swordian saga   作:佐谷莢

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 ダリルシェイド、ジルクリスト邸、夜。
 ヤなことの後には甘いもの。
 スタンとリオンと、ささやかにお茶会を。


第三十九夜——出立前夜~真夜中の茶会

 

 

 

 

 

 それまで羊皮紙の上を踊っていた羽根ペンを、ペン立てに差す。

 作業にひと段落つけたフィオレは、腕を伸ばして伸びをした。

 報告書作成などというそう難しくもない作業に、何故これだけ時間がかかるのか。それは、一重にフィオレの個人的な事情による。

 実を言うとフィオレは、こちらの世界の文字を完全に習得したわけではない。簡単な文字の読み書きならいざ知らず、軍部に提出するような正規書類をそらで作ることはできないのだ。

 これまでは見習いとしてリオンと合同の任務を請け、当然のように責任者であるリオンが書類を作ってきた。それを横目で眺めていたために何を書けばいいのか大体はわかるのだが、それだけでは無理があったらしい。

 仕方なく、まずはフォニスコモンマルキス──フィオレがこれまで使ってきた文字で原文を完成させた。後は辞書を使い、こちらの世界の文字に意訳するだけだ。まあ、それが一番時間のかかる作業なのだが。

 ふと部屋の中を見回せば、すっかり暗くなっている。気付かぬうちに、フィオレは手元のランプだけで作業をしていたらしい。

 鎧戸を閉めてカーテンを引き、レンズ式の照明を灯そうとして……やめる。

 もうひと頑張りするために気分転換をしようと、フィオレはキッチンへ向かって歩き始めた。

 その途中、リオンの私室前に佇むスタンを見つける。

 ──フィオレたちがヒューゴ邸にやってきたのは午後、それも夕方だ。

 ヒューゴ氏との話を済ませてすぐ私室にこもったフィオレにはわからないが、何も知らせがなかったことからして、出発は明日へ延期ということになったのだろう。

 

「こんばんは、スタン」

 

 今まさにドアノブを掴んだスタンに声をかければ、彼はびくっと身体を震わせてフィオレを見た。

 

「あ、こ、こんばんは」

「リオンに何か用ですか? 扉を開く前に声をかけるかノックした方がいいですよ」

 

 しかし彼は、なぜか声かけもノックをする様子もなくドアノブから手を離している。

 そしてフィオレに話しかけた。

 

「フィオレさん、大丈夫ですか? あの時、結構大きな音がしたから……」

「勝手なことするなって、一発はたかれただけです。なんともありませんよ」

 

 実際は頭部にタンコブをこさえているが、実害がない限り支障があるとは言えない。

 それよりかリオンに用事があるのではと問い質してみるも、彼は首を横に振っている。

 

「フィオレさんの部屋を探していたんですよ。それで、リオンなら知ってるんじゃないかってディムロスが言ったから……」

「ああ、無事戻ってきたんですか。よかったですねディムロス。国宝と称されて、使われもせず宝物庫とかに閉じ込められなくて」

『まったくだ』

 

 どうして国宝級の代物をヒューゴ氏が預かっていたのかはまったくわからないが、罪人を監督する客員剣士たちの責任者ということで、国宝ではなく罪人の武装として預かった可能性が高い。

 

『スタンたちが妙に心配していたが、何かあったのか?』

「少々越権行為をしましてね。それが雇い主の気に障って、こっぴどく怒られたんですよ」

『……スタンたちが処刑されそうになったところを、話術を用いて弁護した、という話か?』

「処刑かどうかはわかりませんし、私の目論見を通すための方便です。スタンたちの身だけを案じたわけではありませんよ」

 

 自分のしたことながら、こそばゆい気分になる。

 そろそろつつくのはやめてもらえないかな、と辟易したところで、話題を変えた。

 

「あなたやリオンがここにいるということは、神殿への出発は明日ですか」

「はい。フィオレさんのこともそうだけど、今日はもう日が暮れるし、任務に向けてえーと……エーキを養ってほしい、ってヒューゴさんが」

 

 理屈はわかるのだが、囁かれていた神殿の状態を思い出し、焦燥の念に駆られる。

 一瞬にして心を乱したフィオレだが、そんな様子に気付いた風もなくスタンは続けた。

 

「そういえば、報告書って終わったんですか?」

「いえ、あと一息です。流石に疲れたので、お茶でも飲んで休憩しようかと」

「そうなんですか? でも家政婦(メイド)さんたち、もう寝ちゃってるみたいですけど」

 

 彼はフィオレが、人にしてもらわねばお茶を淹れることもできないとでも思っているのだろうか。

 否、そうでなければ家政婦(メイド)のことなど言い出さないだろう。

 

「でしょうね。自分で淹れるんですよ」

 

 半眼になるのをこらえて言い返せば、腹の立つことに彼は素直に驚いていた。

 

「スタンも一緒にいかがですか? お茶くらいなら振舞えますよ」

「いいんですか? じゃあ、俺も……」

「……さっきから、人の部屋の前で何をしているんだお前ら」

 

 突如として扉が開き、スタンが飛びのいたことで返事が途切れる。

 時間からして、明日のことを考えてもう床についているだろうと思っていたリオンが、不機嫌面で顔を出した。

 その姿は普段と変わりないが、マントは外されシャルティエも不在だ。

 

「まだ寝てなかったんですか」

「当たり前だ。明日神殿まで赴くのに、ルートを確認しない馬鹿がどこにいる」

 

 そんなに神経質にならなくとも、幾度かあの周辺に足を運んだことはある。

 それなのに今更ルートの確認をしているということは、つまり眠れないということでいいのか。

 

「緊張感を保つのも大事ですが、糸が切れても困ります。お茶でも飲んで、気分転換しませんか?」

 

 フィオレの誘いに、彼はしばし沈黙してからくるりときびすを返した。

 しかし、すぐに戻ってきて部屋から出る。

 腰には、シャルティエが提げられていた。

 

「そういえば、お前宛に見舞いの品と称していくつか菓子折りが届けられていたな。処分を手伝ってやる」

「左様ですか。ありがとうございます」

 

 そういえば、作業中洗面所へ行った際に家政婦(メイド)がそんなことを言ってきたような気がする。

 駄目になる前に皆で食べてくれ、と言ったが、届け主が手をつけていないのに勝手に開封はできない、とか何とか言っていたような。なら開封しておけば問題ないか。

 などとつらつら考えていると、今度はシャルティエが口を開いた。

 

『ところでさ、フィオレ。書斎で何があったの? すっごい音がしてたけど……』

『ヒューゴ様から怒られただけですよー』

『ホントに怒られただけ? だってフィオレ、倒れてたじゃん。ヒューゴ様に殴られたりとか、突き飛ばされたとか、ない?』

 

 ──こういった時、いかに普段おちゃらけていても、彼は伝説のソーディアンチームの一員なんだと気付かされる。

 見ているときは、しっかり見ているのだと。

 

『……だから、怒られたんですってば』

『否定しなかった……てことはやっぱり、殴られたか何かされたの!? 大丈夫!?』

 

 徐々に声のトーンをあげるシャルティエを、普段ならうるさいとリオンが怒り出すところだ。

 しかし、彼はなぜかシャルティエではなくフィオレを睨んでいた。

 

「僕の前で念話とやらを使うのはやめろといったはずだぞ。それで、何があった?」

「ねん……?」

『前にも話しただろう。フィオレは何らかの手段を使って、声を使わず我々ソーディアンに話しかけることができる。チャネリングの応用だが、リオンはそれを念話と呼んでいるのだろう』

 

 スタンの疑問をディムロスが晴らすものの、リオンはそれを否定している。

 こういった時、彼の性格ならいちいち反応はしなさそうなものだが……

 

「こいつが念話という単語を使ったから、こちらも話を合わせるために使っているだけだ。それで」

「……スタンたちにはお話しましたが、勝手なことをするなと怒られて一発はたかれただけです。神殿の異変に比べれば、些細なことでしょう」

 

 だんだんわずらわしくなってきたにつき、話題を強制的に終了させる。

 しかし、シャルティエはまだまだ黙らない。

 

『やっぱり! そうだと思ったよ、でなきゃあ君がそうそう倒されることなんてないもんね! でもフィオレ、いくら相手が雇用主だからって黙って殴られちゃだめだよ。避けるのなんか簡単でしょ』

「……さてと。何を頂きましょうかねー」

『あーっ、はぐらかすの禁止!』

 

 未だにうだうだ呟くシャルティエを無視して、キッチンへ入る。

 水を張ったケトルを火にかけ、その間にフィオレは準備をしていた。

 用意したワゴンの上にティーセットを並べ、茶葉が種類別に収納されたバスケットを取り出す。

 更に部屋の隅に積まれていた菓子折りを適当に取り出してテーブルに放った。

 

「シャトーガーデンのバターマドレーヌに、ラビットダンスのこうさぎサブレ。リリーホワイトのチョコクッキーにロード・シャンゼリゼのラングドシャ。こんなもんでいいですね」

「夜中にどれだけ食べるつもりだ、お前は」

『そうだよ。夜中に食べると太るんだよ』

「これからいやでも消費しますから、問題ありません」

 

 各菓子を一種ずつ取り出し、小型の籠に盛って二人の前に並べる。

 最後に自分の分を取って、フィオレはとある菓子を見つけた。

 

「あ、麗月堂の半月羊羹発見。もらっておきましょう」

 

 さりげなく茶請けのレパートリーを増やし、蓋が騒ぎ始めたケトルを持ち上げ、代わりに手鍋を置く。用意したティーカップに湯を注ぎ、素早く中身を手鍋に移した。

 移してすぐに、手鍋の底からポコポコと気泡が浮かぶ。レンズ式加熱機の電源を落とし、適量の茶葉を投下して蓋をした。

 待つこと少し、適量より少し多めにミルクを注いで撹拌しつつ、再びレンズ式加熱機の電源を入れる。沸騰する直前に手鍋を持ち上げ、茶漉しを通してティーカップに注いだ。

 ソーサーとセットで二人に提供する。

 

「ロイヤルミルクティーでございます。お眠りになる前ということでミルクを多めにしてみました。どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

「……聞き流した方がいいぞ。まともに付き合うと肩がこる」

「その時は、責任もって揉み解してあげますよ」

 

 妙に気取ったフィオレに合わせてなのか、スタンが妙に緊張した様子で礼を言った。

 それを見かねてなのか、リオンが呆れたように忠告するも、フィオレは軽口で返している。

 

『にしても、フィオレってホント小器用だよね。何やっても手際いいし、今の言い方だってすんごく堂に入ってるし。一体どこの名家で家政婦(メイド)やってたのさ?』

 

 異世界の一国家の首都、王城にお住まいの姫君のところで侍女を五年ほど。

 もちろん、そのまま答えたら面倒くさい事態は避けられない。なので。

 

「淑女のたしなみです」

 

 適当にお茶を濁す。

 そのまま自分の茶を淹れていると、何やらひそひそ声でシャルティエの呟く声が聞こえてきた。

 

『坊ちゃん、疑惑再浮上ですよ。あんなこと言い出すってことは、本当に名家のご息女なのかも……』

「知るか」

「あ、おいしい」

 

 シャルティエの言葉をリオンが一蹴する隣で、スタンが紅茶に口をつける。

 リオンもまた一口含み、相変わらずの辛口批評を呟いた。

 

「……飲めなくはない」

 

 自分で飲んでみると、茶葉を少なめにしたことが災いしたのか、ミルクの味が出すぎている。

 それでも、牛乳があまり好きではないらしいリオンが飲めるならば幸いだと、フィオレは茶菓子を手に取った。

 

「フィオレさん、お茶淹れるの上手いんですね」

「わかるんですか? あんまり飲み慣れてるようには見えませんが」

 

 失礼な話だが、彼の出身から察してあまり嗜好品に縁があるとは思っていない。

 最悪、変な味だ、飲めないの二言で終わっても仕方がないと思っていたところだ。

 しかし、そんな予想に対して彼は嬉々として茶をたしなんでいる。

 

「マナーとかは知らないんですけど、妹が料理好きでお菓子とかよく作るんですよ。それで一緒に紅茶とか飲むんですけど、それよりずっと美味しいです」

「それは一重に茶葉の高級さが違うからだと思いますけど」

 

 あるいは淹れ方が自己流か、保存方法がぞんざいなだけか。

 文句を言っていたわりにはしっかりと茶菓子を平らげたリオンの茶がまだ残っているのを見て、砂糖壷と小匙を渡す。

 

「いれすぎ厳禁です。太らないかもしれませんが、歯に穴があきますよ」

「うるさい」

 

 次いで、自分の茶を飲み終えたフィオレが再びケトルを取った。

 湯を沸かす傍ら、違う茶葉を取り出して先ほどとは異なる手順で淹れていく。

 そもそも使っているカップは先ほどのものではなく、取っ手のない円筒形だ。

 

「不思議な形ですね、そのカップ」

「またアレを飲むのか。つくづく物好きな奴だ」

 

 興味深そうに見やるスタンに対して、リオンは呆れたように肩をすくめている。

 

「アレって?」

「濁った緑色の茶だ。アクアヴェイル産のものらしいが、渋くて飲めたもんじゃない」

「へぇ~……フィオレさん、俺にも淹れてもらえますか?」

「いいですよ。お試しサイズでどうぞ」

 

 そう言って、フィオレが取り出したのは白い陶器の猪口だった。

 ティーポットがそのまま平たくなったような形の茶だし──急須で注ぎ、スタンに出す。

 

「玉露でございます。お熱くなっておりますので、お気をつけくださいませ」

「どれどれ?」

 

 まるで夏、池に繁殖した藻みたいな色だと内心で思いつつ、フィオレの手前一口飲む。

 彼の感想は──

 

「渋い……かな? 結構さっぱりしてて飲みやすいけど」

「舌が死んでるんじゃないか」

 

 リオンの感想と見た目から想像したよりはまともな味に、スタンは首を傾げながらも飲み干した。

 リオンは本気なのか冗談なのかわかりにくい一言を放つも、すでに二人は気にしていない。

 

「気に入ったなら、もっと飲みますか? こっちの羊羹と一緒に食べると最高ですよ」

「じゃあ、頂きます」

 

 リオンには理解が得られなかったアクアヴェイル産の茶が好評なのが嬉しかったのか。

 フィオレは同じ円筒形の湯呑みを取り出して菓子と同時に提供している。

 

「この……ヨーカンっていうの、不思議な触感ですね。柔らかくてすごく甘い」

「お気に召しませんか?」

「いえ、お茶がさっぱりしてるから、合いますね。うん、美味しい」

「それはよかった」

 

 スタンの口に合ったのが嬉しいのか、話の合うことが嬉しいのか。

 フィオレは明らかに嬉しそうに羊羹を口に運んでいる。

 

『……なんか、複雑じゃないですか?』

「何がだ」

『だぁって、あんなにニコニコしてるフィオレ見たことないですし……坊ちゃん、これってジェラシーって奴ですかね。なんか、妙に腹が立ってきました』

「……」

 

 確かに、ここまで雰囲気の柔らかなフィオレは珍しい。

 これまでリオンはフィオレと接してきて、負の感情以外がむき出しになったところなど見たことがなかった。

 いつも事務的に淡々と、時として感情など存在しないのではないかと思わせるほどに涼やかな、悪く言えば冷たい印象しか知らない。

 ちらり、とスタンと談笑するフィオレの顔を見やる。

 へらへらしているわけでもなければ、にやにやしているわけでもない。ただ、表情を緩めているだけだ。

 それなのに、別人かと思えるほど雰囲気が和らいでいる。

 その瞳がスタンのみを映していることが、異様に腹立たしくなった。

 彼女が隣に座っているのをいいことに、円筒形のカップ──湯呑みを取り、くい、と傾ける。

 

「あ」

 

 一口飲み、その味を知ったリオンは驚いた顔で見やるフィオレをじろりと睨んだ。

 

「この間僕に飲ませたものと、味が違うじゃないか」

「そりゃそうですよ。あっちとは種類も値段も違います」

 

 気に入ったのなら、ということなのか。彼女は無言のまま切り分けた羊羹を薦めている。

 一口サイズのそれを口に含んで、リオンはがたりと立ち上がった。

 

「ひとつ貰うぞ」

 

 それはつまり、彼もまた緑茶が気に入ったという証だ。

 淡く微笑んだフィオレは、一人前の緑茶を用意してリオンへと渡した。

 

「やっぱり、異文化であっても美味しいものはわかるんですね」

『っていうと?』

「この間のものより、こっちのほうが遥かに高級で高値なんですよ」

 

 そもそも、アクアヴェイル産の物品はカルバレイスを経由しているため、手に入りにくい上に関税がしっかりとかかっている。

 これは、現在アクアヴェイルとセインガルドが国交断絶状態であるが故だ。

 それでも鎖国していたアクアヴェイル独特の文化を好む人間は多いのか、出すものさえ出せば大抵のものが手に入る。

 茶葉であったり、湯呑みであったり、急須であったり、猪口であったり。

 渡される給金の大体を細々とした日用品以外には使わず貯めこんでいるフィオレだが、こういった嗜好品に対してまったく金に糸目をつけていない。

 

「そんなことはどうでもいい。お前、未だに僕への報告がないだろう」

「今現在、鋭意報告書作成中ですが」

「すぐ任務に入るのに、そんなものを読んでいる暇はない。この場で何があったのかを話せ」

 

 確かにその通りである。

 彼の言い分に納得したフィオレは、先ほどまで作っていた報告書の原文をそらで唱え始めた。

 その中では、一応スタンのことを真実そのままに練りこんである。ここで誤魔化したら、後々不利になるのはフィオレだ。

 嘘をつくのが上手いとはお世辞にも言えないスタンの性格を考慮した結果である。

 ウッドロウのことは「ジェノス付近の一軒家にいた民間人」ということにした。「住んでいた」ではないので嘘ではない。

 ここで王族の名を出しても、話がややこしくなるだけだ。素直に伝えるつもりはなかった。

 つらつらと語られるフィオレの報告を一言一句聞き、話のくだりがハーメンツにさしかかったところで、リオンは口を挟んだ。

 

「その辺りはいい。しかし、飛行竜が大量の魔物によって襲撃されたというのはどういうことだ。しかも明らかに違う種類だとわかる魔物が、連携して……」

「さっぱりわかりません。人為的だとして、可能性があるのは魔物使い(モンスターテイマー)くらいだと思います」

「魔眼持ちの仕業だとでもいうのか? 馬鹿馬鹿しい、単なる迷信に決まってる」

 

 納得のいく議論はないまま、話題は更なるものへと転化する。

 時折スタンが口を挟むことで脱線した話題はそのまま忘れ去られ、夜も更けたところでお開きになった。

 片付けの際、フィオレが出がらしの濃いお茶を淹れて私室へ持ち込んだのは、無論のこと徹夜のためである。

 

「……まずい。休憩しすぎた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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