違和感があるかもしれませんが、お付き合いください。
アルフィアがベルと抱き合っていると、背後に誰かが近づいてくる気配に気がついた。
(そういえば共に来ていたんだったな)
背後に音を殺して近づいてきたのは、此処までアルフィアと共に来たザルドだ。
恐らくアルフィアとベルに気を使ってであろうが、ザルドはただ傍に来ただけで今も何も言わずに2人を見守るように立っている。
そんなザルドの様子に自分の心の弱さを気遣われているように感じ、アルフィアは「フッ」と自嘲の笑みをこぼした。
「嘲笑うか?」
あれほど、会わない、一目見るだけだなどと吐かしておきながら、いざ顔を見れば我慢が聞かずベルの前に現れ、抱きしめている。
自分の決意がどれほど軽く、安いものだったかを見せつけられているようだった
そんな、まるで攻めてくれというよなアルフィアにザルドは笑みを浮かべながら首を振った。
「いいや、家族なんだ。それも血の繋がった。お前のそれは、当然の行動だと俺は思う。」
そこに愛がある証拠だ。と言いザルドは笑った。
そんなザルドにアルフィアも「そうか」といい笑う。
そんな二人の中、アルフィアに抱きしめられているベルだけが突然あらわれた大男に驚き、状況に付いていけず目を白黒させている。
当然といえば当然だ。
アルフィアに対しては、懐かし匂いつられ自然と受け入れてしまっていたが、状況で言えば突然現れた女に名前を聞かれ抱きしめられている。
さらには、そこに知らない大男まで現れた。
不自然極まりない。
当のベルは、状況の変化についていけず先程まで泣いていたことも忘れ、脳の許容量を超えてしまったことによりショートし固まってしまっていた。
そうしていると、また家の中から誰かが出てくる。
恐らく泣いていたベルの声が聞こえ、心配になり出てこようとしているのだろう。
「どうしたベル。何を泣いとる」
家から出てきたのは、農民の恰好をした、がたいの良い老夫だ。
服の上からも、その体つきがいいことが見て取れる。
老父は、ベルを抱きしめているアルフィアと、その傍に立つザルド見て驚いて目を見開いた。
「お前たち...」
そんな驚いた老夫をみて、ザルドは愉快そうに笑みを浮かべた。
「久しぶりだな
「ザルド...アルフィア....そうか、会いに来たか」
ベルを抱くアルフィアを見て、すべてを察する。
アルフィアはベルの抱擁を解き、ゼウスへと顔を向けた。
「お前のような狒々爺にベルを預けて置いたら碌な育ち方をしないと心配になってな」
「また、酷い言い草じゃのう」
「自分の行いを顧みるといいエロ爺」
先ほどまでのしおらしさは何処へ行ったのか、アルフィアはゼウスに対して容赦のない毒を吐く。
その様子にザルドは懐かしいものを見るように頬を緩ませた。
それはゼウスもアルフィアも同じだった。
「酷いのう、懐かしの再開だというのに。そこは、ベルにしていたように儂にも熱い抱擁をじゃな...」
「.....」
両腕を広げ、ウエルカムと抱擁を促す相も変わらないセクハラ爺にアルフィアは思わず手が出そうになるが、既の所でザルドにそれを止められる。
「落ち着けアルフィア、気持ちは分かるが
流石にあって間もない状況で、
アルフィアもそう思ったのか、何とか踏み止まったが、その様子を見てニヤニヤとしてる糞爺の横っ面には後で一発入れてやろうと心に誓う。
その代わりにただ一言。
「ヘラにチクってやろうか」
「すみませんでした」
早かった。
恐ろしく早く滑らかな土下座。
プライドも何もかもを捨て去った本気の謝罪だ。
これが元最強と呼ばれたファミリアの主神と言われても誰も信じないだろう。
だが、残念なことに当時のファミリアの内情を知っているものからすれば大分見慣れたものだったりする。
まぁ、それを当然知らないベルからしてみれば、祖父が土下座している様を目撃して「おじいちゃん...」
と何とも言えない顔している。
と、そこでベルは遅まきながら祖父と突然現れた二人が親し気?にしていることから知り合いなのではという答えに行き着いた
「おじいちゃん、この人たちは?」
「んん? なんじゃお前たち言っとらんかったのか」
ゼウスは土下座の状態から立ち上がり膝についた土を払いながらアルフィアに目線を向けた。
一方、アルフィアはその問いに対し、感極まって気づいたら抱きしめていた。などと正直に言えるはずもなく顔を背ける。
「そうじゃなぁ...そこの
「家族?」
「あぁ家族じゃ、ベルと同じな」
ゼウスがそう言うと、ベルはザルドとアルフィアにチラリと視線を向ける。
それは何か窺い見るような、そして期待するような視線だった。
それにザルドとアルフィアは気づくと、ベルに向かい優しく微笑む。
ザルドは、ベルに近づき屈んで目線を合わせると、優しく頭を撫でた。
「爺の言う通り、俺たちはお前の家族だ」
ザルドの言葉にベルは嬉しそうに破顔した。
ベルの両親はすでに亡くなっている。
生れてすぐにゼウスに預けられ、二人で暮らしてきた。
ゼウスによって不自由なく育てられてきたが、両親がいないという事は、やはり寂しくはあったのだろう。
「あぁそれから」
すると、ゼウスが言い忘れてたという様に口を開く。
「アルフィアはな、お前の母親の姉で、正真正銘血の繋がった家族じゃよ」
その言葉にベルはバッとアルフィアは方へ向き直る。
今までベルの家族と呼べる存在は、祖父だけだった。
それが今日、二人も増え、一人は血の繋がった肉親だという。
ベルが驚くのも無理はない。
そこで話を終わらせておけばベルとアルフィアの感動の対面で締めくくられるであろう場面だが、ゼウスは顎に蓄えた髭をなでながら、明らかに揶揄う気満々といったニヤケ顔で言葉を続ける。
「そうじゃな、ベルからすれば
「【
飛んだ。
吹っ飛んだ。
突然発生した何か分からない謎の衝撃波により、ゼウスの身体が天高々と舞う。
ゼウスの体は十数メートルは吹っ飛んだ後、重力に惹かれ錐揉み状に回転しながら落下しドッシャっと鈍い音を立てて地面に激突した。
落ちたゼウスはピクリとも動かない。
「おじいちゃぁぁぁぁん!!?」
「はぁ....」
ベルは急に吹っ飛んだ祖父に思考がついていかずフリーズしていたが、少しすると何が起こったのか理解し絶叫する。
その様子を見ていたザルドは「やっちまったか」と天を仰ぐ。
そんな中、ゼウスを吹っ飛ばした張本人であるアルフィアは、ゼウスのことなど既に眼中になくベルへと近づく。
「ひっ!!」
それに気が付いたベルは恐怖に声を上げる。
知覚こそ出来なかったが、状況からゼウスを吹っ飛ばしたのはアルフィアだと察していたからだ。
近づいてくるアルフィアに、次は自分の番かと身を震わせる。
「ベル」
「は、はい!!!」
身を屈め目線を合わして名を呼んでくるアルフィアに、ベルは自然と直立不動になる。
返答を間違えれば祖父の二の舞になる、そんな直感からベルの首筋からは、冷や汗が滝のように流れた。
「お義母さんだ」
「....へ?」
「私を呼ぶときは、アルフィアお義母さんと呼べ。いいな?」
「え? でもおじいちゃんが、おばさんって....」
「いいな?」
「....ハイ、アルフィアお義母さん」
当然、選択肢・拒否権などなかった。
ベルのお義母さん呼びに「よろしい」と、アルフィアはベルの頭をなでる。
先ほどまで恐ろしくてたまらなかったのに、こうして頭をなでられると心地よく、安心してしまう。
そんな感覚に不思議とベルは胸が温かくなるのを感じた。
「それから、次から私のことを伯母さんなどと呼んだら拳が飛んでくると思え」
「ハイ、キヲツケマス」
だが、やはり怖いものは怖いのである。
「あ! それよりおじいちゃん」
すっかり頭から抜けていた祖父のことを思い出す。
「放っておけ、どうせすぐに起きる」
経験上、後数分もすれば何事もなかったかのようにケロリと起き上がると知っている。
この程度でくたばるなら、ゼウスは現役時代に何度死んでいるか分からない。
それほどアルフィアや他の女性に対してセクハラを試みて、何度同様の方法で撃退されたか知れない。
当時ならなら、ここにヘラへの
気にするだけ損、心配するだけ無駄なのだ。
「ベル」
「ん?」
「今日からよろしく頼む」
少し不安げに、だがこれからの生活に期待を込めてベルへと笑みを向ける。
それに対してベルは満面の笑みで
「うん、お義母さん!!」
そう答えた。
二人は手をつなぎ家の中へと入っていく。
その光景を見ていたザルドは、微笑ましいな、と笑い後ろへとついていく。
そして外には、倒れ伏すゼウスだけが残されていた。
恐らく、あと2、3話プロローグが続くと思います。
くどいとお思いかもしれませんが、もう少し本編はお待ちを.....
自分も早く戦うベル君を書いてみたいです。