死神がISの世界に 改   作:岩男 一前

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遅くなって申し訳ありません。

これからもこのようなことがあるかもしれませんが、ご贔屓に読んでもらえると嬉しいです。


Ep.16 俺の捨てたもの

~陸斗side~

 

最近不思議な夢をよく見る。

 

その夢というのは、大自然の中に俺が座っている夢だ。

 

周りには誰もいない。誰もいないはずなのに何かの気配を感じる。

 

立とうとしても立てない。でも浮かぼうと思えば浮かべる。

 

この前、浮かぶことが出来るのが分かってから、一度できる限り上へ上へと浮いていった。

 

だが、浮かびきった場所で風景を見ようとした瞬間に俺の夢は終わる。

 

 

 

「この夢は一体………。」

 

何か大事なことを忘れているような気がしてならない。だがそれがなにかも分からない。

 

もともとあったものなのか、それとも更なる力なのか。

 

更なる力なら欲しい。俺にはまだ力が必要だ。もっと、もっと高みに。そして千冬さんと束さんを呪縛から解放したい。

 

いや、俺みたいな人間がそんなことは望んではダメか………。

 

きっとそれを成し遂げるのは俺ではない。もう一人の男性操縦者だろうな………。

 

俺は布団から起き上り、学校へ行く支度を始めた。

 

 

 

~第三者(作者)side~

 

今寮の食堂は明らかにいつもとは違う雰囲気だ。といってもそれは一部の生徒だ。

 

 

そう、1年1組の女生徒たちである。

 

「………はぁ、奴隷って何させられるんだろ………。」

 

とある女生徒の一言で、周りの雰囲気が一気に暗くなる。中には「なんであんな男に私たちが使われなきゃいけないのよ」と暗くなりながらも文句を言う女生徒もいる。

 

その時だった。女生徒たちが絶対に聞きたくないであろう声が食堂に響いた。

 

「お前達、何を呑気にご飯を食べているんだ………?」

 

その声を聞いた瞬間、女生徒たちはまるで蛇ににらまれた蛙のように固まった。

 

「まさか奴隷がのびのびご飯を食べさせてもらえるとでも思っているのか………?」

 

寒気がするような冷たい声だった。もちろん声の主は陸斗だ。

 

怒気を含んだ声というのは勢いに押されるだけであって、ただただ『怯む』だけだ。しかし今の陸斗の声というのは、恐怖を植え付けるようなものだった。

 

「お前達、今回だけ許してやる。それを作った食堂の人々に失礼だからな。ただし、それを食べ終えたとは一切なにも口にすることは俺が許可しない限り許さん。」

 

それを聞いて女生徒たちが俯く。

 

「分かったら返事をしろ、クズ共が!」バァン

 

近くにあった机を叩きつけながら叫んだ。その音に驚いてしまい、誰も声を出そうにも出せなかった。

 

「返事もできんのか!返事ができるように指導してやろうか!?」

 

「「「「「「「「「「す、すみません!」」」」」」」」」」

 

「できるのなら初めからやれ。あと5分以内にご飯を食べ終えろ。さもなくば朝から指導してやる。」

 

「「「「「「「「「「は、はい!!!」」」」」」」」」

 

「食い終えたらさっさと教室に行って正座してろ。」

 

陸斗はそう言って自分のご飯を食べ始めた。

 

 

 

 

~千冬side~

 

「はぁ………」

 

今日からクラスの雰囲気がどうなることかと思うと憂鬱になる。陸斗のことだ、本気で奴隷として扱っているに違いない。

 

「どうすればあいつを救ってやれるのだろうか………」

 

間違いなく、あいつの暗い過去を作った原因はあの『白騎士事件』だ。

 

「あの時は束のためを思ってやったのだが………やはり止めるべきだったのか?」

 

私は空を見上げて呟く。空はいい。あの空を自由に飛ぶのは気持ちいい。私が空を自由に飛べたのは束のおかげだ。

 

「それなのにあの時のことを悔やむというのは…………。私はどうしようもない愚か者だな………。」

 

そうこう考えているうちに教室の前まで来ていた。

 

「さて、今日も一日頑張るとするか。」

 

扉を開いたその先に広がっていた光景は信じがたいものだった………。

 

 

 

~陸斗side~

 

「良い様だな」

 

俺は今まで俺に嫌がらせをしてきた女子共を正座させている。

 

「本当ならどこぞで肉体労働でもしてもらいたいところなんだが、流石に学級崩壊となると千冬さんや山田先生に迷惑がかかるからな。それだけはやめておこう。」

 

その時、あの女が生意気にも口を開いた。

 

「あ、足が痺れましたわ………。あの、少しでいいので足を崩しては………」

「ダメに決まってるだろう、オルコット。お前はこの世の中を舐めているのか?」

「き、昨日までの愚行は謝罪いたします!ほかの方々も同じ気持ちです!ですからお許しいただけないでしょうか………。」

「黙れ。お前本当に頭悪いな。その程度でこの世の中の奴隷が許されるなら俺はこんなに怒ってはいない。」

 

その言葉を聞いて全員が絶望したような顔になる。

 

「言っとくが俺に取り入って自分だけでも許してもらおうとは思わないことだ。俺はお前達なんぞと仲直りしようとも思わない。というより最初の時点でもうお前たちのことを人間だとは認識していない。一生抜け出すことのできない苦しみというのを教えてやる。」

 

教室のドアが開き、千冬さんが入ってくる。

 

「出席をとる………ぞ………?な、なんだこれは!?」

 

正座している女生徒たちを見て千冬さんが驚く。

 

「これは一体どうなっているんだ!?」

「織斑先生、こいつらは『奴隷』ですから当たり前でしょう?」

 

織斑先生の後ろから山田先生が現れる。

 

「あ、織斑先生、おはようございま……す………ってこれなんですか!?」

 

山田先生も同様に驚く。

 

「山田先生、ちょうどよかった。西條を連れて少し外に出てくれないか?」

 

織斑先生が山田先生の耳元に口を持っていく。そして少し囁いた後、織斑先生が教壇に立つ。

 

「西條君、少し来てもらえますか?」

 

俺は山田先生に呼ばれたため、一緒に教室の外へと出ていった。

 

~千冬side~

 

「お前達、今は足を崩してもいいぞ。」

 

ほっとしながら足を崩す女生徒たち。その様子を見てから私は徐に口を開いた。

 

「今日はな、世の中の男性の現状を見てもらう。お前たちが先日軽々しく口にした『奴隷』という言葉だが、今政府の男性からは一つの問題として提起されているほど重大になっている。今日はその程度の違いはあるにしても、多くのケースをお前たちに見てもらう。」

 

女生徒たちのほっとした顔が一変して真剣になる。

 

「ちなみに顔をそらすことは許さん。お前たちが馬鹿にした男性が、今この世界でどれだけ苦しんでいるのかをこの映像で見てもらう。………それでは始める。」

 

私は束に作ってもらったこの世界の現状を映した映像を流し始めた。

 

~陸斗side~

 

「山田先生」

「なんですか、西條君?」

「なぜ自分は外に連れ出されたのでしょう?」

「それはいろいろと話すためですよ。事務的な話からプライベートまで。この際西條君のことをたくさん教えてくれると先生としても助かります!」

 

『ウキウキ』という言葉が合いそうなほどハイテンションで話しかけてくる山田先生。一体俺は何を聞かれるのだろうか?

 

「それでは西條君、まず事務的な話から。西條君の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)の須佐能乎なのですが、あれは普段の模擬戦や試合では使わないでください。」

 

………。そう来たか。

 

「それはこの能力を封印しろということですか?」

「いえ、能力にロックをかける必要はありません。ただし、学校での試合では使わないでくださいというだけです。」

「もし従わないとどうなるのですか?」

「国際IS委員会からの要請なので………おそらく国際IS委員会からお呼びがかかるかと………。」

「それなら仕方ないですね。わかりました、使わないようにします。」

 

国際IS委員会に呼び出されるなどたまったものではない。

 

「それで、他には何かありますか?」

「えっと、オルコットさんのことなんですが、今回、代表候補生の資格を剥奪されることになりました。」

「それは負けたからですか?」

「それだけではありません。確かに負けたのが原因ではありますが、それまでの彼女の発言等を踏まえたところ、彼女はまだ人間的にも技術的にも未熟だという判断が下されました。」

「なるほど。………そうなると、専用機の方はどうなるのでしょう?」

 

別にあの女の専用機がどうなろうが知ったことではないが、この世界にあるISの情報はなるべく欲しい。もしもあの機体が敵に回ったとき、いくら相手が弱いといってもその情報があるかないかでは勝率が全く違う。

 

「いえ、専用機はデータを取るためにそのままオルコットさんが持つことになりました。」

「そうですか。」

「心配なんですか?」

「いえ、そういうわけでは。」

「そうですか………。」

 

山田先生がシュンする。

 

「事務的な話は以上ですか?」

「え、ええ、一応。」

「じゃあそろそろ教室に戻りませんか?さすがに戻らないと………。」

「い、いえ!まだ戻らなくても大丈夫です!ですから今度は個人的な話でもしましょう!」

 

はぁ………。何を聞かれるんだろう?

 

「自分は何を話せばいいんですか?」

「少し私の質問に答えてもらっていいですか?」

「答えられる範囲ならいいですよ。」

「わかりました。それじゃあいろいろと聞きますね♪」

 

 

~山田先生と質疑応答中(ご想像にお任せします by岩男)~

 

 

「そうだったんですね~。西條君にいろいろ聞けて良かったです!」

「そうですか。それはよかったです。」

 

いや、もう本当にいろいろ聞かれた。好きな食べ物とか、好きな風景はどんな風景だとか、山と海はどっちが好きかとか。それはもう女子高生のノリだ。

 

「じゃああと2つ質問良いですか?」

「どうぞ。」

「気を悪くしないでくださいね?陸斗君はお父さんのこと好きでしたか?」

「………千冬さんから聞きましたね?」

「き、気を悪くしたらごめんなさい!ですが「いや、いいですよ、山田先生。」……そ、そうですか。」

 

親父………か………。

 

「ええ。好きでしたよ。ですがそれと同時に申し訳なく思っています。」

「どうしてですか?」

「父を殺したのは間違いなく自分です。」

「それは違いま「違いません。」…西條君………。」

「あの時父と向き合っていれば父は死なずに済みました。その上亡骸を葬ってあげられなかった。」

 

俺が弱かったせいで………。

 

「どういうことですか?」

「俺は父の首吊りの死体を見た後、怖くなって1週間ほど家を空けたんです。そのあと家を再び訪れた時には…………父の死体は無くなっていました。だから父の亡骸を葬ってあげられなかったんです………。」

「そうだったんですか………。」

「すみません、なにか湿っぽい話になってしまって。」

「いえいえ、聞いたのは私ですから♪それじゃあ最後の質問です。」

 

また重いのが来るのか?今度は母親のことでも聞くのか?それを聞かれたらもう答えは決まっている。俺は母親のことは大嫌いだ。いや、この世で1番憎んでいるといってもいいだろう。

 

「ズバリ、強さの秘訣はなんですか!?」

「強さの秘訣ですね………へ?」

「いえ、ですから強さの秘訣です!私は教師なので、緊急事態には生徒を守らなければなりません。いえ、守りたいんです!この前の試合を見て西條君の強さを見て、どうすれば強くなれるのかを聞きたくて………。」

 

『強い』ね………。

 

「山田先生、俺は強くなんてありませんよ。」

「そんな!代表候補生に無傷なのに強くないはずがありません!」

「………山田先生、戦いにおいて一番難しいことって何だと思いますか?」

「え?え~っと………自分よりも強い相手に勝つことですか?」

「違います。一番難しいのは他人を守りきることです。」

 

自分よりも強い相手に勝つことなんていくつかの条件を揃えればできる。

 

「確かに………。」

「そして本当に強い人っていうのはそんな無謀にも見えることを絶対に貫き通そうとする人です。」

「?西條君は違うのですか?」

 

この人の眼を見る限り、この言葉はこの人の本心だ。お世辞を言っているようには見えないし、実際言っていないだろう。

 

「自分はそんな大層なことは考えていません。強いて言うなら、千冬さんや一夏がそうでしょう。」

「なるほど………」

「ですから『強さ』について聞くのであればそのどちらかに聞くのがいいでしょう。………そろそろ戻りませんか?」

 

そろそろ授業も終わりそうだ。

 

「そうですね。そろそろ戻りましょうか。」

 

こうして俺と山田先生の散歩は終わりを迎えた。

 

 

 

~オルコットside~

 

私は自分の愚かさを知りました。

 

織斑先生が見せてくださったあのビデオは一切の脚色もないそうで、自分の無知を実感させるものでした。

 

クラスの皆さんも同じだったようで、ビデオを見終わった後、誰一人として例外なく涙を流しておりました。

 

これが西條さんの見てきた景色。歩んできた世界。私………いえ、私たちの苦労など苦労ではないことが今になって初めてわかりました。

 

 

 

『世の中の現実を見ない低能共』

 

 

西條さんが私たちに向かって言った言葉です。これは実に的を射た言葉だと、今になって思います。

 

先ほど織斑先生から代表候補生剥奪と、今後のことについて言われました。

西條さんに負ける前までの私ならきっと猛反発していたことでしょう。ですが、今となってはもう反発することなんてできません。むしろこの状況で反発できる人なんているのでしょうか?

 

幸い、私の専用機は適合率が高く、データを取る必要があるとのことみたいなので私がまだ持っていていいそうです。

 

このIS学園での3年間が私の成長するチャンス。3年後、再び代表候補生、いえ国家代表に選ばれるようにこれから努力を重ねようと思います。

 

 

 

 

 

………それより今はやらなければならないことがあります。おそらくここにいる皆さんも思っていることでしょう。

 

 

それは西條さんへの謝罪。許してもらえるかどうかはわかりません。それでも謝らなければなりません。いえ、謝るべきです。ここで謝ることをしなければそれこそ本当に人間として『無能』になってしまいます。

 

 

 

どうやら皆さんも同じだったようです。朝食の時に文句を言っていた女生徒ももう文句は何も言っていない。それどころか涙を流している。皆さんの顔つきが今までとは全く違っていました。

 

 

~陸斗side~

 

教室の前で山田先生と別れた俺は、少し教室の前で佇んでいた。なぜかというと、オルコットが代表候補生を外されたということは、何か俺に飛び火が来るのかとめんどくさく思っていた。

 

 

 

「さて、教室に入って授業の準備でもしますかね………。」

 

はぁ………、とため息をつきながら教室の自動ドアの前に立つ。

 

プシュッっと音を立ててドアが開く。

 

その時だった。

 

 

「「「「「「「「「「ごめんなさい!」」」」」」」」」」

 

「………は?」

 

目の前に広がるのは30名ぐらいの女子が全員土下座している光景。

 

思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。

 

「………おい一夏、これはどういうことだ?」

 

一夏は苦笑いしながら答える。

 

「いや、それがさ、さっき見たビデオが想像以上にみんなに利いちゃったみたいで………。」

「ビデオ?なんだそれは?」

「あ~、気になるなら後で千冬姉に聞いてくれ………。俺はあの内容をあまり思い出したくないな………。」

「わかった。」

 

俺はもう一度女子たちの方を向く。

 

「それで、これはどういうつもりだ?俺を油断させて闇討ちでもするつもりか?」

 

俺は女子たちに殺気を飛ばす。その瞬間、女子たちが一斉に顔を横に振る。

 

正直言ってこの光景はホラーだ。

 

オルコットが女子たちの前に出てくる。

 

「西條さん、私たちは全員反省しております。今までの侮辱、執拗な嫌がらせ、そして愚かな『奴隷』発言。本当に申し訳ありませんでした!」

 

「「「「「「「「「「本当にごめんなさい!」」」」」」」」」」

 

俺は「はぁ………」とため息をつき、女子に向かう。

 

「お前たちは本当に反省しているのか?」

 

その言葉に全員が大きくうなずく。これもホラーにしか見えない。

 

「そうか。」

 

その言葉に女生徒の顔が少し明るくなる。どうやら受け入れてもらったと勘違いしているらしい。

 

「だが、俺は女尊男卑に染まっていた女性を『はい、そうですか』とすぐには信用できない。」

 

今度は全員下を向き、暗くなる。

 

「とは言え、今回は俺もいきなりお前達に喧嘩を吹っかけたところもあるし言い方も悪かった。だから一応お前達への答えは保留ということにしておく。関係が修復するかどうかはこれから次第………ということにさせてもらう。あまり気は進まないがな。」

 

ポカンとする女生徒たち。

 

「なんだ、不服か?ならば全面戦争でもするか?俺は一向に構わん。闇討ちでも何でもするがいい。返り討ちにしてやる。」

 

「「「「「「「「「「い、いえ!め、め、め、滅相もございません!」」」」」」」」」」

 

 

「そうか、ならばそう言うことだ。そろそろ授業が始まる。席に着いたらどうだ。」

 

全員が席に着く。俺の言葉の1分後にチャイムが鳴り、その30秒後に2人の先生が入ってきた。

 

その時の2人の顔はやけににこやかだったのだが、何があったのだろう?

 

 

~千冬side~

 

陸斗のことが気になり、少し早めに教室まで来た。山田君も一緒についてきている。

 

「またあいつの方から喧嘩を吹っかけなければいいが………ん?」

 

中から話し声が聞こえる。

 

『とは言え、今回は俺もいきなりお前達に喧嘩を吹っかけたところもあるし言い方も悪かった。だから一応お前達への答えは保留ということにしておく。関係が修復するかどうかはこれから次第………ということにさせてもらう。あまり気は進まないがな。』

 

私は山田先生の方を向く。山田先生も私の方を向いていた。

 

「どうやら、心配はなさそうだな。」

「そうですね、先輩!」

 

私達は自然とお互いに微笑みを交わしていた。

 

中の女生徒たちが慌てて席に座っているようで、ガタガタと音が鳴っている。

 

チャイムが鳴り、少し間をあけてから山田君に話しかける。

 

 

「さて、山田君、行くとするか。」

「はい!」

 

私達2人は顔に微笑みを浮かべたまま教室に入る。

 

 

 

 

ふふっ、陸斗め、私達の微笑みがそんなに珍しいか?




活動報告にアンケートを書きました!

この小説には直接関係しませんが、どうぞ見てください!

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