We are born, so to speak, twice over; born into existence, and born into life.   作:Towelie

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「澄み渡った良い夜だよね。そんなに蒸し暑くもないし」

 流石にここまで来れば大丈夫だろうと、少女たちは手を取り合いながら静まり返ったダム湖の岸辺をゆっくりと歩いていた。

 蛍は燐のすぐ隣で月を見上げながら、遠い国の話でもするみたいな口調で話していた。

「燐とこうして夜の森を歩いてると何か、秘密のデートをしているみたい。人気のない、ちょっとロマンチックな感じの所だし」

 夜のダム湖になんて人なんかそうそう居ないから、それがロマンチックだとするならばそうなのだろうが。

「蛍ちゃんにそう言われると、ちょっとドキドキするかも」

 燐も同じ気持ちでいるのか、蛍に向かって微笑む。

 そんな二人を見守るように、白い月がひたひたと静かに湖面に浮かんでいた。

 蛍と燐は思わぬ再会を喜び合う間もなく、ひっそりとした足取りで小平口ダムを後にしていた。

 誰にも見つからなかったから良かったものの、一歩間違えば間違いなく警察沙汰になっていたであろう。

 むやみやたらと入ってはいい場所ではなかったわけだし。

(でも、何で開いていたんだろ……)

 出入り口のゲートが開かれていることも不思議だったが、なぜそこに蛍も居たのかが分からない。

 分からないことだらけで頭がパンクしそうになるが、ただひとつはっきりとしている事があった。

 それは……。

 燐は横目で蛍の顔を窺おうとしたのだが、不意に蛍と目が合ってしまう。

 何となく気まずさを覚えて思わず目を逸らしてしまったのだが。

(何か、蛍ちゃんにちらちらと見られているような……?)

 注がれている視線が気になるのか、燐は顔を赤くして俯く。

 それでも蛍は燐のほうを見ていた。
 食い入るように。

「……」

 どうやら蛍は燐の手の辺りを見ているようだったが、そこに何があるのだろう。

 内心首を傾げてみたが思い当たる節が見あたらない。

 普段なら別に気にはならないのだが。

(何か、すっごく気になるぅ……! わたしの方が蛍ちゃんを気にしているはずだったのにぃ)

 どちらが先とは関係ない。

 ただ、燐の方が耐えられなかった。

「な、何かなー? わたしにどこか変な所あるのかなぁー?」

 燐は裏返ったような、わざとらしい喋り方で蛍に問いかける。

 これでは変どころか、不信にとられてもおかしくはない。

(うー、だって仕方ないもん。まだ気持ちの整理だって全然ついてないし)

 だが、燐の挙動には関心がないのか、蛍はしきりに燐の手の甲のあたりを見つめながら頭を捻っているようだった。

「あ、あのー、蛍ちゃん?」

 燐の再度の呼びかけにも応じることは無く、蛍はその一点だけを凝視している。

 すこし怖くなった燐がさっと手を隠すようにすると、それで何がが閃いたのか蛍はぱっと目を大きく見開いた。

 何か分からず唖然としている燐に、蛍は小さな口からようやくその答えを言った。

「あ、ねぇ。燐って、普通に時計してなかったっけ? 今は外しているみたいだけど……」

 あぁ、成程そういうことか。

 燐はようやく合点がいった。

 細かい所をよく見ているんだなぁと感心してしまう。

 何事かと少し身構えていた燐だったが、ほっと安堵の息をもらす。

 だが、思ってもみないことを蛍に聞かれ、燐はついばつの悪そうな顔をとっていた。

 でもすぐに苦笑いを浮かべる。

「あっ、あれねー。何か途中で落っことしちゃったみたいなの。まあ……もう見つからないものだと思って諦めてるけどね」

 なんで、本当のことを蛍に言わなかったのか。
 燐自身、良く分かってはいない。

 ただ、自分でしたことだから。

 それを言うことで蛍に気の毒な思いをさせたくはなかった。

 ちょっと気を揉み過ぎなのかもしれないが。

 コロコロと表情を変える燐に蛍はくすっと笑うと、少し気づかうように言葉を投げる。

「そっか。燐が大事にしてたものみたいだったからそれは残念だったね……あ、そうだ」

 良い考えが思いついたとばかりに手をぱちんと叩く蛍。

 そして燐に向けてにこにこと笑みをこぼす。

 燐は何だか、ちょっとだけ嫌な予感がした。

「今度さ、わたしが新しい時計を燐に買ってあげる。あ、でも、別に燐が可愛そうだからとかじゃないから。今回の件で凄く迷惑をかけちゃったそのお詫びということで」

 これは名案とばかりに蛍はにっこり微笑むと、片方の目をぱちんと閉じた。

 多分、蛍としても燐に余計な気遣いをかけたくはなかったらしい。

 実際、燐と蛍の間でこういった金銭的なやりとりは最近は滅多に起こらなかったから。

 せいぜいお互いの誕生日とか、季節的なイベントの時にプレゼントの贈り合いをするぐらいで。

 それだって一緒に住んでいるから結局は無意味なことなのだけれど。

「ええっ? い、いいよ……その、悪いし」

 燐は歯切れの悪い言葉を紡いで蛍の申し出にやんわりと拒否を示す。

 大事にしていた腕時計が無くなったのは確かなことだが、それは自分からしたことであって、蛍には一切関係のないことだったから。

「燐」

 蛍は燐の手を強引に取る。

「えっ」

 燐のすぐ目の前に蛍の顔があった。

 桜色の唇が囁くように声を紡ぐ。

「全然、悪くなんかないよ」

「蛍ちゃん」

 珍しく語気を強める蛍に、燐は小さく頷く。

「だって燐、こんなに泥だらけになるまで走り回ってくれたんでしょ? ちゃんとお礼をしてあげないとわたしだって苦しいよ」

「それは……」

 燐には言い返す言葉が見当たらない。

 だが蛍は柔らかい笑顔を向けたままだった。

「それにさ、わたしもちょうど新しい時計が欲しいなって思ってたところだから」

「でもぉ……」

「でもはなし、ね?」

「……うん。ありがとう蛍ちゃん」

 ここまで言われたら燐だってもう無下に断るようなことはしない。

(状況的に言えなくなっちゃったけど……)

 時計の件は後で蛍にちゃんと話すつもりだ。
 もちろん買う前に。

 それで蛍の気が変わるとは思ってはいないが、正直に話しておきたい。

 何で、つまらない嘘なんか吐いちゃったんだろ。

 そんな自分自身に呆れたように疲れたような溜息を燐はついた。

「でも、蛍ちゃん? 何の時計買うつもりなの。やっぱりアウトドア用のやつ」

 蛍も最近はすっかりアウトドアにはまってしまったようで、服も小物も全部アウトドア系のブランドのものばかりになってきている。

 レディース向けのものは年々増えているからそれでも問題はないのだが。

 それでも、相変わらずベッドの上に飾るぬいぐるみなんかも買ってはいるようだが、その割合は以前よりかは減っているようだった。

「燐と同じのがいいな。出来ればペアで持ちたいし」

 真っ直ぐな顔でそう言い切る蛍に、燐はぽおっと胸が温かくなる。

「あ、わたしもそう思ってたんだ。お揃いだと可愛いもんね」

「カラバリがあるやつがいいな。同じものでも色が違うだけで新鮮な気になるし。いつものように燐と交換し合うことも出来るしね」

 実際、燐と蛍は同じものばかり買うからギアの取り換えっこは良くしていた。

 ただペアばっかりだとたまに色々言われることもあるけど。

「どうしたの?」

 喜ぶ蛍を見ると何も言えなくなってしまう。

 燐も以前はそうだったから。

 意識して従兄と同じものを持っていたし、彼が気に入りそうなものを選んで身に付けていた。

 そこに意味などないのだが、その時だけは確かに楽しかったから。

(それでいいとは思ってはいないけど)

 楽しそうに想像を巡らす蛍を愛おしそうに眺めながら、燐はぼんやりとそんなことを考えていた。

 ……
 ……
 ……

「ね、燐」

 蛍はひょいっと軽くジャンプすると、燐の前に回り込む。

 燐はちょっと困った顔で尋ねた。

「なぁに、蛍ちゃん」

 戻ってこられた安堵からくるのか、蛍はいつもよりもはしゃいでるように見える。

 燐は、そのことを指摘するようなことはせずに、柔らかめに笑みを作った。

 蛍は一瞬目を伏せて何故か寂しそうな表情をみせる。

 すっと燐の手を解くと、きょとんとしている燐を正面からぎゅっと抱き寄せた。

「ちょ、ちょっと蛍ちゃん?」

 急に蛍に抱き留められ燐は戸惑った顔になったが。

(……蛍ちゃん……震えてる……?)

 密着した蛍の身体が小刻みに震えていることに気付き、躊躇いがちに蛍の背にそっと手をまわす。

 蛍の頭越しに小さな声で呟いた。

「やっぱり、向こうで何かあった……?」

 そっと尋ねる。

 何としても”青いドアの家の世界”に行きたかったのに結局辿り着くことは出来ず、ひとりきりにさせてしまった。

 心細かったのだと思う。

 いくら知っている場所に居たんだとしても。

 やっぱりこことは違う、常識の通用しない世界だから。

(それに、あの世界への扉が開いたのって、すごく久しぶりなんだよね……もう何年もそんな事は起きなかったのに)

 燐は向こうへ行けなかった分、蛍からいっぱい話を聞いてみたいと思っていた。

 それはもう、山のように。
 
 蛍さえ許してくれるのなら、いくら時間をつかってもいいぐらい。

 どのぐらいの時間が向こうで流れていたのかは不明だが、”何も起きなかった”ということはあの世界に行ったときは一度切りもなかったから。

(きっと何かあったんだとは思うけど……)

 燐は蛍の背中を優しく撫でる。

 艶やかな蛍の黒髪にやわらかな月の光がかかる。

 髪の一本一本がその光によって引き立たされていた。

 燐は片方の手で二つに結わかれた髪の一つを手で優しく梳いた。

 ある程度は察することは出来ても具体的な事は何も分からない。

 蛍が打ち明けてくれない限り。

 けれど無理に訊ねる気はない。
 少なくとも今は。

「ごめん。わたしもそっちへ行きたかったんだけど、どうしても行けなかった」

「うん……分かってる。燐だって大変だったんでしょ。でも今は一緒なんだから……」

 燐にしがみ付きながら蛍は小さく呟く。

 燐の胸元に温かい吐息がかかって、不意に胸の内から熱いものが込み上げそうになり、よりつよく蛍を抱きしめた。

「わたしっ……わたしもう、蛍ちゃんに会えないのかなって、そう思ってた!」

「燐、わたしも。わたしだってそう思ってたよ!!!」

 小さな身体をきつく抱きしめ合う。

 温もりから伝わる感情が抱擁を介して伝わり合うようで。

 まるごと全部をぎゅっと抱きしめていた。

 それでようやく互いを認識し合うことができた。

 蛍も燐も。
 この世界で唯一無二の存在であることを。

(一体わたしは、何を疑っていたんだろう)

 こんなにも愛おしく、求めてくれているのに。

 疑う余地なんて最初から何にもなかったはずなのに。

(だから、これは間違いじゃない。蛍ちゃんは今ここに居るんだ)

 残滓でも何でもなく。

 実在する一人の人として。

「蛍ちゃん、わたし──」

 燐は蛍に何かを言おうとして口を開きかけたのだが。

 途中で言葉が止まってしまった。

 同時に思考も停止してしまったように固まっている。

 蛍は急に燐の言葉が止まった事に少し違和感を覚えたが、まだ涙が止まらなかったのでまだ燐の方を振り向かなかった。

(何……これ?)

 信じられないという顔で燐はそこを見つめていた。

 視線の先には蛍の細い首がある。

 レースの付いた服の上からすっと伸びた白い首筋が燐の目の前にあるだけだった。

 傷一つない美しいラインはとても色っぽく、どちらかというと童顔な蛍を大人の女性に見せていた。

 燐はそれをちょっと羨ましくも愛おしく思っていたのだったが。

 それにある異変があった。

(これって……傷!?)

 思わず燐は二度見する。

 美しかった蛍の首筋に、何かの黒い痣のようなものがあった。

 茨の棘の様な黒い痕が白い首に巻き付くように何本も線を付けていたのだ。

 歪な形のネックレスを無理やり嵌めたみたいに、首の柔肌に食い込んでるようにみえる。

 血は、滲んではいないようだが。

 それは、何かで締められた跡のようにも。

 これを蛍は知っているのだろうか?
 何も言ってはこなかったが。
 
(でも、これって何かされたときの跡、だよね……? もしかして、蛍ちゃん……)

 燐の脳裏に一抹の不安が過る。

 ちょっと様子がおかしかったことも気になるし、こんな酷い痣は燐の知る限り蛍の首についていたという記憶はない。

(だったらやっぱり”青いドアの家の世界”で何かがあったんだ……!)

 燐の想像のつかない”何か”が向こうの世界であったのだと推測できた。

 だが、本人は至って平気そうに見える。

 痛みを訴えるようなことはなかったし。

 蛍が見た目よりも我慢強いのは知っているけど。

 どうしたものかと一瞬迷いを見せた燐だったが、やはりこの件を蛍に尋ねてみることにした。

 これはきっと蛍にしか知りえないことだろうし、それに燐に隠し事なんて滅多にしないからきっと答えてくれるだろうと。

「ね、ねぇ……何か、首に傷みたいなのがあるけど……蛍ちゃん、痛くはないの?」

 なるべく言葉を選んで尋ねる。

 月明りでもハッキリと見えるから余計に気になってしまう。

 ここまでくっついてないと気づかなかった自分に呆れてしまうけど。

 一度見たらもうそこから目が離せない。

 見ている燐の方が痛々しさを感じてしまうほどの痕だったから。

「うん? 燐、どこのことを言っているの」

「ひゃあっ!」

 燐は蛍の首筋を見て言ったはずなのに、蛍はさらに体を密着させて燐の首を確認していた。

 吐息が直に首にかかってこそばゆい。

「わ、わたしの方じゃなくて。蛍ちゃんの方っ! 蛍ちゃんの首に何かが付いてるって言いたかったのっ!」

 燐は頬を赤くして指摘する。

「あ、そういう事か。通りで何もないと思ったよ。燐の首って細くて綺麗だよね、人形みたいに」

 ちゅっ。

「にゃあああぁっ!?」

 そう言ったあと、不意に蛍は燐の首に唇をつける。

 燐はびくんと体を震わせたと思うと蛍にぎゅっとしがみついていた。

「も、もう! 何するの蛍ちゃん。わたしすっごくびっくりしちゃったよぉ!」

 燐は蛍に身体を預けたまま、深い息をついていた。

(まだ心臓がどきどきとなってる……! 何で急にあんな事を……)

「あ、ごめんね。でも可愛かったからつい思わず」

「思わずって、何よ、もう……」

 燐は顔を真っ赤にしながらふいっと顔を背ける。

 それを見て蛍はあっと声をあげた。

「あ、ごめん。燐、やっぱり付いちゃったみたい」

「”付く”って……何が?」

 矢継ぎ早に蛍に謝られて燐は素っ頓狂な声で返す。

「燐の首にわたしの”唇のあと”がついちゃったみたいなの」

「跡って……まさか!?」

 燐は思わず自身の首筋に手を当てた。

「うん。ばっちりついちゃってるよ」

 何故か嬉しそうに報告をする蛍。

 燐はじとっとした目で見返した。

「もう、どうしてくれんのよぉ、これぇ……どうなってるか分からないけど、これじゃあ外にも出れなくなるぅ」

 燐は首を回して確認しようとするが自分では良く分からない。

 鏡か何かでないと。

「あ。もしかしてわたしの首についているのも、これ? だったらそれは燐が付けたんだね。いつそんなことしたの」

「もう、そんなわけないでしょっ!」

 燐はとうとう顔を膨らませて蛍に抗議した。

 蛍はくすっと笑って、燐の首に自身の頬を当てるようにする。

「なんだ違うんだ。でもちょっと嬉しいかも」

「……何のこと?」

 燐は首を傾げる。

「だってさ、この跡って燐がわたしの所有物(もの)って意味になるんでしょ。だったらこれで燐に変な虫は寄り付かないね」

 そう言って蛍は燐を離さないようにぎゅっとしがみついた。

 燐はぽかんとしたまま立ち尽くしていたが。

「蛍ちゃん、変な漫画の読み過ぎだよ、それ。教師になるんだったらもうちょっとちゃんとした本を読んだ方がいいよ……ってそうじゃなくてぇ!」

 そう言って疲れたため息をついた。

 それにしたって。

「本当に大丈夫、蛍ちゃん。一応包帯とかは持ってきてるけど」

 何かあったときの為に救急道具一式をバックパックに入れてはある。
 
 応急手当にしかならないとは思うが。

「とりあえず手当だけでもしておこう。取り返しのつかない事になると困るし」

 燐は蛍から体を離して背中のバックパックを下ろそうとしたのだったが。

「逃げちゃダメだよ、燐」

「うひゃあっ!」

 耳元に暖かい吐息がかかって思わず燐は変な声を出していた。

「逃げてるのは蛍ちゃんのほうでしょ! 今の内にちゃんと手当しとかないと、折角の綺麗な蛍ちゃんの首に痣が一生残っちゃうかもしれないよっ」

 少し大げさな言い方をしてしまったが、そのくらい燐は心配だった。

 キスマークもそうだけどこれだってあらぬ誤解を受ける可能性だってある。

 でもこの傷跡はまるで……。

(何か……紐みたいなので首を絞められたみたいに見えるんだよね。蛍ちゃんの肌って白いから余計に目立っちゃう)

 スカーフを巻くなりして隠すことは一応出来るとは思うが、隠したところでどうにかなるものでもない気はする。

 だけど。
 蛍がこれを全く知らないってことはないと思う。

 見れば見るほどこれは痣だと認識できるほど酷い跡が残っているし。

 そして、とても強い力で付けられたものだ。

 だからどうしても勘ぐってしまう。

 何故、隠しているのかと。

 ともかく、蛍の言った通り一刻も早くこの場を立ち去って帰った方がいいのだけは間違いない。

 手当てをするのだってそこまで碌な装備を持っていないわけだし。

 こういうのは早めが肝心だというのを、スポーツやアウトドアの経験で知っているから。

「ともかく蛍ちゃん。わたしの実家でいいから一緒に帰ろう? 蛍ちゃんだってすっごく疲れてるんでしょ」

 慌てた様子の燐に強く肩をゆすられ、少し困った表情をみせる蛍。

 うん、と小さく頷いては見せたが、何故かその足は止まったままだった。

 まるで足に根が張ったみたいに微動だにせず、燐を見つめながら立ち尽くしている。

「ど、どうかしたの? やっぱり傷が痛む?」

 目を丸くしながら燐はそう問いかける。

 動揺しているのかその手は少し汗ばんでいた。

「ううん、そうじゃなくて……ただ、自分でも良く分からないの」

「良く分からない、って……」

「…………」

 蛍はそう答えたっきりで口ごもってしまった。

(蛍ちゃん……)

 二人の手は確かに繋がれているのに、どこか噛み合っていない。

 それは、気持ち?
 それとも別の何か?

 少し離れている間に、こんなにも遠い存在に感じてしまうのだろうか。

 こんなに近くにいるのに。

 抗うことのできない大きな力が二人を引き裂いたとしても、視線は、想いだけは一緒だと、離れ合うことはないと思っていた。

 でも。

 ぐぅ~。

(何、今の音?)

 蛍とちゃんと向かい合おうと、燐は真剣な面持ちになったのだが。

 蛙の鳴き声のような間の抜けた音がすぐ近くから聞こえてきたので、思わず辺りを見渡していた。

「あ、ごめん……」

「え、何?」

 口を引き結んでいたと思った蛍が急に口を開いたので、燐は戸惑った表情で聞き返す。

 蛍は恥ずかしそうに顔を赤らめている。

 一体、何のことで。
 
 と燐が考えを巡らせていると。
 またぐーと音が鳴った。

 しかもそれは向かい合う蛍の方から。

 まさかだとは思うが。

「わたしの……お腹の音……」

 燐が問い返す前にそう蛍が白状していた。

「はぁ……」

 やれやれと、燐は小さく息を吐く。

「だって仕方がないじゃない。考えたらわたし、朝しか何も食べていないし」

 そう言って蛍は視線を逸らすものの、依然として燐の手は握ったままだ。

 むしろより強く握られている。

 嫌わないでと言っているかのように。

「蛍ちゃん、ちょっとだけ待ってて」

 燐は開いている片手だけで器用にバックパックを前に回すと、線ファスナーを開いて中から透明なビニール袋を取り出す。

 中には細長い棒状のようなものがいくつも入っていて、色や形から言ってもパンにか見えないのだが。

「これって、パンだよね」

 そう言って手渡された袋を見て蛍は改めて尋ねる。

 これは割と簡単に作れるパンだったはずだ。

 名前は確か。

「そう、”グリッシーニ”だよ。気軽に食べられるから行動食代わりに入れてたの。スティックバーばっかり食べてるのもなんか味気ないしね」

 それは普通の小麦色のものだけでなく、ゴマやフルーツなんかも練り込んだものもあるようだ。

「はい。これも」

 燐はもう一つ袋を取り出す。
 中には様々な色と形のクッキーが割とぎっしりと袋一杯につまっていた。

 袋は二つだけだが、それぞれかなりの量がある。

 明らかに二人分以上を想定しただけのものがあった。

 燐は何気なく取り出したようだったが、こうなることを知っていたみたい用意周到なものだった。

 緑茶の入ったペットボトルも2本分持っていたことだし。

「相変わらずパンばっかりでごめんね。おむすびとかのほうが良かった?」

 蛍は小さく首を振る。

「ううん。これ燐が作ったパンなんでしょ。だったら文句なんかは全然ないよ。わたし燐の家のパンって好きだし」

 蛍はパンの袋を開く。

 香ばしい小麦の香りに安堵感と空腹を感じた。

「だったら良かった。ちょっと遅くなっちゃったけど夜ご飯にしよう。傷の手当はその後で。それでいいかな」

「うん」

 二人は湖畔の上にレジャーシートを引いてその上に腰を下ろした。

 ようやく休めた気になったのか、たまらず蛍は深い息をついた。

 燐はそれを横目で見ながら袋を開ける。

 小さなシートの上には細長いパンとクッキー。
 それとペットボトルのお茶だけ。

 少しアンバランスとも言える組み合わせだと言えるが。

 それで充分だった。

 蛍は今日の式典の後の打ち上げパーティーに参加できなかったが、こちらの方がずっと良かったと思っていた。

 賑やかなのはそんなに好きでもないし、何より。

(燐と、二人っきりのパーティーになるよね)

 余程お腹が空いていたのか、いつも以上にパクパクと食べる蛍に燐は目を丸くする。

「蛍ちゃん、本当にお腹が空いてたんだね。まだあるからいっぱい食べていいよ」

 燐もパンを一つ取る。

 自身も打ち上げの際、居ない蛍を気遣ってあまり食べなかったから、今とても美味しく感じた。

「何か、本当にピクニックに来たみたい。夜だからキャンプみたいだけど」

 細長いパンをかりかりと頬張りながら蛍は燐の方を向いて微笑む。

 燐は自分で焼いた犬の顔の形のクッキーを蛍に見せながら屈託のない笑顔を見せた。

「あ、わたしもそう思った。でも……蛍ちゃんがいるからだろうね。今、すっごく楽しいのは」

「わたしも。燐と一緒だからすごく楽しい。ありがとう。わたしを、ちゃんと見つけてくれて」

「蛍ちゃん……わたしの方こそありがとう。こうしてまた一緒にいられることを何かの神様に感謝しなくちゃね」

「じゃあ、パンの神様とか?」

「あははっ、それいいねっ!!」

 二人は顔を見合わせてくすくすと笑う。

 本当に、幸せであるように。

 綺麗な月と星と湖。
 そして、隣に好きな人がいる。

 一切の過不足のない情景で。

 燐と蛍は少し遅くなった深夜のランチを存分に味わい、楽しんでいた。

 ……
 ……
 ……

「燐は、覚えてる?」

「何のこと」

 一息ついた蛍が不意に聞いてくる。

 燐はすぐに聞き返した。

 一体、何についてのことを言っているのだろう、と。

「ほら、あの”小平口ダム”のこと。前に燐と一緒に来たことがあったよね」

 そう言って指を差す蛍に燐はあぁと、小さく声をもらす。

「うん。ちゃんと覚えてるよ。確か、二年位前のことだったっけ? 確かめに行ったんだよね、蛍ちゃんとふたりで」

「うん。紅葉が綺麗だったね。確か燐が吊り橋ところでスマホを落としそうになったんだっけ」

「もうそんな細かい所覚えてなくていいからぁ」

 拗ねたように言う燐をふふっと軽く流すと蛍は話を続けた。

「でも結局さ、小平口ダムには何にも起こってなかったよね。決壊したような跡もなかったし」

「それはまあ、確かにね。それにもし本当に決壊なんかしてたら今頃は……」

 そこで燐は一旦言葉を切った。
 
 蛍は察したように頷くとダムのほうに視線を移す。

「大きな、水溜まりみたいになってたのかな。青いドアの家の世界で見たみたいに」

「かもね」

 二人してダムの方を見つめる。

 ラジオでは決壊したと言っていた小平口ダムだったが、実際には何も起きてはいなかった。

 もし本当に決壊していたのだったら、すり鉢状の小さな町は今頃は水の底に沈んでいたのだろう。

 何もかもを洗い流して。

「でもさ、何であんな事を言ったんだろうね」

 ダムと湖を交互に見ながら蛍が呟く。

 燐には何のことを言っているのかすぐに分かった。

「あの……ラジオのこと?」

 蛍はこくんとうなずく。

「うん。何で嘘を吐いたのかなって。ちゃんとした情報を伝えるのがラジオの役目なのに」

「それは、確かにそうだね」

 確かに何故あのDJはあんな事を言ったのかと今でも思う。

 ただ、あのラジオは過去や未来のことは言っていても、今起きていたことは言っていなかったような気がした。

 もう随分前の事だから詳細は覚えていないけど。

「あの日は雨が降っていたからダム湖だってそれなりに水位はあったと思ったけど……決壊したって程ではなかったみたいだしね」

 あの日の大雨は観測されていたが、小平口ダムが決壊したという記録はどこにも載っていなかった。

 その雨だって、梅雨の時期に例年観測されている雨量と大差ないみたいだったし。

 だからあの町には何も起きていないということになる。

 それはダムだけではなく、線路に開いた大穴や、もちろんあの、三日間に関しても。

 だけど。

「でもさ、決壊しなかったとしても雨水は溜まっていくわけでしょ。あの時の水ってどこに行ったのかな」

 異変のあった二日目ぐらいから酷い大雨に襲われたのは二人共知っている。
 だからこそどうなったのか知りたかったのだが。

 ネット上にもそれに関する情報はなかった。

 蛍は燐に問いかけられて、うーんと首を捻る。

 あの時、そう仮説を立てたのは蛍の方だったし、何とかして答えを導いて燐の期待に答えたかった。

「急に、水が消えることなんてないから、どこかで土砂崩れか何かが起きて新しい流れが出来た……とか?」

 あまりにも強引すぎる仮説だったが、それぐらいしか今の蛍の頭には浮かんではこなかったのだ。

 燐は困ったように苦笑いした。

「まぁ、結局分からないよねぇ。実際大雨が降って、川の水が増水したの間違いなかったけど、それで浸水とかの被害なんかも全然なかったわけだし」

「そこが不思議だよね。まるでさ、そっくりそのままの形で別の町に入れ替わったみたいに思ったんだよね、わたしが町に戻った時は。燐はどう思う?」

 荒唐無稽とも言える蛍からの意見に燐はふむと考え込む。

 確かにそういうのは分からなくはないが。

「パラレルワールドとかそういう系とかの? 流石に……それはないんじゃないかなぁ。量子力学でも多重世界は解釈のひとつとしてあるみたいだけど、それを証明できるものはまだないみたいだし。やっぱりそういうのは漫画とかのフィクションの中だけじゃないのかな」

「じゃあ、時間が巻き戻ったとかは? タイムリープとかそういうの」

 蛍はまだ止める気がないのか、頭で浮かんだことを次から次にあげる。

 燐は流石に少し呆れた顔になったが。

「それも漫画か小説っぽいなぁ、やっぱり。時間の流れって常に均一みたいだから」

「そうだよね。現実で証明できなかったからどんな事象も仮説以上にはならないもんね」

 蛍の意見はすぐに燐に否定されてしまったが。
 それはそうだと思う。

 それだって、やっぱり空想の粋は出ない。

(じゃあ、あの”青いドアの家の世界”は? あれこそ多重世界の一つだと思ってはいるけど)

 だが、蛍はそのことは燐に言わなかった。

 言えなかったというわけではない。

 燐だって青いドアの家の事は知っているし、向こうの世界へは一緒に何度も行ったことがあるから。

 ただ、あれとは何か、結びつきのようなのが違う気がした。

 似たような性質なのに、別の固体になってしまったみたいに。

 いや、やっぱり関係あるのかも?

 青いドアの家がある世界だって、一度壊れて元に戻ったみたいだったし。

 ”再構成された”という意味では同じなのかもしれない。

(ただ、それだとやっぱり証明するものが……)

 現実に青いドアの家の世界は持ってはこれないし。

 結論が出るようで……でない。
 
 どうどう巡りになった考えを元に戻そうと、内心蛍は必死に頭を抱えていた。

「大丈夫蛍ちゃん? やっぱりどこか痛むの?」

 つい燐は気になって傷跡のある蛍の首筋に触れようとした。

 蛍はその手をやんわりとはらって無理くりに笑みを作った。

「ちょっと頭が煮詰ちゃっただけ」

 燐は一瞬はっとなったが。

「でも、痛くなったらすぐに言ってね。遠慮なんてしなくていいからっ」

 そう言って燐は小さくガッツポーズをする。

 変わらない燐のその仕草に蛍はにこりと微笑み返した。

「でもさ、もし時間が巻き戻ってるなら、同じことを何度も繰り返しているのかな。ループっていうか」

 燐は複雑そうな顔で呟く。

 蛍も曖昧な顔で頷いた。

「そういうことになるのかな、やっぱり。だったら、いつかもう一人の自分に出会っちゃうとか」

「あ、そういう映画見たことあるよ」

「わたしも見た事あるかも。作りやすいのかもね。一人二役でやればいいし」

「役者が双子の可能性だってあるしね」

 ……
 ……
 ……

「だったらさ、今って”正解”って言えるのかな」

「えっ」

 ぼそっと呟く燐に蛍は目を見開いていた。

「だってさ、一応上手くいってるでしょ? 色々」

「……蛍ちゃんもわたしもちゃんと居て。あの異変なんて現実離れしたことは起きていない。町は合併しちゃうけどそのほうが町の発展にはいいみたいだし」
 
 燐は思いつく限りのことを列挙してみた。

 聡やオオモト様のこともあるが、今はあえて言わなかった。

 それに同意したように蛍はこくんと頷く。

「全部が全部ってわけじゃないと思うけど。燐の言うように上手く行ってるとは思う。上手く行きすぎている感じはちょっとするけど」

 燐の意見には全面的な同意を示すも、蛍なりに懸念もあった。

「わたしもそう思うよ。出来過ぎてる感じは否めないもん。シナリオっていうか……」

「やっぱり幸運の力なのかな。これって」

 ぽつりと蛍がこぼす。

「それは……」

 燐はそれ以上何も答えることが出来ず、視線を少し遠くに向けた。

 猛り狂っていた虫の声もいつの間にか止んでいて、湖畔に本当の静寂が流れていた。

 何の音もしない。

 聞こえるのは、二人の静かな息づかいだけ。

 それ以外の音は世界から全て消えて無くなってしまったかのように思えた。

 がさっ。

(あれっ、何、今の!?)

 燐は急いで意識を戻すと視線をそちらの方角に凝らす。

 一瞬何かの物音がしたかと思うと、光のようなものがこちらを照らしたような気がしたのだ。

 隣で座っている蛍をちらっと窺ってみたが、困惑したように燐の方を見つめていた。

 急に目を見開いた燐を不思議そうに眺めながら。

(これって、わたしだけしか見えない? そんな事って……)

 前例が無いわけではなかった。

 ただ、それはとても随分前に一度経験したっきりだったので、にわかには信じられないが。

(今日だけで色んなことが起きてるからおかしくはないけど。でも今のって……)

 どちらも一瞬だったが。

 光は”目”みたいだった。

 悪意を持っているかとかまでは分からなかったが、何かがこちらを眺めている。
 そんな感じだった。

「燐、何か見えるの? 遠くの山の方ばっかり見ているけど……」

 首を傾げてながら別の方にばかり見ている燐に蛍がそっと声をかける。

 自分の方を見て欲しいと言わんばかりに燐のスカートの端っこを指できゅっと摘まみながら。

 はっとなった燐は蛍と視線を合わせた。
 その顔がすぐ近くにあったので、燐は顔を赤くしながら正直に蛍に話した。

「ご、ごめん。何か見えたような気がしたの。何か、目みたいなのが」

「何かの”瞳”?」

「うん。見間違いかも知れないけど、何かこっちを見られているような気がしたんだ。動物か何かだろうと思うけどね」

 でももし、自分にしか見えない動物とかだったら?
 
 例えば、あのヒヒのような化け物とか。

(それに、蛍ちゃんの首のあざだって……)

 あれだってもしかしたら自分にしか見えない痣である可能性もある。

 蛍は認識できていないみたいだし。

 燐の手が折れ曲がった鉄パイプに伸びようとしたその時。

「確かに動物ならあり得るかもね。この辺の山って奥は結構深いから、カモシカなんかもいるような話を聞いたことがあったけど」

 ふいに蛍が山の方を見ながらそう呟いた。

「カモシカ……かぁ」

 燐よりもこの地に詳しい蛍がいうのだから間違いではないのだろう。

 急に虫の声が止んだのもそれなら頷ける。

 燐は指をぱっと引っ込めると、誤魔化すように上へにあげた。

(やっぱりわたしも疲れてるのかな。それぐらいのことでピリピリしちゃうなんて)

 燐はそのままだらんと両手をシートに投げ出す。
 
 急に眠気を感じて大きなあくびをひとつ噛み殺した。

 隣を見るといつのまにか蛍も横になっていた。

 シートの上で丸くなりながら、燐の方に身体を向けていた。

「やっぱり燐も疲れてるんでしょ、少し眠ったら」

「うん。蛍ちゃんもそうみたいだね」

 頷いた蛍も小さなあくびをかみ殺す。

(今すぐは町に戻らなくてもいいかぁ……どうせ明日は休みだし)

 燐はぼんやりした思考でそう考えると、重くなってきた瞼を薄く閉じる。

 蛍は燐よりも一息先に両方の瞼を閉じていた。

 まだ完全に寝息は立てていないがそれだってもう時間の問題だろう。

 燐だって思考は殆ど沈んでいるし。

 ただ寝入りに入る直前。

 割とどうでもいい事ばかりが頭に浮かぶ。

 身体だって冷えている気がするからこのまま寝てしまったら大丈夫かな、とか。

 お風呂に入っていないから臭くなったりしないかな、とか。

 寝るのに不必要な情報ばかりが頭をかき回す。

 それらを全部排除して眠ってしまえればいいのだが。

(そういえば、お風呂かぁ……)

 半分寝かかっていた燐がぱちりと目を開ける。

 囁き声で蛍にたずねる。

「ねぇ、蛍ちゃん。わたし達、ちょっと汗臭いかな?」

「うん……臭い……の?」

 蛍はもう完全に寝てしまったのかと思っていたが、まだ返事を返すことは出来るようだった。

 蛍は寝ぼけ眼のままで、自分の服の袖口を小さな鼻に向ける。

 燐が頼みもしないのに、その小さな鼻をふんふんとさせて匂いを嗅いでいた。
 
 蛍はぎゅっと眉根を寄せて苦々しい顔をしていた。

「う~ん、やっぱりちょっと匂う……」

 燐も自分の服の臭いを嗅いでみる。

「やっぱり汗臭い……蛍ちゃんごめんね。変な臭い体からさせちゃって」

「わたしだってそうだよ。このままじゃ寝るに寝られない」

 燐と蛍は顔を見合わせると大きなため息をついた。

 やっぱりふたりとも年頃の少女だから。
 どうしても気になってしまう。

(音なんかよりも臭いの方が敏感だって言うけど……)

 バックパックに色々詰めてはきたが、香水までは流石に持ってはこなかった。

 だがこれは香水なんかで誤魔化せるような匂いじゃない。

 部活のときにたっぷり汗をかいた時の酸っぱい匂いが身体のあちらこちらから漂っているようだった。

「まぁ、わたし達以外に誰もいないからそんなに気にしなくてもいいんじゃない」

 蛍は寝ることに集中したいのか、少し投げやり気味に言葉を投げる。

「それでも気になるっ!」

 燐はまだ諦めきれないのか羞恥で顔を赤くしてすぐさま反論をする。

(蛍ちゃんにこんな匂い嗅がせたくなんかないし)

 蛍はもう乾いた笑いしかでなかった。
 眠たさすぎて。

「……じゃあさ、今洗い流せばいいんじゃないかな。ちょうどいい所に水はたっぷりあるし」

 そう言って蛍は片手を湖の方に向ける。

 明らかに今思いついた意見だが、燐は感嘆の息をもらして大きく頷いた。

「成程ね! それもありっちゃありだね。でも……」

 しばし考え込む燐。

 どうやら羞恥と悪臭を天秤にかけているようだった。

(だって、ここで洗うってことは裸になるってことでしょ? でもこの臭いのまま寝るのも嫌だし……)

 すっかり眠気はどこかに飛んだのか、燐は少し顔を赤らめながらひとり頭を悩ませている。

 さっきだって何かの視線を感じたわけだし、人気の全くない夜だからって裸になるなんて。

「前にこういうのは露天風呂みたいなものだって言ってたの燐だったよね。だからいいんじゃないかな」

「それは、そうだけどぉ……」

 蛍の指摘に燐は痛いところを突かれたように、うっと呻いた。

(うー、確かにそう言ったけど今とは事情が違うっていうかぁ……)

 まごまごしている燐の手を蛍がそっと取る。

「じゃあ……わたしも一緒に入ってあげる」

「蛍ちゃんも? でも……いいの?」

「うん。わたしだって、変な臭いさせたまま寝るのはやっぱり嫌だもん」

 そう言って小さく微笑んだ。


(燐の臭いは好きだから平気だよって言ったら、流石に引かれちゃうだろうしね)

 ──
 ──
 ──



Micropterus

「どう? 燐。お湯加減は」

 

 蛍が恐る恐る尋ねる。

 

 燐は片手を入れながらうーんと首を捻った。

 

「そうだねぇ、これならちょうどいい塩梅かも……ってぇ、温泉じゃないからね、ここは!」

 

 燐は的確なつっこみを入れた。

 

「まあでも、思ってたよりかはダム湖の水は冷たくはないよ。これぐらいなら大丈夫そう」

 

 ボケをたおしていた蛍も燐の横から覗き込んで指をそっと湖面につける。

 

 確かにちょっとひやっとはしたが、凍り付く様な冷たさは指先には感じない。

 

 燐の言うように、これなら水浴びぐらいは出来そうな気はした。

 

 水の流れの遅いダム湖だとはいえ、いきなり入るのは危険だと判断した二人は、とりあえず人肌で湖の水温を測ってみることにしたのだ。

 

 それに今日の午前中までは雨が降っていたし、それに伴ってダム湖の水位も上がっていたみようだったから、相応に水も冷たいのものかと思っていたが。

 

(そこまで危惧するほどでもなかったね。まあ用心に越したことはないんだけど)

 

 どうやらダム湖には入れそうなことは確認したが。

 

「……」

 

 蛍と燐は顔を見合わせる。

 

 まだ二人とも服を着たままだった。

 

「やっぱり夜風がちょっとすーっとするね」

 

「でも、汗でべとべとだったからちょっとすっきりしたかも」

 

「ついでに洗濯もしてみる?」

 

「多分乾きそうにないと思うよ。今からだと」

 

 とりあえず上着から脱いだ蛍だったが、肌に直接感じる夜風に身を震わせた。

 

 燐はそれに苦笑いしながらもぱっぱと服を脱いでいく。

 

 入る前は恥ずかしがっていた燐だったが、結局先に全裸になったのは燐の方だった。

 

 蛍はいきなり服を全部脱ぐのに抵抗があるのか、少しゆっくり目に一枚づづ丁寧に服を脱いでいた。

 

 焦らすつもりはないが、まだどうにも気持ちの踏ん切りがつかない。

 

 小さなタオルもあることにはあるが、精々身体を拭くぐらいにしか使えないし。

 

 特に蛍に関しては、薄いタオル一枚程度では隠しきれるものではなかったから。

 

 だからまだ、迷いを見せていた。

 

 水着などは当然持ってきていないし。

 

「わたしから言い出したことだけど……やっぱり恥ずかしい」

 

 蛍は既に上下とも下着姿だったが、そこからがどうにも動けない。

 

 これ以上脱いでしまえば本当に何も隠すものが無くなってしまう。

 

 燐の後ろで隠れていようかなと、ちょっと思ったりもしたのだけれど。

 

「おーい、蛍ちゃ~ん」

 

 燐はもうダム湖の中にその身を入れていた。

 

 プールに入った子供みたいに楽しそうに手を振っている。

 

 もちろん全裸で。

 

 カチューシャすらも身に着けていない。

 

「うんー」

 

 生まれたままの姿で無邪気に手を振る燐に、蛍は頑なな笑みで小さく手を振り返す。

 

 まだ足すら水に入れていないのに、肌が少し湿っていた。

 

(何でわたし、あんなことを言っちゃったんだろう……水浴びしようだなんて)

 

 冷静に考えると相当無謀なことを言ってしまったんだと思う。

 

 別にこんなところで水浴び何かしなくても普通に家に帰ってシャワーでも浴びればいいわけなのだし。

 

 だったら、回帰でもしたかったのだろうか。

 

 あの夜の学校でのプールがとても素敵だったから。

 

 たまに夢に出てくるぐらいだったし。

 

(でも、今は夢じゃないんだよね……燐と一緒に現実の湖で裸に……)

 

 考えてみたら、異変の時の夜のプールも青いドアの家の世界の大きな水溜まりの時も。

 

 その両方とも裸で水にはい入っている。

 

 水溜まりの時は何故か途中から服を脱ぎ始めたが。

 

(何か常に水着を持ってた方が良いぐらい、いざって時に備えて)

 

 ”いざ”にしては結構な頻度で起っているような気もするが。

 

 蛍は思わずごくりと喉を鳴らした。

 

「ね、ねぇ、燐。やっぱりさ、濡れたタオルで体を拭くだけにしておこう? 誰かに見られてるかも限らないし」

 

 蛍は今更ながらに自分の発言に後悔したのか、弱々しい声で燐にそう懇願をすると、忙しなく周囲を見渡した。

 

 湖の周りを覆い尽くす黒い森は、人どころか小動物の気配さえも殺してしまっているように、無言のまま二人の少女を取り囲んでいる。

 

 さっきはカモシカかもと思ったが、実際は違うものだったのかもしれない。

 

 得体のしれない獣が二人を狙っていたのだとしたら。

 

「……っ!」

 

 時折、風に揺られて木々が騒めき立つ様子を不気味に感じたのか、蛍は剥き出しの二の腕をぎゅっと握った。

 

「タオルなんかよりも、実際に入ってみた方がいいよ。天然のプールみたいで気持ちいいし。まあ……ダム湖の時点で天然じゃないんだけどね」

 

 燐は自分で言ってつっこみを入れていた。

 

「そ、そうなんだね」

 

 蛍は他人事のように呟く。

 

 でも。

 

(燐に一緒に入るって言っちゃったし。ここは入るしかない、よね? だ、大丈夫、燐が一緒なんだから……!)

 

 胸の内に言い聞かせるように心の中で蛍は呟くと、覚悟を決めたのか最後の下着を脱ぐと、レジャーシートの上に畳まれた衣装の上にポンと重ね置いた。

 

 そして前だけを両手で隠しながら、ゆっくりと湖面に近づく。

 

 大した距離はないはずなのに妙に長く感じた。

 

 蛍が髪に付けていた、キンセンカの髪飾りとヘアゴムは既に外してある。

 

 だから最初から入る気ではあったのだが。

 

(でも、恥ずかしいものは恥ずかしいんだもん)

 

 理由にならない言葉をつぶやきながら、燐の待つ方へと足を進める。

 

 夜露に濡れた下草がちくちくと蛍の素足の裏側を刺激してきて、進むたびにくすぐったくなる。

 

 痛みともつかない変な感じに内心首を捻りながら、少し早足で燐が手を振っている湖面へと急いだ。

 

 内股だからややも転びそうになるが、蛍は何とか燐の前まで行くことが出来た。

 

「ここら辺なら浅いから大丈夫だよー。入ってきてみて」

 

 燐が手招きをして待っててくれている。

 

 ただそれだけで蛍の胸は暖かくなった。

 

 だがそれ以上、からだが前に進まない。

 

 燐はちょっと不思議そうに見ていたが。

 

「転ばないように注意してね」

 

 燐にそう促され、無言のまま蛍はこくりと頷く。

 

(蛍ちゃん……やっぱり……)

 

 表情こそは笑っていたが、燐の瞳は蛍を観察するように細かに動いていた。

 

 燐の視線は蛍の身体というよりも細い首や手、そして足元にも注がれている。

 

 もし、汚れているのが燐だけだったら、きっとダム湖には入らなかったと思う。

 

 だが蛍の、あの首に出来た痣のようなものがどうしても気になってしまうから、恥ずかしさを我慢してダム湖に入ることにしたのだ。

 

(増えてる……?)

 

 黒いアザは蛍の首だけで留まっていなかった。

 

 服を着てたから気付かなかったのもあるかもしれないが、蛍の両腕と足首の辺りにも同じような痣のが広がっていた。

 

 鉄で出来た枷を嵌めたように黒い線状のものがぐるぐると蛍の部位に巻き付けている。

 

 まるで、黒い蛇がとぐろを巻いたように。

 執拗で複雑な模様で。

 

「…………」

 

 燐は努めて冷静にそれを分析していた。

 

 自分までもパニックになったらきっと蛍は動揺してしまうだろうから。

 

(これが水で洗って取れる程度ものならいいんだけど……)

 

 もしそうでないとしたらやはり直に蛍に聞いてみるしかない。

 

 さっきもはぐらかされてしまったし、聞かれたくはないことなんだろうけど。

 

 何が手掛かりみたいなものは掴める可能性があるから。

 

(わたしに出来る事なんてその程度のことぐらいだけど)

 

 それでも蛍の傷が癒えるなら何でもしてあげたい。

 

 自分にも同じような痣が付いたとしても。

 

 蛍ちゃんを助けることが出来るのなら。

 

 燐がある種の決意を心の中で固めた時。

 

「り、燐~!」

 

 蛍が泣きそうな声で岸辺で助けを求めていた。

 

「あ、ごめんっ」

 

 燐はぶるっと首を振ると、情けない声でしゃがみ込む蛍の元へと向かう。

 

 やはり怖いんだと思う。

 

 だから燐は。

 

「ほらっ、蛍ちゃん。手、握っててあげるからっ」

 

 泳ぎを教えるみたいに、燐は水中から優しく手を差し伸べる。

 

 蛍はその手をしっかりとつかむと、足を少し震わせながら大きく頷いた。

 

「燐、絶対に……絶対に手を、離さないでね」

 

「分かってるよ蛍ちゃん。じゃあ……行くよっ。せーのっ!!」

 

「ちょっと、燐っ!?」

 

 どぼーん。

 

 燐に一気に引っ張られた蛍は一歩どころかそのまま湖の中に飛び込む形になった。

 

「わっ」

 

 ばしゃっと、小さな水飛沫があがって少女たちの頭上に降り注ぐ。

 

 二人を中心に波紋ができ、黒の鏡面にさあっと広がっていった。

 

「──っ」

 

「大丈夫? 蛍ちゃん」

 

 蛍は頭からずぶ濡れになりながら立ち尽くしている。

 

 ぽたぽたと水滴が落ちて蛍の長い前髪を濡らし、その表情を隠すほどにまでなっている。

 

「あ」

 

 燐はその姿に覚えがあった。

 

 あれは確か何年か前のクリスマスの時の──。

 

「……燐ー」

 

「ひゃあ! 蛍ちゃん、ごめんー!」

 

 蛍は前髪を垂らしたままの格好で燐を追いかける。

 

 燐は捕まらないようばしゃばしゃとダム湖の中を逃げ回っていた。

 

 その姿はまるであのホラー映画のキャラクターのようだったから。

 

「でもさ、入ってしまえば何てことないかったでしょー。だから蛍ちゃん許してぇ~」

 

「絶対に、許さないから……」

 

「ひいいいぃぃ!」

 

 そう言いながらじゃばじゃばと追いかける蛍。

 髪で前が隠れているせいかそれは言葉以上の恐怖感を燐に与えるほどだった。

 

 ひたすらに逃げる燐の後を追いかける蛍だったのだが。

 

「あっ」

 

 底がぬかるんでいたのか、足がつるんと滑った。

 

 そう気付いた時はもう遅く、ざぶんという音とともに蛍の視界が水の中にあった。

 

 しかもそこは深くなっていたらしく、手を着くことすらできない。

 

 パニックになった蛍はじたばたと手足を動かして必死に藻掻こうとする。

 

 そんなことをすれば余計に溺れるだけなのだが。

 

「蛍ちゃん、大丈夫っ!?」

 

「あ……燐?」

 

 強い力で燐が手を引っ張り上げてくれていた。

 

 蛍は一瞬何が起きたのか分からないみたいにきょとんした顔になったが。

 

「ごめん。足、滑っちゃった」

 

 燐の呼びかけに一拍おくれた後、恥ずかしそうにそう言った。

 

「はぁ、良かったぁ。蛍ちゃんの姿が急に見えなくなったから慌てて手を掴んだけど間に合ってよかったよ。水とかは飲んでない?」

 

「うん。燐がすぐに引っ張ってくれたから」

 

 蛍は水を滴らせながら頷いた。

 

「気を付けて蛍ちゃん。ダム湖はね天然の湖と違って土砂が堆積しやすいから滑りやすいんだよ。それに底にはいろんなものも落ちてるから足を切らないように注意してね」

 

「うん……でも燐、知っているなら最初から言ってくれればいいのに……」

 

「にゃはは、ごめんごめん。ついうっかり」

 

 燐は蛍に謝るとすっと手を差しだした。

 

「蛍ちゃん。今度は手、離しちゃだめだよ。浅い所なら大丈夫だから」

 

 燐の手を見ながら蛍はすこし考える素振りを見せると。

 

「でも、燐の方が先に手を離したからこうなったんじゃなかった? 燐があんなことするから……」

 

「ひいぃぃ! その顔止めて蛍ちゃん、普通に怖い!」

 

 ただ前髪を垂らしたまま、蛍が燐の事をじっと睨んでいるだけだが、それだけで燐は酷く怯えた声を上げていた。

 

「……怖くなんかないもん」

 

 蛍はぼそっと呟くと、前髪を指ですっと横にずらした。

 

「でもさ、燐。やっぱりちょっと暗くないかな。どこから深くなってくるのか全然わからないし」

 

 月は頭上で二人の裸体を浮かび上がらせているが、水底を照らすことは出来ないようだ。

 

 そのぐらい湖の底は暗く、濃くなっているとも言える。

 

 そこに何かが潜んでいても分からないぐらいに。

 

「確かにそうだねぇ」

 

 蛍の指摘に燐も同意するように頷く。

 

「ペンライトを持ってきてもいいけど……」

 

 燐の持ってきたペンライトは、ひいて置いたレジャーシートの上で小さな灯台の様に淡い光を出し続けていた。

 

 あれを持ってきたら何処に荷物や衣服を置いたのか分からなくなる可能性がある。

 

 盗られてしまうことだってないわけじゃない。

 周りは真っ暗なわけだし。

 

 もう一本あればよかったのだが、今ないものは仕方がない。

 

 燐が決断を迷っていた時だった。

 

「あっ! そうだ」

 

 燐は不意にあることを思いだすと、蛍から離れて岸の方に戻ろうとする。

 

「ちょっと燐、どこに行くの」

 

 慌てて蛍はその手を取った。

 

「ごめん蛍ちゃん。ちょっとだけ待ってて、すぐに戻ってくるから」

 

 そう言うと蛍の手をやんわりと外して、すぐさま岸辺の方へと行ってしまった。

 

「燐……」

 

 ぽつんとひとり取り残されてしまう蛍。

 

 燐が傍に居ないというだけで、静まり返った湖畔がとても不気味に感じる。

 

 待っててと言われてもこんなところで一人で待つなんてできそうにない。

 

(燐は、荷物置き場の方に行ったみたいだし)

 

 蛍もとりあえずそちらに向かうことにした。

 

 今度は滑らないよう慎重に水の中を歩く。

 

 深さは精々太ももよりも上ぐらいだからこの辺りなら問題ない。

 

 何で急に深くなっていたのかは謎だが。

 

(そういえば前にも同じようなことがあったよね。向こうの世界の水溜まりで)

 

 水溜まりと呼ぶには大きすぎだったが。

 

 少なくともこのダム湖よりも広かった。

 

「ふぅ」

 

 ひとりで湖岸まで戻った蛍は湖から上がってそこに座り込んでいた。

 

 体を拭きにシートのあるところまで戻ってもいいが、何だかもう疲れてしまった。

 

 燐はもうすぐ戻ってくると思うから。

 

 風で揺れる髪を手で抑えながら、蛍は岸辺で膝を抱えて、湖に星が落ちるの様子を呆然と眺めていた。

 

「おーい、蛍ちゃん」

 

 その背後で燐が大きな声をあげていた。

 

 手に何かを持ちながら。

 

 ……

 ……

 ……

 

「何だか綺麗だね」

 

 見つめる蛍の瞳が輝いていた。 

 

 それは月の光なんかではなくて。

 

 水の上で光を放ちながら浮いている四角い箱を眺めていたのだ。

 

「これさ、さっきも用意しておけばよかったね。持ってたのつい忘れてたよ」

 

 燐はそう言いながらぷかぷかと浮かぶそれを指でちょんと押した。

 

「これって”ランタン”だよね? こんなものいつの間に買ってたの?」

 

 光を出しているから多分そうだと思う。

 それにしたって妙な形をしているが。

 

 蛍も燐と同じようにそれを指で押した。

 

 想像よりも軽く柔らかい感触に少し驚いた。

 

「これって沈んじゃうことはないの?」

 

 両手で抱え込むように掌をかざしながら蛍が問いかける。

 

「ずっと水に浮いてられるみたいだよ。もし沈んでもちょっとぐらいは大丈夫なんだって」

 

「へぇー、見た目よりも凄いんだね」

 

 蛍は納得した声をあげた。

 

 始めはただの板のようだったから何かとは思っていたけど。

 

「折り畳み式のランタンなんてわたし初めてしったなぁ。燐、ネットのショップで買ったの? ころっとしててちょっと可愛いね」

 

 蛍は楽しそうに水に浮かぶ透明な四角いランタンを何度も指で揺らす。

 

(何か蛍ちゃん、子供みたい……)

 

 燐は小さく苦笑いした。

 

「雨の日なんかでも使えるみたいだから試しに購入してみたんだけど、それがようやく届いたんだ。ソーラー発電だから別に電源も要らないみたいだし、折り畳めるからバッグの中で嵩張らないしね」

 

 そのせいで持ってきていたのをすっかり忘れてしまっていたのだが。

 

 燐も初めて使ったが結構便利な気はした。

 

「これって、寝室になんか置いてもいいよね。柔らかくて可愛いし、間接照明みたいでそんなに明るくないからぬいぐるみと一緒にベッドの横においてもそんなに眩しくないし」

 

「うんうん。でも、こういう使い方をするとは思ってもなかったんだけどね」

 

 ぬいぐるみの件は置いておくにしても、燐も確かにそう思った。

 

 透明な四角いドームの中でLEDの光を放つランタン。

 

 それは濡れても大丈夫なだけでなく、四角いドームの所の素材は柔らかいことから簡単に折り畳むことのできる優れものだった。

 

 ただ、このまま使うと風船のように水に浮かんでしまうので、燐は手ごろな小石を見つけてそれを重し代わりに括り付けてランタンをそっと湖の中に沈めたのだったが。

 

「このでちょっとは安心かな。この光が届く範囲にいれば良いわけだしね」

 

「うん。これで水の底もちょっとは見渡せるしね」

 

 そう言って早速水の底を見渡した蛍だったが。

 

「り、燐! あれっ……!」

 

 蛍が燐にしがみついて水の底を指差す。

 

 少し驚いてしまった燐だが、蛍の差す方向に目を凝らした。

 

 白いランタンの明かりに照らせた黒いものが素早い動きで水中を横切ってきた。

 

「何? さかな?」

 

 ダム湖には魚が住み着くこともあると聞いたことがあるが。

 

 結構大きな黒い影が、二人の白い太ももの間を横切った。

 

「あ、そういえば、このダム湖って魚釣りの人が来るんだって聞いたことがあるよ。秋ごろになるとそれ目当ての釣り人が結構やってくるんだって」

 

 何の魚かまでは覚えていなかったが……確か”なんとかバス”だった気がする。

 

 産卵の時期になるとこのダム湖にやってくるらしい。

 

「じゃあ、今のがそうなのかな? ちょっと黒っぽくみえたやつ」

 

「多分。ねぇ、燐。折角だから捕まえてみたら」

 

 やはりちょっと浮かれているからなのか、蛍はまたも妙なことを言いだした。

 

 燐は小さく肩をすくめたが。

 

「前にもこういうのをやったことがあるし。ちょっと試してみようかな」

 

 確かに折角の機会だし。

 

 蛍は何気なく言ったことを燐は面白く感じたらしく、小さくガッツポーズをみせると、さっきよりも目ざとく水中を見つめた。

 

 ランタンの明かりが魚を誘発させているのかもしれない。

 

 そう思った燐はむやみやたらに動き回らずにランタンの照らす場所一点に狙いを絞った。

 

 その瞬間、燐の目先で黒い影が水底に映る。

 

「やっ!」

 

 瞬きする間もなく燐はそれ目掛けて手を伸ばした。

 

 にゅるっとした手ごたえが燐の小さな手のひらに確かに伝わったのだが。

 

「う~、結構素早いなぁ。取り逃がしちゃったよー」

 

「燐でも難しいんだね、やっぱり」

 

「まぁね。相手も逃げるからね、って! 蛍ちゃん、ほら! すぐ下にいるよっ」

 

 そう言って燐は蛍のふとももの辺りを指さす。

 

「え、どこどこ」

 

 燐の腕をぎゅっと握りながら蛍はきょろきょろと見渡した。

 

 その時、何かが股の間を通り過ぎたようなすっとした感覚を感じて、蛍は足先から脳髄まで一瞬でぞわっとなった。

 

「いやぁ! 燐、早くとって!」

 

 驚いた蛍が身体をぎゅっと押し付けてくる。

 

「そんなに押したら危ないよ、蛍ちゃん!」

 

 燐も蛍の肩を掴んで抱き留めるのだが、視線だけは魚の方に向けられている。

 

 だがくねくねと動き回る生きた魚を捕らえるのは難しく。

 

 一人では無理と判断した燐は。

 

「ほら、蛍ちゃんも一緒に捕まえてっ」

 

 そう声をかけるも蛍は燐にしがみついたままだった。

 

「わ、わたしには無理。普通に売ってる生魚も触るの苦手だし……」

 

 昆虫は良くても魚を触るのは何故か苦手な蛍は断固拒否をする。

 

「じゃあ、二人で捕まえよう。蛍ちゃんは魚をこっちにおびき寄せるだけでいいからっ!」

 

「うんっ」

 

 燐はそう指示を出す。

 蛍は頷くとばしゃばしゃと水を跳ね上げて魚を燐の方へと追い立てた。

 

「今度こそっ、えいっ!」

 

「あ、燐。今度はそっちに行ったよっ」

 

 あっちこっちと言い合いながら、二人とも深夜の魚捕りに夢中になっていた。

 

 何の道具もなくただ手掴みで野生の魚が簡単に捕まえられるわけもなく、二人の少女は水音を激しく立てながら右往左往とするばかり。

 

 多分、本気で捕まえる気はなかったのだと思う。

 

 どうせ捕まえたところで、魚はそのまま湖に戻すつもりなのだし。

 

 そう思うと、この行為に何の意味があるのかは分からなかったが、それでも夢中になっていたのは、多分。

 

(きっと、楽しいからだと思う。蛍ちゃんと一緒に体を動かすこと自体が楽しいんだ)

 

 燐も蛍も余計な汗をかいていたが、確かな充足感を覚えていた。

 

 あの日の夜のプールと時とは少し違ったものではあったが。

 

 二人の間にあったもやっとしたものが少しだけ晴れた気がしたのだ。

 

 この時までは。

 

 ……

 ……

 ……

 

「結局、一匹も捕まえられなかったね」

 

「うん。でも……楽しかったぁ」

 

 蛍は肩で息をしながらふわふわのタオルで顔を拭う。

 

 燐も濡れたタオルで軽く身体をなぞりながら汗を落とした。

 

 今日は二人ともかなり疲れているはずなのに、余計な疲労を重ねてしまったような気がした。

 

 嫌々だった蛍もやっているうちに楽しくなってはきたが、やはりくたびれてしまったのか、最後の方は泳ぐ気力もなくなり、今はレジャーシートの上でぺたんと座り込んでいた。

 

 燐も残ったペットボトルを飲みながら、蛍の隣で肩にタオルをかけて座っている。

 

「やっぱり、お魚だって全力だからね。わたし達みたいな素人が早々捕まえられるものじゃないんだよ」

 

 燐が幼い頃にやった魚のつかみ取りだって、そういった観光向けに放流された場所だったんだろう。

 

 大きさも種類も全然違うものだったし。

 

「確かにそうだよね。お魚さんだって生きるのに必死なんだもんね」

 

「もし捕まえたって、食べる気なんかは全然なかったけどね」

 

「え、そうなの?」

 

 意外そうに首を傾げる蛍。

 

「もしかして蛍ちゃん。ちょっとは食べる気だった」

 

 魚を触るのは嫌でもそれを食べるのは平気なの?

 と燐はちょっと考えてしまうが。

 

 あえて口には出さなかった。

 

「まあ、ちょっとだけね。燐ならどんな魚でも調理してくれそうだし」

 

 蛍は小さく呟くと、親指と人差し指でちょんとつまむような仕草を見せていた。

 

「それはどうかは分からないけどぉ」

 

 燐はそう優しく否定した後で。

 

「でも、食べられるようなお魚だったかなぁ? 大きさはそこそこありそうだったけど」

 

「それは大丈夫だと思うよ。釣りの人もおっきなクーラーボックスとか持ってきてたみたいだったし」

 

 それだけで判断するのはすこし難しい気もするが。

 

 とりあえず燐は曖昧に頷いてみせた。

 

「燐なら何のお魚でも捌いてくれるでしょ。で、そのお魚を使ったアウトドアをご飯作ってくれそうかなって」

 

「まあ、できなくはないとは思うけど……結局捕まえられなかったからどうしようもないけどね」

 

(魚は一匹だけってわけでもなかったのに何で全然捕まえられなかったんだろ?)

 

 確かに慣れないハンデがあるとはいえ、そこまで早い動きではなかった。

 

 むしろ悠然と泳いでいる魚すらもいたのに。

 

 燐が内心、不思議そうに首を傾げていると、掌に感触があった。

 

「ねぇ、燐」

 

「どうかしたの蛍ちゃん? やっぱりまた捕りに戻る?」

 

 結局燐も岸に上がり、まるで足湯のように足だけを水中につけている。

 

 蛍も隣で同じようにしていた。

 

 そんな燐の手に蛍は自分の手を重ねて問いかける。

 

「ううん、それはもういいの」

 

「そう? じゃあ、なに」

 

 何故かは分からないが少し舌の渇きを感じて、燐は無意識に上唇をぺろっと舐めていた。

 

 さっきお茶を飲んだばかりなのに。

 

「燐はさ……”かえりみち”って知ってる?」

 

「帰り道? あ、そうだねぇ。ちょっとだけ待って……えっと、ダム湖からだと……」

 

 唐突に蛍に聞かれて燐は少し戸惑ったが、すぐに頭を回転させた。

 

 ──今は夜だから見知った場所だとしても帰る道が分かりづらいのは確かだ。

 

 ランタンの充電はまだ残っているし、ペンライトもあるから暗がりでも大丈夫だろう。

 

(問題は、”どこに帰るか”だよね。今からだと終電も終わっちゃってるし、行くときに使った軽自動車は多分、お母さんが乗って行っちゃっただろうし……)

 

 そうなると町にある燐の実家であるパン屋か、蛍の家のどちらかを目指すことになる。

 

 どちらの鍵も持っているからどっちでもいいわけだが。

 

(まあ、実家かな。一番近いし、一通りのものはあるからね)

 

 蛍の家は家財が殆ど無くなっているし、行った所で寝る事ぐらいしか出来ないだろうから。

 野宿よりはマシだが。

 

(野宿かぁ……最悪の場合はここで野宿と言うことになるけどぉ)

 

 いくら初夏だとしてもできればそれだけは止めておきたい。

 

(せめてテントでもあれば別なんだろうけど)

 

 燐は今回は持ってきていない。

 

 シートだけで一晩過ごすのは燐だって嫌だと思っているぐらいだし。

 それを蛍に勧めるなんてもってのほかだ。

 

 一応、ブランケットのようなものもあるにはあるが。

 

(それと古い鉄パイプを組み合わせて簡易的なタープでも作るとか? いくら何でもそれはないか)

 

 その鉄パイプも折れてしまって、まともに立たせることすらも出来ないし。

 

 本当に、何のためにここまで持ってきたんだと思う。

 

(まあ、どちらにしたって朝帰りになるし、怒られそうだなぁ、また)

 

 カンカンになった母親の顔を想像した燐は深いため息をついた。

 

「どうしたの燐。さっきからため息ばかりついて。何か悩み事?」

 

 蛍が顔を覗き込んでいた。

 

「ううん、こっちのことだよ」

 

「?」

 

 繕った笑みを返す燐に蛍は首を傾げた。

 

(まあ、蛍ちゃんと一緒なら大丈夫かなぁ。うちの母親、蛍ちゃんにはすっごく甘いから)

 

 そういった算段を計算したうえで燐は蛍に話したのだったが。

 

「……流石は燐だね。でもやっぱり野宿は少し嫌だよね」

 

 やはり野宿だけは否定されてしまった。

 

 だがこれで”帰り道”は決定したことになる。

 

 あとはそれを実行に移すだけだが。

 

「じゃあ、服着たらそろそろ帰ろうか。一応身体も洗った事だし」

 

「ちょっと待って、燐」

 

 立ち上がろうとした燐の手を蛍がぎゅっと掴む。

 

「その前にやることがあるでしょ。さっきそれを燐に手伝ってもらおうとしたの」

 

 蛍は頬を赤らめて呟いた。

 

 ……

 ……

 ……

 

「別に、燐は裸じゃなくてもいいんだよ」

 

「それだったら蛍ちゃんも下着ぐらい着けたら。蛍ちゃんが綺麗なのは十分分かってるし」

 

 燐はあえて茶化す様な言い方をした。

 

「でも……ほかにも痣があるかもしれないし……燐に確認してもらいたいの。わたしじゃ分からないことみたいだから」

 

「分かった。じゃあ、ちょっと見させてね」

 

 こくりと小さく頷く。

 

 燐はさっきも蛍の身体をじろじろ確認してしまったが、こんなに至近距離で蛍の裸を見るのは初めてだった。

 

「……っっっ」

 

 燐に見られている間中、蛍の顔は耳まで真っ赤になっていた。

 

「……やっぱりアザは両手と両足、首の五か所だね、でも、痛みとかは全然無いんでしょ?」

 

「うん。どこも痛くはないよ。でもさ、燐には”それ”が見えるんだよね」

 

 自分の目だけじゃ信じられないから蛍に許可を貰って、首周りだけをスマホで撮影してみたが。

 

 蛍の色っぽいうなじの画像が液晶の画面に映っているだけで、燐がみた黒い痣のようなものは映り込んでなかった。

 

(何でわたしだけ見えるの。目が変になっちゃったとか??)

 

 燐は湖の水で目を擦ってもみたりしたが、痣が消えるようなことは無く。

 

 むしろさっきよりも痣の黒い線が増えているような気さえするのだ。

 

 そんな事、当然蛍には言えるはずもなく。

 

「そういえばどんな風に燐には痣が見えてるの? スマホで書いてみて」

 

「まぁ、いいけど……」

 

 見えないから怖くない。

 そういう事なのだろうか。

 

 蛍は割りと無邪気に燐に頼んだ。

 

 燐ははぁと息を一つ吐くと、蛍の首を映した画像を黒のペイントでなぞる。

 それを蛍にみせた。

 

「あっ」

 

 それを見た蛍は言葉を失っていた。

 

「蛍ちゃん、何か、心当たりでもある?」

 

 燐はすかさず尋ねる。

 

 だが。

 

「ううん、分からない」

 

 分からないと呟いて蛍は短く首をふる。

 

 蛍に見せたら何か分かるかもと少し期待していた燐だったのだが。

 

 結局、何の進展も得られなかった。

 

 ただ、蛍はこうも呟く。

 

「わたし、どうやって向こうの世界から戻ってきたのか、覚えてないの……確かに青いドアの家に居たはずなのに……」

 

「何にも? わたしとのことも覚えてない?」

 

「燐と携帯で話したことや、オオモト様と会った事は覚えてる。でもそれ以外がさっぱり思い出せなくて。こんなこと初めてだよ。青いドアの家には何度も来たことがあるのに」

 

「そっかぁ……」

 

 自身の膝に顔を埋める蛍に燐は何も言えずただ、遠くを眺めた。

 

 ほのかな月明かりが夜の森と湖を静かに包み込む。

 

 二人は生まれたままの姿でお互いを見つめ合っていた。

 

「そういえば、花火、見そこなっちゃったね」

 

 唐突に呟いた蛍の言葉に燐は曖昧に返事をする。

 

「仕方ないよ。わたしも蛍ちゃんもそれどころじゃなかったわけだしね」

 

「ごめんね」

 

「な、なぁに、突然」

 

 突然、蛍に謝られて燐は戸惑った顔になる。

 

「だってさ、本当だったら、燐と一緒に花火を見ていたのかなって思って……だから本当にごめん。燐だって楽しみにしてたんでしょ」

 

 消えかかりそうな声で蛍はぼそぼそと燐に対して謝罪の言葉を並べていた。

 

 燐はくすりと笑うと、丸くなった蛍の背中をぽんぽんと軽く叩いた。

 

「なぁんだ、そんなこと。てっきりビックリするようなこと言われちゃうのかなって思ってた」

 

 軽く言う燐に蛍はきょとんとした顔になる。

 

「そんな事って……燐だって浴衣を着るの楽しみにしてたじゃない。結構前から準備してたし」

 

「準備は確かにね。でもあれね、わたしじゃなくて、()()()()()()()姿()()()()()()()()()ってだけなんだよ」

 

「そうなの?」

 

「うん。それにさ……花火なんか無くたってこんなにも世界は綺麗じゃない。わたしはそれで十分。だってわたしが見ていたいのは花火なんかじゃなくて”蛍ちゃん”なんだから」

 

「……燐」

 

 臆面なく言い切る燐に蛍は顔を上げて燐の方を見つめた。

 

 少し赤みを帯びた蛍の顔をみて、燐は慌ててタオルを肩にかける。

 

 そしてぴょんと立ち上がると、まだ立ち上がろうとしない蛍にすっと蛍に手を差し伸べた。

 

「蛍ちゃん帰ろ。こんなところで裸でいたら二人とも風邪ひいちゃうよ。その、痣の事はわたしも一緒に考えるから。今は帰ろっ。ねっ」

 

 燐は蛍に目線を合わせてそう言った。

 

 だが蛍は燐の手を取ることなく、ただ黙って燐のことを見つめている

 

「ねっ、蛍ちゃん」

 

 燐はもう一度声を掛けた。

 

 蛍はその手を燐の方に伸ばそうとしたのだったが。

 

「……っ!」

 

 蛍は伸ばした手の付け根を片方で抑え込むと、顔を俯かせて膝を抱えてしまった。

 

「蛍ちゃん?」

 

 急に様子が変わってしまった蛍に、燐はどうしていいか分からず困惑した表情で立ち尽くしていた。

 

(確か、前にもこんなことあった気がする……?)

 

 拒絶された──とまでは思ってはいないが、燐は何かを思い出すように、切なそうな目で自分の手の掌を見つめていた。

 

 少し重い、しんとした沈黙がゆっくり流れ始めた時だった。

 

「わたし、さっき……”帰り道”って言ってたでしょ」

 

 蛍が急に口を開く。

 

「う、うん。確かにそう言ったね」

 

「あれって、違う意味で聞いたんだよ。燐はそのままの意味でとらえたみたいだけど」

 

「違う意味って?」

 

 燐の問いには答えず、蛍は黒い空を見上げていた。

 

 白い月があったはずだが、いつの間にか厚い雲に覆われていてその姿は隠れてしまっている。

 

 蛍は表情のない顔でそれを見つめていたが、やがて抑揚のない声で話を続けた。

 

「わたしは、燐と一緒には帰れない。わたしには別の”かえりみち”があるから」

 

「別、の? 蛍ちゃん、一体何を──」

 

 燐が言い終わる前に蛍は指をすっと上に指す。

 

 そこには。

 

 月が隠れた黒い空が広がっているだけだった。

 

 燐は蛍の指さす方向を目で追いながら、もしかしてと思いその場所の名を呟いた。

 

「蛍ちゃんの帰り道って……”青いドアの家”のこと?」

 

 蛍は静かに首を振る。

 

 そして申し訳なさそうに燐を見ながら、薄い唇を小さく開いた。

 

「燐、わたしの”かえりみち”はね。空の……そのさらに向こうの」

 

 燐はごくんと唾を呑み込んだ。

 

 

 ”かんぺきなせかい”

 

 

 蛍は、はっきりとした声でそう言った。

 

 

 

 

 ──

 ───

 ────

 

 

 

 





Maneater(マンイーター)

ずっと放置していたゲームだったのですが、ちょうど今の時期にピッタリな箱庭風サメゲーでしたよー!!
タイトルと内容は物騒ですけれども、思っていたよりかはグロテスクではない感じ。当然? 人間も捕食できるのですが残虐性は薄く、ブラックジョーク気味なナレーションのおかげで割とライトに鮫による殺人を楽しめます。
ストーリーはドキュメンタリー番組風になっていて、いわゆる復讐がテーマになってまして、大まかに言うと人間の都合と鮫の都合がぶつかり合う……みたいな。
序盤から敵が強いのである程度の慣れが必要になりますが、数値で分かるのでその辺りを気を付ければいいとは思います。ただ、その辺の魚や亀を食べていつでも体力を回復できる仕様のせいか、敵対行動をとる敵がかなり厄介で、序盤はワニがかなりしつこく追いかけ回すし、中盤以降は人間のハンターやシャチ、最後の方は鯨なんかと戦うことになりますしねー。特にラスボスはそれまでのごり押しが通用しない相手でしたから、攻略法が分からない内は何度も死んでしまいました。

でも、結構楽しかったですー。ゲーム内とは言え水の中を眺めているだけで涼しい気がしますし、一応陸上でも鮫は行動できるから思っていたよりも飽きないでプレイすることが出来ました。
クリアしてもまだ終わりではなく続きは一応あるのですが、そこからはDLCコンテンツになっていますのでもっと遊びたい方は買ってみても損はないかと思いますー。鮫がビームを出せたりできるようになるみたいですし。


★ゆるキャン△ SEASON3

2024年に三期放送決定おめでとうございます~!!! なのですが……うん、色々な意味でどうしてこうなったのかぁ!! 正直謎な所ではありますねー。
まさかヤマノススメのスタッフがゆるキャン△になるとは流石に思わなかったーー!! サプライズすぎですよー!! だから、アニメゆるキャン△三期は実質ヤマノススメとのコラボ作品みたいなものですねーー。で、ディザービジュアルを見た感想ですが……同じ原作なのは当然なんですけど、キャラデザが変わると全然違う印象に映りますねぇ。現時点だとキャラの性格すら違って見える──かも? 動きを見ない事には何とも分からないですが、個人的にエイトビットは絵作りが上手い印象があるので、続報に期待、ですねーー!!

最近暑い日が続きますので体調管理にはお気を付けください、ませ。

ではではーーー。

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