swordian saga   作:佐谷莢

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聖域探索への旅路~カルバレイス探訪記~フランブレイブ+αとの邂逅

 

 

 

 二日間の行程を経て、連絡船はチェリク港へ到着した。

 これはカルバレイス地方へ近づくにつれ、何度となく口にしていたことなのだが。

 

「……暑い」

「ふん。鍛錬が足りんな」

「汗だく人間が何をおっしゃる」

「……」

 

 気候のことを調べた時点で砂漠での行動に支障がないよう装備を整えてきたのだが、それでも暑いものは暑い。日焼け防止にキャスケットも被っているため、暑さは倍増だった。過度に日焼けすると肌が火傷に近い状態になるため、ここは耐えるしかない。

 用意した陽射しよけ外衣に、耐暑用の譜陣を刺繍できればよかったのだが。刺繍の譜陣に譜力を込めるために必要な、砂状にした譜石が用立てられなかった。

 

「とっととバルックのところへ行って、帰るぞ」

「そういうわけにも行きません。私は、えーと……カルビオラオラとかいうものを探さないといけませんから」

「……カルビオラビオラだ」

 

 活気ある港を抜け、比較的静かな街中へ足を踏み入れる。

 当然ながらセインガルドにあるような民家とは大幅に異なり、風の通りがいいよう、かなり簡素な構造になっていた。

 おそらく、家の造りが簡素なのはもっと違う理由だろうが。

 

「話に聞く通り、生活水準は全体的に低いみたいですね」

「ヒューゴ様からあらかた聞いているようだが、ここの人間に善意を期待しても無駄だからな。バルックは広場に面した場所でオフィスを構えているらしい。広場を探そう」

 

 小さく頷いて、フィオレはリオンの先導に従った。

 やがて広場に出た二人は、井戸の向こうにそびえる一際立派な建物を目にすることになる。

 周囲の建物からすれば、圧倒的に浮き上がっていた。

 

「おそらくあれだな。行くぞ」

「まておまえら!」

 

 二人が足を踏み出しかけたその時、わらわらと現われたのは十人弱の子供たちである。

 先ほどまでは影も形も見当たらなかったはずだが、一体どこからわいて出たのやら。

 

「何か御用ですか?」

「おまえたち、外国人だな?」

 

 とりあえず尋ねてみたフィオレに、子供たちは各々装備していた竹箒や熊手を向けて威嚇を始めた。おそらくあれで、家の中に入り込んだ砂を払うのだろう。

 

「そうだと思わなければ……威嚇はありえませんね」

「外国人にオレたちの広場は通さないぞ!」

「さっさとかえれ、がいこくじん!」

「そうだそうだー!」

 

 とりあえず、この国の排他主義が子供たちにもしっかりと根付いていることがわかった。

 広場が通れないとなると迂回するしかないが、リオンは煩わしい、といった風情で竹箒や熊手を振りかざす子供たちを見やっている。

 装備品を振り回すだけならともかく、足元の砂を投げつけられた日には退散するしかない。

 

『どうしましょうか、この子達』

「そうですね。実力行使でどうにかしましょう」

「は?」

 

 リオンの視線を尻目に、フィオレは彼らの前に進み出ると人差し指を立てた。警戒態勢に入る子供たちになぞ眼もくれず、秘術を発動させる。

 指先に小さな譜陣が展開し、音素(フォニム)の集まる気配とともに形を成していき──やがて生まれたのは、大型の蒼い蝶だった。

 中空へ舞い上がった蝶は、きつい日差しを受けて羽根を煌かせながら、ひらひらと広場を舞い始める。

 

「ちょうちょだ!」

「何でいきなりちょうちょが……!」

「あんなの見たことねーよ」

「つかまえろ!」

 

 もはや、彼らの眼中に二人の姿は無い。

 子供たちの視線を独り占めにした蝶は、右へ左へのらりくらりと逃げ惑う。

 

「ささ、今のうちに」

 

 リオンの腕を引いて広場を横断したフィオレは、バルック基金オフィスと思しき建物前まで赴くと、広場に振り返って唐突に指を鳴らした。

 その瞬間、蝶の姿は掻き消え、子供たちの悲鳴とも歓声ともつかない金切り声が響いて、なんというかうるさい。

 子供たちが二人の姿を捉える前に、フィオレは正面扉のノッカーを掴んだ。

 

『今のって……』

「手品です」

 

 見たこともない鳥の頭を模したノッカーで人を呼ぶと、家政婦(メイド)らしい女性が応対に出る。

 ヒューゴ氏の使いであることを伝え、バルック氏との面会を求めると、女性は少々戸惑いながらも二人をオフィス内へと招きいれた。

 オフィスと言っても社員の姿は見当たらない。代わりに、吹き抜けの別室で応対に出たのとは違う家政婦(メイド)姿の女性が調度品の手入れをしているだけだ。

 ちょうど出払っているのか、もともといないのか。

 

「バルック様にお取次ぎいたします。少々、お待ちくださいませ」

 

 一方、応対に出た女性は二人を玄関に通すなり一礼して奥へ歩み去っていく。片手間に外衣を脱ぎながら、フィオレはぽそりと呟いた。

 

「……涼しいですね」

「冷房が効いているからな」

 

 一体外の気温とどれだけ違うのやら、汗をかいた体には少々肌寒い。

 キャスケットを取って額の汗を拭い、待つことしばし。

 

「お待たせいたしました、どうぞこちらへ」

 

 家政婦(メイド)の先導に従い、二人は奥の部屋……ではなく階下へと案内された。半地下の構造なのか、冷房に慣れた体には自然な涼しさが感じられる。

 応接用なのか、机や椅子が目立った一階とは異なり、地下は本棚がいくつも設置されていた。

 隙間なくびっちりと書物が詰め込まれているあたり、ここの主は知識人なのか、読書家なのか、あるいは暇人なのか。

 やがて階下奥の部屋にたどり着き、家政婦(メイド)が規則正しくノックを試みる。そして通された部屋の中に、目的の人物がいた。

 髪を後ろに撫でつけ整髪料らしい香油で整えた、三十代後半と思しき男性である。彼は浅黒く厳めしい顔に快活な笑みを浮かべ、事務机に座っての作業を中断して立ち上がった。

 

「ヒューゴ様の使いというから、誰かと思えばリオンじゃないか。久しいな」

「ああ。変わりは無いか」

『お知り合い……ですか?』

『そりゃあね。だってヒューゴ様の部下だし、坊ちゃんも一応オベロン社の人間だから』

 

 この口ぶりからして、シャルティエも知っている様子である。

 続けられる二人の会話をただ聞いていると、バルック氏の視線がフィオレに向けられた。

 

「ところでリオン、こちらのお嬢さんは?」

「……ヒューゴ様が新しく雇った部下だ」

 

 自分の剣術指南役と言わない辺り、彼の心の葛藤が感じられる。

 このまま黙っていても少年は自分の紹介なんぞはしないだろう。フィオレは一歩、前へ出た。

 

「初めまして、フィオレと申します。とある縁でヒューゴ様の配下となりました。以後お見知りおきを」

「そうだったのか。ようこそ、バルック基金本部へ。私はオベロン社カルバレイス支部長、バルック・ソングラムだ」

 

 自己紹介の後、彼は軽く笑みを浮かべてリオンを見やっている。

 

「てっきり、リオンが婚約者の紹介に来たのかと思ってしまったよ」

「なっ! 何を馬鹿げたことを……!」

 

 冗談八割、本音は二割と言ったところか。

 しかしリオンはそうとは受け取っておらず、顔を赤くして絶句してしまっている。

 普段は大人びた振る舞いが目立つリオンだが、こういったところは年相応だ。

 少年らしい純情さを目にして、フィオレは目元を緩めて苦笑した。

 

「……何が可笑しい」

「口に出すと侮辱になるので、黙秘しておきます」

『え? 何さそれ』

『可愛い、って思いました。男性にその言葉を向けるのは、侮辱に等しいと聞き及びましたので』

『あ~、確かに。それは言われたくないね、男としては』

「一体何を思ったんだ、白状しろ!」

 

 詰め寄るリオンの額を中指で弾き、彼が額を抱えて呻く間に。フィオレは手荷物から厳重に梱包してある封書を取り出した。

 さて手渡そうとした、その時。

 何かに耐え切れなくなったように、バルック氏は豪快な笑声を放った。

 

「いや、失礼。リオンが同年代に対して、こんなにも打ち解けてる様子を見るのは初めてでね。なんだか安心してしまったよ」

「打ち解けてなんかいない。この女がことあるごとにふざけるのが悪いんだ!」

「ムキになるのは図星を突かれた証拠だな」

 

 リオンはもちろん怒り出し、フィオレはフィオレで、何気ないその一言に脛を蹴られたような衝撃を負っている。

 同年代。リオンと。

 

「……バルックさん。私は、リオンと同年代に見えますか」

「見えるが、何を落ち込んでいるんだね」

「いえ。どうぞお気になさらず」

 

 本来なら、年齢より若く見られることを喜ぶべきなのだが……ここまでともなると、大幅にサバを読んでいるようで嫌だった。

 そんなことはさておき。

 

「ヒューゴ様からこちらを預かっております。お納めください」

 

 手にしていた封書を、事務机越しにバルック氏へと手渡す。

 彼が封書を受け取った瞬間、さっさと帰ろうとしたフィオレはリオンに袖を掴まれた。

 

「それでお前は、何をとっとと帰ろうとしているんだ」

「私は配達しろと言われただけで、返書を持ち帰れとか、そういうことは言われてません。どうせあなたはこれから直帰するんです。返事などがあるならば、あなたが持ち帰ってくれてもいいでしょう」

「おや、君はまだ用事があるのかね?」

 

 引き出しを開けて何かを探していたバルックに尋ねられ、フィオレはそのまま応じている。

 

「はい。こちらで少し、探し物をしようかと思いまして」

「探し物?」

「デザートローズと、カルビオラビオラという花です」

 

 それを聞いて、彼は不思議そうにフィオレの顔を見返した。

 

「……デザートローズは、鉱石の類のはずだが」

「語弊がありましたね、確かにその通りです。あともうひとつありますが、とりあえずはそのふたつを探そうかと」

 

 その言葉を聞いて、バルック氏は軽く顎へと手をやった。

 

「とりあえず、先にこちらを読んでしまいたい。少し待っていてもらえないか」

「……」

 

 ここで絶対に嫌だ、とは言いにくい。フィオレが了承を返すと、彼は事務机の呼び鈴に手をやった。

 待たせるのもなんだからと家政婦(メイド)を呼んで、手前の応接室に通される。

 

「デザートローズ、とはなんだ?」

「別名砂漠の薔薇と呼ばれる、見た目は薔薇の花弁の化石じみた鉱石です。砂漠の地下において地下水が蒸発した際、塩類が結晶化してそういった形になるらしいのですが、かなり繊細でしてね。破損したものを差し上げるわけにもいきませんから」

「なるほど。だから自分で探しに来たのか」

「そういうことです」

 

 その時、「失礼いたします」という声がかかり、家政婦(メイド)が入室してきた。

 盆の上に載せたティーセットを運んで、フィオレの傍らに佇んだ、次の瞬間。

 

「あ……!」

 

 がちゃん、と陶器同士が擦れ合う音が響き、盆の上からティーカップが転げ落ちる。

 なみなみと注がれた香茶が、フィオレに降り注──

 

「……ふぅ」

 

 とっさに盆を奪い取ったフィオレは、どうにか頭から香茶まみれになることを避けた。

 幸いにも盆は縁のあるもので、ティーカップから零れた香茶はしっかりと受け止められている。

 フィオレは固まっている家政婦(メイド)に無言で盆を突き出した。

 

「も、申し訳ありません!」

「……気をつけてくださいね」

 

 そそくさと、家政婦(メイド)はティーセットを抱えて立ち去っていく。

 ざまあみろ、とばかりあからさまな嘲笑を浮かべているリオンを見ないように、フィオレは立ち上がって本棚に歩み寄った。

 何の気なしに背表紙を眺めていて──ふと、眼に留まった一冊を手に取る。

 ぱらぱらと眺めていると、手持ち無沙汰になったリオンが近寄ってきた。

 

「他人の本棚を覗き見るなど、悪趣味だぞ」

「他人の目に触れるような場所に置いておく方が悪いんですよ」

 

 少年が何の気なしに覗き込もうとしたところを、わざと閉じる。

 ムッとした表情で睨んでくるリオンを見やり、フィオレは何をどうするべきかしばし悩んだ。

 

「見たいんですか? あんまりお勧めはしませんけど」

「……貸せ」

 

 フィオレが差し出した本を奪うようにして受け取ったリオンが、頁をめくる。しかし次の瞬間。

 

「~~!」

 

 彼は一瞬にして頬を朱色に染めると、乱暴に書物を閉ざした。

 そこを狙って、手早く本を取り上げる。

 

「……大丈夫ですか?」

「な、な、な、なんてモノを平然と見とるんだ貴様という女は!」

 

 フィオレが興味本位に閲覧し、リオンを真っ赤にさせているもの。それは無修正の春画(ピンナップマグ)だった。

 当然、頁の中では一糸纏わぬ、あるいはあられもない格好をした女性が蔓延っている。

 

「たかだか絵ではありませんか。しかもあんまり上手くない」

「たかだかって……!」

「ま、あなたには早すぎましたか」

 

 書物を本棚へ収め、リオンを促して速やかにソファへ移動した。

 その直後、問題の書物の持ち主バルックが現われる。

 

「失礼。待たせてしまったかな?」

「いいえ。おかげで面白いものを見せていただきました」

「?」

 

 にこやかなフィオレ、顔に上った血液がなかなか引かないリオンを交互に見つめ、彼は不思議そうにこそしているが言及はしなかった。

 彼は一通の封書を手にしている。

 

「ヒューゴ様からの通達、確かに受け取った。こちらを総帥に提出してほしい」

 

 封書を受け取ったフィオレは、そのままリオンに手渡した。

 

「じゃあこちら、お願いしますね」

「……」

 

 彼は釈然としない表情のまま受け取っている。

 

「ところで、フィオレ君……と言ったね。カルビオラビオラにデザートローズを探しに来たとあったが、アテはあるのか? もし良ければ、カルビオラビオラの群生地や、デザートローズを取り扱う業者を紹介しないでもないが」

「いいえ結構です。お心遣い、感謝いたします」

 

 にこやかに微笑みつつも、フィオレはばっさりと協力の申し出を断った。

 このバルックという人間には何の恨みもないが、それでもあのヒューゴの部下なのだ。協力してもらう代償として、フィオレの行動を逐一把握されても困る。

 断られたバルック氏はといえば、特に気を悪くした風でもなく、持っていた書物を開いていた。

 

「しかし、デザートローズか……願いを叶える石とも呼ばれ、心から望んだ願いを叶えてくれるという伝承があるのだな。宝石言葉は『愛と知性』」

「宝石言葉? お前、今鉱石と言っていなかったか」

「宝石だって元は鉱石、単なる石っころに過ぎませんよ」

 

 リオンによる横槍を、さらりとフィオレが流す。

 その様子をまたもや面白そうに見やっていたバルック氏は、リオンに険しい視線を向けられ、慌てて表情を改めた。

 

「それにしても、大丈夫かね? カルビオラビオラはこのカルバレイスに広く分布している花だからすぐに見つかるだろうが、デザートローズは専門の業者しか採れるところを知らないものだが……」

「そこはそれ。カルビオラも含めて、適当に散策してみます」

 

 マリアンへの贈り物とはいえ、どうしても手に入れなければならないわけではない。

 そんな気軽さから、フィオレは楽観的な見解を示したのだが。そのお気楽な発言に、リオンが眉をひそめている。

 

「お前、カルビオラにも行くつもりなのか? 今回の任務は単なる手紙の配送だろう、あまり時間をかけると叱責が来るぞ」

「何をおっしゃるんです。私はヒューゴ様にちゃんと休暇を願い出ていますよ。だから、しばらくは滞在できます」

『えー、フィオレずるーい。観光するなら坊ちゃんも誘ってくれればよかったのにぃ』

『別に観光なんてしませんよ。あくまで、任務のついでです』

「まったく、やりたい放題だな。お前は……」

「人間一人が使える時間には、限りがあります。限られた時間を有効に使っている、と解釈してほしいですね」

「あー。話が盛り上がっているところすまないが、いいかな?」

 

 リオンが呆れたため息をついたとき、バルック氏がなにやら咳払いをして、一枚の羊皮紙を取り出した。

 

「リオンが休暇届を出さなかったから、こちらで書類を用意しておく。彼女が行方をくらまさないようきっちり監督しろと、言付かっているんだが……」

 

 冷房から送られる冷風が、まんべんなく応接室にも巡る。

 冷風以上に冷ややかな視線を意図的に無視しながら、フィオレは内心で悪態をついていた。

 

(ちっ。あのヒゲオヤジ、ロクなことしやがらねえ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チェリクからよりもカルビオラに近い、大規模なオアシスにて。

 カルビオラビオラの群生地を見つけたフィオレは、しばし足を止めてその光景を見つめていた。

 

 

 

 ほぼフィオレのせいでカルバレイス滞在を余儀なくされたリオンの冷たい視線に耐えつつ、その日はバルック氏の厚意に甘えて、一夜の宿を提供してもらう。

 カルバレイス滞在中は宿代わりにしてくれても構わないとのことだったため、フィオレはリオンにバルック邸で待機するよう言い渡してから、明け方近くにチェリクを出た。

 無論、大陸の大半を占める砂漠を横断して行動するためである。

 そのために、昨日のうちから道具屋の主に嫌味を言われつつも、竹箒を一本購入しておいたのだ。この箒を何に使うのか、と言われればひとつ。移動手段である。

 かねてから、ひとつ試してみたいことがあったのだ。

 朝日が顔すら出していない早朝。誰もいない広場にて、眼前に箒を置き、フィオレは左手の甲を見やった。

 

『シルフィスティア。これに宿ってみてくれませんか?』

『や、宿る?』

『はい。この箒で空を飛びたいんですけど、できませんか?』

『……』

『シルフィスティア?』

『面白そうだね、やってみる!』

 

 ──そして、フィオレは数回の飛行練習の末に、なんとか箒での移動が可能となっていた。

 よく物語などで、魔女が魔法の箒を用いて移動する場面があったりするが、実はものすごく高度な技であることがここに実証されている。

 細い棒の上に跨ってバランスを取ることは相当難しいし、そしてこれを維持しなければならないのだ。

 跨り続けていることで、まるで初めて長時間の乗馬をしたかのように股が痛くなる。

 アクアリムスの協力もあってあっさりと質のいいデザートローズを手に入れたフィオレは、飛行による疲労に逆らおうとせず、目についたオアシスに降り立った。

 幸いにも常駐している現地人や流れの商人などはおらず、フィオレは人目もはばからず、ゆったりと休憩を取っている。

 その最中、歩き回っているところ──冒頭へと至った。

 ここへ至るまで、フィオレはこの大陸がいかに住みにくい地であるかを肌で学習している。

 明け方は肌寒いだけだったが、太陽の上がってきた日中は、フィオレが以前経験した砂漠越えよりも過酷なものだった。

 おそらくは、熱帯性の気候の問題だろう。フィオレが唯一知っていた砂漠は、ここまで蒸し暑くはなかった。

 曲がりなりにも飛んでいたため、徒歩よりはずっと距離を稼げているのだが……

 カルビオラビオラの群生地にて立ち止まったのは、その花の華麗さに驚いてのことではない。

 かの花はフィオレの想像よりも遥かに小さく、可愛らしくも花束(ブーケ)には向かない野の花だったからだ。無理やり花束にしたところで貧相になるだけである。植木鉢にするのは論外だった。ダリルシェイドの気候では育つはずもない。

 押し花にして栞に──マリアンは読書をする人間だっただろうか? 読書を頻繁にしない人間に栞を送ったところで、無用の長物にしかならないだろう。

 そもそも予定にはなかったとはいえ、せっかくリオンが存在を教えてくれたのだ。どうにか、生かす術はないかとその場で思案して。

 

「そうだ」

 

 フィオレはぽん、と手を打った。

 カルビオラビオラをポプリに加工して、デザートローズとセットで贈ればいい。そうと決まれば、採取を敢行する。

 十分なだけのカルビオラビオラを摘み取り、フィオレは本命の聖域探索にうって出ることにした。

 周囲に魔物が存在しないことを確かめてから、すぅ、と深呼吸の後に。

 誰もいないオアシスで、静かに旋律は紡がれる──

 

 

 

 紡がれた旋律はオアシスに響き、余韻を残して消えていく。

 何の反応もないことを残念に思いながら、フィオレがその場を後にしようとした矢先。

 すぐ傍の茂みが鳴り、思わずフィオレは飛び跳ねるように後退した。といえども、茂みの中から相変わらず気配は感じない。

 茂みはまるで、中で何かの生物が動き続けているかのようにして鳴り続いた挙句──

 唐突に茂みは割れ、ひょこっ、と頭のようなものが出てきた。

 

「……!」

 

 紫電の柄を握り、いつでも動けるよう警戒を強める。

 それは真っ赤な蜥蜴に見えた。大きさは一抱えほど。単なる現地の動物ではない証に、深紅の鱗の奥で小さな炎がゆらゆらと揺れている。

 興奮状態、あるいは戦闘体勢になったとき、その炎が鱗のひとつひとつを包むのではないかと容易に想像できた。

 こんな緑豊かなオアシスを炎上させてしまう危険性、更に炎上したオアシスの中でフィオレが焼け死ぬ危険性も否めないが、だからといって不用意には動けない。

 爬虫類独特の瞳がぎろぎろと動き、フィオレの行動を逐一監視しているようにも見える。

 ただ柄を握りしめ、警戒することしばし──膠着は唐突に終焉を迎えた。

 

『フィオレ、魔物ではありませんよ』

「え?」

 

 意識されなかった呟きが、音となって大気を震わせる。その瞬間、蜥蜴は、かぱりと口を開いた。

 

「……」

『そのコね、フランブレイブの使者。フィオレを召喚して聖域まで呼ぶにはちょっと遠いから、道案内するって』

 

 つまりシルフィスティアやアクアリムスは、フィオレを召喚して聖域へ招いていたと、そういうことか。

 柄から手を離し、改めて蜥蜴を見下ろす。深紅の鱗持つフランブレイブの使者は、くるりときびすを返し、再び茂みの中へ分け入っていった。

 

『フランブレイブの使者なら、名乗ってくださればよかったのに』

『それは無理だよ。守護者本体ならともかく、火蜥蜴(サラマンダー)みたいな下位精霊に精神感応は使えない』

『なら何故、アクアリムスはこの……火蜥蜴(サラマンダー)が魔物でないと?』

『敵意や殺気の類がなかったことも理由のひとつですが、何よりレンズの存在が感じられなかったので』

『アクアリムスは、生物の体内にレンズの有無がわかるのですか?』

『創生より、私はすべての命の母たる海と共に在ります。命にとって、レンズなる彗星の欠片は異物でしかありません。ですから、そういった不純物を感じ取ることは可能です』

 

 なるほど、と頷く。フィオレとしては、相手が生物でさえあれば血液という液体を通して探ることができるのでは、くらいにしか思っていなかった。ちなみに根拠はない。

 のてのてと歩いていく火蜥蜴(サラマンダー)が、やがてオアシスから出て行く。

 日差しの厳しい砂漠を歩いていくことしばし。途中運悪く出会ってしまった魔物との戦いに、火蜥蜴(サラマンダー)は不参加だった。

 かといって先に行くような真似はせず、フィオレが戦っている様子を、じっ、と見つめているような風情である。

 生意気にも火炎弾を放ってくるハゲワシを切り伏せ、返す刀で三つ首の毒蛇をなます斬りにすると、火蜥蜴(サラマンダー)は再び歩み始めた。

 どうでもいいが、こんなにも遅い歩みで、一体どうやってフィオレのいる場所までやってきたのだろうか。あの歌を紡いでから、それほど時間は立っていなかったというのに。

 

『ボクたち守護者や下位精霊にとって、地表での距離ってあんまり関係ないからね。今はフィオレの足に合わせてるだけだよ』

『地表での距離は、関係ない……?』

『そ。ボクもアクアリムスも、力と幻の姿だけ貸すって言ったでしょ? 本体は基本的に聖域から動けないからね』

『つまり、力を貸してくれるときだけ私のところに来てくれているということですか。どうやって移動しているんですか?』

『うーんと、ね……』

『この星の至る所には、特殊な道が張り巡らされています。その道を使えば、私たちは一瞬にして移動することができる、という解釈でよろしいかと』

 

 アクアリムスの説明にふむふむと頷きつつも、歩みを続ける。

 太陽の動きからして、二時間ほど経過しただろうか。すっかり汗だくになったフィオレの眼前にそびえたったのは、カルバレイス地方のほぼ中心地にある火山の一角だった。

 ここまで来ると、カルビオラよりジャンクランドという貧民街に近い。ここから帰るとなると徒歩では一日以上かかるだろうが、左手の竹箒で何とかすることにする。

 

「ひょっとして、これから登山しないといけないんですか?」

 

 それを尋ねると、先導していた火蜥蜴(サラマンダー)がぐるり、とフィオレの顔を見た。

 その口が、かぱ、と開かれるものの、先ほどと同じく、何を言っているのかはまったくわからない。音らしい音も聞こえず、フィオレに蜥蜴の読唇術など使えない。

 だからなのだろうか。シルフィスティアがタイミングよく訳してくれた。

 

『我らが太守──フランブレイブのことね。今からフィオレを召喚するって』

 

 彼女の声が聞こえ、理解した直後。フィオレの視界はやはり一変した。

 眼前にあった火山が消え、どろどろの状態でボコボコと不吉な音を奏でる溶岩が、すぐ傍で垂れ流されている。

 あまりの暑さに、先ほどまで汗だくだったフィオレの体から汗という汗が消えた。雫、水分が綺麗に蒸発してしまったのである。

 軽く額を拭ってみれば、乾いた汗の残した結晶がざりざりと皮膚を滑った。

 フィオレが立っていたのは、溶岩の海に孤立した小規模の島である。

 そんな島の中央に、赤と橙が混ざったような光が漂っていた。

 一点に凝縮された光から守護者が姿を現す。そこまではシルフィスティアたちと同じだったが、現われたのは、それまで人に近い形をしていた彼女たちと一線を画した姿だった。

 かろうじて人型ではあるものの、人の姿とは程遠い。

 巨大な体は全身が甲殻に包まれており、かろうじて角が生えている辺りが頭だとはわかるものの、どんな表情をしているのか、まったく検討がつかなかった。

 その背には、シルフィスティアと同じように翼がある。正確には翼のようなもの、であって、形状も彼女のように可愛らしいものではない。

 体を包む甲殻と同じようなもので構成されているそれは、確かにフランブレイブの体を中空に浮かせているものの、果たしてその翼を使ってのことなのかはまったくわからなかった。

 

「あなたが、フランブレイブ……!」

『如何にも』

 

 わかっていながら思わず問いかければ、無骨な念話が帰ってくる。

 声の質としては人間年齢で五十代と言ったところか。ヒューゴ氏並に渋くて落ち着いた声だった。

 

『我が名は、フランブレイブ。この世界の焔を司る者だ』

「契約に際して、私の質問に答えていただけますか?」

『……』

 

 どうしたことだろうか。てっきり肯定が返ってくると思っていたのに、フランブレイブの返事はない。

 降り積もる沈黙に辟易し、フィオレはとうとう口を開くことにした。

 

「シルフィスティア、アクアリムス。両名に告ぐ」

『え? 何?』

「私に召喚されてください」

 

 フィオレの求めに応じ、新芽にも似た緑が、大海原の蒼がそれぞれ光となって瞬く。

 輝きから、彼女たちの幻が現われた。

 

『あ、わかった! そゆことだね』

「フランブレイブ。私はあなたが何を思って沈黙しているのかわからないし、その理由を知っていい資格があるとも思っていません。でも、同じ存在の彼女たちにならば話せることではないかと推測しています。相談みたいなことはできませんか? 必要なら、私を外してくれてもかまいません」

『如何しました? あなたとて、この場にフィオレを召喚したのは、伊達や酔狂でもないでしょうに』

 

 アクアリムスの質問に応じるように、フランブレイブは──あるのか否かはまったくわからない──重い口を開いた。

 

『……来訪者が気分を害することを覚悟で尋ねよう。シルフィスティア、アクアリムス。お前たちは本当に納得しているのか』

 

 フランブレイブの問いに、アクアリムスは沈黙し、シルフィスティアは可愛らしく首を傾げている。

 

『納得って、何に?』

『契約のことに決まっている』

 

 その言葉を聞いて、アクアリムスは物憂げな表情のまま、フランブレイブに尋ねた。

 

『……あなたは、フィオレを認めないということですか?』

『彼女に認められたとはいえ、この者が私利私欲に走らぬという保障がどこにある!』

 

 フランブレイブの激情に駆られた念話が、フィオレの脳裏にわんわんと響く。

 守護者にも感情があるらしい、とどこか違うことをぼんやりと考えていたフィオレは、ただその会話を静観した。口を出したところで、ややこしくなるだけだからだ。

 今のところわかっているのは、もともとフィオレ自身でさえ促されたものにも関わらず、守護者たちによる契約云々は、全員が全員望んでいることではない、ということである。

 

『フィオレはボクたちと同じ存在と接触したことがある。契約を交わしてその力に触れたけど、力に溺れたり暴走させたりなんてことはなかった。何が不満なのさ?』

『それは誓約の名の下に保たれた均衡だ。此度は状況が違う。来訪者には何の制約もない。我はこのカルバレイスの地において、来訪者がお前たちの力を使ったことを感じ取った』

『シルフィスティアに無機物へ宿るよう頼み、私に地下水脈の場所を尋ねただけではありませんか。命を悪戯に害するような暴力行為も、あなたの案じた私利私欲の行動でもない。それに何の問題が?』

『わからないのか? 我らは守護者ぞ。そのような瑣末時にいちいち助力を乞われては叶わん。来訪者よ、汝は我らを何だと心得ているのか!』

 

 突如話を振られ。フィオレはつい思ったとおりのことを言ってしまった。

 

「この世界のあらゆる自然を司る守護者、そして、私がここにいる理由を作り出している者だとも思っています。要するにフランブレイブは、私の用事で使われることがイヤなんですね?」

 

 フィオレの指摘に、それまでの剣幕はどこへやら。フランブレイブは急に押し黙ってしまった。

 代わりにシルフィスティアが、アクアリムスがなるほど、と言わんばかりに首肯を繰り返している。

 

『ああ、そうだね。要約すると、確かにそうなるよね』

『フランブレイブは火の守護者。野営などの火種を要求されることは多々ありそうですね。確かに、その度に呼び出されてはいい迷惑でしょうが……』

 

 当の本人そっちのけで、守護者二柱による好き勝手な談義は続く。

 

『でもー、それってやっぱりフランブレイブの我侭だよね。だったら何に関してなら力を貸すのさ、敵の殲滅とか? それは暴力や野蛮以外何でもないよね』

『契約を交わすことによって、フィオレは確かに欲しい情報を得ます。最終的には全てを知ることができるでしょう。しかし私たちは、私たちの都合で彼女に望みを託すという勝手な期待を押し付けているんです。その代償だと思えば、容易いことではありませんか?』

『……』

 

 彼女たちによる説得は、フランブレイブに大きなため息をつかせた。

 それも束の間、今度はフィオレに向かって話しかけてくる。

 

『来訪者よ。汝は納得しているのか? 我らは汝を、情報という餌でいいように使おうとしているのだぞ』

「私は欲しい情報を得るために、あなた方と交渉しているに過ぎません。私もあなた方を利用しようとしているんです。それをお忘れなく」

 

 それを伝えると、フランブレイブは組んでいた腕を解いた。

 直後、その腕が一閃される。炎が地面を走り、瞬く間に炎による魔法陣が完成した。

 同じ地表に立っているフィオレに詳細はわからないが、譜陣と同じく、幾何学的な文様が連なって描かれていることくらいはわかる。

 フランブレイブとの契約に必要なものなのか、あるいは──

 

「シルフィスティア、アクアリムス。ありがとうございました」

『もういいの?』

「後は、私たちの問題のようですから」

 

 フィオレの意思に応じ、彼女らの姿が掻き消える。二人きりとなったその場において、フランブレイブが再び口を開いた。

 

『感謝を捧げよう、来訪者。千年の時を経て再び彼女らと(まみ)えたことを』

「私は何故あなたが契約をためらうのか、知りたかっただけです。それを尋ねることができるほど事情に精通していませんからね。それで、契約はどうしますか? どうしても嫌なら出直します。あなたの所在も判明したことですし」

 

 素っ気ないその言葉に、フランブレイブは角を揺らしている。

 ひょっとするとかぶりを振っているのかもしれない。

 

『本来は我らが契約を乞うところ、そのようなことをして後であの二人に何を言われるかもわからん。ただその前に──』

「その前に?」

『汝の実力を見せてもらいたい。我が炎を御しきれるのか、この目で確かめたいのだ』

「……それはかまいませんが、具体的には何をすればいいのですか?」

 

 何となく予想はついていながら、フィオレはおそるおそるそれを尋ねた。

 まるでそれに答えるかのごとく、炎の魔法陣が強く燃え盛り──唐突に炎が失せる。

 そして現われたのは、真紅の鱗に覆われた蜥蜴のように見える、生き物だった。

 先ほど道案内をしたサラマンダ-ではない。何故なら。

 

『簡単なことだ。我が下僕を、この場で調伏してもらいたい』

 

 真紅の鱗のひとつひとつに炎が宿っており、フィオレとは比べるのも愚かしいほど巨大なその体は、先日討伐したレイクドラゴンにも似た姿を有していたからだ。

 つまり、フランブレイブの僕であるこのドラゴンと、戦って勝てという。全然簡単なことではない。

 溶岩がゴボゴボッ、と唸る音を聞きながら。フィオレは半眼になって呻いた。

 

「また七面倒くさいことを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日中において、太陽は殺人的な日差しを容赦なく浴びせてくる。

 日が落ちれば凍死することも珍しくない、ある種の生き物を除いて非常に暮らしにくい土地、カルバレイス。

 そんな苛酷な環境でも、生まれ育った子供たちは元気だった。

 

「わあ、なんだあれ!?」

「でっかい鳥ーっ!」

 

 バルック基金オフィスの、応接室にて。

 合意の上とはいえフィオレに置き去りにされたリオンは、バルックの許可を得て借りた書物に視線を走らせながらも、その姦しい歓声に眉をひそめた。

 すぐそばが広場だというせいで、子供たちが子供らしく遊び回り、時に通りかかる旅人に罵声を浴びせて追い払うその様子は、事細かに聞こえてくる。

 それは日中でも、日が暮れようとしている今も、変わらなかった。

 

「……明日も、こんなところで休暇を無駄に潰せというのか」

『暇でしたね。やっぱり、明日は僕たちも出かけましょうよ』

「……どこに行けというんだ。こんなところを無目的にウロウロするくらいなら、本でも読んでたほうがましだ」

 

 昨夜のうちに決まったことだが、フィオレはあくまで自分ひとりでの行動を望み、カルバレイスを発つ予定の期日までには戻ってくると約束している。

 不測の事態があった際、ヒューゴ氏から自分へ問われるだろう責任を理由にリオンがそれを渋った際、彼女は言った。

 

『私があなたの信用に足る人間でないことは重々承知しています。だから、私の腕を信用してくださいませんか? 必ず帰ってくるとの約束に、これをお預けしますから』

 

 そう言って、フィオレは定期連絡船の無料招待券の半券と財布を渡している。

 これがなければカルバレイスで生きていくことも、出て行くこともできないのだから納得しろということらしい。

 それを受け取って、リオンは彼女の単独行動の許可を出したのだが──

 

「鳥じゃない!?」

「魔女だー!」

 

 回想をしていた彼の思考は、甲高いその声でぶっつりと途切れた。

 

『魔女って……何が出たんでしょうね?』

「僕に聞くな」

 

 あまりに騒がしいその声に、そして「魔女」という単語に興味を持って、広場に面したベランダへ向かう。

 沈みゆく夕日に照らされ、広場に集まる子供たちは揃って天を仰いでおり、その口は皆、意図的に揃えたが如くポカンと開かれていた。

 輝く橙の色に染まる空の彼方に、確かに何かが飛行している。

 シルエットからして、大型の鳥類とは程遠い。そもそも羽ばたきのような動作がなく、ただ飛んでいるだけなのだ。

 大空を舞う特殊な影は、広場を難なく通り過ぎ、やがて街外れの方角へと消えていった。

 

「何だったんだろう、あれ!?」

「あっちの方に行って……あ! 降りた!」

「行ってみたいけど、もう暗くなっちゃうよ」

「手伝わねえと、夕飯抜きだもんなー……」

 

 雑談を交わしながら、子供たちはぞろぞろと自分の家へと帰っていく。

 その様子を何の気なしに眺めていると、不意にシャルティエがこんな提案をしてきた。

 

『ね、坊ちゃん。行ってみませんか? 街外れ』

「行ってどうする。魔女とやらの正体を確かめるのか」

『単なる見間違いじゃなさそうですし、もし新種の魔物とかだったらおちおち休んでいられませんよ。それに、マリアンへのお土産話にもなるじゃないですか』

 

 確かに、彼女に「カルバレイスはどうだったか」などと尋ねられ、ずっとバルック基金に引きこもっていた、では話にならない。

 リオンはバルックに外出の旨を告げると、本日初めて外へと出た。そして、シャルティエと共に街外れへ至る。

 チェリクそのものからは街外れでも、港から程近いそこは同じような建物が並んでいた。おそらくは、貿易商人たちの所有する倉庫だろう。

 暗がりは多いが、整然としているおかげで探索はしやすい。怪しい影はないかと、リオンが周囲に視線を走らせていた、その時。

 

「……リオン?」

 

 ここ最近、すっかり聞き慣れた声を耳にして、彼は素早く振り返った。そこには、なぜか竹箒を担いだフィオレの姿がある。

 どこか不機嫌そうにしている彼女の姿は、ひどく汚れていた。普段は整えられた髪はばさばさにほつれ、自然体のまま放置されている。

 よく見ると髪の端がわずかに縮れており、外衣のあちこちに煤のようなものが見受けられた。

 

「何があった?」

「苦戦しました」

 

 ぼそりと、それだけを言って。フィオレは軽く眼を伏せたかと思うと、リオンの脇を通り過ぎて、すたすた歩き始めた。

 

『ちょ、ちょっとフィオレ!』

「何ですかシャルティエ」

『何で竹箒なんか担いでるのさ!? まさかそれに乗って広場の上とか滑空してないだろうね!?』

「ほう。あなたは人間が箒に跨って空を飛ぶことができると、本気で思ってるんですか。それとも天地戦争時代はそんなことが可能だったんですか?」

 

 言いながらも、彼女は担いでいた竹箒を倉庫の脇に投げ捨てている。

 リオンはフィオレが答えたことを復唱し、再度尋ねた。

 

「おい。本当にそれに乗って飛んだりしてないだろうな」

「あなたまで。人間が箒に乗って空を飛べるなんて……」

「誤魔化すな。人の質問に答えろ」

 

 リオンの追求を受けて、フィオレはその場に立ち止まる。

 振り返ったその顔には呆れと、皮肉げな笑みが浮かんでいた。

 

「よっぽどバカにされたいらしいですね」

「違うなら違うと答えればいいだろう。何故それをしないんだ。違うと答えれば、嘘になるからじゃないのか」

「どうして私が、虚言をためらわないといけないんですか?」

「そんなこと僕が知るわけないだろう」

 

 いつになくしつこく食い下がってくる少年をわずらわしげに見やる。

 事実を告げることは簡単だが、問題はその後だ。事実をすべて告げてやるわけにはいかない今、どうやって納得させたものか……

 

「仮に私が箒に乗って空を飛んでいたとして。そんなこと知ってどうするんです? ヒューゴ様に、あなたが雇ったのは魔女もどきだから解雇しろとでも進言しますか」

「別にどうもしない。お前の言動におかしなところがあるから、はっきりさせようと……」

「私の言動が怪しいのは、今に始まったことでもないでしょうに。何か企みがあるとお疑いでも?」

「……僕が、お前のことを知りたいと思っちゃいけないのか」

 

 どこか拗ねたような物言いが、やけに笑いを誘う。

 作り物である皮肉げな笑みが瓦解したことを知って、フィオレは彼に背を向けた。

 

「あなたが何を思おうが、それはあなたの自由です。ただ私には、その願いを叶える義務はない」

『……そうだ、フィオレ。質問変える。なんで竹箒なんか担いでたの?』

「私が昨日購入したからですが」

『何であんなの買ってきたのさ?』

「ちょっとした実験です。内容は他言できません」

 

 のらりくらりと、シャルティエの追及を逃れていく。やがて彼もまたあきらめたのか、まったく違う質問を取り出してきた。

 

『そういえば、見つけられた? カルビオラビオラとデザートローズ』

「ええ。この通り」

 

 そう言って、フィオレは腰に提げていた布袋から小型の花を一輪と砂礫の結晶をつまんでいる。

 リオンの手に乗せてやると、彼らは珍しがってしきりに眺め回した。

 

『へえーっ、これが! どこで見つけてきたの?』

「カルビオラビオラ──こっちの小さな花は、ここから程近いオアシスに群生していました。デザートローズは干上がったオアシス──地下水脈があって、地下水が地面ににじみ出ていて、尚且つ蒸発しやすいところを手当たり次第当たってみたんです」

「……どうやって探したんだ、そんなところ」

「ダウジングで」

『だ、ダウジング?』

「地下水脈を探すために発展した、人間の潜在能力を具現化する技術……だったか。よくそんなことを思いついたな」

「知識があったからやってみたら、たまたまうまくいった──という表現が妥当ですね」

 

 記憶障害なのに、という意味合いがひしひしと感じ取れる彼の言葉を、フィオレはまたもや最もらしく回避する。

 実際は、確かにダウジングを試みようと即席で振り子を作った。

 しかしそれだけで探すのはあまりにも規模が広すぎたため、アクアリムスに地下水脈の存在を教えてもらう、という裏技を展開している。

 暮れなずむ街の中、やがて彼らはバルック基金オフィスへの撤収を決めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 灼熱の太陽が、カルバレイスの大地をじりじりと焦がす。

 バルック氏の許可を得て、平たい屋根の日陰部分にカルビオラビオラを干したフィオレは、手団扇で扇ぎながら室内へと戻った。

 その瞬間から涼風が吹きつける。

 カルビオラビオラにデザートローズの採取、そしてフランブレイブとの契約を終えたフィオレはバルック氏から借りた本を片手にポプリを作ろうとしていた。

 

「えーと、花を乾かして、香油を作って、その後は……」

 

 階段を降りながら「自家製ポプリの作り方☆」と銘打たれた本の内容を読み進める。やがて次に必要な作業は、花が乾くまで待つことだと判明した。

 本来ポプリとする花は、滅菌消毒が目的ゆえに一ヶ月は時間をかけなければならないらしいが、カルバレイスの気候なら三日の日差しはセインガルドの一ヶ月分に相当するだろう。

 本棚へ資料を戻したフィオレは、あてがわれた部屋へと戻った。

 ここチェリクで購入した小箱に収めてあるデザートローズを確認する。

 水に触れればあっというまに溶解する儚い鉱石は、水分を含んだ風に当てても同じことが起きるらしい。カルバレイスなら屋外でも平気なデザートローズだが、セインガルドでどうなるかはわからない。

 綿に包まれ、厳重に梱包されたデザートローズが採取した当時と同じ形を保っていることを確認し、再び蓋を閉める。

 そしてフィオレはいきなり暇になった。

 このところ、といっても三日ほどではあるが、行っていない剣術指南を誘ってみようか、とリオンを探す。

 オフィス内を歩き回っていると、かの少年剣士は三人の家政婦(メイド)に囲まれ、お茶を振舞われていた。

 

「カルバレイス産のお茶はとてもまろやかなんですよ。ミルクをたっぷり使うものが多くて……」

 

 否。お茶を振舞われているというより、幾種類もの包みを広げているところを見ると、試飲をして誰かさんへのおみやを選別している、といった風情か。これは邪魔できない。

 それならば、と。フィオレは彼に声をかけることもなく、書類を見比べていたバルック氏に外出の旨を伝えて、オフィスを出た。

 玄関を開けた直後、乾いた熱風が吹き付ける。日差し避けに持参したキャスケットを装備して、フィオレはすぐ眼前の広場へと赴いた。

 ダリルシェイドにあるような公園とは大幅に違い、しつらえた遊具どころか、ふんだんな草木もない。ただ、共用らしい大きな井戸と、何もない砂地が広がっているだけだ。

 フィオレの予想に反して、人はいない。てっきり一昨日のように子供たちがわらわらと現われるのではないかと思っていたのだが、家事手伝いか何かなのか、広場は静寂に包まれていた。

 広場の端にあった木々の下──ちょうど陰になっている場所へ移動し、根元に座り込む。

 そしてフィオレはコンタミネーションを発動し、シストルを取り出した。

 指慣らしを終えて、軽く首を回す。軽い深呼吸、数節の伴奏を経て、フィオレは以前と同じように喉を震わせ始めた。

 何かに夢中になっている時間ほど、無意識になりやすい時間はない。人は常に思考する生き物であり、フィオレにとって無意識の時間は睡眠の次に癒しだった。

 日頃何かと考え込むことが多い頭を空っぽにして、自分の好きなことだけに集中する。

 そんな時間が欲しくて他人の迷惑省みず、思う存分趣味に走っているのだが、今回は違う目的も有していた。

 幸いなことに、これまでダリルシェイドではこの行為を一度として咎められたことはない。最近では「次はいつライブをするのか」と複数の人間から尋ねられるほど、それなりに好評なのである。

 ならばこのカルバレイス地方唯一の港町チェリクでは、どんな反応が返ってくるのか。

 取るに足らない他国人の戯れと聞き流されるかもしれないし、うるさいと石を──否。砂を固めた泥団子や、一掴みの砂を投げられるかもしれない。

 ダリルシェイドにおいて、一部の人間からは野蛮人とまで評されているカルバレイス人は、あちらで受けている音楽を果たして解するか否か。

 ストレス発散を兼ねた実験だったが、このまま人がいないとなると単なるストレス発散で終わりそうだ。

 それならそれでいいかと無意識に考えていた、その時だった。

 広場の向こう側から、何人かの子供たちが現われる。

 彼らは口々に何かを言いながら、フィオレのほうへと駆けてきて……ある一定の距離まで差し掛かると立ち止まった。

 無言のまま顔を見合わせ、おずおずと近寄ってくるその様は野生動物じみていて結構面白い。ちなみにフィオレは歌唱中だ。そのまま謡い続け、最後の伴奏まできっちりと終える。

 手を止めて大きく息を吐き出し、遠巻きにフィオレを見ている子供たちに向かって言葉をかけた。

 

「こんにちわ」

 

 正常な会話の基本は挨拶である。

 彼らは今しばらく逡巡していたものの、ぱらぱらと近寄ってきて「こんにちは」と口々に返した。

 

「使わせてもらってますよ、広場。誰もいなかったのでね」

 

 文句がないことをいいことにまたもやシストルをかき鳴らし、違う曲を謡いだす。

 彼らは戸惑ったように突っ立っていたが、やがてフィオレの周り──日陰になっている場所を集まり、行儀よく座っていった。

 子供たちを周囲に置きながら、フィオレは二曲目を思う存分熱唱している。

 その曲を終えて一息ついたところで、子供たちの中でも特に幼い少女が、フィオレの足元へとやってきた。

 

「おねえちゃん、ぎんゆうしじんってひと?」

「いいえ、違います。でも、よくそんな言葉知ってますね」

「前にもきたの。赤いひらひらした服で、おっきなおぼうしにおっきな羽をつけた、ぎんゆうしじんのおにいさん」

「おもしろいお歌だったよねー」

 

 少女たちは顔を見合わせてくすくす笑っている。

 面白い歌というのは旋律がコミカルだったのか、あるいは歌詞が面白おかしい内容だったのか。

 

「ねえちゃんの歌はキレイだよな」

「もっかい歌ってくれよー。さっきの、あの蒼い大空は……ってやつ」

 

 少女の一言がきっかけで、一昨日の態度はどこへやら、子供たちはわらわらと寄ってくる。

 現金なもんだと苦笑しつつ、フィオレは珍しくリクエストに答えた。

 

 ♪ あの蒼い大空は誰のもの きっと、誰のものでもない……

 

 

 

 

 歌唱を終えたフィオレが、一息ついて軽く辞儀をする。

 思いの他静かに聴いていた子供たちは、さかんに拍手を重ねてくれた。

 

「さて……私は帰ります。それでは」

 

 図らずも実験は終わったのだ。

 年端もいかない子供たち、というひっかかりはあるものの、大人が現われなかったのだからしょうがない。

 

「もう帰っちゃうの?」

「一緒に遊ぼうよ!」

 

 年の頃は十歳程度か、そんな少年少女にシストルを抱えていない手を引かれて辟易する。

 振り払うのも何だが、この暑い中到底応じる気にはなれない。前屈気味になりながら、どうしようかと悩んでいた、その時。

 

「えーい!」

 

 幼い掛け声、後に頭が涼しくなる。

 いきなり視界が開けたかと思うと、少し離れたところで誇らしげに少年が腕を掲げていた。

 その手には、見慣れたキャスケットが──

 

「って、何をいきなり窃盗に走っているんですか。返しなさい!」

「へっへーん。返してほしかったら、こっこまっでお~いで~!」

 

 少年は実に素早くその場を離脱しており、離れた場所で挑発的にキャスケットを振っている。

 汗のにじんだ額を拭い、フィオレはシストルを背中へと押し付けた。

 

「そこで立ち止まっていてくれるなら、動きますけどね……」

 

 大きめのキャスケットを取り払ったところで、フィオレの素顔が炎天下にさらされる。

 とりあえず少年のいるところまで歩いて近寄るも、少年や彼を取り巻く子供たちは歓声を上げて逃げてしまった。

 広場の外へは出ていないため、ちょうど鬼ごっこのような形になるのだろうか。

 

「そこの少年! 速やかに私のキャスケット、返しなさい!」

「や~だよ~、っだ!」

 

 とりあえず呼びかけてみるも、予想通り効果はない。

 そこへ、先ほどの少女たちが歩み寄ってきた。

 

「ゴメンね。コグにいちゃん、おとなをからかうのが大好きなの」

「……あなたのお兄様でしたか。どうにかなりませんか?」

「ならないの。ぎんゆうしじんのおにいさんも、おぼうしを取られて走りまわったの」

「際ですか」

 

 童心に返って付き合ってやるのが人情というものだろうが、生憎暑さのせいでそこまで余裕がない。全力で取り返して、帰ることにした。

 その場で軽く屈伸をし、足の筋を伸ばす。軽く伸びをしてから、キャスケットを持つ少年に照準を定めた。

 

「返さないというなら、実力行使です」

「へへーんだ。やれるものならやってみ……えっ!」

 

 少年としては、相手は他国人にして慣れない砂地だから、きっと遅いはずと踏んでいたのだろう。

 しかし、フィオレは足場がどうであろうと全力疾走の仕方を知っている。

 戦いながら、の場合は集中力が続かないためあまり使えないのだが、ただ走るだけならまったく問題はない。

 予想外の速さに呆然とする少年の手から、フィオレはあっさりとキャスケットを取り返した。

 

「じゃ、私はこれで……」

「く、くっそー! 皆! 今度はこのねーちゃんがドロボーだから捕まえるんだ!」

「ええっ!」

 

 いつからそういう話になったのか。

 しかしコグ少年は子供たちグループにとってのリーダー的存在の様子である。子供たちは嬉々としてフィオレに群がってきた。

 ここでバルック基金オフィスに逃げ込んだら、やっぱり卑怯者になるだろうか。

 とはいえ、実行してこの子供たちをオフィスに招待してやるわけにもいかない。フィオレは広場の中を限定に逃げた。

 

「うわー、あのねーちゃん速えー!」

「怯むな! 挟み撃ちにするんだ!」

 

 本当に挟み撃ちにしてくるからすごい。

 追いかけるグループがやがて二分化し、追いかける側と待ち伏せする側に分けられる。

 その手際は見事と思いつつも、フィオレは待ち伏せするグループへ突撃を試みた。そして、その手前で真横に跳ぶ。

 勢い余ってヘッドスライディングしたフィオレの背後で、急には止まれない追いかけグループが見事待ち伏せグループと衝突した。

 

「……」

 

 起き上がると、背後では蜂の巣をつついたような騒ぎになっている。

 わんわん泣き出す子供、転んだ状態から起き上がり、砂を払う子供払ってやる子供、頭から砂地に突っ込んでジタバタしている子供と、多種多様である。フィオレ自身も、砂まみれだ。

 口に入った砂を吐き出しつつ、キャスケットを頭に載せる。とりあえず子供たちを放置して帰る、という選択はなしだ。

 砂を払っているだけの子供は置いておくとして、擦過傷が見られる子供数人を連れて、井戸へと向かう。

 傷口を冷たい水で洗い流すと、まだ幼い子供たちはぴーぴー喚きだしたが気にしない。代わりに、桶一杯に溜めた井戸水の中へ左手を突っ込む。

 

「命よ健やかであれ。心安らかな癒しを、あるべき姿を」

 ♪ Luo Rey Qlor Luo Ze Rey Va Ze Rey──

 

 まっさらな砂地に光の譜陣が敷かれ、子供たちから次第に泣き声がおさまった。

 

「もういたくないよ!」

「ふしぎー」

 

 怪我をしたはずの箇所を互いに見やっては首を傾げる子供たちをさておいて、空になった桶を井戸の中へ放り込んでおく。

 

「これに懲りたら、もう見知らぬ人間相手に無茶はしないほうがいいですよ」

「べつに、知らない人じゃないもん」

 

 砂を払い終わった子供たちがやってきたのを見て、フィオレは立ち上がった。

 偉そうに説教を垂れてみたところで、フィオレからキャスケットを奪い取った少年は頬を膨らませている。

 

「一昨日のことですか?」

「それもそうだけど、ちげーよ。『隻眼の歌姫』ってねーちゃんのことだろ?」

 

 眼帯してるし、と少年はフィオレの顔を指差した。

 指を差されたフィオレと言えば、彼が何を言っているのかさっぱりわからない。

 

「隻眼の歌姫? どなたですか、それは」

「ダリルシェイドの噴水のところで時々うたってる、なぞめーたビジョって水兵のおっちゃんがニヤケ顔で教えてくれたんだ」

「おれたちは見たことないけど、雪っていう白くて冷たくて触ると溶けるものみたいな色の髪に、藍色の眼で眼帯してるって……」

「おねえちゃんのことじゃないの?」

 

 子供たちが口々に言う特徴はすべて当てはまるものの、そのまんまな二つ名だけは聞いたことが無い。

 やがて太陽が頂点へたどり着き、子供たちは各家の手伝いにと帰っていく。その姿を見送って、フィオレはバルック基金オフィスの玄関扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 原作中にこそ特別な描写はありませんでしたが、余所の国を嫌う風潮のある国はこんなものではないかと。
 歳経た人々は心を閉ざし、若者は「外人になら何をしてもいい」というような感覚が根付いている気がしました。御国を愛していれば無罪になる、という奴でしょうか。
 ただどの国であっても、ヒトでも動物でも、子供は基本的には愛らしい生き物なんですよね。
 善意も悪意もなく、無邪気で純粋だからこそ、周囲の色にあっさり染まってしまい、似たような大人が増殖してしまうという厄介な種でもあるのですが。

 ちなみに家政婦(メイド)がフィオレに香茶を零しかけたのは、わざと。
 バルックさん宛てのお手紙(てまみ)には、眼帯の下が見れないか、試してほしいと指示がありましたとさ。
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