We are born, so to speak, twice over; born into existence, and born into life.   作:Towelie

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 夜明けの橙色と澄み切った空色が平均的に重なり合って、揺れ動く一本の線を描いていた。

 まだ蝉が勢いよく鳴いていたころ。

 小鳥の囀りより、羽虫の音が五月蠅かった頃のこと。
 あと数時間で登校するための電車に乗らなくてはならないのに。

 今日から二学期が始まるのに。

 わたしは一人、友人? のために生地を作り、バターを包んで、何度も折りたたむ。
 そして形を整えてトレーに乗せ、オーブンに叩き込んだ。

 中古で買ったパン焼き用のオーブンはどうも設定がまだ良く分からないのか、加減が難しいらしい。
 そうお母さんが言っていた。

 おっきくなった電子レンジぐらいにしか考えていなかった自分としては、妙にアナログな部分が多いこのオーブンに実質手を焼いていた。

 職人は色々試して覚えるというが、こういう場はうってつけではある。
 わたしはパン職人になるつもりはないけど。

 焼き加減でパンの味が変わると言ってもいいぐらいに重要なのはよくわかった。

 頭の中であれこれ考えていても実際焼けば一目瞭然、明々白々たるだった。

(まあ、初めて焼いたわけじゃないけどさ。それにしても焼くたびに味が変わるっていうか、フレーズが変わるっていうか……こういうの面白いんだけど……)

 そもそも何のためなんだろう。

 何のためにわたしは夜が明けきる前から一人でパンを作ってるんだろう。
 眠くてへとへとで今にでも倒れそうなのに。

(このパン焼き上がったら、もう寝よう。絶対寝よう。立ったままでいいから寝よう)

 そう思いながらもパン作りを続けている。
 完全な素人なのに。

 そのせいなのか勝手が分からず、ストック(パンの材料)が目減りしていた。
 このままだとオープン前に赤字になってしまう。

 生活するだけでもぎりぎりなのに。

 ちょっと遊びでパンを焼いただけでも色々うるさい母親だ。
 こんなことがバレたらきっと大変なことになってしまうだろう。

「これも、まあまあね」

 燐が母の機嫌を取るための良案をオーブンの焼き加減を見ながら、巡らせているとき、カウンターから少女の声が聞こえてきた。

 可愛らしくも、凛とした声色。

 その小さな口では食べ終わるのに時間が掛かると思うのだが、異常とも言える速さで出されたパンを全て平らげていた。

 先だって作って置いたメロンパンは十分と掛からずに綺麗になくなっている。
 少し多めの八個分も焼いたというのにだ。

 少女は小さな唇で燐が予想した通りの感想をそっと述べた。

 何度目かの同じ言葉にため息をつくこともなく、代わりに小さく肩をすくめる。

 燐は不機嫌さを隠すことなく、眉をひそめて質問する。

「ねぇ、()()()()()……? いつまで食べてるんですか。わたしもう眠くて眠くて……ふわあぁぁぁ」

 燐はパンの出来云々よりも、もう眠くてたまらなかった。

 だからオオモト様がいくら食べようが、凡庸な感想を述べようが気にもならなくなっていた。

 ただ、明らかに小柄なのに、食欲が全く衰えていないようなのは、さすがに気になる。

 水も飲まずにただ黙々と食べ続ける姿は、ともすればそれは座敷童、つまり”妖怪”のようであった。

(まあ、普通の人でも胃袋に猛獣を飼ってるぐらいに食べる人もいるし、これぐらいで妖怪扱いはないか……)

 ぼんやりとした瞳でそんなどうでもいいことを考える。

「そうね……次は何が出来上がるの?」

 小さな口をナプキンで拭きながら、つぎのオーダーを気にするオオモト様。

 ワガママなお嬢様に振り回される給仕(メイド)みたい。
 燐はこっそりため息をついた。

 まだ食べる気なのだ。

 この幼く小柄なお嬢様(オオモト様)は。

「ええっとぉ……」

 オオモト様に言われて、燐はオーブンの窓から中を見る。
 真っ赤に映る灼熱の中で先ほどのパンがふんわりと膨らんでいるのが見て取れた。

 これなら上手くいきそうな気がする。
 もういい加減最後にして欲しいのだけど。

「クロワッサンが出来上がりそう、です」

「そう……」

 読めない表情で小さなオオモト様小さな口を少し開けてつぶやいた。
 そこには期待が含まれているのか、それとも落胆しているのか分からない。

 それでも立ち上がる素振りを見せないところ、それなりに期待はしてくれているようだ。

 小さな体のどこにそんなに入るのかはわからないが。

「あのー、わたし学校行く前にひと眠りしたいんですけどぉ……だから、これで最後ってことでいいですかぁ?」

 燐はとうとう我慢できずにオオモト様に打ち明けてしまった。

 口も思考もマヒしてしまったのか、このままでも眠ってしまいそうになって、ふらふらと立ちすくみしながら時折がくんと頭を揺らしている。

 夜明けとともに眠気がぶり返してしまったようだ。

珈琲(コーヒー)でも飲んだらどうかしら。豆を荒めに挽いたものを暖かくして飲むといいわよ」

 オオモト様の意外すぎるアドバイスに燐は目を丸くする。
 
 それでももう十分と言わない辺り、意外と頑固なようだ。

「珈琲……」

 霞がかった思考で燐はオオモト様の言葉を反芻する。

 母も自分も普段から珈琲を嗜むことはないので、すぐ飲めるようなものは見当がつかなかった。

「あ、そういえば」

 燐は最近店で導入したばかりの業務用のコーヒーメーカーの存在を思い出した。

 これもやはり中古品だが、それなりに良いものらしく、有名なレストランでも使用されているものらしかった。

 何という店かは知らないが。

 好みの豆と水を入れて、後は機械にお任せという至ってシンプルな機能しか付いていない。
 買ってすぐ試用してみたが、そこそこ美味しい珈琲だった気がした。

 味の違いは分からないけど。

 燐としてはペットボトルのカフェオレで十分だと思っていたから、母が買ってきたときは、宝の持ち腐れか捕らぬ狸の皮算用ぐらいにしか思っていなかったが。

 自分で飲むために使うのはいささか勿体ない気がしたので、燐はダメもとで提案してみる。

「オオモト様もコーヒー、飲みませんか?」

「わたしはお茶でいいわ」

 やんわりと、でもはっきりと断られてしまった。
 そう言うんじゃないかと思っていた燐は小さく首を振ると、取り繕った笑顔で答える。

「じゃあ、お茶にします」

「ええ、お願い」

 その笑顔のまま、コーヒーメーカーの前を素通りしてキッチンへと戻る。
 燐はこれまで客相手のバイトなどしたことはなかったが、自然とそういう所作が出来ていた。

 オオモト様のアドバイスは特に活かさせることなく、燐は家にある適当なお茶を淹れることにした。

 お湯を沸かそうと、ステンレス製の電気ケトルに手を伸ばす。
 水を半分ほど入れてから、台座へと戻そうとしたとき。

 きぃん!

 小さな鐘の音のような柔らかい電信音がキッチン内に響いた。

「あっ!!」

 お湯を沸かすのを後回しにして、オーブンに駆け寄る燐。
 白銀に磨かれた中古のオーブンは燐の期待を数秒早く裏切り、出来上がりの鐘を鳴らしていた。

 耐熱性の分厚い手袋をいそいそと嵌めて、灼熱のオーブンの扉を開ける。

 もわっとした上気と共に小麦粉の焼けた臭いが辺りを埋め尽くした。

 今日だけで幾度となくパンの焼ける匂いを嗅いだが、この焼き上がりの瞬間がたまらなく魅力的だった。

 眠気を食欲に書き換えるほどのかぐわしい香りに燐は目的も忘れて一時、その香りに浸った。
 
 クロワッサンは燐が大好きなパンだったから尚更だった。

(はぁ……このままクロワッサンの香りで眠りたい……むしろクロワッサンになりたい……)

 燐が非生産的な妄想に浸りながらうつらうつらしていると、無言の圧力(プレッシャー)がすんでのところで現実へと押しとどめた。

「…………」

 オオモト様がこちらを見ていた。

 呆れているような、軽蔑しているようにこちらを見ている、そんな気にさせた。

 燐は両手を合わせた可愛げなポーズで取り繕うと、くるりと半回転してオーブンに向かい直った。

 クロワッサンが乗ったトレイを慎重に取り出す燐。
 少し早い気もしたがパンの表面を見る限り仕上がりは上々のようだった。

 出来立てのクロワッサンは目立った焦げ目もなく、見た目は悪くない。
 だが問題は中身だった。

 燐は試しにそれを一つ取って、パン切り包丁を使って二つに割ってみる。

 ざくさくっ。

 香ばしい音とバターの豊潤な香りが燐の耳朶と鼻孔を軽やかにくすぐった。

 幾重にも層を作った断面図に燐は安堵の笑みを浮かべる。

 この層の広がり方でクロワッサンの出来栄えが変わってしまう。
 それだけに中を確認するのには少し緊張していた。

「うん、これなら”まずまず美味しい”、だね」

 ポジティブな考えをもって燐はお皿に盛りつける。

「クロワッサンが焼き上がりましたよ~」

 店でも使う予定の小さなベルを鳴らしながら、燐は長い髪の少女の待つ、木目調のダイニングテーブルの上に白い皿をことっと置いた。

「ありがとう……」

 感情がこもっていないというよりも、最初から最後まで平坦なお礼にもすっかり慣れてしまった。

 ()()()()()は感情がないわけではなく、表現の出し方を忘れてしまったようだ。

 今日だけのやり取りで燐はそう分析していた。

(あんな目に合えば誰だってそうなるよ……)

 小さい頃のオオモト様が不条理の下で暴行を受けたことを燐は知っていた。

 薄暗い部屋で男達から辱めを受ける、オオモト様を。

 何故あの場で誰も止めるものは居なかったのだろうか。
 それを思うと胸がちくちくとしてくる。

 人の道を外してでも、渇望した幸運、それが廻りまわって彼らの元に降りかかったんだろうか? あの欲望を隠していた歪な面のような醜い姿に。

 オオモト様は少女の身でその欲望を一身に受け止めていたから。
 きっと同じだったんだろう、だからこそ分かっていたのかもしれない。

「燐」

 小さな声に呼ばれて燐ははっとなった。
 いつの間にかオオモト様に覗き込まれていた。

 ばつが悪そうに燐が視線を外すと、お皿の上のパンは全てなくなっていた。
 見かけの割によく食べると感心しきりの燐。

 オオモト様は何か言いたいのかじっと目で訴えかけていた。

「な、なんですか。やっぱり不味不味(マズマズ)の方だったとか……?」

 オオモト様はそうじゃないとばかりにふるふると首を振ると、窓の外に目を向けた。

 朝日がガラス越しに照らしてくる。
 ジトっとした蒸し暑さがテーブルやキッチンにまで入り込んでいた。

「あなたは”綺麗な嘘の話”と”悲惨なほんとうの話”……どちらが好きかしら?」

 窓の外を見ながらぽつりとつぶやく。
 それだけ言うとオオモト様は背を向けてしまった。

 燐は困惑したように小さな背中を見つめると、眉根を寄せながら何も乗っていない綺麗なお皿を片づけだした。

 黙り込んでしまったオオモト様を横目に見ながら、燐はお茶を淹れることを思いだして、ポットのスイッチを入れる。

 大して時間は掛からずにお湯が沸くのだが、今はその時間がもどかしかった。

 お湯が沸く間、手持ち無沙汰を解消するように燐は洗い物をしていた。

 どういう意図の質問は分からない。

 謎かけのような質問はオオモト様の常套句のようなものだったから、燐はそこまで深刻に考えない様にしていた。

 なにか適切なヒントはないかと辺りを見回してみる燐。

 調味料、パンを焼くオーブン。
 業務用の冷蔵庫が二台、それとカエルのキャラクターが描かれた無添加の洗剤とスポンジ。

 どれも答えを提供しそうにはなかった。

 かちゃかちゃと音を立てながら食器を片づける。

 やることがすっかりなくなってしまった。

(このままベッドに潜り込めばいい感じで寝られそうなのに……)

 体ではそう思うが、心はまだどこかで躊躇していた。

 オオモト様の質問が残っていたから。

 どういう概念の質問なのかまるで見当がつかない。
 そこまで重要なことではない気がするのだが。

 適当な相槌をうって話を終わらせて眠ってしまおうかなんて思いたくなる。

 睡眠は人間の三大欲求の一つなのだから、抗いようがないのだ。
 
 それにしても、オオモト様の言うことは姿形は変わってもその辺は変わらなかった。

 濡れた手でタオルを探しながら、うんうんと燐は一人納得したように頷く。

(どんな答えをしてもため息はつかれそうだなあ。”それがあなたの考えなのね”とか意味深なこと絶対言いそうだし。どうしたらいいのよぉ)

 腰をくねらせながらもだえる燐。

「どう答えても問題ないわよ」

「うひゃああぁっ!!」

 沈黙していた空気が急に動いたので燐は朝っぱらに似つかわない声をあげてしまった。

 慌てて口元を抑えると、声を潜めてオオモト様に口を尖らせる。

「オオモト様……わたしの心の声を読まないでくださいよぉ。ご近所迷惑になっちゃうからっ」

 近所迷惑になるのは燐のほうだが、ついオオモト様に矛先を向けてしまっていた。

「心を読むことなんてできないわ。人が心の中で思い描くものはそれぞれ違うものだから」

 本当に分からないとばかりに小首を傾げるオオモト様。
 燐は疲れたようにため息をついた。

「それより燐、新しいパンはまだなの。さっきから待っているのだけれど」

 ちょこんと椅子に腰かけながらこちらを見るオオモト様。
 先ほどの謎めいた質問は何だったんだろうか?

 窓から差し込む光の粒子がきらきらと艶やかな黒髪をなめらかに彩っていた。
 青々としている山裾が遠くに見えていた。

「それに、人の心が読めたとしてもそれは良いことだけではないのよ。むしろ悲しくなるほうが大きいかもしれない」

 水面を揺らす様な静けさでオオモト様は瞼を伏せる。
 それに燐は何も答えなかった。

 朝の爽やかな静けさが木目調のリノリウムの床に小さく横たわる。

 前の家主が置き去りにした古時計が、ちくちくと小さな音を立てていた。
 普段なら気付かぬ些細な音が、この時はやけに耳朶をひりひりと刺激した。

「あっとぉ、じゃあ次はシナモンロール焼いちゃおうかなぁ。これも好きなんだよねぇ。今度はわたしも食べてみようかな……?」

 燐は表情を伺いながらことさら大きな独り言を呟くと、足早にキッチンへと戻った。

 せっかく片づけた食器や材料をまた出すのは少々面倒だが、小さなお客様のオーダーに答えてあげたい。
 
 でも今からシナモンロールを作るのはかなり時間がかかるので、あらかじめ用意しておいた生地を冷蔵庫から取り出した。

 ホットケーキミックスで作った簡易的なものだが、おやつ替わりで食べる分にはちょうどよいと思って燐が作っておいたものだった。

 容量の少ない家庭用冷蔵庫とは違って色々入れることができるのは重宝する。
 変なものを入れるなと母に怒られることもあるけど。

(にしても暑いなあ……早朝からこれだと今日も炎天下になりそう)

 額の汗を拭いながら燐はめん棒で生地を伸ばしていく。

 キッチン兼パン工房の中はまだ夏の残り香が残っているこの時期では、蒸し風呂のような暑さがあった。
 朝早い時間でもこのありさまなのだから、日中はそれこそ汗だくになるのは必至だろう。
 それなので、厨房にはささやかながら冷房が完備されていた。

 本当に細やかすぎて、壊れているのかと錯覚するほどの弱々しい風が燐の前髪を軽く持ち上げる。
 これでも最大風力なのだから、空調設備の充実は急務だった。

(伸ばし終わった生地にシナモンと砂糖を掛けるでしょ。くるくると巻いた後、切り分けて。あとは、それから……)

 作業工程(レシピ)を頭の中で思い浮かべながら、燐は肝心なことを忘れていたことに気付く。

「オオモト様ももちろん食べますよねぇ、まだちょっと時間が掛かりますけど」

 今更、聞くまでもないことだったが、念のため声を掛けた。
 今すぐにでも消えてしまいそうなほど、儚く、か弱い存在に見えたから。

「ええもちろん。あなたが作るものなら何でも食べるわ。それに時間はまだあるから」

 表情は変わらず涼しかったが、オオモト様の思いかけずの言葉に燐は手が止まってしまった。
 
 友達や母が冗談交じりで言う言葉とも違う素直な言葉に、燐は()()()()()オオモト様に優しい感情を持つことができた。

(わたしはあんまり時間がないんだけどなぁ……まあ、いいか)

 わたしの作るパンでも待っていてくれる人がいるのは嬉しい。
 食べてくれる人がいる、それだけで作り甲斐が、理由が出来るのが嬉しかった。

 燐はその気持ちを先ほどの答えに乗せて言葉にする。
 
 目の前で待つ少女に想いを届けるように。

「わたしは……嘘でもなんでも楽しい話の方が好きかなぁ、そりゃあ、悲しい話の方が心が揺さぶられちゃうんだけどね」

 伸ばし終わった生地を前に何気なく口にした。
 自然な言葉の流れは自分でも驚くほど軽やかで精細さをもっていた。
 
「そう」

 オオモト様の意味ありげな質問は一言の答えを返すのみで、後はただこちらつぶさに見ていただけだった。

 想いが届いたのかは分からない。

 ただ曇りのない瞳で見つめられていることが気恥ずかしくて、燐はちらちらと視線を小刻みに逸らす。

(う~、やっぱり答え方間違っちゃったのかなぁ。頭の弱い子って思われるのかもぉぉ)

 もやもやとしたままパンを作っていたせいか、燐はつい散漫になってしまい、うっかりシナモン粉を大量に振りかけてしまった。

 シナモンの香りが好きだから少し多めにすることはあっても、こんなに大量にしたことは一度もない。

「やばっ!!」

 燐がひとこと言う間に、黄色い砂塵はあっという間に広がって、キッチンからダイニング、床やテーブルにまで大量に降り注ぐ。
 
 更にそれは扇風機の風に煽られて広範囲へと散らばってしまった。

 シナモンのほろ苦さが燐の視界を覆い隠し、髪や身体をセピア色の色調に染め上げる。

「けほっ! けほっ!」

 両手で口元を覆いながらむせたように咳き込む燐。
 大量のシナモンを吸ってしまったのだから無理もなかった。

 涙目になりながらも、燐はまず椅子に腰かけたままのオオモト様の傍に寄り添った。

 オオモト様は人形のような白い肌にところどころ黄色を纏いながら呆然としたように座りこけていた。

 申し訳なさと、迂闊さに際悩ませながら、燐はオオモト様の綺麗な髪や着物に纏わりつく香辛料の粒を手でぱんぱんと叩き落とす。

 その度に小さな体が大きく揺れて、燐はそのまま壊れてしまいないかと心配になった。

「ごめんなさいっ! だいじょうぶですか?」

 その顔を覗き込むと、まだ気が仰天しているのか燐のほうは見ずに何もない虚空を眺めている。

 あまりにも表情が変わらないので気がかりになった燐は一声掛けることなく、オオモト様の胸のあたりに手を当てた。

 とくん、とくん。

 ロウソクのような微かな心音が掌ごしに伝わってくる。

 燐が安堵の息をもらそうとすると、オオモト様が自分の頬についた、シナモンの粒を指ですくって舐めていた。

 ぺろぺろと。
 味わうように何度も。

「……オオモト様。何なさってるんですか」

 子供っぽい、いや年相応だろうか。
 燐はオオモト様の小さな指を離すと、濡れタオルで拭う。

 思ってた以上よりも広がってしまったらしく、白いタオルは黄色になってしまった。

 艶やかで柔らかい黒髪の隙間までシナモンが入り込んでいて、いくら落としても埒が明きそうにない。

 すっかり綺麗にするには水で洗い落とすしかない、そう燐は思った。

「オオモト様! シャワーにいきましょう。着替えか何か取ってきますから!」

 燐はオオモト様の小さな手をとって、案内するように軽く引っ張る。
 けれどもそれを拒否するように小さく首を振る粉まみれの少女。

 燐は当惑したように見つめ返す。

「わたしは、大丈夫よ」

 オオモト様は小さな声ではっきりいった。

「けど、このままだと……気持ち悪くないですか? べとべとして」

「そうでもないわ、むしろ楽しい」

「楽しいって……?」

 燐はテーブルを指でそっと撫でる。
 指は線を引いたように黄色く染まっていた。

 おおよそ楽しいとは思えない状況に、燐は肩を落とした。

 母に対する言い訳だって考えないといけないし、なにより今日から登校日なのだ。

 シナモンロールだってまだ途中だし、珈琲すら煎れていない、それなのに時間はどんどんと無慈悲に過ぎていく。

 やることが多すぎて、燐は軽いパニックになりそうだった。

 頭を抱える燐を見て、オオモト様は小さくくすりと笑った。
 折れそうに細い指を口元に寄せて。

「やっぱり楽しい……燐、あなたといると退屈しないわ」

 微笑んだオオモト様はシナモンの粒と朝日が差し込む光に照らされて、息をのむほどの美しさを纏っていた。

 それは絵画や彫像では出すことが出来ない艶やかさがあった。

 幸せそうな笑み。

 きっとこれが言いたかったのだと燐は思った。

 眩いほどの映しい空、

 どこまでも高い空と同じように、少女は透明に澄んでいた。


 ………
 ………
 ………



Living is not breathing but doing.

「──ん…………」

 

「り、ん……」

 

「燐……」

 

 儚げな声が頭の中に響く。

 

 忘れられない声。

 

 忘れてはだめな声。

 

 わたしの脳裏を、気持ちを揺さぶる声。

 

「燐、燐」

 

「……んん。あ、おはよう蛍ちゃん。今日は自力で起きられたみたいだね」

 

「うん……起きたら真っ白だったからびっくりしちゃった。雪の中に埋もれたかと思ったよ」

 

 ちょっと酷い言われ方をされた気がしたが、今の蛍には理解できない言語で話されているようなものだった。

 

「真っ白って……さすがにそこまで寒くないとは思うけど。それにまだ雪は降りそうにないし」

 

「うん。そうだね……」

 

 起き抜けの声の蛍はまだ現実感を掴めていないようだった。

 寝ぼけ眼のまま、目の前の白いものに手を伸ばす。

 

(固い……本かな……?)

 

 まったく知らない本というわけではない、蛍にも見覚えのあるものだった。

 

「燐。もしかしてそれって課題? 今日もらったばかりの課題をやってるの」

 

 燐が開いているのは、今日二学期の最後に渡された課題のテキストだった。

 

「うん。なんかボーっとしてるのも勿体ないって思ってさ。どんな問題があるのかなって」

 

 さも当然のように言う燐に、蛍ははぁ、と気の抜けたような声をあげた。

 

「燐は見た目と違って真面目だもんね。わたしは小説は読むけど勉強はしたことないから」

 

 蛍の暢気な言葉に燐はくすっと笑う。

 

「むー、見た目は余計じゃない? それに、どんな課題かちょっと目を通してただけだよー」

 

「わたし、夏休みの課題一つもやらなかったでしょ? だから先生に先立って釘刺されちゃってさ……だからちょと真面目ぶろうかって思って」

 

 桃色の小さな舌をだしてはにかむ燐。

 蛍は合点がいったように頷いた。

 

「ああ、そっか。燐はそうだったもんね」

 

「うん。だから今の内に少しやっておけば、何があってもいいかなって」

 

「何がって?」

 

「イレギュラーな何か。トラブルかもしれないし、良いことかもしれないけど」

 

「”備えよ常に”だっけ? 聡さんから教わったボーイスカウトの教訓だっけ」

 

「うん……でもあれって日常でも言えることだよね。備えあれば患いなしって。だから少し勉強してました。うるさくしてごめんね」

 

「ううん。目が覚めたのはそういうことじゃないから気にしなくていいよ燐」

 

「じゃあ、お言葉に甘えてもう少しだけやっちゃおうかな。必修科目が多くなっちゃって大変なんだよね」

 

「わたしも、覚えることいっぱいで頭パンクしそうになるよ」

 

 ちょっと目を通すだけにしようとしたのだが、蛍にそう言ってしまった手前、燐は引っ込みがつかなくなってしまい、少しは課題に取り組むことにした。

 

「うふふ」

 

「……? どうしたの蛍ちゃん変な声出して」

 

 ページをめくりながら、蛍の方を見ずに尋ねる。

 もっとも蛍の顔はテキストの下にあるのだが。

 

「だって、燐が真剣な顔してるなって思って」

 

 蛍はノートの僅かな隙間から燐の顔を眺めていた。

 

「これでも勉強だからね。こーんな顔して勉強してたらおかしいでしょ?」

 

 そう言って燐は自身の目じりを指で吊り上げた。

 

「あははっ、燐ってば。そんな人いないよ~」

 

 燐の可愛い顔が台無しになるほどの変顔に蛍は腹を抱えて笑った。

 

 蛍があまりに笑い続けるので、燐は恥ずかしくなってさっきの顔をすぐに止めて、誤魔化すように課題に取り掛かった。

 

「ごめん。あんまりおかしかったから本気で笑っちゃった」

 

 察した蛍は燐に頭を下げる。

 それでもまだ笑いの虫が収まらないのか、思い出し笑いを続けていた。

 

「ねぇ、燐。さっきの顔もう一回やって欲しいな。写真、SNSに上げるから」

 

 スマホを片手に蛍が微笑む。

 それを見た燐は心底嫌そうな顔を蛍に向けた。

 

「そんなことしなくてもいいのっ。もう、蛍ちゃんもちょっとは課題やればー」

 

 燐に呆れたように言われたことで蛍は少しむっとして拗ねた口調で言い返す。

 

「えー、今はそんな気分じゃないからいいよぉ」

 

「蛍ちゃんはマイペースだもんね。でも、夏休みの宿題もぎりぎりだったんでしょ? 今の内からやっておけばきっと楽だよ」

 

 燐の言うことはもっともだった。

 だが、蛍は自分を良く知っているので、それを変えようとも変えたいとも思わない。

 

 だって燐がいるから。

 

「燐。終わったら後で写させてね」

 

「……蛍ちゃん、課題は自分でやらないと意味ないんだよ」

 

 やはり燐の言うことはもっともだった。

 

「それはわかってるけど……でも面倒だし……それに燐の書く文字って綺麗で見やすいから、わたし好きなんだよね。燐は教えるのが上手だから先生になれるよ」

 

「すぐそうやっておだてるー。そんなこと言ったって見せてあげないんだからねっ」

 

「はいはい」

 

 ()()()やり取りに蛍は口元を隠して、うふふとほくそ笑んだ。

 

「ほんとうにわかってるのかなぁ?」

 

「うんうん、わかってるよ燐」

 

(燐が必ず見せてくれることをね)

 

 訝しみながらペンをくるくると回す燐。

 蛍は確信があったので、その様子をただ笑ってみていた。

 

 

 ………

 ……

 …

 

 ごぉごぉとしたうねり声がトンネルの隙間から車内に入り込んでくる。

 

 どこか別世界のような目線で蛍は周りを見渡した。

 

 静けさを伴った座席にはもう誰も乗っていないかのような錯覚を思わせる。

 

 その中で燐がペンを走らせる音だけが、ただ一つの生きている音だった。

 

「んんーっ、問題多いし。それになんか今日は捗らないなぁ……やっぱり疲れてるのかも」

 

 大きく伸びをすると、燐は降参するようにペンを転がした。

 

「今日は色々あったからね。そういう日もあるよ」

 

 落ち着いた声色で言う蛍。

 

 下から見上げる上から目線の蛍の言葉だったが、燐は特に気にせずほっと息をはいた。

 

「くすっ、蛍ちゃんは優しいなぁ。蛍ちゃんの方が学校の先生に向いてるんじゃない?」

 

「えっ、わたしが先生……?」

 

「どうしたの蛍ちゃん。わたし、変なこと言ったかな」

 

 ハトが豆鉄砲を食ったような顔になった蛍に、燐は不思議そうな目を向ける。

 

「だって、そんなこと考えたこともなかったから……そっか先生かぁ……燐がそういうなら目指してみるのもいいのかな」

 

 自分の頬に手を寄せて、身もだえるように頭を揺らす蛍。

 そのせいで蛍の頭が燐のふとももがぐりぐりと刺激して、燐は、はうっと情けない声を上げてしまった。

 

「あ、ごめん。燐のふとももずっと枕にしてたよね」

 

 燐が痛そうな声を出したので、蛍は慌てて飛び起きようとする。

 

 それを見て燐は蛍のおでこを指でちょんと乗せてやんわりとそれを制した。

 

「だいじょうぶだよ、蛍ちゃん。少しくすぐったかっただけ」

 

「ほんとなの燐?」

 

「うん本当。それにこれぐらい、部活に比べたらなんともないよ」

 

 課題のノートを手に持ちながら小さくガッツポーズする燐。

 シュートを決めた時に良くする、少し控えめな燐のアピールだった。

 

「そう……でも、痛かったらすぐに言ってね、すぐにどくから」

 

 蛍は燐のふとももに頭をゆっくりと乗せる。

 

(でも、こうしていると燐の愛情に包まれているみたいで安心するっていったらどんな顔されちゃうのかな……)

 

 膝の上から心配そうに仰ぎ見る蛍に燐は屈託のない笑顔で微笑んだ。

 

 胸中の思いは伝わってないだろう。

 けれどもそれで良かった。

 

「でもね、蛍ちゃん。学校の先生になるならしっかり勉強しないとね。自力で課題を終わらせるぐらいは普通にしないと」

 

「燐。わたしだってやれば出来るんだよ」

 

 燐に子ども扱いされてると思った蛍は少し頬を膨らませていった。

 

 実際蛍は夏休みの課題を一人で終わらせていた。

 

 もっともそれは提出されることはなかったのだが。

 

 そのせいで蛍が学校に復帰したときは、さっそくの追試に悩まされることになった。

 それは燐も同じだったのだが。

 

「だったら今回も一人で頑張ってね、蛍せんせ」

 

 悪戯っぽくウィンクしながら、燐は未来の先生にエールを送る。

 

「もう……!」

 

 牛の物まねのような蛍の声はトンネルの轟音にかき消されてしまった。

 

 ………

 ……

 

「……そろそろ交代しよっか」

 

「ん、交代って?」

 

 燐の膝枕で寝そべっていた蛍から思わぬ声がかかり、燐はつぶさに聞き返した。

 

「今度はさ、わたしが燐に膝枕してあげる。いい加減、疲れちゃったんでしょ」

 

「まあ、それは否定しないけど……いいの?」

 

「うん。燐に負担かけたままじゃかわいそうだしね」

 

 蛍は軽く手を合わせると、即座に頭を起こした。

 

「大げさだよ蛍ちゃん」

 

 だが、蛍が頭を起こしたことで、足が軽くなったのは確かだった。

 人の頭の重さは体重の10%程度と言うが……。

 

 燐は思わず蛍の頭頂部を見つめていた。

 

「………?」

 

 何事かわからず小首を傾げる蛍に、燐は繕った笑いを見せる。

 

「ほ、蛍ちゃんは重くないからねっ」

 

 意味がわからなかった蛍はもう一度首を傾げた。

 

 ……そこまでやわな足じゃないんだけどなぁ、と燐は自分の足に対して愚痴をこぼすも、蛍の提案に素直に応じて体勢を入れ替える。

 

 だが、蛍のふとももに頭を乗せるのに抵抗感があるのか、燐は念を押すように蛍に聞き返した。

 

「蛍ちゃん、本当に大丈夫?」

 

「燐こそ大げさだよ。膝枕するぐらいで遠慮することないよ。あ、でもちょっと待ってね」

 

 蛍はバックパックを開くと中から忍ばせて置いたポシェットを取り出す。

 それをさらに開いて、中から綺麗なハンカチを取り出すと、それを広げて自分の膝の上に置いた。

 

「はい、どうぞ」

 

 そう言って出迎える蛍は、少し頬が染まっているように見えた。

 

 燐は微笑ましさに小さく笑うと、ゆっくりと体を倒して蛍の膝元に頭を寄せる。

 

 黒いストッキングに包まれた蛍のふとももは、燐が思ってたよりもずっと柔らかく、心地よい感触が頭をふんわりと包み込んでいた。

 

 横を見るとすぐ蛍のスカートが目に入る。

 ひらひらとした可愛らしいレースのスカートがカーテンのようにひらめいて、とても可愛らしかった。

 

「そういえば、わたし蛍ちゃんに膝枕されたことってそんなにないなぁ」

 

「そうだっけ?」

 

 燐の髪をやんわりと触りながら蛍が顎に指を添える。

 髪を梳くほどに燐の表情が穏やかになっていくようで、蛍は胸中で胸をそっと撫で下ろしていた。

 

「うん。だからかな、なんか、ちょっとドキドキしてるかも」

 

「わたしもなんかドキドキしてる」

 

 位置が変わっただけなのに、二人は初めて会ったかのように顔を赤くしていた。

 

 そのまま見つめ合う燐と蛍。

 

 互いの目を見ているだけで、どんどんと思いが募っていくようで、ドキドキが収まらなかった。

 

「今さ、誰か来たらどんな風に見られちゃうのかな……」

 

「同じ制服だし、仲のいい友達ってところじゃない? まあ膝枕はちょっと引かれちゃうかもだけど」

 

「そうかな……?」

 

 蛍は意外そうな顔をする。

 燐がもう少し気の利いたことを言ってくれると思っていたから。

 

「でも、仲がいいっていっても限度があるよね。わたしと燐は客観的にみてどれぐらいなのかな?」

 

「うーん、そうだねぇ」

 

 蛍が欲しい答えは燐にはわからないでもない。

 ただ、それを口にすると何かが崩れてしまう気もする。

 

 この微妙な関係は確かに心地よく、それなりな幸福感があった。

 親友と呼べるほど仲が良くて、お互いのことを気遣える関係が。

 

 でもそれ以上にはなれない、そんな気はする。

 

 性別とかそういった身体的なことではなく、もっと崇高な精神的なもので。

 

 振り返るほどに何かを忘れてきた気になってしまう。

 心と体の繋がりをお互いが期待しているというのに。 

 

「ううーん」

 

 燐は少し希望を匂わすような事を言おうと思ったが、適当なことを言って蛍を傷つけたくはなかった。

 

 カチューシャから零れ落ちた前髪を指で弄びながら、燐はわざとらしい声でうめく。

 

「そんなに難しい答えかな……?」

 

 燐の髪をさらさらと手で梳かしながら蛍がどこか惚けたようにつぶやく。

 

 困ったように蛍は微笑んだ。

 

「うん。難しい答えだよ蛍ちゃん。数学の課題なんかよりもずっと」

 

「わたし数学と物理は好きだよ。燐も好きだけど」

 

「……もしかして、今の告白なの?」

 

「うん。頑張ってみた」

 

「はぁ……」

 

 重いため息を蛍に向けて吐き出す。

 想いの塊は蛍の鼻筋を通って、蛍光灯明かりのなかに消えていった。

 

 蛍が何気なく呟いたことで燐はあることを思いだした。

 

「そういえばオオモト様も同じようなこと言ってたなぁ」

 

「オオモト様が? じゃあオオモト様も燐の事が好きなの?」

 

 急に顔を近づけてくる蛍に燐は少しびっくりしてしまった。

 

「そうじゃなくて、好きの比較が突拍子もないものだってこと」

 

「なんだ、びっくりした。オオモト様、燐の事気に入ってたみたいだからてっきり好きなのかもって」

 

「わたしよりパンの方が好きだったみたい。いっぱい食べてたし」

 

「そうなの? 意外だね。オオモト様、和食派だと思ってたよ」

 

「あんな恰好してるからね……あ、そういえば手毬、返しそびれたままだった」

 

「手毬って、オオモト様の? 持っていかなかったの?」

 

「うんー。うちに置いたままになってるんだよね。あれ? 蛍ちゃん知らなかった?」

 

「うん。今始めて聞いたかも」

 

 蛍が嘘を吐いているようには見えなかったので、燐はあれ? と首を傾げる。

 

 オオモト様が持っていた手毬、それは確かに燐の家にあった。

 

 いつ取りにきてもいいように玄関前の棚の上に置いておいたのだけれど。

 

 あれから一向にオオモト様は現れてくれなかった。

 

(そういえば、ぶつかりそうになった人ってオオモト様にちょっと似てたような気がしたけど……他人の空似だったのかな)

 

 この世には自分と同じ人が三人は居るっていうし。

 オオモト様が三人、いやもう少しいてもそんなにおかしくない気はする。

 

(蛍ちゃんだって”オオモト様”だしね)

 

「手毬か……あ!」

 

 燐がなんとも言えない表情で健気なオオモト様を眺めていると、急に思い出したような声を蛍はだした。

 

「どうしたの」

 

「燐。オオモト様が忘れていった毬って中に鈴みたいのが入ってなかった?」

 

「あ、えと………」

 

 燐は少し考えた後、小さく首を振った。

 ちょっと投げてみたときにそれっぽい音がしていた気もしたけど。

 

「ごめん、触ると呪われちゃうかとおもって、あんまり弄ってないんだ」

 

 でも埃だけは掃ってるけどね、と燐は付け加えた。

 

「そう……あのね、燐」

 

「うん」

 

「もしかしたらその毬、わたしのかもしれない」

 

「え、蛍ちゃんのものってどーゆーこと!?」

 

 燐は跳ね起きるほどの勢いで聞き返す。

 

「うん……」

 

 蛍は口を引き結ぶと、逡巡するようにした。

 燐はそのしぐさをぼんやりと見上げていた。

 

(やっぱり蛍ちゃんの胸、大きいなあ……大きすぎて顔が見えないほどなんだけど)

 

 燐が蛍の胸を見上げながら暢気な感想を頭の中で巡らせていると、ようやくまとまったのか、蛍が口を開いた。

 

「最初はね」

 

「うん」

 

 蛍が話し出したので、燐は黙って耳を傾けた。

 

「最初は二人で飛ばした紙飛行機だったの。でも……わたしはそれを潰しちゃったんだ。だってすごく悲しかったから」

 

 蛍が一言一句噛みしめるように言った言葉に燐は目を丸くした。

 

 それは言っていることの意味が分からなかったわけではなく、少し情報量が多かったからだった。

 

 情報を整理するだけの時間が燐には必要だった。

 

「え、紙ヒコーキって、あの時の」

 

「うん。燐もやっぱり覚えてたんだね。ノートの切れ端で作った、二人の紙飛行機。それがわたしの足元に降りてきたんだよ」

 

「え。だって、そんな、こと……」

 

 狼狽えるように呟く燐の様子に蛍は違和感を覚えて燐に尋ねる。

 

「あれって燐が飛ばしてくれたんじゃないの? わたしに届けるために」

 

 胸の奥でしこりになっていた想い。

 

 苦しさとか切なさとかそういった重しをちょっとでも軽くしてあげたい。

 そう願って飛ばした紙飛行機。

 

 最初は戸惑っていた燐も一緒になって飛ばしてくれた。

 

 それが燐が消えたあと、わたしの下に降り立ってきたんだ。

 何かを、忘れていたなにかを思い出させるように。

 

 それの想いを今ようやく吐き出すことが出来た。

 

 ふたりで飛ばしたはずの紙飛行機が寄り添うように飛んできたこと。

 

 ずっと大切にしようと思っていた”きれいなもの”。

 

 感情の高ぶりからわたしが握りつぶしてしまったけれど。

 

 あの時の慟哭は片時も忘れたことがなかった。

 

 なぜならあの時のわたしは。

 

 世界でただ──ひとりきりだったから。

 

 広い世界に投げ出された異邦人、そのものだったから。

 

「わたしには、そんな事できないよ……だって」

 

 燐は寂しそうにつぶやいた。

 

「だってわたしには、あの紙飛行機に触れることができないから」

 

 燐の言葉はあの日みた空のように、蒼く澄んでいた。

 それでも蛍のふとももの上に頭を乗せた燐はここにいる。

 

 ──なのに。

 

 不意に焦燥感にかられて蛍は燐の手を強く握った。

 柔らかく暖かい、そのちいさな温もりに、蛍はほっと胸をなでおろした。

 

「なんか、手錠をかけられたみたい」

 

 儚げに笑う燐がとても愛おしくなって蛍は片方の手を燐の胸に当てる。

 

 どくんどくん。

 

 少し早めの燐の鼓動に、蛍は思わず涙をこぼしそうになり、唇を噛んではにかんだ。

 

「ありがとう燐」

 

「わたし、お礼を言われるようなことしてないよ」

 

 燐は空いた手の人差し指で蛍の鼻をちょんと触る。

 それで蛍が少し涙ぐんでいることに気が付いた。

 

 燐はそっと指先で目元を拭ってあげる。

 それぐらいしかしてあげることが出来ないから。

 

「ん。でも、ありがとう……」

 

 どこまでも暗く、辛い出来事ばかりだったけど、その中のほんの僅かな灯り。

 その小さな灯りが今のわたしと燐を結び付けたんだ。

 

 限界まで追い詰められて、最後の最後まであがき続けたわたしたち。

 オオモト様に名前を呼ばれて、その暖かさに触れたこと。

 

 もう半年前の出来事なのに、もう何十年と経ったみたいに感じられる、忘れない遠い日の出来事。

 

 傷ついた心はもう戻らないけど、それでも二人一緒にここにいる。

 

 燐とわたし、そしてオオモト様……。

 好きな人に囲まれてほんとうによかった。

 

「ねぇ、やっぱりオオモト様に会いたい?」

 

 燐に顔を覗き込まれてはっとなった。

 蛍は考える間もなく口元を小さく緩めながら首を振る。

 

「……ううん」

 

「そうなの? わたしはまた会ってみたいなあ。パンのお金貰ってないし。毬も返してあげたいしね」

 

 燐は少し蛍から目線を逸らすと、天井の蛍光灯管を眇める。

 その中の小さな羽虫の死骸が、夏がとっくに過ぎていたことを示していた。

 

「オオモト様、忙しいのかな?」

 

 遠くをみるような声で蛍が呟く。

 

「忙しいっていうか、神出鬼没って感じがしない? 噂してたらしれっとこの場に現れそうだし」

 

「だね」

 

 二人は照らし合わせたように辺りを見渡す。

 

 着物を着た女性も少女もこの車両には乗っていなかった。

 それどころか他の乗客さえも乗っていないみたいに感じる。

 

 暗いトンネルの中に閉じ込められたみたいになって、蛍は不安を感じてしまった。

 

「ねぇ、燐……他の車両に移動してみようか?」

 

 不吉な考えを打ち消すように、蛍が先だって声をかける。

 

「蛍ちゃんと”一緒なら”いいけど……」

 

 燐は強調するように蛍と一緒の行動を口にした。

 

 あの夢が正夢であるはずはないが、どこか心にひっかかりはあった。

 

 普通なら妄想ですんでしまうことだが、その妄想以上の出来事に二人してあったのだから。

 

 全てを夢で片づけることは出来ない、燐はあの体験でそれを学んだ。

 

「じゃあ、一緒に……あっ」

 

 立ち上がろうとした蛍だったが、ふと思い立って腰を浮かすのを止めた。

 それを見て燐は不思議そうに見つめる。

 

「……燐がどいてくれないとわたし、立ち上がれないよ」

 

 口に手を当てて微笑む蛍を見て、燐は今自分のいる場所を思い出した。

 

 寝心地が良くてつい忘れていたが、蛍の膝の上に頭をのせたままだった。

 

「ご、ごめんね蛍ちゃんっ。寝心地が良くてつい」

 

 燐はがばっと起き上がると、即座に謝罪した。

 

「いいよ。燐が気持ちよくなってくれたらわたしも嬉しいから」

 

「でも、今度からは30分100円だからね」

 

「いやいや、蛍ちゃんのふとももは30分500円の価値はあるよ」

 

「そう? だったらそういう仕事やってみようかな。燐限定だけどね」

 

「えー、親友からお金取るのぉ?」

 

「燐、だからだよ」

 

 顔を見会わせて無邪気に笑い合う二人。

 

 暗闇の中から響く地鳴りのような音の中でもはっきりと聞こえる声は、見えない恐怖をほんの少し遠ざけてくれた。

 

 ────

 ────

 ────

 

『──長らくのご乗車ありがとうございます。次は終点、小平口……お出口は左側になります……』

 

 現実感のあるアナウンスが、二人だけの車内にも響きまわった。

 

 燐と蛍は手を握ったまま、その無慈悲なアナウンスを聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。

 

 二人以外誰もいないと思った列車は、ただ単に終点まで乗る人が少ないだけだった。

 

 そのことは二人ともよくわかっているのに、ちょっとの違和感で簡単に疑ってしまう。

 

「もしかしたら期待してるのかな……? そうなることに」

 

 蛍のいう期待は世間一般のものとはちょっと違っていた。

 燐もそれがわかっていたから、気遣うように笑いかける。

 

「こういうの、なんとかシンドロームって言うんじゃない? 夢と現実の区別がつかないとかいうやつ」

 

「わたしは現実が見えてるから違うよね。燐がそれなんでしょ?」

 

「わたしだって現実ぐらいみえるもん。例えば……試合で何点取ったとか、今週の売り上げがどのぐらいだったとか色々みえてるしっ」

 

 指折り数えて計算する燐は幼い子のように見えて、可愛かった。

 

 狂気と正気、その違いは天と地ほどに違うけど、そこに燐がいるだけで世界が変わったようになる。

 

 燐がいればどこだっていい、ただ燐が隣にいてくれさえすれば、それだけでわたしはいいんだ。

 

 でも、少しだけ温もりが欲しい。

 

 燐がずっと隠している傷だらけなところに触れてみたい。

 

 蛍の心がざわざわとして、息が少し早まったきがした。

 

「ねぇ、燐。わたし、燐に貸してたものがあるんだけど」

 

 こちらを見ながら言う蛍に燐は何かを感じ取ったのか、曲げていた指をゆっくりと元に戻した。

 

 手を握る蛍の力が強くなっていく気がした。

 

「わたし何か貸してたかな……蛍ちゃんからノートは借りてないし、小説は確か前に返したはずだよね」

 

「うん」

 

 燐としては普通に話してるだけなのだが、蛍にはそれが妙にもどかしかった。

 

「ゲームじゃないしねぇ……蛍ちゃんはそもそもゲームしないもんね。うーん、なんだろう?」

 

 顎をちょんとつまみながら足を揃えて純粋に考え込む燐。

 

 その一連の動作全てが今の蛍にはたまらく魅力的で愛おしい。

 

 慰めてあげたい。

 そう思った蛍は燐との距離を近くした。

 

「どう? 分かった」

 

 そんな可愛らしい燐に蛍は意地悪に聞き返す。

 燐が分からないことを知っていたかのような艶めかしさで。

 

「むー、降参。わたし人に貸借りするのが苦手だから結構覚えてるんだけどなあ。どうにも思いつかないよぉ~。蛍ちゃんごめんね~」

 

 覚えのないことに両手を合わせて謝る燐を見て、蛍は胸の奥がとくんと熱くなった。

 意地悪してるのにそれを疑うことなく、純粋に信じ込んでしまう少女。

 

(わたしのこと燐は純粋って思ってるみたいだけど、燐のほうがよほど純粋で危なかっかしいよ……)

 

 快活な少女の奥にある繊細なこころの奥。

 

 それを大切に守ってあげたい。

 

 でも、それだけに壊してみたい気持ちも少し分かる。

 

 きれいだからこそ余計に散る姿がみてみたい。

 

 蛍はこの時初めて、燐の従兄の抱いていた気持ちが分かった気がした。

 

「じゃあ、教えてあげる」

 

 そういった蛍は耳にかかった長い髪を軽くかき上げると、不思議そうにこちらを見る燐の顔を影を作った。

 

 艶がかった唇は何かを求めるように小さく開いて、熱を帯びた息を吐き出している。

 

 ───きっと、意味のないことだった。

 

 けれども感情が先走り、意味もなく求めてしまう。

 

 取り返しのつかないことになるのは分かっているけど、それを止める理由もなかった。

 

 燐と同じことをする、それだけが蛍を衝動的に動かす。

 

 お互いの鼻先が触れそうになって、燐は思わず倒れ込んだ。

 

 蛍も追うように燐に覆いかぶさる。

 二人の視線がぴったり重なり合って、無言のまま見つめ合った。

 

 燐の瞳には困惑の色はない、諦めたような色も。

 

 だからそこで動きを止めてしまった。

 

 唇が触れ合うまで後、数センチ、数ミリしかないのに。

 

「……いいよ」

 

「燐」

 

 瞬きするだけでまつ毛が触れ合いそうな距離で。

 

「蛍ちゃんのしたいようにして、いいよ」

 

 鼓動も何もかも見透かされてた。

 

 想いも、左手の傷も。

 

 寝たふりをしていたことも何もかも。

 

 かたかたと揺れていた。

 

 暗いトンネルの中で蛍の長い髪が振り子のように揺れていた。

 

 もうすぐこのトンネルも抜ける。

 その時わたしたちはどうなるのかな。

 

 友達のままで、いられるの?

 

「燐は……ずるいよね。だって……手で口押さえてるし」

 

「だって蛍ちゃん。変な事しようとするんだもん。わたしの初めては自分で守らないと」

 

 もう、と蛍は呟くとすっと顔を引いて、柔らかく燐を見下ろす。

 

 そして座席の上で足を崩すと、背もたれと燐との間のに強引に割込んでそのまま横たわった。

 

 少女とは言えども、座席の上で二人が横並びに寝るのにはかなり無理がある。

 

 燐は床に落ちてしまわないように片手をつこうとしたが、宙を舞うその手が床につく前に蛍に握られてしまった。

 

 狭い狭い座席の上で少女たちは向かい合うようにして横になる。

 

 蛍と燐、お互いの吐息が再び鼻をくすぐるほどの近さになった。

 

「蛍ちゃん。珍しく強引だね」

 

「ごめん。でも燐とこうやって話したかったから」

 

 微笑みながら謝罪する蛍。

 

 蛍が喋るたび、燐の鼻先に甘いチョコレートの香りがたおやかに薫る。

 

「危うく落ちちゃうところだったよ。蛍ちゃんの胸おっきいから」

 

 燐はバニラの香りを湛えた声色で話しかける。

 

 二人だけの甘い空間は、お菓子の香りで埋め尽くされていた。

 

 燐は空いた手で蛍の胸を触る。

 むにむにとした触感が手にとても気持ち良かった。

 

「ふつーに燐はセクハラしてるよね」

 

 お返しとばかりに蛍も燐の胸に触れる。

 蛍と比べると控えめだが、それでも年頃の少女としては十分な大きさがあった。

 

「それに落ちたとしても大丈夫だよ燐。ほらこうして手を繋いでるし」

 

 細い指先を絡め合った手はお互いに左手だった。

 心に傷がある同士でなめ合っているだけなのかもしれない。

 

 それでも放したいとは思わなかった。

 

「二人とも落ちちゃいそうじゃない?」

 

「じゃあ、こうして抱き合えばいいんだよ」

 

 蛍は手を伸ばして、燐の背中に触れるとそのまま自分の方に引き寄せる。

 思ってたよりも強い力で、燐はされるがまま蛍と抱きあった。

 

 二人の胸と顔が狭い座席の上で密着していた。

 

「ちょっと……暑くないかな」

 

 燐の声が蛍の耳のすぐ近くから聞こえてくる。

 少しくすぐったさを感じて蛍は、もぞもぞと顔の位置をずらした。

 

「わたし寒がりだからこれぐらいが丁度いいよ」

 

「くすっ、人肌が一番良いっていうもんね。雪山で遭難したときも抱き合ったほうがいいんだって」

 

「じゃあ、燐とわたしは今遭難してる最中なのかもね」

 

「そう……かもね」

 

 人気のない列車のなかでお互いの暖かさ、鼓動を直に感じていた。

 

 誰か見たら変なことをしてると思うに違いない。

 

 友達の関係とはさすがに思われないかもしれない。

 

 それでもお互いに凍えていたから。

 

 だからトンネルを抜けても、列車が駅についてもこのままで。

 

 駅員さんは車掌さんはなんて言うだろう。

 

 そう考えただけでちょっと面白くなってくる。

 

 恋人同士って言ったらどんな反応をするだろうか。

 

「ねえ、燐。わたし……次の誕生日が最期かもしれない」

 

 しがみ付く燐の髪を梳きながら蛍が耳元で言葉を作る。

 

「最期って?」

 

 囁くような蛍の声が耳に心地よくて、燐はお伽話を聞かされているような夢見ごこちになっていた。

 

 残酷な世界の残酷な言葉を燐が聞いたとき、列車は暗いトンネルの中から抜け出した。

 

 漆黒の空には星の煌めきがふりそそぎ。

 月は天の海原にぽっかりと浮かんでいた。

 

 さらさらと流れる川のせせらぎが、横切る緑の車体を穏やかに包んでいた。

 

 

 ────

 ───

 ──

 

 






あっ、と言う間にもう5月です? やっぱり早い──。

それで、South ParkコラボのTowelie shoeなんですが……何事もなかったかのようにあっさり落選しましたよーーーー!! ”残念ながら、落選しました”ってなんかこう素っ気ないなぁ……。
そんなに競争率高かったんですかねぇ?? オークションサイトに出品されてそうですけど、そこまで求めるものでもない気がしますけども。
再販とかなさそうですね……。

・ゆるキャン△ (アニメ)
メディア特典の新作アニメの情報が出ましたけど、あれってなでしこの格好が全部違うんですよねー。総集編というよりか、へやキャン△の寄せ集めになるのかな? エリンギネタとかやりそうな気がする。

・ゆるキャン△ 2(実写)
第4話見た時に何が起こったのかと思いましたよ。デジャブというか既視感いうか、冗談抜きで再放送かと思ってしまいましたよーー!! スキレットのエピソードは確かに実写版では割愛されていた話ですけど、こんな形で復活するとはーー。繋がりは割と自然だったのでこれはこれでいいのかもしれない、です。

5話の山中湖はびっくりするぐらい人が居ませんでしたね。バスは貸し切りかなあ。アニメよりも人気のない山中湖はコロナ禍の世相を反映してますねぇ。
カリブーくん、もといモンタベア! モンベルをゆるキャン△ で聞けるとはーー。モンベルはアウトレットショップにしか行ったことがないんですよ。でも、店の前にモンタベア置いてありますね。カリブーくんよりも全然小さいんですけども。
ヒマラヤとか言うスポーツ店の前に置いてあるやつの方がデカくて、こっちの方がカリブーくんに近い気がします。

6話は芸能人枠でしたねー。
実写版はテントを張ってる時が一番ゆるい感じがしますねー。岬の先……実写だとほんまええとやーーー。でもすごく危うい場所に見える……テント貼ったら危ないのも頷けますねぇ。
で、実写チョコちゃんーー!! かわええなぁ、かわええぇぇ……。
でも予想してたよりも大分おっきい、っていうかふとましぃ? より食パンに近いコーギーだった気がします。
あと、今回の実写へやキャン△ アニメでもやらなかったタコさんウィンナーの話を使うとは……。なでしこが(なぜか千明も)カウボーイハットをかぶってるのは、同じ作者の別の漫画のパロディなんですよねぇ。分かりづらいネタまで実写化するとは……こだわってるるるー。


でわわではー。

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