--……起きろ、起きろ!起きないと殺されるぞ!起きろ!
何処からか声が聞こえる。私は回らない頭と滑舌で口を開く。
「ん?なんだ?私は死んだのか?」
「何寝ぼけているんですか…まあ、貴方達のお陰で紫の偽物はなんとか倒せましたが…」
疲労で体が重い。何がどうなっているんだ?とりあえず疲労を何とかするために予備のトマトゼリーを開けた。一口食べただけで本当に身体中に元気が沸いてくる。このトマトは魔力もない癖にまるでマジックアイテムのようだ。このトマトの一番スゴいところは必要以上に元気にならないということ。麻薬や強精剤なんかみたいにハイになって誤魔化しているという訳ではなく、正真正銘の全回復ってヤツだ。全快なら食べても効果がない。だからあの時はただただ美味しいだけのトマトだと思ってしまったのだ。
体力を取り戻した私は立ち上がり、辺りを見渡した。大量の壺が置かれている。
「あの壺はなんだ?」
「全部蓬莱の薬です。紫の偽物が大量生産して結界内に隠し持ってたらしく、止めを刺したら大量に…しかしこの量は、いくら月の技術を奪っても不可能です。」
壺を見てみると不自然なぐらい全く同じだ。蓋に使われている木材の木目すら完璧に同じなのだ。トマトゼリーの耐熱瓶をいくつか見比べてみると、一部の傷が不自然に一致している。一致していない傷は運ぶ際に付いたものだと考えればだが、思考から量産された物は全く同じ状態で出されるという証拠になる。つまり…
「これは誰かの思考を覗き込んで取り出したものだな。実際このトマトゼリーだってカービィの頭の中から量産されたものだ。本物ができることは偽物もできたって不思議じゃないぜ。」
「ですが、そんな都合よく蓬莱の薬のことを考えている人なんて居るんですかね?」
「拷問、あるいは誘導をかければ…そう言えば豊姫って行方不明なんだよな?」
私の予想が正しければ、量産の道具に使われたのはアイツだろう。
「いえ、封印が何度も試されたということは、少なくとも月の何処かに居るは…ず…」
依姫の顔が真っ青に染まる。
「やっぱりな。恐らく牢獄送りにしたときにレジストされて逆に閉じ込められたんじゃないか?アイツら偽物の癖に本物より強いしな。豊姫は多分勝てないのは分かってて、封印は時間稼ぎ…
おっと、もうこっちに来ちまったか。まだ囮と遊んでても良かったんだぜ?」
唐突にお札が横から飛んできたので絵筆でラインを描いて防いでやった。霊夢の偽物がこっちに来たのだ。
「あの…囮は全壊したって連絡があって慌てて起こしたんですが…」
「え?あ、そうなの?しかし惜しかったな、あと1分早く来てたらお前ら偽物の勝利だったのによ。囮は無視すれば良かったのにわざわざ全壊させるとか、脳味噌あるのかお前?あ、絵画に脳味噌もクソもないか(笑)。」
「(なに煽っているんですか?戦う気あるんですか?)」
「(正面から行っても勝ち目ないし、正直コイツをどうやって封印するかも考え付いて無いんだ。適当に時間稼いでその間に封印空間に誘導する方法を考えなきゃ。)」
「(えぇ…(困惑))」
とはいえ、私の中には既に希望は見えていた。無敵のアイツを止めるには、もしかしたらあの二人のタッグが強いかもしれない。穢れていたって月の都が維持できなくなるだけで、月の民が弱くなる訳じゃないからな。