勇者で聖女で庶民です!~従魔と一緒にお気楽冒険者生活~   作:槙麻貴(まき・あさたか)

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【 まえがき 】

■スローライフっぽいようなのんびり?した異世界転生ものです。転生で転性しております。
また、スローライフの皮を被ったご都合主義もりもりな物語です。

のんびりと更新する予定ですので、よろしくお願いします。

2020.09.17


プロローグ(1)

 地面に両足がつくと同時に、目の前の巨体は砂のように崩れていく。空中を漂っていた(おびただ)しい量の黒い粒は暖かな風に次々と乗り、空へと舞い上がっていった。

 

「終わった、よな……?」

 

 呟いたオレの声はしかしきちんと届いていたようで、後方から「ああ」という男の返事が聞こえてきた。「特に違和感はありませんので、終わりましたよ」という女性の声も続けて。

 

 ――終わったのか。そう実感したのはふたりの言葉があったからだ。

 

 約一年という時間だが、オレとしては長い旅立ったと思う。邪神討伐のためにオレを転移させた女神様により現代日本に帰れる道筋ができていたので、死ぬ気で頑張った。文字どおりに死ぬ気で。

 

 いやだってさ、明後日はバレンタインデーだったんだよ。チョコレートほしいじゃない。たとえ義理でもな! いやうん、本命なぞないことは大学生になったいまでも解るけれども、やっぱりバレンタインデーは特別なのだ。

 

 ああ、ようやく帰れると胸裡で安堵すれば、「あ……」という女性の――仲間のひとりたる聖女・ウィスタリカ――タリカの呟きが聞こえる。

 

「タリカ、どうかしたか?」

「ひ、光って……!」

「うん?」

 

 どこが光っているのかと辺りを見渡そうとすると、「お前が光っているんだ!」という男の――こちらも仲間のひとりである第三王子兼聖女の護衛・ユクセル――セルの大声が届いた。声を張り上げているというのにそれでも美形なのは、美形だからか。羨ましいなあ、本当に。いやいや、そうではなくて!

 

「おぉうっ!? なんだこれ――」

 

 横に逸らされそうな思考を慌てて戻して躯を見渡すと、確かに光輝いている。白い光がなぜか躯中を覆っていた。なんだよこれはという困惑ぎみな声を最後に、オレは意識を手離した。……のか? はっきりしていないから解らないが、驚きに目を見開いていたであろう男女を見た記憶もあるにはある。

 

 いや、いまだけは最後の記憶を探るよりも、もっと大事なことがあるだろう。いまいる場所は見たことがある場所なのだから。

 

 ――ここは女神様と出会った、「女神の間」と呼ばれる空間。その証拠に、目の前には女神様――超絶美人のスタイルがよい女性――がいる。銀髪碧眼の。朗らかな笑みを浮かべて。

 

「――女神様」

「はい。勇者・アリヒト。いえ、好川(よしかわ)有人(ありひと)さん。よく邪神を――私の妹を天界に帰していただきました。私の願いを叶えていただき、感謝します」

「いえいえ、そういう話でしたし。それに、女神様の計らいにより旅はスムーズでしたしね。お礼を言うのはオレの方ですよ」

「そうですか?」

「はい、もちろん」

 

 きょとんとする女神様に頷き返すと、女神様はまた朗らかに笑う。が――、いきなり頭を下げ出した。「申し訳ありません!」と勢いよく。

 

「んんっ!? えっ、どうされたんですか!?」

 

 なにか謝られるようなことをしたのかと考えるが、女神様に謝罪されるようなことをした覚えはない。異世界に拉致られたことはこの際なしだ。うん。ここで口を開いたら面倒なことになるから、心に留めておくだけだが。

 

「その、ですね……」

 

 恐る恐る顔を上げる女神様。上目遣いがとてつもなくかわいらしい。――ではなくて! 女神様の言葉をまとめると、現代日本に帰るための躯を失ったということだった。

 

 ――なんですって?

 

 聞き終えて絶句するオレはなにも間違っていないと思う。目前に佇む女神様が居心地を悪そうにしているだけで。

 

 ああ、うん、そうですね。まずは心を落ち着かせようか。ふうと息を吐き出すと同時に、これまでを振り替えることにする。もちろん、心を落ち着かせるためにね。

 

 

 

 

 

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