死神がISの世界に 改   作:岩男 一前

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こんばんは!

もう前書きはいりませんね?

それではスタート!


Ep.15 ファイティング オブ リクト セカンド

~山田先生side~

 

「な、何ですかあれは!?」

 

私は誰もいない管制室で一人で叫んでいました。

 

驚くのも当然です。あの西條君の禍々しい殺気。とてもこの前まで義務教育を受けていた子供が出せる雰囲気ではありません。あ、そういえば中学にはまともに言ってないんでしたっけ………。そ、それはともかく、私もこれでも一応代表候補生として結構な数の対外試合をしてきました。どれも各国の国家代表や代表候補生。それはもう集中力は凄まじい物でした。一瞬でも気を抜けば一気に押し切られてしまうほど………。

 

ですが、今目の前に映っている西條君の殺気は、今まで感じてきたどの気迫よりも恐ろしい物です。いや、恐ろしいなんて言葉では足りません。次元が違います。画面で見ているだけの私ですらここまでの影響を受ける程です。あの目の前に立っているオルコットさんは一体どれだけの恐怖を感じているのでしょうか………。

 

~セシリアside~

 

「『あ、あ、あ………』」

 

私は今信じられないものを見ています。目の前には今にも何もかもを否定する勢いで私に殺気を浴びせてくる巨人のようなもの。

 

訓練の時に学んだ、『相手の気迫にやられたら、怯む前にわざと挑発して自分を鼓舞しろ』というのが全く実行できません。………いえ、今ここで挑発してしまったら全てが一瞬で終わる。本能が私の発声機能を無理やり止めてくれている感覚です。

 

「『どうしたオルコット?さっきまでの威勢は?』」

「『あ、あ、あ………』」

「『どうした女子共。何か言ってきたらどうだ?』」

 

彼の視線の移動につられて、私も視線を観客席の方向へと移します。

 

そこはまさに地獄絵図のようなものでした。

 

どうやら彼はその殺気を完全にコントロールしているらしく、彼を罵らなかった数名の女子以外は、全員その殺気にやられて歯をカチカチ鳴らしたり、大泣きしたり、中には嗚咽を漏らしている生徒もいます。

 

「『どうした?ただ殺気を当てられただけだろう?世界で奴隷として扱われてる人たちは、毎日毎日がこれ以上の恐怖と苦痛の繰り返しだぞ?』」

「『はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ………。』」

 

私は言葉を返そうとしましたが息が乱れて全く言葉が声になりませんでした………。

 

~陸斗side~

 

周りを見るとどいつもこいつもこれだけのことで泣いてやがる。

 

「『お前たちみたいなこの程度で泣くような奴らが、奴隷の人たちを侮辱してんじゃねえぞ』」

 

俺は久しぶりに怒りを露わにした。

 

「『あの人たちは一日一日を一生懸命生きてるんだ!その日終わるかもしれない命でも、それでも長く生き延びようと頑張ってるんだ!お前らみたいに温かい寝床を親に用意されて、美味しい食事も用意されて、風呂にも入れて自分の好きなことが出来る。それなのにやりたくもない勉強をやらされていると文句を言う。俺からしてみればそんなもの単なる甘えでしかない!』」

 

その時、のほほんさんの眼から一粒の滴が零れ落ちるのが見えた。

 

「『奴隷の人たちは確かに知識は少ないし、人間らしい生活もしてないかもしれない。それでもよっぽどお前たちよりかは人間味のある人たちだ!困っている人がいればどんな人でも手を差し伸べる。子供が腹をすかしていればわずかしかない自分の一日の食料を全部与えてやる。熱を出したり病気になったりした人がいれば、子供にかからないようにと気を付けながらその人の看病をする。その日その日を一人でも多く生き延びれるように、少しでも多くの希望が持てるようにみんなで協力をする。今の世の女性にそんなことが出来る女性が一体何人いる!?答えろ!』」

 

誰も答えない。

 

「『答えられないだろうな。なんせお前たちはそれが出来ない側の人間だからな!』」

 

それを聞いた瞬間、泣いていた女子たちが一斉に下を向く。

 

「『反論できるならしてみろ!学校初日にいきなり男子を顔で判断して陰口をたたく。その後自分たちの気に食わないことがあったら陰湿なことをする。そんなお前たちに協力なんて真似が出来てたまるか!』」

 

俺は観客席に向かって言葉を吐き捨てるように言い、オルコットの方に体を向けなおす。

 

「『この能力は俺の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)でな。これを発動している間、お前の攻撃は絶対に通らない。そしてこれは攻撃も可能だ。まずはお前からだ。覚悟しろ、セシリア・オルコット!』」

 

勿論単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)などではない。だがこれで政府やら機関やらは誤魔化せるだろう。

 

 

 

試合はこの後すぐに決着がついた。ただし、スポーツ的な決着なのだが。

 

 

俺が言葉をすべて言った後、オルコットはすぐにビットで攻撃を開始した。おそらく恐怖からくる集中だろう、手数は今までよりも増えていた。

 

だが須佐能乎を出している俺には何も関係なかった。すべてを無傷のまま受け切ると、オルコットの顔がすぐに真っ青になる。

 

俺はオルコットが絶望で満たされているのを確認した後、須佐能乎の霊剣をオルコットに向かって振るう。そのスピードは簡単に躱せるようなものではなく、オルコットに直撃。シールドエネルギーを一気に全部削り取ったが、オルコットの悪運が強かったおかげで、ISは地面に激突した後に解除された。

 

「『どうした、オルコット?ご自慢のISが消えてしまったじゃないか?』」

「あ、あ、あ………」

 

オルコットが震えながら涙目で俺を見つめてくる。

 

「『だが昨日言ったよな?『どちらかが死ぬまでやめない』って』」

「も、も、申し訳ありませんでしたわ!お、お、お願いですから命だけは!」

 

そう言ってすぐさま立ち上がって俺に頭を下げる。

 

周りの女子からも「きゃあああぁぁぁ!」とか「お願いだからやめてあげて!」とか、あくまでも上から目線で俺に叫んでくる。

 

………は?こいつらは何を言っているんだ?

 

「『なめてるのか、お前?今までこの世の中で男性がどれだけそう言いながら土下座したか知っているのか?そしてそれを踏みにじって男性を殺したり、奴隷にしたり、理不尽な目に合わせたりした女性がどれだけいるか知っているのか?』」

「うぅっ、うぅっ」

 

オルコットの涙が地面を濡らす。

 

「『そして今『やめたげて』って言ったやつはどいつだ?一体お前は何様だ?今お前たちを生かすのも殺すのも俺次第なんだぞ?そこは『お願いします、やめてください』だろう?お前ら勉強したくせに敬意の払い方も知らないのか?』」

 

それを聞いてすぐに今まで俺を侮辱してきた女子たちが一斉に「ごめんなさい、許してください。」と声をそろえて口にし始めた。

 

「『へぇ、許してほしいのか?』」

 

俺はオルコットと観客の女子全員に話しかける。するとみんなが一斉にうなずく。

 

「『だが断る。俺には女尊男卑の風潮に染まった女性なんぞにかける慈悲などない。』」

 

俺は須佐能乎を解き、標準装備であるブレードを右手に展開する。

 

「『Good night forever,Ms.Olcott.(あなたに良き永遠の眠りがあらんことを)』」

 

俺はブレードを振り下ろした………はずだった。俺としたことが、とんだ大失態を犯した。俺は後ろから迫り来る人の気配を察知できず、断罪の中断を許してしまった。

 

「『何してるんですか、千冬さん。』」

 

そう、俺とオルコットの間に割って入ったのは打鉄を身に纏った千冬さんだった。

 

「『すまない、陸斗。だが私はこれ以上お前に辛い経験を、辛い思いをして欲しくないんだ。お願いだ、剣を引いてくれ。』」

「『それは無理な相談です、千冬さん。千冬さんも知っているでしょう?俺は女尊男卑に染まった女性を未だ許すことが出来ないんです。そして父さんを救えずに殺してしまった自分自身も。』」

「『陸斗、それは違う!』」

「『違いません。確かにこれは俺のエゴです。ですが俺の贖罪でもあり、戒めでもあり、そして何より俺の歩むべき………いや、歩まなくてはならない『修羅』なんです。』」

「『お願いだ、陸斗!頼むからこれ以上自分を責めるな!あれはお前のせいではない!お前がオルコットを殺すというのであればその前に私を殺してからにするんだ!お前を救えなかった私にも………いや、私にしか責任はない!』」

 

その時、千冬さんの頬を涙が伝う。その瞬間、俺は戸惑ってしまった。さっきの千冬さんの言葉は間違いだ。あれは俺の責任。あの時俺が逃げずに父さんと向き合っていれば自殺なんかしなかっただろう。結局は俺の弱さが招いてしまったんだ。だから俺は戦う、もう父さんみたいな犠牲を出さないために。そのために穢れを請け負うの俺の義務であり、進まなければならない『修羅の道』なんだ。

 

 

だがそれでも戸惑ってしまう。『千冬さんを殺さなければならない』。修羅の道を歩むと決めたはずなのにできない。こんなに優しい人を俺は斬れない。

 

「『………分かりました。殺しはしません。ですがセシリア・オルコット、及び1年1組の大半の女子生徒は、明日から俺の奴隷になってもらいます。そしてその身でこの世の中の男性がどれだけ苦しい目に合っているかを思い知らせます。これだけは絶対に譲れません。』」

「『………どうしても、なのだろうな。教師として見過ごすわけにはいかないのだが………分かった。それは認めよう。だが間違っても殺すな。それだけは絶対に守れ。』」

「『わかりました。それでは俺は下がらせてもらいます。』」

「『ああ。今日はご苦労だった。………山田先生!試合決着のアナウンスを!』」

「『は、はい!勝者、西條陸斗!』」

 

こうして俺の断罪は失敗に終わった………。

 

 

 

~千冬side~

 

「はぁ………。」

 

私はオルコットを医務室まで連れて行き、管制室に戻って先ほどの試合の映像を見ている。

 

………いや、映像を見ているというよりは、陸斗が言った『あの言葉』を何度も繰り返し聞いている。

 

「自分が父親を殺した、か………。それだけは絶対違うのだがな………。」

 

あれは仕方のないことだったと言ったら語弊があるかもしれないが、陸斗はどうしようもなかったのだ。実質的に言えばあれは陸斗の父親を精神的に追い詰めた元母親や、上司の女性であろう。そして元をたどればその女性の意識を形作ってしまった私の責任だ………。

 

「先輩………。」

 

扉が開き、真耶が入ってくる。

 

「真耶か………どうしかしたのか?」

「あの、西條君のことでお話が………。」

「それは覚悟があるということか?」

「やっぱり、とてつもなく重大な話なんですね?先輩がそこまで言うなんて、よっぽどですから………。」

 

流石、といったところか。あの殺気だけでそこまで推理するとはな………。

 

「わかった。真耶にだけは話しておこう。ただし、2つ条件がある。このことは絶対に他言無用だ。そして陸斗の正義を否定しないでやってくれ。もし、できるならば陸斗のことを少しでいいから支えてやってはくれないか?」

「大丈夫です。私は覚悟してここに来ましたから。」

「そうか。ならば話そう、あいつの今までの人生を………。」

 

 

~山田先生side~

 

「………。」

 

先輩は話が終わるとそのまま自分の寮長室へと帰って行きました。

 

「西條君が、これほどまでに過酷な人生を送ってたなんて………。」

 

ひとつだけ、髪の毛で隠された本来の顔がかっこよくてドキッとしてしまいました。

 

「………西條君、あなたはなにも悪くありませんよ。ですからそんなに背負わないでください………。」

 

 

 

西條君、あなたにいつか幸せが訪れますように………。




注意:須佐能乎の霊剣には、すべてを封印する力はありません。

そして原作キャラは殺しません!(多分)
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