ジェイコブ→妹
グリーンちゃん→女子
性転換のスーパー短編です。
テムズ川、船の上で。
僕は高所であたりを眺めていた。行き交う人々の中に紛れ込むブライターズ。そして彼らが向かう、拠点。スターリックとロスが亡き今も活動は続いている。
さあ、潜入の始まりだ。イーグルダイブで川に飛び込み、そのまま近くの岸まで。フードをかぶって僕は、物陰へと近づいた。
「〜♪」
「あ?なんの音だ」
口笛でおびき寄せて始末はたやすい。
「おいおい、グリーン君がオロオロしてたぜ?」
偉そうにどかっと机に足を乗っける妹、ジェイス・フライ。丸いハットのツバを上げ、いつも通りのイラッとくる笑顔で僕を見た。
「オロオロなんてしてないわ。……ただちょっと心配なだけ」
「おいおい!聞いたか兄貴!グリーン君ってばロンドンを救った伝説のアサシン、エヴィル・フライをご心配したようだ!……おアツイねえ?」
「私は……うぅん」
「相手にしないでヘレン」
ジェイスはいつもこの調子だ。女の子らしくいろなんて父さんは言わなかったけど、せめて慎ましくあれと思う。僕の紳士ぶりを見てみろよ。
「で?天下のエヴィル様はあたしより遅れたわけだが。どうした?こそこそしてたら時間が過ぎちゃったか?」
「どうせあんたも暴れてきたんでしょ?僕のやり方を見習えよ。まだ尻拭いして欲しいの?」
「おいおい、あたしだって兄貴に迷惑かけたいわけじゃあないって。暴れるのも戦略だぜ?なぁグリーン君?」
ナックルをぶんぶん振り回す彼女に、ヘレンは呆れ顔をした。僕とヘレンを交互に見て、ジェイスはいささか不満そうだ。
「仕事の効率化だって。な?現に早く終わってるじゃないか」
「20分ね。騒ぎを起こして面倒なことになったと考えれば高すぎる代償」
「……やれやれ、お揃いで頭が固いねえ」
呆れたぜと言わんばかりの様子の彼女。呆れるのは僕の方なんだが?
「で?もう行くか?」
「うん、行こ」
そう、今日はなんとヴィクトリア女王陛下から直々にお呼びがかかったのだ。お手紙が来た時はお叱りかとビビったものだが、パーティにご招待ということである。
「列車の隠れ家は今ウェストミンスター駅にあるよ」
「じゃあすぐ近くってわけだ。行くか!」
彼女の言う通り、駅に着くのはすぐだった。列車の隠れ家へ入り、動き出す。宮殿近くで降りよう。
「見つけたぞ!」
だが平穏に済むわけもなかった。併走する列車から、テンプル騎士が銃を構えた。
「はっ!」
すぐさまヘレンがククリを投げつけ、始末。わざとらしくジェイスが「よくやるわねェ」だなんて言う。そして彼女はナックルを持ち、隣へ飛び移った。
「えェ?生意気やるじゃねえか!!」
「ちょっと、ジェイス!?」
ヘレンが身を乗り出す。叫びたくもなるよそりゃ。暴れん坊がすぎるなあ彼女はやっぱり。
「……!」
「フライの妹!お前からまず殺してやる!」
ほら追い詰められてる。僕も応援のため飛び移る。
「死ねェ!うおおおうぶっ」
ナイフを振り上げたテンプル騎士の1人に、僕がケインソードをぶん投げた。だがよく見るとジェイスもアサシンブレードを構えていた。
「おいおい?困るぜエヴィル。あたしがすぱっとカッコよくやろうとしてたってのにな」
「いいから君ちょっと黙って」
彼女に任せてられない。3、4人始末したようだが、まだいるであろう。フードをかぶって僕は隠れた。ジェイスもちょっと不満そうではあるが、帽子を脱いでフードをかぶった。
「ん!?そこに!?」
すかさず煙幕。むせるテンプル騎士を床に叩きつけ、とどめを刺した。ジェイスがそいつを蹴っ飛ばしながら駆け抜け、スライディングで足をすくってもう1人始末。
「一応わかってるじゃないか」
「ある意味あたしのが柔軟、だろ?」
「僕だって必要ならやるよ」
杖を振り回して見せるが、わざとらしくビビるジェイス。ふざけてんのか君は。いや、ふざけてるか。
「あとはあいつだ。よし、くr」
「ふっ!」
構えた彼女に合わせる必要はない。投げナイフでサクッと始末だ。不満そうなジェイスはどうだっていい。僕たちは隠れ家の方へ飛び移った。
「……無事?」
外に銃を構えたヘレンが僕たちを見て一息。彼女に回収したククリを渡し、僕はソファへ座った。
「さて、女王陛下に謁見だぜ」
「だね」
降りる僕たち。ジェイスと僕は顔を見合わせる。
「あなたたち、結局兄妹だよね」
「分かる?兄貴ってば素直じゃないもんな」
「なんだっていいでしょ。ほら!宮殿まで競争だ!!」
笑いつつ帽子を被り直す僕の妹。さあ、スタートだ。