~陸斗side~
授業が始まった。
「授業を始める前に、ひとつ決めなければならないことがある。再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めなければならない。」
ん?クラス対抗戦?なんだそれは?一夏は知ってるのか?……どうやら知らないみたいだ。ちんぷんかんぷんって顔してる。
「知らない者もいるかも知れないので一応説明しておくが、クラス代表者とはそのままの意味だ。クラス同士で行われる対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席など……まあ、クラス長のような役割と思ってもらって構わん。ちなみにクラス対抗戦は入学時点での各クラスの実力とそれ以降の実力の推移の目安を測るものだ。今の時点で大した差は無いが、競争は向上心を生む。一度決まると一年間変更はしないからな。」
なるほど。おそらく『知らないもの』って俺と一夏だろうな。やっぱり千冬さんは優しい。ああいう女性が社会に増えて行ってくれれば……。
まあそれは置いといて。俺は絶対やりたくないな。というか俺がやったら批難されるのは目に見えている。
「さてそれでだ。誰が代表者になる?自薦他薦は問わない。誰かいるか?」
千冬さんの言葉に一度クラスから音が消える。
よし、俺以外なら誰でもいいぞ。誰か勝手になっといてくれ。そして勝手に学校生活を送っていてくれ。で、願わくば一夏と箒、それとあとさっき俺を非難しなかった人たち(Ep.10参照)以外誰も俺に関わらないでくれ。
俺がそんな事を心中で思っていると、1人の女子が手を挙げた。
「はい!織斑君を推薦します!」
よし、一番理想的な形だ!
「私もそれがいいと思います!!」
「私も!」「私も!」「賛成!」
よっしゃあ!そのまま一夏に決まってしまえ!当の一夏はというとなんかぼけーっとしている。今のうちだ!!
「候補者は織斑一夏と……他にいないか?いないなら無投票当選だぞ?」
「え、お、俺!?いや、だ、ダメだそんなの!」
その時、教室の後ろの方で力強く机を叩く音が聞こえた。
「(バァン!!)納得がいきませんわ!!!」
後ろを見るとセシリア・オルコットが片手を机に、もう片方の手を腰に当てて前をにらむように少し背を丸めて立っている。
「そのような選出は認められません!!大体、男がクラス代表だなんていい恥晒しですわ!!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」
どうやらこいつはよっぽど自分のことを天才だとでも思っているらしい。
勘違いもいいところだ。こんなやつが天才なら世界はとっくに崩壊している。あ、今の世界はそれが通じてるからこんなにもクズな世界になっているのか。納得。
「実力から行けば入試で唯一試験官を倒したわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!!わたくしはこのような島国までわざわざ来ているのは、IS技術の修練に来ているのです!!サーカスのために来ているのではありませんわ!!大体こんな国にこの様な施設が有ること事態がおかしいのです!!極東なぞの遅れている国にこの様な重大な施設を作るなどどうかしておりますわ!!」
「入試ってあれか? IS動かして戦う」
「それ以外にないでしょう」
「俺も倒したぞ、教官」
「……は?」
セシリア・オルコットの顔が『開いた口が塞がらない』状態になっている。めちゃくちゃ面白い顔だ。
「わ、わたくしだけと聞きましたが?」
「知らねえよ。女子の中じゃってオチじゃねえの?陸斗、お前は?」
「俺はペーパーだけだ。実戦テストは免除らしい。」
「どうせあなたみたいな無能は戦っても無駄ですものね!先生方は正しい判断をしたようですわ!」
まあ『無能』以外は合ってるだろうな。別に俺が『有能』っていうわけじゃないけど、温室育ちのぺーぺー教師共との戦いなんて時間の無駄だ。
言わせてもらえばこのIS学園にいる教師たちなんぞに負ける気はさらさらない。もちろん千冬さんにも勝てる。事実何回か手合せしたけど全部勝ってるし。たとえ千冬さんがISに乗っても俺が死神の力を使えば勝てる。正直なところ、あの能力はこの世界ではチートだ。瞬歩の速さも、一太刀の鋭さも、斬魄刀の特殊能力も、そしてなにより
俺は別段『無能』という言葉に腹が立つわけでもないので、セシリア・オルコットのことは悉く無視する。
「大体!!文化として後進的な国に暮らさなくてはいけない事自体、わたくしにとっては耐え難い苦痛で……!!」
文化として後進的?まさかこいつ束さんの開発を『後進的』だなんて言うんじゃないんだろうな?
「イギリスにだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理何年1位だよ」
「あなた!私の祖国を侮辱しますの!?」
「先に侮辱したのはそっちだろ!」
「決闘ですわ!」
「おお、いいぜ。受けてたとうじゃないか」
……このクラスはどうやらバトルジャンキーが多いらしい。
「二人とも、話は纏まったな。では来週の月曜日に決定戦を行う。西條、お前の勝負はその次の日の火曜日だ。」
「ワザと負けたりしたらその時はわかってますわね?」
「そんなことはしないさ。で、ハンデはどれくらい付ける?」
「あら、早速お願いかしら?」
「いや、俺達がどれくらいハンデつけたらいいのかなと」
一夏、流石にお前がその言葉を言うのは冗談に等しいと思うぞ……。
「「「「「「「「「「アハハハハ!」」」」」」」」」」
やっぱり……。
「織斑くんそれ本気で言ってるの?」
「男が女よりも強かったのってISができる前までの話だよ!」
「今じゃ男は女よりも弱いって言われてるよ?」
「あっ…………」
「もし男と女が戦争したら三日もたないって言われてるよ」
その時だった。教室の前に立っていた『女性最強』である教師が口を開いた。
「ほう、お前たちはそう思っているのか。どうだ、西條?今の『三日もたない』という言葉についてお前はどう思う?」
「……まったくのでたらめですね。俺にかかれば1日で男性側に勝利をもたらすことができる。」
その言葉にまたもや反論がふりかかる。
「「「「「「「「「「あははははははは」」」」」」」」」」
「何その冗談」「面白すぎ!」「てかそこのクズって本当に馬鹿ね。」「現実知らなさすぎだね~」「もう面白い通り越して逆に笑えないんだけど」
この時教室を見回すと、やはり先ほどの俺を非難しなかった人たち(Ep.10参照)は俺に何も非難を浴びせない。
よし、俺はこの人たちだけは命を懸けて守ろう。
そう思いながら見回していると、もう一人俺に非難を浴びせなかった人がいる。それはほかでもない、セシリア・オルコットだった。
だが、彼女は俺のことを思って非難を浴びせているのではなく、怒りをこらえるようにうつむきながら体をプルプルと震わせているだけだった。
「あ、あ、あ、あなたも私のことを侮辱しますの!?」
先ほどの俺の発言を『この世の女性など雑魚に過ぎない。お前もそのうちの一人だ』とでも解釈したのだろう。俺はそんなこと一言も言ってないのだが……。
「もう許しませんわ!あなたみたいなクズ、の小間使……いえ、奴隷にしますわ!」
「そうだそうだ」「いいぞ~オルコットさん!」「そんなやつ奴隷にしちゃえ!」「それでこき使ってやれ!」
『奴隷』だと……?
「おい、お前ら、今『奴隷』って言ったか……?」
俺の怒りの雰囲気が伝わったのだろうか、周りが一瞬で静かになる。中には歯をカチカチ鳴らす者までいる。
「お前ら、実際の奴隷がどんなに過酷なものか分かって言ってんだろうな?」
その言葉に全員が下を向く。
「オルコット、まさかお前小間使いや召使いと奴隷を同じようなものとして見てたんじゃないだろうな?」
「え、ええ。所詮奴隷なんて召使いのようなものでしょ?」
「ふざけんな!!!!!!!」
そんなことがあってたまるか。俺は今まで戦争捕虜として奴隷にされた男性を数多く見てきた。中には酷い仕打ちを受けている子供もいた。あんなに酷い仕打ちの中決して生きることを諦めなかった強い人たちだ。こんなやつらにそんな軽んじられていいはずがない。
「お前らは絶対に許さない。今俺を罵ったやつら、全員本当の奴隷がどんなものか教えてやる。次の俺とオルコットの試合、俺が勝ったら全員俺の奴隷にしてやるからな。覚悟しておけ。ちなみに俺を罵ったやつらは全員覚えてるから逃げようとしても無駄だからな。」
今の俺はよっぽど怖かったのだろう、みんな反論しようと俺の目を見るが、その瞬間全員下を向く。
「そしてセシリア・オルコット、お前だけは絶対に許さない。この世界で今も奴隷として苦しんでる人々に死んで詫びさせてやる。」
それだけ言うと、俺は自分の席に座った。
~時が過ぎ昼休み~
昼休みになった。この時間までに俺を罵ったやつらは全員千冬さんに連行された。残ったのは俺と一夏と7人の女子だった。7人の中にはうれしいことに箒がいた。
少し重い空気が漂う中、俺はみんなの方向を向く。
「みんな、さっきの時間は不快な思いをさせちゃってごめん。みんなは俺のことを見かけや男っていうことで差別しなかった優しい人たちだ。できれば俺はそんな人と関わっていきたい。もし俺のことを許してくれるならこれから仲良くしてほしい。」
すると袖から手が出ないほどダボダボな制服を着た一人の女生徒が右の手(袖?)をあげながら答える。
「私は全然いいよ~。さっきのはクラスの子の方が悪いよ~。だよね~、みんな?」
その女生徒がクラスに残ってる女子たちに呼びかける。
「うん!こちらこそ仲良くしようね!」「こちらこそ!でも流石にさっきのは怖かったな~」「男の子と仲良くなれるなんてラッキー!」
この教室に残った女の子たちは皆いい子ばかりでうれしかった。
「ありがとう、みんな。じゃあ名前を教えてくれるかな?」
そういうと、先ほどのダボダボな女子が一番最初に答える。
「はいは~い!布仏 本音だよ~。よろしくね~、りくりく~。」
「私は相川 清香!ハンドボール部だよ!よろしくね!」
「谷本 癒子」「鷹月 静寐です。」「夜竹さやかだよ!流石にさっきみたいなのはもう勘弁してね?」
全員の名前と顔を合わせていく。
「陸斗、私はお前に感謝している。だから何があろうと私はお前の味方だ。」
そう言ってくれたのは箒だった。
「ありがとう。そう言ってもらえるとこちらとしても気が楽になる。」
これで女子6人。
「陸斗、流石にさっきのはやりすぎだろ。」
苦笑いしながら一夏が話しかけてくる。
「イケメンは黙りなされ。」
「ええ!ひでぇ!」
「冗談だよ。まああれは許せ。」
ええとこれで女子6人に男子1人。あれ、そういえばさっき女子は7人いたような……。
「あの、瀬川美月です。よろしくね、西條陸斗君?」
後ろを向くと茶色の髪をした女の子が立っていた。髪の毛の茶色はどちらかというと暗めなほうの茶色ではあったが、その色や髪のツヤは決して染めたものではないような綺麗なものだった。
ちなみに俺も茶髪だが地毛だ。
「こちらこそよろしく。」
目の前にいる美月さんはとてもお淑やかで女性として綺麗な女の子だった。
「美月……か……。」
俺は『生き別れになった妹の名前も美月だったなあ』と思いながら、誰にも聞こえないようにその名前をつぶやいた。
その後の授業では織斑一夏に専用機が渡されると通達されたぐらいで何も目立ったことはなかった。
~放課後~
今俺は千冬さんと応接室で対面している。
「それで、久々の学校生活はどうだ、陸斗?」
「正直に言うと最悪ですよ、織斑先生。」
「ここでは織斑先生じゃなくていい。まあいきなりああなってしまってはそう思うのが当然だろう。しかしな、最初はクラスの馬鹿共が悪かったといっても、その後の対応はお前にも非があるぞ?」
「千冬さんに迷惑をかけたというのなら謝ります。ですが俺はクラスメイトには謝りたくありません。」
「はぁ、まったく、お前ってやつは……。」
千冬さんが額に手を当てて苦い顔をする。
「それで、今日自分を放課後に呼んだ理由は何ですか?」
「これからの寮生活についてだ。本当は呼ぶつもりではなかったんだが、今日のお前の学校生活で少し事前に話す必要があると判断した。」
「と、言うと?」
「寮の部屋割りなんだが、急な変更ができなかったせいでお前は女子と相部屋することになった。」
「え、嫌なんですけど……」
あまりにも俺がはっきり言いすぎたせいで、千冬さんの顔がよりいっそう険しくなる。
「で、その相部屋の相手は誰なんですか?」
「クラスメイトの鷹月静寐だ。」
「ああ。それなら大丈夫です。」
「なに?それは本当か?」
「ええ、彼女は自分のことを罵らなかった数少ない女生徒のひとりですから。」
それを聞いて千冬さんがほっとする。
「そうか。それではこれがお前の部屋のカギだ。あと、週に1回、もしくは2回、カウンセリングという名目の私との面談をすることになった。日時等はこちらから追って連絡する。今日の話は以上だ。……少しぐらいは学園生活を楽しめよ?」
「わかりました、千冬さん。それじゃあこれからお世話になります。」
そう言って俺は応接室を後にした。
~1019号室前~
え~っと、俺の部屋は……あ、ここだ。礼儀としてノックぐらいは必要だよな?
コンコン
「は~い」ガチャ
中から鷹月さんが普段着で出てくる。
「え!?西條君!?」
「ああ。今日からこの部屋で一緒に生活することになった。男子と同室で少し面倒なこともあると思うが、よろしく頼む。」
「え、ええええええええ!!!」
「え、なになに?どうしたの?」「今の叫び声は?」
鷹月の驚いた声があまりにも大きすぎたせいでいくつかの部屋のドアが開き、中から女生徒が顔を出し始めた。
「む、これはまずい。すまないが入らせてもらうぞ。」
そう言ってすぐさま俺は部屋へと入った。
「同じ部屋になった西條陸斗だ。よろしく。」
「鷹月静寐です。こちらこそ、よろしくお願いします。」
その後いろいろと取り決めをしているとどこかから男の叫び声が聞こえた気がするが、気のせいだという判断を下して無視することにした。
その男の叫び声が結局何だったのかはまた別の話で。
はい、作者大好きモブキャラ登場
でもISのモブキャラってかわいくないですか?
ちなみに作者の好みは夜竹さゆかと鷹月静寐です。
おそらくその2人は今後も大事になってくると思われます!