになったのだから。

 にしても。
 燐は現状を振り返る。

(二人でシェアしようと思ったから大きいのにしたのに、まさかの誤算だったよ……)

 家では相変わらず売れ残ったパンばかりを食べているのに、ライバル店の? クレープまでこんなに食べる羽目になるとは……。

(ダイエットを兼ねてトレッキング再開しようかな……)

 繊細な意図を持っていたはずのトレッキングへの情熱は、現実的な事象によって簡単に蘇りそうだった。

 …………
 ………
 ……

 激闘を終えた燐が勝利の美酒(ミルクティー)に酔いしれていると、隣で起こっていた信じがたい光景に思わず口の中のものを吹き出しそうになった。

「けほっ、けほっ、ほ、蛍ちゃん、それって……何?」

 喉を抑えながら燐が指さしたのは、ベンチの上の物体。
 茶色い丸太のように見えるそれは、”ブッシュドノエル”という丸太をイメージした主にクリスマスで食べるケーキだった。

 蛍はそれをベンチの上に広げていた。

「なにって、今日ってイブじゃない。やっぱりクリスマスケーキが必要かなって思って、買ってきたんだ。ここのケーキ絶品なんだよ、すごい行列だったんだから」

 楽しそうにケーキを切り分けている蛍。
 燐はその様子に恐怖に似た感情を覚えて戦慄する。

(まさか、まさかだよね。蛍ちゃん!)

 燐は予想通りの展開にならないことを祈った。

「はい、燐。あ~ん」

 だが、今度も燐の予想した通りになってしまった。
 今日の燐は良くも悪くも勘が働くようだ。

「えっ。その、今クレープ食べたばっかりだから……」

 切り分けたケーキを蛍がフォークで口元に運んでくる。
 あまりにもお約束な展開に、燐はぶんぶんと首を振ってその行為を拒否、ではなく遠慮した。

 恥ずかしさは当然あるが、それよりももっと切実なものが燐にはあった。

 これ以上甘いものを口に入れたら、口の中がバカになりそうだったから。
 口から本当に砂糖を吐き出しかねないから。

「燐ってば、遠慮しなくてもいいよ。これもわたしがおごってあげるから。それにクレープだけじゃ物足りないでしょ。燐は部活の後なんだからちゃんと食べておかないとね」

 にこにこと笑いながらケーキを近づけてくる様は天使の様な笑顔の蛍。

 だが燐にはその微笑みが悪魔のように見えていた。
 裏がないだけに余計に怖かった。

「わ、わたしもうお腹いっぱいなんだよ~。届いて~」

「えー、ちゃんと届いてるよー。だってデザートは別腹なんでしょ? ほら、あ~ん、して燐」

 このまま押し問答を続けても更に恥ずかしいだけだし、一度だけなら蛍の言う通りにしたほうが良いと思った。

(そうか、蛍ちゃんの主食はクレープだったのか。じゃあ生クリームがダメになったのはクレープの食べ過ぎが原因だったりして)

 どうでも良いことを考えながら燐は目をぎゅっと閉じて観念したように口を開いた。

「あ、あーん」

 蛍は片手を添えて燐の口の中に優しくケーキを入れる。
 燐は舌の上に乗っかったことを確認すると、もごもごと口の中全体で味わった。

 とろけるようなバターの豊潤な香りとココアのふわっとした味のマッチング、確かな美味しさがあった。

 それを素直に楽しめないのは口の中が甘ったるいせいだと思うが、それにしたってこれは。

(やっぱり甘い! さっきはちょっと違うけど甘いケーキだ!)

 ケーキはクレープよりも好みな燐だったが、まだ下にさっきまでの甘さが残っている内にケーキを口に入れられたものだから、余計に甘さが気になってしまった。

 燐の舌の上で違う甘さの層が出来て、さしずめミルフィーユ状態になっていた。

「どう、燐。美味しい? 燐の店のパンも美味しいけど、ここのケーキも美味しいでしょ。新メニューの参考になるかと思って、燐の為に買ってきたんだよ」

 気づかいは嬉しいが、気の回しすぎという言葉もある。
 蛍の二つ目のプレゼントは燐にとって明らかに後者であった。

 それでも蛍が恋人にでも訊ねるような甘い声色で聞いてくるので、燐はことさら頑張って口をほころばせた。

「う、うん。美味しいよ。蛍ちゃんは優しいなあ」

 ”優しい”のニュアンスがちょっと違っているが、蛍にはばれていないようだった。
 多分変な顔をして言っている気がするが、それを確かめる余裕はない。

 なんとか頑張って食べた自分を褒めてあげたいぐらいだった。

「そうでしょ。まだまだあるからいっぱい食べてね燐」
 
 燐の感想に満足したのか、蛍は一口だけでは終わらせてくれないようだ。
 心にもないことを言った報いなんだろうか、燐は聖なる日に良く知らない神様に懺悔した。

「わ、わたしはもういいから蛍ちゃんが残り食べてほしいな」

 自分としては頑張ったほうだと思う。
 蛍よりもボリュームのある特大クレープを食べた後にケーキまで食べたんだから。

「──えっ、これは燐の分だよ。わたし実はね……燐が来るちょっと前につい一人で食べちゃったんだ」

 事も無げに照れた笑いを浮かべる蛍に、燐は親友でありながらも戦慄してしまう。

(食べたって………まさか全部一人で食べちゃったっていうの!? しかもその後に、あの大きなクレープも食べられちゃうもんなの??)

 蛍は燐と同じく華奢な体つきをしているが、出るところは出ている。
 それも平均以上に。

(蛍ちゃんのプロポーションが良いのは、過剰なスイーツの摂取のおかげ? なわけないよねぇ……)

 燐は自身のどうしようもない考えに一人ため息を付いていると、蛍が先ほどと同じことをやろうしとしていた。

「ほら、燐。あーん」

 さっきとまったく同じことが起こって燐はこれがデジャブなのかと、軽く現実逃避する。
 
 そんな思惑など意に介していないように蛍は再び燐の口元にたっぷりとココアパウダーが乗ったブッシュドノエルの切れ端を乗せたフォークを運んできた。

 友達同士というよりかはやはりカップルのやり取りにみえる。

 燐は恥ずかしさを誤魔化すように声を上げた。

「あ、あのねっ、蛍ちゃんっ!」

 燐が急に大きな声を上げたので蛍は少しびっくりしてしまった。

「ど、どうしたの燐?」

「うん。あの、あのさ……」

 燐はその後、何と言ってかわからず、両膝をもじもじとさせた。

「こ、これ……」

 もういらないとは流石に言えない。

 せっかく蛍が善意でしてくれたことを無下になんでできるわけがなかった。

 でも、舌も胃袋も悲鳴を上げている。

 だとすれば燐に出来ることはもう………。

「あのー、テイクアウトでお願いします……お母さんにも食べさせてあげたいし」

 背に腹は代えられないとばかりに、燐は代替案をだした。
 母を口実に使ったようで悪い気もするが、嘘は言ってないと思う。

(まあお母さんはこういうお菓子好きだし食べてくれるとは思うけどね。売れ残りがなければの話だけど)

 今日だけは完売しててほしい、燐はクリスマスらしく神様に祈った。

「燐は優しいね。お母さんのことも考えるなんて」

 疑う余地もなく蛍がニコニコと笑うので、ちょっとだけ胸が痛んだ。

 燐は目線を逸らしながら愛想笑いを浮かべると、すっかり温くなったミルクティーを口に入れる。

 ……やっぱり、甘い。

 贅沢は言わない。
 
 普通のお茶、もしくは水が切実に欲しかった。





Medieval ecriture

 

 にわかに周りが活気づいてきて、ベンチの周りにも人が集まってきていた。

 

 喧騒の度合いが上がったようで、なんとなく物々しさを感じてしまう。

 

 帰宅ラッシュ的なものにしてはどこか違って、何かを期待しているような高揚感がある気がする。

 

 ミルクティーを飲み干した燐が不思議そうに辺りを眺めていた。

 

「あ、そろそろじゃない」

 

 隣に座る蛍が何かをスマホで確認していた。

 

「そろそろって?」

 

 燐は自分で調べることなく、隣に座る蛍に聞き返す。

 

「あれ、言ってなかったっけ? もうちょっとでクリスマスの特別イベントみたいなのが始まるみたいだよ」

 

 ほら、と蛍がスマホの画面を燐に傾けた。

 

 イベント用のHP(ホームページ)の見出しには、”恋人たちの甘いひと時を彩るイブの夜に起きる奇跡! 駅前広場withプロジェクションマッピング!!”と、大層仰々しいタイトルが付けれている。

 

 よくある一夜限りのプロジェクションマッピングがこの駅で今から行われるらしかった。

 

「確かに。でも”恋人たち”ってねぇ」

 

 燐はちょっと困ったように蛍を見る。

 

「ね」

 

 蛍も困ったように微笑み返す。

 

 HPに記載してあるスケジュールではあと少しのことらしい。

 

「だからこんなに人が多いんだ」

 

「うん。みんな目的は同じみたいだね」

 

 燐は物珍しい様子で周囲を見渡すと、見物人はどんどんと増える一方で人の波があちらこちらに出来ていた。

 

 イベントのシンボルだった高いクリスマスツリーも、いつしか人の垣根に埋もれて見えなくなってしまった。

 

「どうしよっか、ここからでも多分見えるとは思うんだけど……」

 

 人通りが少ない場所を選んだつもりだったけど、ベンチの周りには人が集まってきていて、なんだか気まずい感じになっていた。

 

 駅を巨大なスクリーンにするプロジェクションマッピングなのだから、まったく見えないということはないだろうけど、このまま人が増え続けたら、せっかくの映像が人によって遮られてしまうかもしれない。

 

(それに、やっぱりカップルが多いよね。なんかわたしと燐だけ場違い感があるかも)

 

 カップルだけでなく、親子連れやそれこそ女の子同士で来てる人たちもいるのだが、圧倒的にカップルのほうが多かった。

 

 特にベンチの周りにいるカップル連れから無言のプレッシャーを与えられているみたいに感じて、蛍は俯いて視線から逃れた。

 

「ねぇ、燐。場所……移動しようか?」

 

 蛍は燐の腕を掴むと耳元でこそこそと呟いた。

 

「うん……なんかさっきから視線が怖くない? なんていうか敵意っていうか」

 

 蛍も視線を感じたのか燐の腕にしがみ付く。

 

(別にカップル専用とか書いてあるわけでもないし、なんなんだろう一体?)

 

 確かにこの辺りのベンチの数は限られているので、羨ましいのは分かるのだが。

 

 なぜだかたまたま空いていたから座ったけど、棘の様な視線で睨まれたらとてもじゃないが落ち着くことは出来そうにない。

 

 さっきまで二人でそれなりに楽しかったのに、今はなんか妙な場違い感があった。

 

(プレゼント交換もしたし、やるべきことは一応やったからいいけど……)

 

 蛍はこちらを睨んでいるような眼から背けて燐だけを見ることにした。

 

 その時ちょうど燐が座っているところに何かが書いてあったのに気付いた。

 

「燐。ちょっといい?」

 

 どうしても気になって燐に少しどいてもらうように頼む蛍。

 

「あぁ、うん」

 

 よっこいせ、と年より臭い擬音を発しながら燐が座る位置をずらすとなにやら文字が書いてあった。

 

 二人は顔を近づけてそれを読む……文面をみて燐も蛍も飛び上がらんほどに吃驚してしまった。

 

『カップル専用! 愛のらぶらぶベンチ』

 

 と、そっけない明朝体で書かれていた。

 

 二人は周りに聞こえない様にぼそぼそと耳打ちをすると。

 

「ほ、蛍ちゃん! わ、わたし喉が渇いちゃったなぁーちょっとカフェに行ってみない?」

 

「き、奇遇だねぇ。燐。わ、わたしもそうしようと思ってたんだぁ」

 

 二人は頬に手を当ててわざとらしく立ち上がった。 

 

 その瞬間周りの人の目の色が変わった気がして、蛍も燐も身を竦めた。

 

 多分これからこの席をかけての醜い争奪戦が始まるのだろう。

 

 よもや喧嘩にはならないだろうとは思うが、精々無言での牽制か、突然の椅子取りゲームが始まるかのどちらかだと思う。

 

 なんにせよこの場にいると碌なことになりそうにないので、二人の少女はこの場から逃げるようにこの場から走り去った。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 人でごった返す広場をどちらともなく駆け出す。

 

 二人は手を取り合ったまま、落ち着けそうな場所を目指す。

 前に蛍と待ち合わせに使ったカフェは、カップルで溢れかえっていて、入れる余地はなさそうだった。

 

 これといった場所が決まらず、二人は人の波を右往左往に駆け抜ける。

 

(人が少なくて、かつ、見やすい場所……)

 

 燐は走りながらそれっぽい場所を探す。

 

 目ぼしい場所や店はすでに人で溢れていて、人気のない場所は立ち入り禁止のロープが引いてあった。

 

 蛍も同じように目を凝らすが、人の波の中ではなしのつぶてであった。

 

 色とりどりのイルミネーションが、人影を同じ色に照らし出す。

 

 カラフルな人の波の草原を駆け抜ける。

 そこには意味はなく、でもしっかりと手を繋ぎ合って。 

 

 別にそれほど楽しみにしてるわけではないのだが、追い詰められたような焦燥感を背中に感じていた。

 

「燐。上の歩道は?」

 

 蛍が思いついたように走りながら上を差す。

 

 歩道が広場を取り囲むように円形に広がって、見学するには格好の場所だが、広場よりもさらにごった返して、壁の様に人が張り付いていた。

 

 さしずめ蟻の行列のように整然と人が群れを成して並んでいる。

 冬だと言うのにこの一帯だけは異様なほど熱気があり、何がおきてもおかしくない殺伐さがありそうだった。

 

「ちょっと無理みたいだね……」

 

 燐は軽く笑って、別の場所を目指した。

 

 ぶつからないように走るだけで精一杯なのに、誰もいないベストなポジションを探すのはそれこそ至難の業であり、土台無理なことだった。

 

 もう少し早く行動すればなんとかなったかもしれないが、今更無理な注文であった。

 

「燐、ごめん、わたしが早く知らせておけばよかったね」

 

「ううん、わたしだってあそこがカップル席だって知らなかったんだから仕様がないよ。あの視線の中、居座ることなんてできそうにないし」

 

 少女たちはお互いに謝罪を述べながら、エスカレーターを早足で駆け下りた。

 

(どうしよう。なにかいい手は……あ、そうだ!)

 

「蛍ちゃん。まだ、体力に余裕ある?」

 

 燐は走りながら横目で蛍を見る。

 

「う、うん。まだ、少しは、走れると思うけど……」

 

 週末にアウトドアをする機会が増えたので蛍は自然と体力がついてきた。

 以前とは雲泥の差なのだが、それでも燐にはまだ及ばない。

 

 でも燐となら大丈夫なことは知っていた。

 

「だったらさ、ちょっと下に行ってみない?」

 

 指さす先を見て蛍は燐が何を言っているのかがさっぱり分からなかった。

 

「下って……地下道のこと?」

 

 駅前の広場はバスターミナルと広場の下をくぐって改札に向かう地下道が四方に張り巡らされていた。

 

 地上よりかは確かに人通りは少なそうだが、地下では何も見ることができない。

 本末転倒としか言いようがないのだが、燐が提案した以上何か名案があるんだろうと蛍は考えた。

 

「うん、分かったよ。行ってみよう」

 

 燐は蛍が頷いたことを確認すると、地下道への階段を駆け下りる。

 燐が思った通り地下道の中は人気が少なく、薄暗い地下通路は地上よりも少し暖かった。

 

「でも、燐。ここから何処に行くの」

 

 蛍は息を整えながら辺りを見回した。

 通学の時も使う道以外にも出口はあり、割と利便性に優れてはいた。

 

 蛍は厳密に何処に出るかは分かってはいない。

 何時も行くところは流石に分かるのだが、ちょっと繁華街から離れた出口にはまったく疎かった。

 

「蛍ちゃん、こっち!」

 

 蛍が頭の中で地図を描いたとき燐に急に声を掛けられてびくっとした。

 燐に手を引かれるまま、薄暗い地下道を人の流れと反対方向に進む。

 

 天井から車が行き交う音がして、大通りの下を行っているんだと蛍は思った。

 

 二人は地下道を赴くままに進んだ。

 それは五分程度のことなのに、とても長い時間に感じられた。

 

 その間走り通しだったが蛍は燐の動きについていくことが出来ていた。

 手を引かれてはいるが、足がもつれるようなことはない。

 

 固めに結んだトレッキングシューズが蛍の足にちゃんと機能していた。

 

「確かここの出口だったと、思うんだけど……」

 

 燐が自分に言い聞かせるように呟きながら冷たい階段を一歩づつ上る。

 

 吹き抜けてくる冷たい風で地上への出口だと分かった。

 手を引かれるまま蛍も後に続く。

 

 暗いゲートから這い出るように地上に出ると、そこには黒い空と微かな星が見えていた。

 

 迷宮から出た時の様な解放感と空の高さが印象的だった。

 

 出口のすぐ近くには建設中のビルなのだろうか、目も眩むほどに高い建造物が黒くそびえ立っていた。

 

 二人が出てきた出口はちょうど大通りの反対側にある地下道の出口だった。

 

 駅を挟んで巨大なバイパスが走っているため、ここからでは大きなクリスマスツリーもただの小さな置物程度にしか見えなかった。

 

「あれれ? 間違っちゃった……?」

 

 予想していた出口と違ったのか、燐が周辺を見渡しながらスマホで位置を確認する。

 ほかの行き先があったのだろうか。

 

 いつも正確で慎重な燐なのだが、なぜだか精彩を欠くように困惑していた。

 

 燐がスマホを調べている間、蛍は目の前に流れるヘッドライトの川を見送っていた。

 

 それは自然のイルミネーションと言っていいほど幻想的で、どこか冷たく感じられた。

 

 ごぉごぉと流れるロードノイズが波のうねりのように聞こえてくる、

 遠くで小さな粒のように重なりあっている人の群れはまるで殉教者のそれみたいに見えた。

 

 暗がりに浮かび上がるイルミネーションがどこか違う星のターミナルのように見えて、高揚感と寂しさが蛍の脳裡に同時に湧きあがる。

 

(そういえばあの時あのままベンチに座ってても良かったのかも。カップル席って書いてあったけど、別に女の子同士でも良いよね?)

 

「ねぇ、燐。わたし達あのまま──」

 

 蛍は思いついたままの事を燐に言おうとした、のだがそこで口を閉ざしてしまった。

 それは燐の様子がおかしかったからだった。

 

「ふえ、蛍ちゃんどーしたのー? なにか分かったぁ?」

 

 さっきまでスマホを調べていたはずの燐が、ふらふらと手を揺らしながらコンクリートのフェンスにもたれ掛っていた。

 

「ちょ、ちょっとどうしたの燐!!」

 

 蛍は燐の傍に慌てて駆け寄る。

 

 少し目を離したすきに何が燐にあったのだろうか、蛍はどうしていいかわからずおろおろとしながら燐の手を握りしめた。

 

(あれ、熱い。燐の手ってこんなに熱かったっけ?)

 

 ついさっきまで握っていたすべすべとした燐の手は燃えるように熱くなっていた。

 それは手だけじゃなく、顔も熱を帯びて火照っているようにみえた。

 

 苦しそうにため息を漏らす燐の額に手を置いてみる……熱があるようだ。

 

「はぁ、はぁ、あれ? おかしいな、蛍ちゃんが二人、三人に見えるよ……なんか変……」

 

 ため息交じりの白い息を吐きだす燐。

 脱力感を伴った燐の口調に蛍は不安で胸が締め付けられそうだった。

 

「燐! どこが苦しいの? 燐!?」

 

 蛍は燐の耳元で呼びかけた。

 

 燐はどこか焦点の合わない目つきで蛍を見ていた。

 指には力が込められているがどこかおぼつかず、ときおり抜け落ちそうになる。

 

 蛍は燐の手をぎゅっと握り直した。

 燐の熱さと苦しさが伝わってくるようで、蛍は瞼をつむって嘆息する。

 

(どうしようどうしよう。さっきまで元気だったのに。そうだ! 救急車を呼ぼう。それしかないよ!)

 

 蛍は意を決して自分のスマホを取り出す。

 大事にはしたくないが、きっとこれは非常事態だ。

 

 指先を震わせながら、液晶画面を操作する蛍、

 だったのだが。

 

 その手を燐が掴んで止めていた。

 

「大丈夫だよ蛍ちゃん。わたしは大丈夫っ」

 

 燐は顔を赤くしたまま指をブイの字にして笑っていた。

 蛍は毒気を抜かれたように閉口するも、すぐに真剣な顔に戻った。

 

「何言ってるの燐。動いちゃだめだよ。ほら、こんなに熱があるし」

 

 蛍はもう一度燐の額に手を当てる、熱はさっきよりも上がっていように思えた。

 

「でも、なんか気持ちいいんだよ~。なんか全部さ全部がふあふあーってシファンケーキになっちゃう感じ……」

 

 燐は蛍の腕に抱かれながら、子供の様にきゃっきゃと笑っている。

 

 蛍としては今にでも救急車を呼びたいところだが。

 はしゃぐ燐が子供過ぎてつい愛おしくなってしまった。

 

「ねぇ、蛍ちゃ~ん」

 

「どうしたの燐!?」

 

 燐が急に猫なで声を上げながら蛍に顔を近づけてくる。

 蛍はどきっとして少し顎を引いてしまうがその時、何かの強い香りが蛍の鼻孔をくすぐった。

 

(あれ? なんだっけこの臭い。どこかで嗅いだことが……?)

 

 それは蛍にとってはあまり思い出したくない臭いだった。

 それでも記憶を探るように蛍が逡巡していると燐が大胆な行動に出たので、その考えは中中断されてしまった。

 

 蛍は目の前の光景が何かの夢の続きなのかと思った。

 それはあまりに現実離れしていて、信じられなかったからだ。

 

「ほら、見て~蛍ちゃん。わたし、今日は青いパンツじゃないんだよぉ~。赤と白のクリスマスカラーなんだ~。どう、可愛い?」

 

 燐はまるで小悪魔のようにいやらしい笑みを浮かべながら、スカートをめくって蛍に自分の今日のパンツの柄を見せつけていた。

 

 蛍は思考回路が停止したようにしばらく凍り付いていた。

 

 燐の下着姿は何度も見ている、蛍にとって別段特別なことではない。

 

 だが、それを路上で、公衆の面前で披露することはあまりにも常軌を逸脱していた。

 普段の燐ならばこんなことは絶対にしない、そう分かっているから。

 

 そんなことをしない少女があり得ないことをしている。

 そのギャップが燐を淫靡に見せていた。

 

 蛍は我を忘れたように燐のストライブ柄の可愛らしい下着に釘付けになっていた。

 

「ほらあ、ブラもお揃いなんだよぉ~。なんか暑い……だから脱いじゃうねぇ」

 

 凍り付いた蛍が目に入らないのか、燐はスカートをめくったまま一人で喋っている。

 

 燐は言葉通りこの場で制服を脱ぎ始めるようだ。

 

 無造作にバックパックを下すと、制服の上着に手を掛ける。

 このままだと本当に燐は制服を脱ぎ捨てて下着だけの姿になるだろう。

 

 だが蛍にはどうすることも出来なかった。

 

 自分では気づいていないようだが、蛍も明らかにおかしくなっていたからだ。

 燐と同じように頬は上気して、正常に物事が考えられない状態になっていた。

 

 誰も止める者はいない、そう思われたのだが。

 

 ぷぁーん!

 

 通りを走る車から急にクラクションが鳴らされた。

 

 それは全くの偶然であり、二人には何の因果関係もないことなのだが、その音で蛍は現実から戻ってくることが出来た。

 

「燐!!」

 

 蛍は我に返ると、燐の体を隠すようにそのまま抱きしめた。

 

 小さな子を慰めるように燐の背中を何度も擦る。

 

 燐はきょとんとしたまま何も言わず虚空を見つめていた。

 

 二人はしばらく抱き合っていたが、ややあって燐が声を上げる。

 

「蛍、ちゃん……?」

 

 その間、幸いなことに付近を通りがかるものはいなかった。

 

 蛍はほっと胸を撫でおろす。

 安堵したとき、鼻孔にまたあの嫌な臭いが漂ってきて、蛍は思わず眉を寄せた。

 

 だが、二度目の香りで蛍は思い出すことが出来た。

 

(これ、よく宴会なんかで嗅いだような……そうだ、お酒の香り! でも、どうして?)

 

 蛍は燐の首元に鼻を寄せてみる。

 それは確かに燐から漂っていた。

 

 匂いの発生源は……まさかの燐?

 

「わたし、蛍ちゃんとこうして抱き合うの好きだよ。だぁいすき」

 

 すごく可愛らしいことを言っているが、小さな口から洩れているのは微量なアルコール臭。

 

(燐はお酒なんか飲むような子じゃないし。何か変なもの食べたとか? さっきだってわたしと燐はクレープとケーキしか食べてないはずだし……あれ、ケーキ……?)

 

 蛍の頭の中でパズルのピースが嵌まった時のような小さなひらめきが沸き起こった。

 

 それはあの時、分かっていたことであり、自身の不注意がもたらしたものだったから

 

「あああぁっ!?」

 

 蛍が奇声にも似た大声を耳元で上げたので、燐は耳がキーンとなって指で押さえた。

 

 燐が耳を抑えながら蛍の顔を訝し気に覗き込むと、その顔は血の気を失ったように青ざめている。

 

「ど、どうしたの蛍ちゃん!」

 

 燐は千鳥足になりながら蛍の手を取ると、強いショックを受けたような顔で蛍はこう言った。

 

「燐! お水、今すぐお水飲もう!」

 

 蛍が切羽詰まった様子でそう叫ぶので、何か起きたのか分からず燐は困惑した。

 

「蛍ちゃん落ち着いて、蛍ちゃん!」

 

「燐、早く、早くお水飲まないと、大変な事に!」

 

 少女たちはせっかくのイルミネーションとこれから始まるプロジェクションマッピングを見ることもなく、何かに魅入られてたようにお互いの名前を呼び合っていた。

 

 …………

 ………

 ……

 

「ほら見てー蛍ちゃん。ここからでも結構見えてるよ!」

 

 燐は空になったミネラルウォーターのペットボトルを何かの楽器の様にぺこぺこと凹ませながら七色の光を放つ駅舎を指さす。

 

 すでにプロジェクションマッピングは始まっており、駅前の広場は映画の撮影さながらの迫力でライトアップされていた。

 

 色とりどりの光の柱が、二人が良く知る大きな駅舎を別の色に飾り立てていた。

 

 もう少し近ければもっとはっきりと見えるのだが、そんなことは気にせず遠くにみえるイルミネーションに向かって燐は携帯のシャッターを何度も切っていた。

 

「うん、綺麗、だね……」

 

 蛍は唇を震わせながらなんとか言葉を繋ぐ。

 

 艶のある可憐な唇は怪我をしたかのように紫に染まっていて、顔色はさっきよりもよけいに青くなっていた。

 

「どうしたの蛍ちゃん。まだ落ち込んでるの?」

 

 結局二人はあの後、近くにある高台の公園に来ていた。

 

 穴場スポットと言ってもいいぐらいに人ひとりいなかったのは良かったが。

 

 それもそのはずで、備え付けられているベンチも遊具も人が使うことを拒んでいるように冷たくなっていたからだった。

 

 二人の前にある木製の柵も触ることをためらうほど冷たくなっている。

 なのに燐はそれに掴まって、身を乗り出しながら小さくなった光のショーを眺めていた。

 

 蛍にはとても真似する気にはならなかった。

 

「うん、だって……」

 

 ため息を纏った白い息を掌に吹きかける。

 ちょっとだけ暖かくはなるけど、その温もりは一瞬で消えてしまった。

 

 ここには寒さを遮るものは一切なく、寒々しい冬の風が薄いタイツにくるまれた蛍のふとももを無慈悲に撫で上げる。

 

(うううっ!)

 

 声にならないうめき声を上げながら、ストールのように羽織ったブランケットを身体ごと抱きしめた。

 

 外から来る寒気かそれとも内側くるものなのか、蛍は困惑した表情で隣ではしゃぐ燐を見やる。

 

 燐は相変わらずマフラーと手袋しか主だった防寒具を身に着けてないのに、寒さで震えるようなこともない。

 

 燐を苦しめていたものはすっかり抜けきっていて、いつもの快活な燐に戻っていた。

 

 一方の蛍は。

 

(……頭痛い。なんで今頃になって……)

 

 じっとしていても寒いし、かと動くと頭が痛いしで、ここに来るのだってやっとの思いだった。

 

 そして今は気持ち悪さが襲ってきていた。

 

 燐と同じように水を飲んでもなかなか治らず、むしろ自販機の水の冷たさにむせ返りそうになっていた。

 

(痛みと寒さと気持ち悪さでどうにかなりそう。どうして燐はあんなに元気なの……)

 

 四肢が凍り付いたように動けないでいる蛍とは対照的に燐は一人ではしゃぎながらイルミネーションを食い入るように眺めていた。

 

 時折、すごーいと歓声を上げたり、うっとりとした目つきで眺めたりもしていて、蛍にとっては人工的なイルミネーションよりもよっぽど面白く、とてもうつくしかった。

 

「それにしてもさ、まさかあのケーキにブランデーが入ってるなんて思わなかったよ。通りでなんかずっと体が熱いなーって思ったんだよね」

 

 無邪気に笑いかける燐。

 

 燐としては特に他意はなかったのだが、蛍は気まずそうに視線を落とした。

 

「ごめん、燐。店の人に言われたのにすっかり忘れてたよ。それなのに燐にも教えなかっただけでなく、自分でも食べちゃうなんて……わたしって肝心なところが抜けてるんだね」

 

 そう言うと、蛍は何を思ったのか頭からブランケットを自分の世界に閉じこもってしまった。

 

(わたしって何も変わらないなぁ、相変わらず内気でドジだし要領悪いし……性格ってどうしたって治らないものなのかなぁ)

 

 蛍はブランケットの裏地を見つめながら、自己嫌悪の渦に囚われていた。

 

 まるでブランケットで出来たてるてる坊主のような蛍の姿に、燐はやれやれとため息をつくと、小さく笑って蛍の背後に回り込んだ。

 

「ほ、た、る、ちゃん」

 

 燐は蛍のブランケットをがばっと剥がしとると、蛍が呆気に取られている間に二人の体をブランケットごとぐるぐると丸め込んだ。

 

 勢い余ったのか、二人の頬がぷにっと密着していた。

 

 燐の頬のもっちりした感触に蛍は心臓が飛び上がるほどびっくりして、一時寒さを忘れるほど驚き慄いた。

 

「あははは、こうしてると暖かいね。なんか春巻きになった気がしない」

 

 燐は変な例え方をして微笑んだ。

 いつも見る蛍の好きな燐の笑顔だった。

 

 それが間近にあったから蛍は安心して笑顔を作った。

 こうして二人包まっているとあの時のことを思いだす様な気がして。

 

「春巻きっていうか、ブリトーみたいかも」

 

 そう言って蛍はすぐ横の燐と向き合う。

 少し寄せればお互いの鼻先が届きそうなほど近い距離。

 

 その密度で燐と蛍は向き合った。

 

 変わらない二人、変われない二人の少女。

 だからこそ一緒にいることが出来る。

 

 お互いがお互いを失ったからこそ、わかることがあった。

 

「でも、やっぱり、ここからだとさすがに遠くない? 何やってるのか全然わからないけど」

 

 蛍は片手をかざしながら、プロジェクションマッピングをしている駅舎を眺めた。

 カラフルな影絵のようなものが映し出されていて、光ったり跳ねたりを繰り返している。

 

 キャラクター的なものが動いていることはわかるのだが……。

 

「あ、あれって家康くんじゃない?」

 

 燐が指を差して叫んだ。

 

 燐の朱色の瞳にはその様子が分かっているのだろうか。

 

「家康くんって、ご当地キャラクターの?」

 

「うん、多分そうだよ。ほら、なんかしてる」

 

「へぇー」

 

 キャラクターは何か分かるようだが、何をしているのかまでは分からないようだ。

 蛍は燐の指し示す方向を見てもさっぱりわからないので、適当に相槌をうった。

 

「わたし全然見えないんだけど、やっぱり燐の方が視力良かったんだっけ?」

 

「平均的な視力だったと思うんだけどなー。あ、今度は座敷童かな? なんだっけあのキャラ。オオモト様なんだっけ?」

 

 燐がまた指を差す。

 燐はプロジェクションマッピングの実況役になっていた。

 

「違うよ燐、多分あれは、”コドモ様”だよ。うちの小平口町のマスコットキャラ」

 

 蛍の目にはぼんやりとしか見えなかったが、特徴的なシルエットでわかった。

 黒いおかっぱ頭に赤い着物を着ていて、なにやらふらふらとしていた。

 

 どこか頼りなさそうな怪しい動きは、どことなく海月を思わせた。

 

「あ、そうだったね、コドモ様。どうも覚えづらいなあ。そのまんまオオモト様でいい気がするんだけどなあ」

 

 燐は一目見た時からオオモト様のマスコットだと信じて疑わなかった。

 

 蛍だって最初はそうとしか思えなかったから無理もなかった。

 

「オオモト様の事はもう町の人は覚えてないから多分違うんじゃないかな」

 

 プロジェクションマッピングの中のコドモ様は軽快に踊っているようだった。

 二人にはそれが良くわからなかったが、そっちの方が良かっただろう。

 

 その微妙な踊りは会場の失笑をかっていたから。

 

「そういえばさ、燐はオオモト様と会ったんでしょ」

 

「逢ったっていうか、出てきたっていうか……でもすぐに何処かへ行っちゃったんだよね」

 

「ん? 燐の家に居着いてるんじゃないの?」

 

 座敷童だし、と蛍は言おうとしたが自分が言うのは何かがおかしいと思い直して口をつぐんだ。

 

「……そんな感じはしないなぁ。だってうちの店そこまで商売繁盛って感じじゃないし」

 

 そう言って燐は肩をすくめた。

 

「そうだよね……」

 

 幸運も座敷童も消えた町。

 それを知っているのは燐と蛍の二人だけ。

 

 その事を伝える義務も責任もなく、そのまま風化していくものだと思っていたけれど。

 

(燐の前にオオモト様が出てきたってことは、何か知らせたいことがあったのかな)

 

 オオモト様は何のために現れたのか。

 その事を燐に尋ねても燐は決まって口を閉ざしてしまう。

 

(オオモト様と燐の間に何があるんだろう……)

 

 一人だけ何も知らないでいるみたいで、蛍はちょっと切なくなった。

 

「あれ?」

 

「どうしたの燐」

 

「あのコドモ様の隣にいるイヌのキャラって、サトくん!?」

 

 燐は蛍の期待通りに実況してくれていた。

 

 蛍がその方向を見ると、確かに謎の小さなマスコットがコドモ様の隣で座っているように見える。

 

 少し目が慣れてきたのかもしれない。

 細部まではまだわからないが、蛍にもなんとなく見えるようになってきた。

 

「あれはね、コドモ様のペットの”サトウくん”だよ。ほら、体が灰色でしょ。それに首に巻いてるスカーフ、赤くなってるでしょ」

 

「すごく紛らわしい名前だね……それになんだか、間違い探ししてるような気分になるよ」

 

 蛍の言う通り、犬の”サトウくん”は中型犬というよりも大型犬の類で、首に巻いたバンダナは情熱的な赤に染まっていた。

 

「サトウくんはね。作者の名前から取ったんだよ。イラストレーターの佐藤さんから」

 

「そういう繋がりからかあ。じゃあ偶然なんだね」

 

 ”佐藤さん”は小平口町に住むイラストレーターで、普段は実家の茶畑の手伝いをしている。

 

 町おこしの一環でデザインを切ったのが、コドモ様とサトウくん。

 それは偶然にも小さい頃のオオモト様とサトくんに似ているものだった。

 

 何かを元にしたのかとインタビューされた際、”枕元に赤い着物をきた少女と白い犬が立っていたので、夢のお告げと思いそれを絵にした”とスピリチュアルな意見を言ったことでちょっとした話題になったこともあった。

 

 そのサトウくんは何もせずに主人コドモ様の隣で座って吠えていた、と言うよりもただ口をパクパクと開けているだけ。

 

 映像はあっても音声はないので、ただの電脳紙芝居だった。

 

「燐は、シロ。じゃなくて、サトくんの元になった白い犬に、会ったことってある?」

 

 元というのは変な言い方だが、他に例えようがなかった。

 

 ラノベとかで良くある転生とかは違うし、そもそも蛍が出会ったときから白い犬は最初から犬だったのだから。

 

「あったことあるよ。一度だけだけどね」

 

 燐はあっけらかんとした調子で答える。

 

 蛍が思ってたほどこの件は燐にとってそこまで重要ではないようだった。

 

 蛍はほっと胸を撫で下ろす。

 

「わたしも一度だけ会ったことがあるんだ。うちの家の裏山の小道で」

 

「本当? わたしもその辺だったかも」

 

「へぇー、じゃああの辺を縄張りにしてるのかもね。で、どう? サトくんって感じあった?」

 

 蛍は自分の知らない間に燐が裏山の吊り橋付近で白い犬にあったという事実に少し違和感を覚えていた。

 

 なぜ燐がその事を今まで言わなかったことにも疑問があった、が。

 

 その事は置いておいて、白い犬の感想だけを燐に求めた。

 

「ふつーの白い犬って感じだったね。普通の犬よりかは賢そうではあるんだけどね」

 

「で、その時たまたま持っていたお菓子を食べさせてあげたんだけど、よっぽどお腹空いてたみたいで全部食べちゃったよー」

 

「そういえばサトくん目、怪我してなかったね。だからかちょっと印象が違ってみえたけど」

 

 燐は身振り手振りでその時の様子を蛍に言って聞かせた。

 

 どういう理由で裏山の道を歩いていたかまででは言わなかったが、あの白い犬と燐がまた会えたことは素直に良かったと思った。

 

「良かったね、燐」

 

「え? う、うん」

 

 蛍が唐突に言ってきたので燐は少しびっくりした。

 

「あ、でも、それだけだったなあ。食べるだけ食べたらどこかに行ってそれっきりだしね。ああっ! コドモ様たちの出番も終わっちゃったみたいだね」

 

「そっか……なんだかあっけないね」

 

 蛍の文言にはどちらの意味が含まれているかは分からなかった。

 

 プロジェクションマッピングはまだ続いていて、白い駅舎のキャンバスに四季折々の景色を映し出していた。

 

 ……

 ………

 …………

 

「少しは暖かくなってきた?」

 

「だいぶ楽になってきたよ。ありがとう燐」

 

 血色の良くなった顔ではにかんだ笑顔になる蛍。

 

 ようやくアルコールが抜けきったのか、青ざめた顔にはほんのり赤みがさしていた。

 

「こっちこそありがとう。こんなところまで付き合ってくれて」

 

 二人は白い息をかけ合いながらお礼を言った。

 

 ほぼ同時に喋ったので二人の目の前に大きな綿のようなかたまりが出来上がっていた。

 それは燐と蛍の顔を覆い隠す程大きく、そして一瞬の内に弾けて消えた。

 

「わたしは燐と一緒ならどこへでも行くよ。それがたとえ戻れない場所であってもね」

 

 暗い空を見上げながら蛍はつぶやく。

 月は黒い雲の隙間にいて、一向に姿を見せようとはしなかった。

 

「そういえばさ、前にもこんなことしたよね。あの時はボロボロのシーツだったけど」

 

 燐はあの夜の事を思い返した。

 

「保養所の時ね。あの時は疲れちゃってたねお互いに。特に燐はすぐに寝ちゃってたしね」

 

 蛍も同じ思いであの時のことを振り返る。

 

 あの時のことが一種のターニングポイントだったのかもしれないと蛍は思っていた。

 

 燐は秘密を知り、それが確信に変わった時。

 

(もしあの時サトくんと一緒に町に戻っていたら……わたし達はどうなっていたんだろう)

 

 このことは燐には聞けなかった。

 だってもう巻き戻すことは出来ないのだから。

 

「うん……ホント。でもそれは今もそんなに変わらないかも。どうしたって時間は過ぎ去っていくし、同じままじゃいられないから、なんか疲れちゃうんだよね。それが勉強だったり、人間関係だったりね」

 

「そうだね……」

 

 しばらく待ったが燐も蛍も話を続けなかった。

 

 蛍は不安な面持ちのまますぐ間近にある燐の横顔を眺める。

 

 顔立ちはどこかまだ幼いのに、消えない痛みを知ってしまった燐。

 誰が悪いわけでもない、そう燐もわたしも言ったけれど。

 

(もし世界が悪いんだとしたら、今のこの世界は燐にとってどう映るんだろう?)

 

 遠くを見つめている燐の瞳に蛍は答えを求めていた。

 

 煌々とした明かりの先から軽快な音楽が流れてくる。

 それは周辺から巻き起こり、上空へと登って、二人のいる高台まで聞こえてきた。

 

 やがてそれは歌声へと変わる。

 聞き覚えのあるメロディ。

 

 そのメロディに合わせて映像も変化していた。

 金色の木々も人影もリズムに合わせてダンスをするように。

 

 四角いスクリーンがまるで鏡のように星空を映し出す。

 それはあの時見た、もう一つの夜の風景のようで、不意に懐かしさを覚えた。

 

 叙情的な旋律は、あの頃と今を紡ぐようで。

 

 それは蛍も燐も良く知っている名曲だった。

 

「……終了の合図ってことなのかな」

 

 燐はいつの間にか蛍の顔を見ていた。

 

 そのことに気付いたのはほんの数秒前だったので、蛍は面食らったように顔を赤くして少し目線を送らせた。

 

「そう、みたいだね。でもせっかくのイブなのにクリスマスソングじゃなくて、最後はこの曲なんだ」

 

 蛍はかるく口ずさむ。

 嫌いと言うわけではないけど、そこまで好きな曲ではない。

 

 でも自然と覚えているメロディー。

 

「蛍ちゃんはこの曲好きじゃないよね。”蛍のひかり”」

 

「うーん、まぁね。小さいときは名前のせいでよくからかわれたし」

 

 ちょっと名前が何かと被っただけでからかいの対象になるのは子供の頃に良くあることだった。

 

 今はそういうことは無くなったけれど。

 

「わたしだって子供の頃、男の子っぽいとか言われてたよー。男子に」

 

「燐は仕方がないんじゃない。わたしもたまにそう思うし」

 

 蛍は燐をからかうように言った。

 

「えー、今は髪が長いからそんなことないよねぇ?」

 

 燐はわざとらしく髪をかき上げて、女性らしさをアピールする。

 

「うふふふ、それはどうかなぁ?」

 

 口に手を当てておしとやか風に笑う蛍。

 

 燐は頬を膨らませて、そんなことないもんと一人憤っていた。

 

 地上から吹き上げてくる小さなメロディー、はやがて大きな音に変化していた。

 それに合わせて映像もダイナミックなものになっていく。

 

 夜空から地球、そして銀河へと。

 旅するように視線が更に先へと変わっていく。

 

 光よりも早いスピード。

 それが人の手で実現できるのはいつの頃になるのだろうか。

 

 その頃は自分たちなんか、影も形もなくなっていて、お墓すらなくなっているかもしれない。

 

 もっと遅く生まれればなんて、誰が決めることが出来るのだろうか。

 

 いつだってそう。

 なんだって思う通りにはいかない。

 

 だからこそ今を大切にしなければならないのに、それだけだとどこか足りなく感じてしまう。

 

 何かが欲しいんだと思う。

 

 確固たる、自分らしい形のある何かが。

 

 

 

 蛍は燐の肩に頭をちょこんと乗せて、流れてくるメロディーに身をまかせた。

 

 もともと勘違いから生まれた曲で、そもそも使われ方が違っていた。

 

 実際は祝いの時などに使われる曲であって、別れの曲ではない。

 でも映画の影響から日本では別れの曲として今に至るまで使われている。

 

 そこに違和感を覚える人はいないだろう。

 だって何よりも心地よく、耳障りが良かったから。

 

 そして別れはこの旋律のように、静かなものなのだと分かっているのだから。

 

「わたし、来年もこうやって燐と一緒にイヴを迎えたいな……」

 

 蛍が唐突に呟いたので、燐は小首を傾げて小さく笑った。

 

「もう来年の話? 蛍ちゃん気が早いよー」

 

「鬼に笑われるっていいたいんでしょ? でも、そうでも言っておかないと消えていっちゃいそうだから」

 

 蛍が遠くを見て言ったので、それが何に向けたものなのかは分からない。

 

 燐は自分に向けたものであると思っていた。

 だから困った顔で言うしかなかった。

 

「……ごめんね蛍ちゃん。わたし自分勝手だったよね。蛍ちゃんを残して……ひとりで」

 

 燐は蛍に何度も謝罪していた。

 蛍の傍にいる限りずっと言われ続けるだろうとも思っている。

 

 そしてそれは仕方がないことだということも。

 

 

「……何度も謝らなくてもいいよ。わたしだって同じようなことを燐にしたんだし」

 

「──けど」

 

「大丈夫、燐が言いたいことわかるから。よくわかるから」

 

 蛍はそっと燐の頬に触れた。

 寒さで赤くなった頬はほんのりとして、そして愛おしい。

 

 必死に謝る燐が愛おしかった。

 

「ただね、約束してれば少しは安心かなって思っただけなんだ。なんだっていつかは消えてなくなるものだから」

 

「蛍ちゃん……」

 

「なんて、ちょっと寂しくなったのかもね。だからわたし蛍のひかりって苦手なんだ。なんか悲しくなってきちゃうから」

 

 蛍がそう言ったせいなのか、ちょうど曲は止まってしまった。

 

 水面の波紋のように流れていたメロディが小さな火のように静かに消えていた。

 

 ──その直後。

 

 遠くから地鳴りのような拍手の音が聞こえてきて、二人は驚きのあまり抱き合った。

 

 近くにいればそれこそ割れんばかりの大喝采だったに違いない、きっと感動できるほどのものだったに違いないのだけれど。

 

「やっぱりさ、あのまま我慢して残ってれば良かったかな?」

 

「ここで良いよ。わたし騒がしいのはあんまり好きじゃないし」

 

「そっか……そうだね」

 

 二人は抱き合ったまま遠くを見る。

 

 ささやかだけど確かな幸せがここにあることを誰かに伝える様に。

 

 永遠なんてものはない、それでも今は少しだけそれを信じて見たかった。

 

 二人とも絶望を知り、その上でこの世界に居るのだから。

 

 ……

 ………

 …………

 

「そういえばさ、ジョバンニも祭りの日に丘の上から見た星に想いを馳せたんだっけ」

 

「……うん? 銀河鉄道の夜のこと?」

 

 蛍が唐突に話をしてきたので、燐は戸惑いがちに答えた。

 

「丘から見える列車の明かりに銀河鉄道の姿を思い描いてたら、いつの間にかその銀河鉄道に乗ってたって話だったよね。燐は好きだったよね、銀河鉄道の夜」

 

「うん、子供の頃はそれこそ何べんも見たよ。前にも言ったけど夜空を見上げると銀河鉄道のことを考えちゃう時があったんだ」

 

「そっか、それってジョバンニと一緒だよね。今はどう?」

 

 蛍は少し目を細めて笑っていた。

 それはとっても綺麗で、どこか不安げにも見える。

 

 青いドアの家でチケットの事を聞いた時の蛍と同じような表情に燐には見えた。

 なぜそんなことを今になって思い出すのかは分からないが。

 

「今は、うーん、どうだろう。もう、それほど空想に浸れなくなったのかも」

 

「燐は大人になったんだよ。大人には銀河鉄道は見えないんだよ」

 

「そうなの? なんか、別の話とごっちゃになってない? ”雪渡り”がそんな内容だった気がするけど」

 

「そうだったかも」

 

 イブのイベントが終わりを告げても、少女たちは楽しそうに笑っていた。

 

 地上の照明が弱まったおかげで星の姿をまばらに見えるようになっていた。

 

 二人ともその事にはしばらく気付かず、祭りの終わった駅から出入りする列車の光に銀河鉄道の姿を探していた。

 

 もちろんそんなものはこの世界にはなく、二人には帰りの列車の時刻の方が重要だった。

 

「蛍ちゃん。そろそろ帰ろうっか? イブのイベントも終わっちゃったから、駅がすっごく混むとは思うけど」

 

 それでも今のうちにホームまで行く必要があった。

 最悪の場合、帰りの列車がなくなる可能性があるからだった。

 

「……」

 

「蛍ちゃん、どうしたの? まだ具合悪い?」

 

 燐の呼びかけに蛍が答えなかったので、心配して燐はもう一度声を掛けた。

 

 蛍は燐の方を向かずに駅よりはるか先の暗い空を見ながらぽつぽつと語りだした。

 それはさっき語った童話の続きだった。

 

「ねぇ、燐。どうしてカムパネルラってさ死んじゃったんだろうね」

 

 脈絡のない問いに燐は頭を整理しながら、苦笑いで答えた。

 

「えっ、あ、ううーん。確か……ザネリとか言う友達を助けるために川に飛び込んだんだよね、カムパネルラ。そしてそのまま浮かんでこなくなって………」

 

 燐は朗読をするようにぽつぽつと語る。

 それでも頭の片隅では帰りの電車の時刻のことが気になっていた。

 

「助からなかったんだよね……でもさ、わざわざ殺さなくてもいいと思わない? 自己犠牲ってそんなに綺麗なものなのかな。わたしはそこが腑に落ちないんだ。そこまでしないと本当に大切なものって分からないものなのかな……」

 

 話の続きを蛍が引継ぐ。

 

 この作者の作品は自己犠牲の話が多いと、青と白の世界で話したことを燐は思いだしていた。

 

「うん、そうだよね……何かを失う必要はないよね」

 

 燐は何とも答えづらく、蛍と同じように遠くの空を眺めた。

 

 真っ黒い空に真っ黒い水平線が薄い紐のようにどこまでも、どこまでも伸びている。

 

 電車がことこと鳴る音と、低い波の音が聞こえるようになった。

 

「ねぇ、燐」

 

 蛍は小さな波の音のような微かな声で話す。

 唇を震わせながら一つずつ丁寧な口調で。

 

「もし……もしもだよ。もしも、もう一度、わたしの前から燐が黙って消えたりしたら、わたし……今度は本気で怒っちゃうと思う」

 

 蛍は燐にそう告白した。

 

 燐は呆気に取られたが、何かを耐えるような蛍の横顔を見て小さく微笑むと、軽く咳ばらいをして明るい声で話し出した。

 

「へぇー、わたし蛍ちゃんが本気で怒ったとこみたことないからなぁー。ちょっと見てみたいかも」

 

 燐は蛍の前でおどけてみせた。

 気負った様子など微塵も見せずに蛍に笑みを見せる。

 

 蛍はふぅ、と深いため息をつくと燐の顔を真っ直ぐに見つめた。

 

「燐。そんな風に笑っていられるのも今の内だけだよ」

 

 意味ありげに言った蛍は、ポケットからスマートフォンを取り出して何やら操作しだす。

 

 燐がその様子を興味津々で見守っていると、蛍は少し口の端を緩めながら自身のスマホの画面を自信ありげに燐に見せてきた。

 

 その画面には──。

 

「んにゃっ! な、何これー!? 蛍ちゃんこんなの何処で撮ったのぉ!?」

 

 燐は驚くほど素っ頓狂な声を上げて、この画像の出所を蛍に問いただす。

 あまりにも急な変化にさすがの蛍もたじろいでしまった。

 

 それは……燐が自分でスカートをめくって下着を見せている、少し前の事の画像だった。

 

「な、何って、これは燐が自分で撮ってっていうから撮ってあげたんだよ」

 

 蛍はしれっとした調子でそう言った。

 

「わ、わたしそんなこと言ってないー!!」

 

 燐の抗議はもっともであったが、あのときの燐は正常でなかったので詳細までははっきりとは覚えていなかった。

 

「ともかく」

 

 蛍は言い終わらないうちに自分のスマホを燐の手からひょいっと抜きとってポケットに仕舞い直す。

 

 あっという間の事だったので、燐は簡単に取り返されてしまった。

 

「今度燐が勝手なことしたら、この写真クラスのみんなに見せちゃうからね」

 

「うえぇっー! そんなことされたらわたし、学校に行けなくなるー!!」

 

 燐は酔った時以上に顔を真っ赤にして抗議をした。

 

「あ、ホッケー部の人たちにも見せちゃおうかなぁ……? きっとみんな驚くよ。真面目な燐がこんなことしてるって。エースじゃなくなっちゃうかも?」

 

 うふふ、と蛍は含み笑いをする。

 燐は生まれて初めて蛍に対して恐怖を感じていた。

 

「そんなことされたら、わたしのエースとしての威厳がああぁぁ!! とにかくそれを消させてよー!!」

 

 燐は襲い掛かる勢いで、蛍を抱きしめようとした。

 が、蛍はするりと燐の手をすり抜けてしまう。

 

 日頃トレッキングに励んでいるせいなのか、蛍の動きは機敏だった。

 

「わたしだっていつまでも運動音痴じゃないんだよ燐」

 

 蛍は機敏さを表すようにその場でくるりと回って燐を挑発する。

 

 フリルの付いたスカートがふわりと翻って、その様子はビルの光と混ざって、幻想的で刺激的な光景だった。

 

 当の蛍はそんなことも知らずに、無邪気に笑顔を見せていた。

 

「むむっ、でもわたしだって部活とかいろいろ頑張ってるんだからぁー!」

 

 燐は何かに対抗するように吠えると、蛍のブランケットをマントのように羽織りながら挑みかかった。

 

「ちょっと、燐! 顔が怖いよー! 燐に犯されるー!」

 

 他人が聞いたら誤解されそうなセリフを言いながら公園内を逃げ回る蛍。

 

「人聞きの悪いこと言わないでよっ! 蛍ちゃんの盗撮魔ー!!」

 

 燐も誤解を受けそうな言葉を発しながら追いかけ回す。

 

 誰もいない夜の公園で、少女たちは時間も、今日が何の日であるかも忘れてはしゃぎまわっていた。

 

 

 

 ずっとこうしていたいと思う。

 

 他愛無い会話をしながら、子供みたいにはしゃいで。

 

 時が止まればいいのと思ったから、それを叶えてしまったんだろうか。

 わたしかオオモト様が。

 

 でも思いの力ってそんなに強いのかな。

 

 だったら。

 

 二人の想いが永遠のものになればいいのに。

 そうすればずっと一緒なのに。

 

 どこまでも一緒だったら、わたしは幸せだよ。

 

 でも……。

 

 

 全部重なり合わなくてもいい。

 

 ほんの少し、ちょびっとだけでも一緒なら。

 それでいいんだ。

 

 それだけで。

 

 それだけでわたしは幸せなんだよ。

 

 だからわたしはこの写真を消さないだろうと思う。

 

 悪いことだとは思うんだけど。

 

 だって、かけがえのないものだから。

 

 何も持ってないわたしが唯一縋れるのは、あなただけなのだから。

 

 

 ──それに。

 

 あなたが溺れていたならばわたしは迷わず川に飛び込むだろう。

 

 氷のように冷たくても、激しい濁流でも迷うことなく。

 

 深い底で漂っていようが、流れるままに引きずられていようが構わない。

 きっとわたしはあなたの傍まで行く。

 

 わたしの世界はあなたの中にしかないのだから。

 

 周囲を明るく照らす小さな太陽。

 でもその内側はとても繊細で傷つきやすくて、無数の引っ搔き傷が残っていて。

 

 それでも健気に明るい小さな光。

 

 わたしはそんなあなたの傍にずっと寄り添っていたい。

 あなたに必要がなくなるまでずっと、ずっと。

 

 わたしは多分、月なんだろうと思う。

 

 ひっそりと浮かぶあの白い月のように静かで誰からも求められず、ただ一人で……。

 

 太陽の邪魔をしないように寄りそう月でいられればいい。

 

 でも……月は自分で光ることが出来ない。

 

 太陽の光をその身に受けないと、あの星の様に輝くことさえできないのだから。

 

 だから太陽を守りたい。

 

 たとえ月が粉々になっても守っていきたい。

 

 でないとわたしは。

 

 多分。

 

 ────

 ───

 ──

 

 





ゆるキャン△ 2期もいよいよ終盤。みんな楽しみの伊豆キャン編ですねー。やっぱり早いー。時の経つの早いなー。

第8話。

鰻美味し、はままつー♪ と言う7話でも歌っていた謎替え歌から始まるなでしこのソロキャンエピソード。アニメだとナイトキャンプの描写が良いですねぇ。陰影がはっきりつくので作画が綺麗に見える気がしますし、なにより雰囲気がいいですしねえ。
隣の家族連れにもちゃんと名前と苗字が設定されてましたねえ。

ゆるキャン△ のおかげで桜の愛車のモデル、日産ラシーンが人気になってるとかいないとか……某86みたいに高騰するんですかねぇー。

第9話。

薪を貰うエピソードと恵那がギリースーツを着る小ネタが削られてましたねー。薪はともかく、ソロサバゲとかいう謎遊びの映像化はドラマではあるんでしょうか。ただのテロリストにしか見えないからなくなったのかもしれないですけど。

そういえばちゃんと3月4日の放送日に合わせてきましたねぇ。狙ったんだとは思いますが、それに合わせて放送権利なものを取ったんだとしたらこだわりが凄いなあ。

大井川キャンプの伏線は流石にカットされたけど、最終話で拾われてそうな気はしますね。

第10話。

伊豆キャン編に合わせて新しくPVを作ってしまうとか、力の入れ方が半端ない感じーです。
黒船の件があって良かったー。まあなくても大丈夫な小ネタなんですけど再現していただいて感謝ですー。

そういえばルートに関して公式から注意喚起的なものがありましたけど、通りで原作にもあった対向車とのすれ違いのエピソードがないと思いましたよ。
原作は結構前の話ですし。連載していたころと今では結構変わってる場所も結構ありそうですねぇ。

にしても所々にある風車の描写が良いですなあ。動いているのを見てるだけで二次元なのに心が洗われそうになりますねえ。
正直、美観を損なうぐらいに大量にある太陽光発電より風車の方が趣があって良いと思うんですけど、日本はそんなにないんですよね。やっぱりコスト対評価が悪いんでしょうか?
設置が大変ですもんねー。でももう少し増やしてもいいと思います。


ふおぉー、ゆるキャン△ のキッチンカー地元のイオンにも来るんだー。
物見遊山がてら行ってみようかなぁ……多分整理券で行列が発生するんでしょうけども。でも、何注文してもおまけがつくのはいいですよねぇ。

そうそう、今年の1月頃、図書館にてがっこうぐらし! の元ネタと思われるスティーブンキングのザ・スタンドを借りてみたんですけど、あまりの長さに読み切れなかったー。

自動図書(備え付けの端末で呼び出してもらう本)だったので、どんなものか全然知らなかったんですが辞典クラスの分厚いものが出てくるとは思わなかったですよー。調べた時に前後編と書いてあったので、これなら読みやすそうかと思ったんですけどねー。後編なんかかなり端折って読了しましたよー。

先にネットであらましを知っていたから、大筋は分かるんですけどね。
でもまた借りて見てみたいかも。デカ過ぎで借りるのが少し恥ずかしいけど、ちゃんと読了したいですし。

それではではーー。


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