この作品は私が初めて完成させた作品です。
文章や表現など、拙い部分が目立つと思いますが
それでも良ければ、是非読んでみてください。
私がピアノを始めたのは幼い頃だった。ピアノを弾いてる時、私は空を飛んでるみたいで楽しかった。
まるで自分がお星様みたいにキラキラになるような感覚が気持ちよくて、たくさんの曲が弾けるようになっていくのが嬉しかった。
それが私がピアノを始めたきっかけだった。
でも、段々と上手くいかなくなることが多くなっていった。好きだから上手くなりたい。好きだから続けていたい。
そう思っていても、好きだから”才能”があるとは限らなくて、好きでも上手くいかないことはあると知った。
けれど、私はピアノをやめなかった。私に才能がなくても、ピアノを弾くことが好きだったから。だから、続けることが出来た。
そしてもう一つ、私がピアノを辞めずに、続けられた理由があった。
それは、私が通っているピアノ教室にいる上級生の女の子。髪は長くもなく、短くもない、肩よりも長いくらいの長さで、少し巻き癖のある赤髪。ほんの少しだけ吊り上がった目には、淡紫色の綺麗な瞳がキラキラと輝いていた。そして何よりも、彼女の奏でるピアノの音色がとても綺麗で心が安らぐようなメロディ。その音はまるで暖かな日差しが差し込むかのような優しい音。
私はそんな彼女に憧れてしまったのだ。
彼女は自分のピアノに向き合い、とても楽しそうに弾く、きっと”才能”があるのだと私は思った。
彼女にとってピアノが全てなのだと。
そんな彼女に、私は負けたくないと思った。歳の差とか、才能の差とか、そんなこと関係なく、私はいつか彼女に追いつきたい。
その想いが私にピアノを続ける支えになっていた。
そして、月日が流れ、彼女の学年が上がり中学2、3年生になった頃だったと思う。彼女はだんだんピアノ教室に顔を出さなくなり、週に1、2回ぐらいしか来なくなってしまった。来てたとしても、以前のように楽しそうに弾く姿を、見ることはなかった。
そのときの彼女は、何かに苦しんでいる様なそんな感じがした。それはまるで、何かに怯えているようで、すがるようにピアノを弾いていたように思う。
彼女が中学校を卒業し、高校生に上がる前の3月下旬。その日ピアノ教室に来た彼女は何か覚悟を持ってピアノに、音楽に向き合っているように感じた。奏でる音は、不安を抱いているような悲しい音。まるで残された時間が僅かしか残されていない終わりが近づいているような寂しさを感じた。
彼女がピアノを辞めてしまいそうな、彼女が遠くへ行ってしまうと、私はそのときそう直感した。
そう直感した私は、気づいたら彼女に声をかけていた。
りこ「あの。」
?「ん?どうしたの?えーっと、さくら?うち…」
りこ「梨子です!桜内梨子です!」
?「じゃ、梨子ちゃんね!どうしたの?」
りこ「なんだか最近ピアノを弾いているとき、楽しそうじゃないように思えて、えっとその……ピアノ辞めちゃうんじゃないかって……」
りこ「ずっと私はあなたを目標にピアノを続けてきました!あなたは私の憧れなんです!!
りこ「だから、ピアノ辞めないでください!!!」
?「………ええ、”私が大人になる”まで辞めない!それまではあなたの憧れでい続けるわ!!約束…しましょ?」
りこ「うん!約束!!」
私はそう彼女と約束をしたが、彼女の顔にかかった雲は晴れないままだった。
約束をした日から2ヶ月程が経ち、彼女はピアノ教室に来る頻度が変わらず減っていた。けれどたまに見かける彼女は、以前のような顔にかかっていた雲はなく、晴れていた気がしていた。
そう思った日は、とても眩しい、よく晴れた日ことだったことを覚えている。
まるで、空も心も晴れたように…
ーーーーーー
けど、彼女が高校一年生の夏、彼女はピアノ教室を辞めてしまった。
先生「本当にやめちゃうのね」
?「はい、私は今、目の前のことに本気で取り組みたいんです!」
先生「わかったわ!あなたの活躍を心から祈ってます!頑張ってね」
?「はい!長い間本当にありがとうございました!」
りこ「…」
?「あ、梨子ちゃん…」
りこ「……辞めちゃうんですか?ピアノ…」
?「ううん、辞めない!約束したでしょ?」
?「私はここには来なくなるけど音楽は、ピアノは辞めない!だから…ね?」
りこ「でも、私は寂しい…」
?「じゃあ、また約束をしましょ?これ」
りこ「なに?これ?愛してるばんざーい?」
?「今年の春、私を救ってくれた人と出会うきっかけになった曲よ!」
?「まだ、ちゃんと完成はしてないけど、いつかこれの完成版を、私と梨子ちゃんの二人で弾きましょ!」
りこ「うん!」
?「それじゃ、それまでにもっと上手くなってなさい!足引っ張ったりなんかしたら、ただじゃ置かないんだからね!!!」
りこ「うん!私、頑張ります!いつか西木野さんと一緒に演奏するために!」
真姫「…真姫でいいわ!」
りこ「わかりました!真姫さん!」
りこ「私、真姫さんに負けないくらい上手くなります!」
真姫「ええ、それじゃまたいつか会いましょう」
そう言って彼女は去っていった。高校でやるべきこと、目標が見つかったんだろう。それが何かは私には分からないが、目標に向う姿勢が前に進む原動力になっているのだと思った。
私も大きな目標を手にすることが出来た。いつか行われる2人だけの演奏会に向けて、これからもピアノに、音楽に、向き合っていこうとそう思ったのだった。
りこ「音ノ木坂……か…」
私が中学校になる頃にはピアノも上達していき、ピアノの全国大会に出れるほど実力がついていた。自分でも順調に調子が上がっていることを実感できた。
中学三年生のとき、進学先を考える時期になったが、私の中ではすでに進路は決まっていた。
そこにはなんの迷いもなく、むしろ期待と希望に胸が満ち溢れていた。”その場所”に立ちたいとずっと思っていたから。
先生「桜内さん、進路はどうするの?」
梨子「私は、音ノ木坂に行きます!」
先生「いいんじゃないかしら!あの学校は伝統的に音楽で有名な学校だから、きっと桜内さんの力を伸ばしてくれるはずよ!」
先生はそう言ってくれたけど、私は彼女が行った学校に進みたかっただけだった。
だけだった。わけではないが、彼女が見つけた景色を、私もそこで見つけたいと思ったから。
けれど私は…
私は、高校に入ってから彼女が見つけたものを見つけられなかった。”その場所”に立つことが出来なかった。
それだけじゃない。私はスランプを抱えてしまって、コンクールでピアノを弾くことすら出来なくなってしまった。
私は……
ピアノに向き合うことができなくなってしまった。
そんなとき、悲劇が起きた。
〜桜内家〜
ガダン!
梨子ママ「梨子!今すごい音したけど大丈夫?」
梨子ママ「梨子?」
梨子ママ「梨子〜」
梨子ママ「⁉︎」
梨子ママ「梨子大丈夫⁇」
梨子ママ「きゅ、救急車!」
救急車で運ばれた私は、半日以上も目を覚まさなかったらしく、お母さんとお父さんにすごく心配させてしまい、次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
医者「普段から少し無理をしてしまったのが原因ですね」
医者「話によるとピアノに対するストレスが心身ともに負担になっていたのでしょう」
梨子ママ「そんなことに…」
医者「そして、気を失い倒れたときに頭を打ったのですが、特に外傷もなく脳へのダメージも無いようなのでひとまずは安心でしょう」
梨子ママ「そ、そうですか…よかった…」
医者「強いストレスを抱えているときに脳へダメージを受けたりすると、ショックにより一時的に記憶障害を引き起こしたりする可能性もあるのですが、自分のことも、家族のことも、学校のこともわかっているみたいなので大丈夫でしょう」
医者「けれど、検査も必要なので数日は検査入院という形を取らせていただきたいのですが、よろしいですか?」
梨子ママ「はい!何から何までありがとうございます。よろしくお願いします」
私は日頃のストレスと疲労で倒れてしまったのだったと聞いた。そのとき、頭を強く打ってしまったが、幸いなことに脳へのダメージは一切ないらしく、しばらくしたら学校に復帰できるとのことだった。
そして、私はまたピアノに向き合うことになった。
ただ、再びピアノに向き合ったとき、昔のような慣れ親しんでいた感覚がなくなっていることに気がついた。それは、スランプを抱えてしまったことによる、私自身が持っていたやる気や自信、目標、気持ち、それら全てが私の中から消えてしまったからのように感じたのだ。
梨子「ピアノ…なんだか久しぶりな気がするな」
梨子「まぁ、入院してたしそうだよね」
梨子「”海に還るもの”」
梨子「結局、私はこれをコンクールで弾けなかった」
梨子「しっかりこの曲に向き合って、スランプを乗り越えなきゃ」
梨子「?」
梨子「 な ん の た め に ? 」
梨子「えっと、昔の約束を果たすために?」
梨子「…誰と約束をしたんだっけ?」
梨子「?」
梨子「これ”愛してるばんざーい”?この曲は私が作った曲じゃない?」
梨子「 じ ゃ あ い っ た い 誰 が ?」
梨子「……思い出せない」
そして私はこの曲のことを思い出すことも、スランプを乗り越えることもできなかった。けど、きっといつか思い出すときが来る。そう思いながら日々を過ごしていた。
そんな時だった。
お母さんが静岡の内浦に引っ越そうって言ってきた。
『海がとても綺麗だし、都会じゃないところで、きっと今までとは違うことに気づくはずだから』と。
そして、向かった内浦の海で私は”変な女の子”と出会ったのだった。彼女はみかんのようなオレンジ色の髪の毛。その髪の毛にはクローバーの髪留め。その瞳は赤く真っ直ぐな目をしていた。そんな彼女と出逢ったのは高校2年生になる4月のことだった。
その女の子はなぜ私が海に入ろうとしたのか聞いてきた。私は一言『海の音が聴きたくて』と言ったら、彼女は続けて聞いてきたが、私が何も答えないの様子を見て聞くのをやめた。と思ったらさらに続けて聞いてきたのだ。ほんの少し笑みが溢れた。
その後話をしていると、彼女はスクールアイドルというものに憧れる女の子であることがわかった。そして彼女は私に、μ’sというスクールアイドルを見せてくれた。
そこに映る女の子達は、私と変わらない普通の女の子達だった。
”初めて”観る彼女達に変な違和感を感じた。特にそこに映る赤髪の女の子に何か胸を惹きつけられるような、何かが引っかかるような感覚を感じながら、私は海で出会った女の子と話を続け、別れた。
私はここで新しい生活が始まる。
そして偶然か、運命か、はたまた奇跡か、もしかしたら、必然だったのかもしれない。新しい学校で、私は海で出会った女の子と再会した。
彼女の名前は高海千歌。
転校早々スクールアイドルになって欲しいと頼まれた。
けれど…
けれど、私にはスクールアイドルをしている時間はなかった。一刻も早く自分のピアノに向き合わなきゃいけなかったから。
だから、高海さんの誘いを断った。
でも、高海さんはしつこく私を誘い続け、こう言った。
「なら、スクールアイドル関係なく海の音を聞きに行こう!」
こうして、私は海の音を聞くためにダイビングをする事になった。海中は暗くて音も聞こえない。まるで、今の私のように。
けど、それは違った。
海の中に一筋の光が見えた。その光は瞬く間に広がり優しく輝いていた。私はその光に手を伸ばし優しく鍵盤に指を当てるようにそっと指を置いた。
すると、聞こえるはずのない音、海の音を聴こえたような気がした。
どんなに暗い海の中でも”輝き”は届く。そう思った。暗く進む道がわからなくなった私に高海さんが現れたように。
そして私はスクールアイドルの活動を作曲をする形で手伝うことを約束した。ピアノに少し向き合えただけの私が、本気で頑張ろうとしている人と一緒にスクールアイドルをするなんて、失礼だって思ったから。
けど、高海さんは。千歌ちゃんはそれでもいいって言ってくれた。スクールアイドルを通して私が音楽に向き合えれば、それはすごく素敵なことだからって。
私は千歌ちゃんのまっすぐな輝きたいという気持ちに触れて、その気持ちが私に変化を与えてくれた。
だから、自分の音楽に向き合うことが出来た。
そして私たちAqoursは、ルビィちゃん、花丸ちゃん、喜子ちゃんの1年生達3人と、果南さん、鞠莉さん、ダイヤさんの3年生達3人が加わって9人になった。
そして季節は夏。
私の元に一通のメールが届いた。それはコンクールの通知だ。詳細を詳しく見てみるとコンクールの日はAqoursのラブライブ予備予選の日でもあった。
私は悩んだ。
けど私は予備予選に出ることにした。だって、私にとっての音楽の答えはきっと今ここにあるから。今の私がAqoursで、みんなと一緒に輝くこと。
それが正しい選択だって思ったから。それが私の答えだった。
けど千歌ちゃんは、私に言ってくれた。
『ピアノコンクール出て欲しい』と。
私がピアノに向き合えなかったことを、千歌ちゃんは私よりも考えてくれて言ってくれた。
千歌ちゃんは私を救ってくれた。私はそのコンクールで抱えてたスランプを抜け出すことができ、失ってしまった”気持ち”を取り戻せた気がした。
だから私は千歌ちゃんの気持ちに応えたい。そう思った。
そんな夏を越えて秋を迎え、ラブライブ地区予選が始まった。私達は全力を尽くしてライブを成功させた。
私の曲は会場のみんなに届き、ラブライブ本選に進むことができたけど学校を救うことはできなかった。音楽が届いても私の、千歌ちゃんの想いは届かなかった。
でも、浦の星の生徒には届いていた。
そしてラブライブで優勝して浦の星の名前を残して欲しいと言われた。
だから、私は今度こそ音楽だけじゃない、私たちの想いも届けたいって思った。
その想いはAqoursのみんなも同じで、私たちの想いはひとつだった。
ラブライブの決勝の日は、ドームに各自現地集合にするとこになり、各々が行きたいところに行ってから集合となった。
私は音ノ木坂に向かった。
今、ここで私の気持ちを確かめたい。今まで私がしてきたこと、向き合ってきた音楽、ピアノに対する気持ち。向き合えなかった時間。千歌ちゃん達と見て聞いてきたもの。
その全てがここにあって、今日たくさんの人に音楽を、想いを届けるために必要だと思った。
〜♪海に還るもの♪〜
しっかり弾けてる。昔、ここで弾けなかったこの曲が今ここで弾ける。千歌ちゃんと出会って変われた。しっかりこの気持ちを今度こそ届けたい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
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〜〜〜〜〜〜
梨子(ふぅー。ちゃんと弾けた)
そう思った刹那。
静寂に包まれたはずの音楽室に、一つの拍手が響いた。
?「まさか、先客がいたなんてね」
そう声をかけられた。
そこにはどこか懐かしい雰囲気を纏う赤髪の女性がいた。
?「いい曲ね」
梨子「あ、はい!ありがとうございます」
梨子「この曲、私がピアノに向き合えなくなって苦しい思いをしたけど、乗り越えられた大切な曲なんです」
梨子「ある人に出会ってなければ、私はきっとまだピアノに向き合えていないままだったと思います」
?「そう。って、?あなたもしかして梨子ちゃん?」
梨子「えっ?」
梨子(この人は私を知っている?私、どこかで会ったことがある?)
梨子「えっと、どこかでお会いしたことありましたか?」
?「えっ?私のこと覚えてない?」
梨子「す、すみません。」
?「昔同じピアノ教室に通ってたんだけど…」
梨子「ピアノ教室…」
ズキッ
?『あなたの憧れでい続ける!約束しましょ?』
梨子「?!」
梨子(今のは何?)
梨子「私は…」
?「あなたもしかして記憶が…」
?(もしかして、記憶障害を引き起こしている?最近パパの病院でも似たような症状の患者がいたはず。確か、何か強いストレスが原因で精神的に追い詰められた状況下で、頭に物理的なダメージが入ると起こる可能性がある。だったかしら?)
?(だとしたら、梨子ちゃんは何か強いストレスを抱えていた?さっきピアノに向き合えなかったって言ってたから原因は…それなら…)
?「あなた、昔に頭を強く打ったりしたことある?」
梨子「一年前に家でピアノの練習中に倒れて頭を打ったことがあります」
?(なるほど……強いストレスはやっぱり音楽に対することね。)
?(つまり…そういうことよね……)
?「…そう」
そう言って彼女は悲しげな表情を浮かべた。
なぜ、彼女はそんな表情をするのか。
なぜ、私がそんな表情にさせてしまったのか。
わからない。わからなかった。
わからなかったけど謝らなきゃ。
なぜかそう思った。
梨子「ごめんなさい」
?「いいえ、しょうがないことよ」
?「あなたが悪いわけじゃない」
梨子「でも私、あなたにそんな顔して欲しくなくて…」
梨子「何でかはわからないんですけど、本当にそう思って!」
梨子「…いきなりこんな話、訳わからないですよね」
私は彼女の悲しげな顔を見てすごく胸が痛くなった。この感覚は身に覚えがあった。
そう、この痛みはあの時と似ている。私がピアノを弾けなくなったあの時、音楽に向き合えなくなった時と。
梨子「もしかして私たち、昔にピアノ教室で会ってるんですか?」
?「それは…」
梨子「私はいつか大切なものを失ったような、そんな自覚があって」
梨子「でも、私はわからなくて、いつかわかる日が来るってそう思ってて」
梨子「でも、わからないまま…そのままピアノとも向き合えてなかったんです」
梨子「いつか向き合える日にわかると思ってました」
梨子「けど、私は千歌ちゃんに救ってもらっただけで私自身は進めてなかったのかも」
私はきっと前に進んでなんていなかった。私の弱さが彼女を悲しませた。私が出来ていたと思っていたことは、全て私の力なんかじゃなくて、千歌ちゃんやAqoursのみんなに支えられていたから、私は出来た気になっていただけだ、そう思えた。
?「それは違うわ」
彼女はそう言って私の言葉を否定した。
梨子「えっ」
?「それは違う。あなたは救い出してもらえた」
?「その感覚はなんとなく私にもわかる。あなたがどんなことで悩んで苦しい時間を過ごしてきたのか、きっと私が想像している事と少し違うかもしれない。もしかしたら全然違うかもしれない」
?「でも、向き合えなくなった音楽から救い出してもらえたことは私にもわかる」
?「だから自分は何もできてないなんて言わないで!!!」
彼女はさっきとは違う表情だった。怒っているけど、優しく真剣な目だった。
?「あなたにはしっかりとした実力はある」
?「そして、それを認めてくれる人がいるんだから」
?「だから、そんな風に自分を責めないの…」
目元が熱くなって、頬にスゥーっと冷たいものが流れた。気付いたらそれは、目から頬を通り越して、一滴また一滴と溢れ出していた。
ああ、そうか、今わたし泣いてるんだ。
梨子「私…わたし…」
?「ヴェ!な、何泣いてるのよ!」
梨子「すいません」
なんでわたしは泣いているんだろう。
怒った表情が怖かったからだろうか。
今、私がかけてもらいたかった言葉をもらったからだろうか。
Aqoursのみんな以外にちゃんと私をわかってくれる人がいたと思えたからだろうか。
違う。
きっと彼女に認めてもらえたことがなぜか嬉しかったからなんだと思った。
それで私は泣いてるのかわからないけど、きっとそうなんだと私は実感した。
?「もぉ、しっかりしなさいよ!」
?「あなたは自分の音楽にしっかり向き合った」
?「そして、気づかせてくれた人がいる」
?「だから、自分の音楽を信じなさい!」
?「あなたを信じてくれた人のためにも。ね?」
?「過去じゃなくて、未来を視なさい!」
彼女はそう言って私を励ましてくれた。そして、私の楽譜に手を伸ばした。
梨子「あっ」
?「やっぱり、さっきは少ししか聴けなかったけど、この楽譜を見ればわかるわ!」
?「あなたの音楽に対する気持ちが…」
?「!!?」
突然楽譜を見ていた彼女の手が止まり、私に楽譜を見せてきた。
?「ねぇ、これって」
梨子「?」
そこには”海に還るもの”ともう一つ楽譜があった。
なぜ私がそれを持っているのかわからなかった。思い出すこともできなかったけれどずっと持っていて、辛くなった時はその楽譜をずっと見ていた。
その楽譜は…
梨子「”愛してるばんざーい”…」
それは私が”初めて”見た時からずっと向き合ってきた楽譜。”海に還るもの”と向き合えなかった時でもずっと。
どうしてずっと向き合ってたかはわからないけど、向き合わなければいけないと、そう感じていたから。
?「ねぇ、あなたこれって弾ける?」
梨子「えっ、あっ、はい!」
?「じゃあ、私と一緒に弾きましょ?」
彼女はそう言ってピアノの前に座り、曲についての説明を始めた。
?「この楽譜にはない繰り返しや音があるから、その時は私が支持するから焦らずに入ってきて!もし入れなくても途中からでもいいから入ってきて!」
梨子「は、はい!わかりました」
梨子「…」
なぜか少し不安を感じていた。胸騒ぎのようなこの感覚をどのように表せばいいかはわからないけど、ほんの少しだけ不安を感じていた。
?「?」
?「ふふっ」
少し不思議そうな顔をしてから彼女は私に微笑みかけた。
きっと私が不安が顔に出ていたからだと思う。
?「それじゃ、いくわよ?梨子ちゃん」
梨子「は、はい!って、えっ?」
梨子(この人のピアノに向かう姿…どこかで…)
私がほんの少しの動揺をみせた刹那。彼女の指が鍵盤に触れ、ピアノが音を奏で始めた。
?「愛してるばんざ〜い」
?「ここでよかった〜私たちの今がここにある〜」
彼女はピアノを弾きながら楽譜にはない歌詞を歌い始めた。その時、その瞬間、私の中でたくさんの音が流れ始めた。
それは綺麗な音。楽しい音。辛い音。優しい音。
そう、それは私が今まで感じてきたもの。私が今までもらってきたもの。私の音楽に対する想い。その全てが音になって私の中で響いている。
そんな感覚を感じた。
〜〜〜〜〜〜
『まだちゃんと完成はしてないけど、いつかこれの完成版を私と梨子ちゃんの2人で弾きましょ!』
『うん!』
〜〜〜〜〜〜
これはいったい。
私の中で流れ出した音が形作っていく。
それはまるでずっと私の中で眠り続けた。
想い。 願い。 希望。
〜〜〜〜〜〜
『それじゃ、それまでにもっと上手くなってなさい!足引っ張ったりなんかしたらただじゃ置かないんだからね!!!』
『うん!私頑張ります!いつか◯◯◯さんと一緒に演奏するために!』
『私、◯◯さんに負けないくらい上手くなります!』
『ええ、それじゃまたいつか会いましょう』
〜〜〜〜〜〜
そうだ、私はこの約束を果たしたかったんだ。
だから”あの日”から私が音楽に向き合えなくなっても、この曲だけはずっと向き合うことができた。
一人で向かっていたはずの鍵盤だったけど、ずっと感じてた。
私は一人じゃないと。
それはAqoursのみんなの想いやAqoursの曲を聞いてくれるファンの気持ち。
そして、私の憧れた一人のピアニストとの大切な約束。
そう、気持ちはいつも繋がっていた。
Aqoursと…
みんなと…
真姫さんと……
真姫「大好きだ!ばんざ〜い!」
真姫「頑張〜れるから〜昨日に手を振〜て」
真姫「ほら〜前向いて〜」
真姫「ふぅ…」
真姫「ピアノ、上手になっ…」
真姫「いえ、ピアノ上手いのね」
梨子「あ、ありがとうございます」
真姫「もぉー、また泣いてる」
私の目からはまた涙が溢れていた。
けれどそれは…
梨子「違うんです」
真姫「?」
梨子「私、嬉しくて…」
梨子「昔、私が通っていたピアノ教室でピアノがすごく上手い人がいて」
梨子「私はその人みたいになりたいって思ったんです」
真姫「…そう」
梨子「そして、その人がピアノ教室を辞める時に約束したんです!」
梨子「次、会った時にこの曲を、愛してるばんざいを一緒に引こうって」
真姫「っ!あなたまさか!!」
梨子「はい…全部思い出しました」
梨子「真姫さんはずっと私の憧れでした!」
梨子「ずっと真姫さんみたいになりたいって思って、目標にしてきました」
梨子「でも、だんだん自分の演奏ができなくなっていって、ピアノに向き合えなくなって」
梨子「けど、真姫さんとの約束があったから私はピアノを続けていけました!」
梨子「そして、今日真姫さんと会うことができて…」
梨子「約束を果たすことができて、真姫さんに褒めてもらえた、それが嬉しくて」
真姫「…そう」
真姫さんはそう言って私を優しく抱きしめてくれた。
真姫「きっと辛かったと思う。大変だったと思う。」
真姫「私は梨子ちゃんじゃないから、梨子ちゃんが感じてきたことを考えても心の奥まではわからない」
真姫「でも、好きなことを嫌いになってしまうことや嫌いにならないといけない辛さ、悲しさは私にもわかる」
真姫「けど、梨子ちゃんはそれらを乗り越えた」
真姫「だから、自分の音楽を信じなさい!」
真姫「この私が認めたんだから!!!自信持ってよね?」
真姫さんはそう得意気に言ってくれた。
梨子「ありがとうございます…」
真姫「もぉー、だからもう泣きやみなさいよ!」
そう言った真姫さんの目には、すこしだけ涙が流れていた。
それから私たちは少しの間、いろんな話をした。
中学のコンクールで全国大会に出場できていたこと、私が真姫さんを追って音ノ木坂に入学したこと、うまく結果が残せなかったこと、私が倒れた時のこと、今は静岡でスクールアイドルをしていること、私を救ってくれたAqoursの存在のことを。
真姫「スクールアイドルね…」
真姫「なら、そろそろ行かないとまずいんじゃないの?」
梨子「どういうことですか?」
真姫「ほら」
真姫さんはそう言って時計を指差した。
梨子「えっ?もうこんな時間?」
時刻はラブライブ大会が始まる約一時間半前頃を指していて、千歌ちゃん達と合流して最後の打ち合わせをするには、ちょうど良い時間になっていた。
梨子「確かにそろそろ向かわないと!」
真姫「えぇ、早く行った方がいいわ!」
梨子「真姫さんはこの後どうするんですか?」
真姫「私?私はもう少しここにいるわ!」
真姫「それにこの後はちょっと予定があるし…」
梨子「そうなんですね、それじゃここでお別れですね!」
真姫「ええ、頑張りなさいよ?」
真姫「きっとあなたの音楽は届く!」
梨子「はい!ありがとうございました!」
そこで私と真姫さんは別れた。
そして私はAqoursの…千歌ちゃん達のもとへ急いだ。震えるほど緊張していても私を待つ場所へ。私を必要としてくれる人たちのもとへ。
千歌ちゃんはきっと秋葉原駅にいるはず。
早く千歌ちゃんに会いたい。
私は息を吸って大きく踏み出した。
曜「一人じゃないよ!千歌ちゃんは!」
千歌「ありがと」
秋葉原駅前、UTXの大きなスクリーンの前に千歌ちゃんと曜ちゃんがいた。
曜「あ、梨子ちゃん」
歩いて行くと曜ちゃんが私に気づいた。
曜「ピアノ弾けた?」
梨子「もちろん!」
私は曜ちゃんの問いかけに自信を持ってそう応えることができた。自分の過去にしっかり向き合って前に進めたと実感できたのだ。
千歌「梨子ちゃんはラブライブ勝ちたい?」
千歌ちゃんは私に問いかけた。
梨子「うん!」
私は強く、確実な返事を千歌ちゃんに返した。
梨子「私、自分が選んだ道が間違ってなかったって心の底から思えた」
真姫さんに憧れて進んできたこの道は間違ってなかった。
梨子「辛くてピアノから逃げた私を救ってくれた千歌ちゃん達との出会いこそが奇跡だったんだって」
千歌ちゃん達に出逢って生まれたこの感覚は絶対に間違いなんかじゃなかった。
梨子「だから勝ちたい!ラブライブで勝ちたい!!」
梨子「この道でよかったんだって証明したい!!!」
千歌ちゃんに、スクールアイドルに、Aqoursに出逢えたこの道が私の全てだって証明したい。
だから…
梨子「今を精一杯全力で!!心から!!!」
気がついたら私は、目に涙を浮かべながら千歌ちゃんと曜ちゃんに抱きつきながらこう言った。
梨子「スクールアイドルをやりたい!!!」
〜Fin〜
おまけ
真姫「きっとあなたの音楽は届く!」
梨子「はい!ありがとうございました!」
そう言って私は梨子ちゃんと別れた。
真姫「ふぅ、やっと約束を果たすことができた…」
私と梨子ちゃんがした約束は2つ。
1つ目は【私が大人になるまで梨子ちゃんの憧れでい続ける】
あの頃の私はパパの病院を継ぐために音楽は高校生までと決めていた。つまり”私が大人になるまで”と言うこと。約束をした当時は穂乃果達には出逢って無かったし、本当に高校で終わりにすると決めていた。
だから、曖昧な言葉で梨子ちゃんとそんな約束をしてしまった。ピアノ教室にも顔を出す頻度も減っていき、それでも私がずっとピアノを続けてると思ってくれればって梨子ちゃんのためになると考えてた。
けど、2つ目の約束【いつか2人で愛してるばんざーいを弾く】この約束をしたときは必ず守って叶えなきゃいけない約束だと思いながら約束をした。
梨子ちゃんにとっては、この約束が苦しめる結果に繋がってしまったのかもしれないけど、少なくとも私にとっては大きく大切な約束になった。結果として大学に行っても音楽を続けるためのきっかけになったから。
そして、私はまだ”大人になっても”梨子ちゃんの憧れでい続けることが出来た。
真姫「今日ここにたまたま来てよかった」
真姫「いや、今日ここに来たのは運命のいたずらだったのかしら?」
真姫(にしても、あの梨子ちゃんが私と同じ道を進んでいたなんて思わなかったわ)
真姫(私と同じく梨子ちゃんも音楽に対して悩んで、救ってもらってスクールアイドルになった…)
私が今日ここに来たのは、あの日のことを忘れないため、思い出すためにここへ来た。
それは今日だけに限られたことじゃなくて、大学の勉強にいき詰まった時や初心を思い出したい時に私はここに来る。
〜〜〜〜〜〜〜〜
『すごいすごいすごい!感動しちゃったよ!』
『あなた歌、上手だね!』
『ピアノも上手だね!!』
『それに、アイドルみたいでかわいい!!!』
〜〜〜〜〜〜〜〜
私はあの日のことを思い出していた。穂乃果と会ったあの日のことを…
真姫「…」
真姫「今日はもう大丈夫ね…」
私は音ノ木坂を後にして彼女たちのもとへ向かった。
私を待つ場所へ。
凛「あっ!真姫ちゃん!遅いにゃ!」
真姫「だから待ってないで先に行っててもいいって言ったのに!」
花陽「ふふっ」
凛「?」
凛「どうしたのかよちん?」
花陽「なんだか、懐かしいなって思って」
真姫「なにがよ?」
花陽「ラブライブ地区予選のときもこんな感じだったから」
真姫「そう言えばそうだったわね」
凛「あの頃は凛たちもまだ高校生かぁ〜」
凛「凛たちもずいぶんと大人になったにゃ!」
真姫「凛はあの頃と全然変わらないけどね」
凛「にゃにゃ?!」
花陽「そうだね!」
凛「えー、かよちんまで!!!」
そんな会話をしながら私たちは目的地に向かって歩いていた。歩いてる途中に私たちはいろんな話をしていた。
私たちがスクールアイドルだった時の話、にこちゃんたちが卒業した時の話、穂乃果たちが卒業した時の話、私たちの卒業の話。たくさんの話をした。
まだそんなに時間は経っていないはずなのに、こんなにも懐かしく思えるのはきっと。
きっと私にとって高校生活が…
μ'sが特別だったからだと思う…
そんな話に想いを膨らませていたら目的地に到着した。
凛「とぉーちゃーく!!」
花陽「もぉー、凛ちゃんあんまりはしゃぎすぎちゃダメだよぉ!!」
真姫「ほっんと凛は子供ね」
凛「そんなことないもん!」
花陽「なんだかここに来るのも久しぶりに感じちゃうなぁ」
凛「えー!半年前に来たばかりにゃ!」
花陽「そうだけど、なんか思い出しちゃうの…」
真姫「そうね…」
真姫「でも、あの時とは違うんだから」
花陽「でも、やっぱりアキバドームに来るだけで…ね?」
凛「今年はどんなスクールアイドルがいるのかな?」
そう、私たちは今アキバドームに来ていた。理由はスクールアイドルの流れを作ったA-RISEとμ'sが、特別にラブライブ決勝の場に呼ばれ、ライブを見ることができるため、毎年夏の終わりと春の始まりの二回、ここアキバドームに招待される。
凛「あ、穂乃果ちゃんたちだ!おーい!!」
ことり「あ!凛ちゃん!久しぶり〜!」
海未「真姫たちもお久しぶりです!」
花陽「今回はことりちゃん来れたんだね!」
ことり「うん!夏は向こうが忙しくてこっちに帰ってこれなかったから」
ことり「だから今日みんなに会えるのがすっごく楽しみだったの!!」
穂乃果「ことりちゃんはすごいんだよ!!有名な洋服会社の社長さんたちに声かけられてるんだもん!!」
海未「なんで穂乃果が自慢げ何ですか!?」
にこ「もぉ!遅いわよあんたたち!」
凛「あ!にこちゃん!久しぶりにゃー!」
花陽「ずっと一人でいたの?」
にこ「違うわよ!ちゃんと希と絵里がいるわよ!」
絵里「あら穂乃果!久しぶり!」
希「みんな元気にしてた?」
穂乃果「絵里ちゃん!希ちゃん!」
にこ「ほらね!」
希「えりちとうちが飲み物買いに行っている間に〜、にこっちがどこか行っちゃって探してたんよぉ〜」
凛「えっ?にこちゃん迷子だったの?」
にこ「違うわよ!あんた達がいたから声かけに来たんじゃない!」
希「ほんとにぃ〜?」
にこ「さっき声かけてから離れたじゃない!!」
にこ「ほら行くわよ!」
μ'sの9人が集まって私たちはライブがよく見える特等室に向かっていた。
花陽「にこちゃんは今回の注目のスクールアイドルっているの?」
にこ「私は北海道のスクールアイドル、saint snowに注目をしてたんだけどね」
花陽「あのグループは確かに優勝候補と言われてて実力もあったのに、まさかの予選敗退は驚かれてたね」
にこ「そう。でも、いつどんなことが起こるかわからない。だからこそ身体的にも精神的にも準備が必要になる。」
にこ「その準備をしても本番ではどうなるかわからない。でもやっぱりびっくりしたわ」
穂乃果「私はAqoursってグループかな?」
にこ「へぇ、穂乃果がこんなに早く気になるグループあるなんて珍しいじゃない!!どうしたのよ?」
穂乃果「うーん…」
穂乃果「なんか前にね、動画見ててね、なんかすごいな!キラキラしてるなぁって思ったの!!!」
絵里「穂乃果らしいわね!」
真姫「私もAqoursには注目してるわ!あのグループならきっと優勝するんじゃないかしら?」
海未「真姫がライブを全部見る前にそこまで断言するのは珍しいですね!」
希「何か優勝するって思う理由でもあるん?」
真姫「別に、そういうのではないけど…」
真姫「ただ…」
真姫「Aqoursの曲は会場の人たち全員にきっと届くわ!!」
〜Fin〜