生まれ変わって突然記憶を取り戻した魔導具王は後悔する~世界中に散らばった前世の魔導具や古代遺物を取り戻すために冒険する~ 作:空雲ゆく
魔導具王、処刑される
簡素に組まれた高台へと、一人の男が両腕を縛られたまま歩かされていた。男が目指すあの高台は急造の処刑台だ。
男だって望んで殺されたいわけではない。
正直、逃げたいところなのだが、両脇には逃亡を防ぐためか騎士が控えており、縛られ体力も魔導具もない今の自分ではこの二人の騎士を倒して逃げるなど不可能だろう。
何か手はないかと最後のあがきとばかりに考えてみるもなにも出てこないまま処刑台へとたどり着いてしまった。
男の両脇にいた騎士の一人が離れていき、残ったもう一人の騎士に引っ張られるように男は処刑台の中央へと立たされる。
処刑台の周囲には男の姿を一目見ようと人だかりが出来ていた。最低でも数千人はいるだろうか。
悪趣味な見世物だが、全員が男の処刑を期待しているというわけではなさそうだ。かといって、助ける気もなさそうではあったが。
大半は男の存在そのものに興味がある者だろう。
そんな風に男が周囲を観察している間にも着々と処刑の準備は整っていく。
「……なにも言うつもりはないのだな?」
執行人である騎士から最後の確認と言わんばかりに問いかけられた。
今までならば男は騎士の問いかけなど無視していたのだが、この時ばかりは違った。
男が返事をしたのだ。
「一つあるぜ」
「なんだ? 命乞いか?」
「ある意味そうかもな。アンタらも気になっている物について語ろうと思うんだが?」
男の言葉に騎士はチラリと視線だけで、処刑を眺めている王に確かめる。このまま男をしゃべらせても良いのか? と。
無言で頷く王を見た騎士は男を一瞥すると腕を組む。
「好きにしろ。貴様の処刑は決まっていることだ。何を言おうとも逃れられると思うなよ」
「有り難いねえ……それじゃ、しゃべらせてもらいましょうか」
ゴホンゴホン、と喉の調子を整えた男は最大限に笑いながら口を開く。
皆が何を言う気なのか? と身構える中、男の大きく張り上げた声が響き渡る。
「俺が使っていた魔導具は捕まる前に世界中にばらまいたぁ!! 見つけた奴が好きに使うといい!!」
――……ワァアァァァァ!!!!
一拍、無音の時をおいて、見物していた観衆から叫び声が上がる。
「マジかよ!?」
「あの魔導具を俺たちが使えるのか!?」
「使えなくても売るだけで大金持ちだぞ!?」
「でも、世界中って言ったって一体どこに!?」
「俺の足跡を辿れぇ!! 俺が旅した国、街、村、道、その全てに置いてきた! 世界中を探して、探して、探しまくれぇ!」
「何をしている!! 早くその男を! 魔導具王を黙らせろぉ!!」
熱狂する見物人を見てマズいと判断した王は叫びながら手を上げ騎士に命令する。
それを受けた騎士はすぐさま剣を抜き振りかぶるが、
(はっ、もう遅え。俺の言葉はこいつらだけじゃなく世界中に届くだろうさ。今更、俺をどうこうしたってどうにならねえよ。精々苦労するんだな)
後ろで剣が奏でる風切り音を聞いたのが男の最後の記憶だった。
こうして
しかし、彼の最後の言葉により、国も種族も関係なく彼の遺産を手に入れるべく冒険と争いの時代が始まるのだった。
――一〇〇年後、光歴三三四年。
「なんで俺あんなこと言っちまったんだー!?」
一〇〇年経とうとも未だ世界を熱狂させている張本人――エヴァンジュ・ローディアスの記憶を思い出した少年が浜辺で頭を抱えていた。