「まてよ…いいことを思いついた。ふふ。」
「この勝負、ワシらがもろたで!」
「ちょとデデデ大王なんでオオサカ弁になっちゃってんのそれって?」
そっちはそっちで全く訳の分からない会話が聞こえてくる。コイツら血の池の瘴気にやられたか?
「お前ら何嘲っているんだ?」
「いや、さっきの戦いを見てだな…」
「ワシらの勝ちが確定したと言っても過言じゃないと思っただけぞい。もっと早くにこの戦略に気が付いていたら、もっと早く帰れたかもな。(ほんと、無駄か多いんだよめんどくさいぞい。)」
それはメタなのか文句なのか分からんが()で漏れてるぞ~
「それよりコピー能力を解除させた方がいいんじゃないか?」
ああ、そうだった。カービィに饕餮を吐き(?)出させると、饕餮はメタナイトが夜な夜なこっそり食べてるパフェを持っていた。饕餮は何を思ったのか、少し歪んだ表情で口を開いた。
「これをそこの仮面が夜中に毎日食べてるってなるとめっちゃ妬ましいな。石油なんかよりもよっぽどいいぞコイツはよお。」
「なっ、毎日食べてるわけではないぞ!!」
「(これはマジで毎日食べてるな)」
「(ぼよぽよ)(夜な夜なこっそりね)」
「(よくそんなんで肥らんぞい、妬ましくなってきた)」
「で、結局どうやってアイツを倒すつもりだぜ?」
「簡単な話さ。あの時もデデデ大王のビックバン吸い込みは有効だったし(口に入る直前でカウンター食らってたけど…)、それにあのトウテツをコピーしたカービィから発想を得たんだがな、カクカクシカジカで…」
作戦を簡潔に説明するとこうだ。例の方法で霊界トランスに入ったカービィに万能のしずくを過剰投与する。そしてそのまま例の魔女をごっくんするだけだ。万能のしずくは本来きせきの実から採れる液体なので、ここまで精密な紛い物ならきせきの実の効果があるだろうとのこと。因みにきせきの実は潜在能力をある程度引き出す効果があるらしい。そしてその効果が発動するのに十分な力を、呪いの解けたカービィなら持っているのだとか。もしこの作戦が有効であれば、霊界トランスときせきの実の相乗効果でエグいことになる。この相乗効果についてはどうやらメタナイトたちは考えていない様子だ。ゲシュタルト崩壊待った無しだなこれは。
「それよりアイツはどこ行ったんだぞい?」
「そういえばそうだな、こんな油まみれの所で油売ってていいわけないよな。」
と、ここで地上の紫達から連絡が入る。
「インクを失って逃げちゃったみたいだったからアイツが逃げそうな場所に絞って探してみたんだけど、見つけたわよ。妖怪の山の、例の噂になっているところで。」
「なに?そいつは助かるぜ!神子の絵画使うからついでに取り出して置いてくれ、よろしく頼むぜ。」
そして私達は紫のスキマに飛び込むと、そこはとっても明るい洞窟だった。洞窟の外は相変わらず絵画でできた真冬の満月の夜だが、中はまるで本物の太陽の光を浴びているような感覚だ。人間にとっては心地のよい環境とはいえ、満月の光が横から差しているからか妖怪は一匹も見当たらない。食べかけで逃げ出したのか、乾燥した酒のつまみとアルコールの抜けた日本酒が転がっている。酒のつまみの中には図鑑でしか見たことがないイカやタコなんかの海洋生物でできたものもある。そんななか無人で働く工場、その向こうに今にも外の世界に逃げようとするアイツが。本当に結界に穴が開けられているんだな。
「よっしゃカービィ行くぞ!」
神子の絵画を食べさせると、黄金に輝くリングに2つの紫の星を纏った。神子をコピーしたカービィをつっつくと、霊界トランスを発動した。初めて見る本来の姿は想像通りの可愛らしい生き物であった。
「カービィ!吸い込みよー!」
デデデ大王が声を裏返して叫ぶと、メタナイトが万能のしずくをあるだけ全部カービィに向かって投げた。カービィは凄まじい勢いでそれを吸い込み、なんと虹色に輝きだしたのだ!
「やった!あれぞビッグバンカービィ…!」
「いっけー!やっちゃうぞい!」
落ちていた酒もつまみも、それどころか無人の工場も、この洞窟の光も、結界の穴も、そしてあの魔女すらもどんどんカービィに吸い込まれていく。まるでブラックホールをホワイトホール側から見ているような気分だ。カービィが全てを飲み込むと、洞窟は真っ暗になり、出入口は炎の色で染まっていた。ボールに戻って眠ってしまったカービィを抱き抱えて洞窟を出ると、絵画の背景はジリジリと燃え、その後ろからは朝日が上る寸前の、本来の背景が顔を見せていた。
目の前には初めて見る筈なのに、ずっと昔から知っているような気がする絵画が落ちてい…