戦姫絶唱シンフォギアVC Depthe of the unDergrounD 作:サリッサ@無期限休止
イベント参加したくて作りました、シリーズVCの短編DDD、第3話となります。
(1話はこちらから: https://syosetu.org/novel/236465/1.html
絶唱ステージももう後一か月ですか…
情勢の雲行きが怪しい日々が続いております。
一般参加も怪しい雑兵ですが、会が無事に開催、終了できることを切に願っております…
次回4話目でこの短編DDDは完結になります。
地続きの前作HomeFronters( https://syosetu.org/novel/231953/ )のあとがきも
書こう書こうとして書けず終いでしたので、合わせてかけるといいな…
どうぞよしなに、お願いいたします。
肩に異形を乗せたまま、響は眼前の無形に対峙する。
無形の化け物も、束ねていた触手を解き、前方に展開することで牽制している。
「この…ギアは…」
横目で己を覆うシンフォギアを確認する。非常に懐かしい装甲の形だ。ヒールのある脚部プロテクター。馴染みのマフラーもない、最初に身に纏った、ガングニールの形状そのものだ。
「これは…奏さんからもらった……」
一瞬の隙をつくため、無数の触手が唸る。しかし、彼女の身体を捉えることは出来ない。触手の追い付けぬ速度で空中へ逃れた響。そのまま上昇中に身体を翻し、天井に足を付ける。
「だったら!!!」
天井を思いきり蹴りつける。衝撃で砕けたヒール部分を置き去りに、化け物へ肉薄する。
「セイッ!!!」
拳が、化け物の肉を吹き飛ばし、床に穴をあける。化け物は叫び声と共に、先ほどよりも苛烈に触手を振り上げる。
「この感じ……形は同じだけど、でも昔のガングニールとは違う……」
『そうだろうとも』
肩の異形が彼女の身のこなしを意に返さず言う。
『その身体を覆っている物は、貴様のイメージが形となったものだ。実際の肉体の方で注がれている力を、この場に確固たる武装として固着させておるのだ。故に、固着時のイメージや思考が、色濃く反映されておる』
拳を握った時、思い出していたのは暖かな、そして勇気ある言葉。
響は頷き、巨体でのしかかろうとする化け物に、肘撃を食らわせる。しかし、今度は化け物もただ吹き飛ばされることはなく、器用に肉体を方々に広げる。伸びた肉体が球状に収束していき、逆に響を飲み込もうとしているようだ。
「だったら尚更!」
彼女は瞬時に他より薄い箇所を見破る。そして、飛び蹴りにて窮地を脱した。
「負けるわけには、いかない!!」
着地する寸前を狙った触手を、空中での跳躍によって躱してみせる。一連の攻防を見、肩の異形は笑い声を発する。
『なかなかよく跳ねるではないか、貴様。どこぞの曲芸師にでも習ったか』
額に汗を滲ませながら、凶手を弾く響。その顔は綻んだ。
「最高の師匠に、習いました!」
だが、化け物の猛攻はすさまじく、響も防戦に回る一方。器用に曲がりくねる触手を避けてはいなし、何とか隙を探す。
「?!」
そんな彼女の身体に、奇妙なことが生じる。
ガングニールが、ズレた。
それを知覚したのは彼女だけだろう。だが確実に、敵の腕を避け、後方へ飛んだ時だ。纏っているはずのガングニールを置き去りに、己の身体が先行した。残像か、まるで、脱皮した蛇のように。
「これって…もしかして…」
自分の拳を覆うギアを見、冷汗を流す。思考が結論を出す前に、彼女は現実に引き戻された。
『ほう…これまた珍客だ……』
異形の呟き。我に返り、響は頭上を見る。先ほど蹴りぬいた天井の穴から漏れる、微かな光。そして
「師匠!!!」
轟音と共に天井が粉砕され、そしてほぼ同時に化け物の身体に、漢の拳が叩きつけられる。
「待たせたな!!響くん!!!」
風鳴弦十郎はそのまま化け物を足場に蹴り飛び、響の横へ着地する。化け物は瓦礫の雨にされされた。
「遅くなってしまった。大丈…」
その目が、肩に乗っており、不規則に身体を揺らす異質な存在を捉える。すぐさま響は手を振る。
「あ!師匠大丈夫です!この人は──」
その先を言う前に、瓦礫から鋭く触手が伸びる。二人はそれを軽くいなし、後続の触手から距離を取った。
「まあいい。話は後だ。このデカブツを仕留めるぞ!」
意気込む弦十郎に、ここに来て最高の笑顔で答える。
「ハイ!!!それにしても師匠!一目見てビックリ仰天しないなんて!流石です!!」
瓦礫から染み出し、集合する化け物を前に、二人は背中合わせで構える。
「勿論だ!」
化け物が身体のどこからか叫びをあげ、突進する。その声をかき消さんばかりの激音が、二人の震脚によって生み出された。
「鍛えているからな!!!!」
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先程とは状況は全く変わっていた。二人の息の合ったコンビネーションに、化け物は翻弄され続いていた。
無数の触腕と眼球を用いながらも、しかし、文字通り手が出ない。
押し切れるかもしれない。
そう確信めいたものが浮かぶ中、
『さぁ、そろそろ出るぞ』
響の肩で、異形が興味深げに言った。
「それってどういう──」
響の問いが言い終わる前に、状況がまたも一変する。
化け物の身体が、はじけ飛んだ。
合い対していた存在の突然の出来事に、呆気にとられる弦十郎と響。注視していれば、内側からはじけたように思われるソレは、方々にその半透明になった肉を飛び散らせる。そのどれもが、一度大きく跳ねる。そして蜘蛛の子を散らすように、これまでの動きとは比ではない俊敏さで、暗闇の彼方へ逃げていった。
一片を除いては。
『痺れを切らし、扱いづらい邪魔な肉を捨て去ったな。アヤツだよ。貴様をここに呼び寄せ、取り込もうとしているモノは』
散って行った肉片とは別に、空中に、まるで縫い付けられているかのように停止している一片がある。まるで二人を見据えているかのように、その空間から微動だにしない。
「ッ!!!」
その時、響は蛇に睨まれたように、場から動けなくなった。指一本すら動かせず、その身にかかる重圧は、先の化け物の比ではなかった。
ナニカガミテイル
そう頭に過ぎった瞬間、その一片を中心に、まるで周囲の空気を食い散らかすように、
オトが、生まれた。
「これは……!!」
風鳴弦十郎は、知っている。この異様で目を反らしたくなる絵空事のような現実を。あの飛空艇で起きた神話事象を。
脳を耳から押しつぶすかのような、異質なオトが場を支配する。響が最初に聞いた、金属をこすりつけるようなオトをはらんだ、形容しがたいオトの集合体が、聴覚を喰い殺そうとするかのように空間を蹂躙する。
たまらず耳を塞ぐ二人だが、その努力をあざ笑うかのように、オトは彼らの存在自体を揺さぶる。精神を直に殴打される感覚に、明確な敵意を確かに感じた響。そして改めて肉片を見、唖然とした。
一片を中心に、幾つもの幾何学的模様が、現れては、消えていく。そして模様がまとまり、空間を進む微かに見える波となった時、彼女らを打ちのめさんと襲い掛かった。絶対不回避の狂撃に、立っていることすら耐えられない。
「な……にがッ……」
その時、彼女の微かに開いた目が、動くものを捉えた。弦十郎だ。彼はゆっくりと、しかし確実に歩を一片に向けている。その佇まいには、確固たる意志を感じた。
「し…しょう…」
彼の拳が、空間を殴る。動けぬ響を尻目に、オトは予想外の反撃に乱される。幻視していた幾何学模様は、不規則に捻じ切れ波打つ。怒り、であるのか。そんなオトを前に、拳を突き出した弦十郎の背には、並々ならぬモノがあった。
「もう…二度と…」
言葉を絞り出す。ギアを纏っているわけではなく、丸裸の精神と言ってもいい。奇怪なオトの乱気流という埒外現象。常人であれば、錯乱して然るべきだ。
だが、それでも、このタダの一人の男が
「もう二度と、奪わせるものか!!!」
仁王のごとく立ちあがる。
──────────────────────────────────────
異形は、閉ざしていた瞼を微かにあげた。その動作は非常に緩慢で、元より線のように細い瞳は、寝ているのか否かを判別するのは難しい。寝そべった姿のまま、異形は目線を横の壁へと向ける。
間もなく、激しい破壊音。
飛び出してきたのは、響と弦十郎だ。異形のいる場所へ転がりこみ、そしてすぐに立ち上がる。二人とも、息は上がり、緊張した出で立ちが、未だ脅威を振り払えていないことを示していた。
破壊してきた穴に意識を向けていた弦十郎だったが、ふと、背後にそびえる異形に気づき、慄く。
「ッ?!?!なんだ…コイツは?!」
響も師匠の言葉を聞き、振り返る。
『戻ってきたか。貴様』
「?!ヒキガエルさん!!」
響の肩の異形からだ。本体は口を開くのも億劫なのか頬杖の姿勢から動かない。
「響くん?!コイツを知っているのか?!」
弦十郎の問いに答えようとした響。しかし、
「師匠!!」
言葉が紡がれる前に、弦十郎は後方へ吹き飛ばされる。
「ッグ?!!」
弦十郎がいた場所には、幾何学模様が蠢いている。目をやれば、破壊された壁から、あの肉片が浮遊してくる。
「追い…つかれたッ」
意思を持った幾何学模様が、分裂し波打ちながら響へ迫る。
「だったらッ!!」
さばき切れないと判断した少女は、己の首筋に手をやる。そこには何もない。だが、彼女の心は覚えている。
「これでッどうだ!!」
掛け声とともに、彼女の首に光が纏う。光が集結し、迫る模様を薙ぎ払った。それは、彼女の纏う初期のガングニールには存在しなかった、マフラー。
「できた!」
そう喜んだのも束の間。一瞬の隙をつき、地を這ってきた模様が彼女の腹部に直撃。その身体は大きく跳ね飛ばされる。丁度、ここに鎮座する巨大なヒキガエルに似た、異形の前で倒れ伏した。
「響くん!!!」
弦十郎はすぐさま、追い打ちに向かおうとする模様へ、腕を振りぬく。常人の速度をはるかに上回る漢の拳だが、しかし手ごたえはなく、模様を歪ませることしかできない。模様がまた形を変え、弦十郎に襲い掛かる。
「クソッ!!どうすればッ!!??」
これまでの道中、幾何学模様を歪ませることは出来ても、そのものに攻撃を与えられた感触は、一度たりともなかった。まるで、存在しないものを、正に雲か空に向かって拳を放っているようだ。無論、中心核と思われる、空に漂う肉片には、到底届いていなかった。
「この……ままじゃ……」
よろめきながら、立花響は立ち上がる。すると、纏っていたガングニールが数秒、揺れた。
「また…揺らいだ……」
先ほどのズレから、ガングニールが時折霞がかったように不鮮明になる瞬間が何度かあった。響は己の拳を再び見、握りしめる。保てる時間は残り僅か。そしてその拳が捉えるには、敵はあまりにも途方もない地点にいた。
『苦心しているようだな』
異形が響を見下ろしている。横目で見、響はぎこちない笑みを浮かべる。
「とりあえず…よかった…無事で…」
異形は微かに笑うように口を歪ませる。そして、師匠の元へ走り出そうとした彼女をもう一度じっくりと見た。
『力を、貸してやろうか』
思わず響は振り返る。
薄暗闇に住まう、その巨大な存在は、確かに彼女を見据えていた。
『アヤツの本質は、物質的実体を持たないモノだ。今はこの場に留まるために、あの肉片を依り代にしている。だが、その余波は実体を持っておらず、人の子では触ること叶うまい』
響は眼前の存在から目が離せない。異形は一層不気味に口角をあげた。
『余波ですら、乱すことはできても、触れることは出来なかったのであろう。であれば結末は明白。見続けていても、面白みはない。打破するには、アヤツに実体を与えることだ。同じ領域に引き吊り下ろせれば、貴様らの腕でも届くであろう』
そして、異形はゆっくりと、しかし一直線に、響にその暗がりの中の悍ましい顔を近づけた。
『ワシならば、くれてやれる。アヤツに届く牙を、手を。どうする?
望むか、貴様』
オトの波動から何とか身を翻した弦十郎。その目に飛び込んできたのは、おおよそ不可解な状況だった。
この部屋に入った際に、響がヒキガエルとよんだ存在。暗闇に横たわり、全体像は未だ把握できない。
が、それでも、出会ってはならないナニカであることは直観していた。
「響くん!!!!」
その存在の前に、彼女が立っている。異形と、立花響の視線が、交錯している。
そして
彼女が
頷いた。
「ダメだ!!!!!」
その声は、間に合わない。
『ようこそ、そしてさらばだ。アヌンナキの残り火』
異形の手から生み出された、粘性の黒々とした液体が
彼女を、塗りつぶす。
読んで下さり、誠に有難うございます。
いかがでしたでしょうか。
バトル描写、上手く伝えられているか非常に不安です…
響と弦十郎さんの共闘は、対ノイズがベースの本編世界では難しいので
この機会にやってみたい!っていう私欲が前面に出ていますw
次回でDDDは最終になります。
どうぞよろしくお願い致します。
宜しければ、コメント、評価頂ければ幸いです(^^