~一夏side~
IS学園アリーナ。俺は今ここでいつものメンバーたち(+シャルル)とISの訓練をしているのだが………。
「こう、『ズバーッ!』とやってから『ガキン!ドカーン!』という感じだ!」
「なんとなく分かるでしょ?感覚よ感覚。…はぁ!?なんでわかんないのよ、バカ!」
「防御の時は右半身を斜め上前方へ5度、回避の時は後方へ20度ですわ!」
「俺に聞くなと言っただろうが、アホ。強いて言うならお前には経験が足りん。これ以上は何も言わん。」
この通り、こいつらの指導は何の役にも立たない。陸斗に至っては教えてくれる気すらない。
「率直に言わせてもらう………。全然わからん!」
「何故わからん!?」
「ちゃんと聞きなさいよ、ちゃんと!」
「もう一回説明させていただきますわ!」
陸斗は黙ったまま何も言わない。これ、どうすればいいんだ?
「一夏」
そんな時、救いの手が差し伸べられた。シャルルだ。
「ちょっと相手してくれる?白式と闘ってみたいんだ。」
いち早くこの3人から抜け出したかった俺は、その申し出をすぐに了承した。
「シャルル!もちろんいいぜ!ということだからまた後でな。」
先ほど教えてもらっていた(?)3人に言うと、3人共不機嫌そうな顔をしていた。全く、そんなに俺の理解力が乏しいのが気に入らなかったのか?
~陸斗side~
「織斑君とデュノア君が模擬戦するらしいよ!」
「デュノア君の専用機って『ラファール・リヴァイブ』だよね?」
「フランスの第二世代型IS!いいな~私も専用機欲しいな~」
一夏とデュノアが戦闘をすることになり、それまで訓練していた女生徒が全員観客側へと回った。
「じゃあ行くよ。」
「よし、来い!」
2人が一斉にお互いに向かって突進し、アリーナの中央で激突した。
アリーナの中央でお互いに近接攻撃を数回繰り返した後、空中戦へともつれ込んだ。
いや、もつれ込んだというより一夏が一方的にやられているといった方が良いだろう。一夏の剣は難なく躱され、逆にデュノアの銃撃は簡単に一夏に当たる。
一夏が負けるというのは事前に予想している。わざわざ男装してまでこの学園に入って来ているとこから察するに、おそらくデュノアはスパイかなんかだろう。ISの操縦は見事なものだ。オルコットと比べても大差ないだろう。それとあの武器の切り替えの早さは学年トップと言っても過言じゃない。
そんなわけで一夏が負けるのは仕方がない。だが一夏の進歩があまり見られないような気がするんだが………。
そんなことを思っていると決着がついた。もちろん結果は一夏の負け。落ち込んだ顔をしながら、一夏たちが地面に降りてきた。
~一夏side~
アリーナに降りたあと、邪魔にならないようにアリーナの端の方へ移動した。
「なあシャルル、どうやったら勝てるのかな?」
「う~ん、そうだね、一夏が負けるのにはちゃんと原因があると思うんだ。」
「と、言うと?」
「単純に射撃武器の特性を把握してないんだと思うよ?」
「一応理解しているつもりなんだが………。」
「それはね…………」
~陸斗side~
デュノアは一通り一夏に言い終えたようで、今から射撃訓練をしようとしている。ちなみに俺はというと一夏とデュノアの隣にISを装備した状態でいる。なんでも、一夏が『男同士仲良くしようぜ!』とのことらしい。デュノアは男じゃないんだがな………。
それと俺も今初めて知ったことなのだが、所有者がロックを外せば武装を他人が使えるらしい。こんなことまで知っているなんて、デュノアは案外甘く見てはダメなのかもしれない。
そんなこんなで、一夏の射撃訓練が始まった。
今回射撃武器を使うのは初めてということで、デュノアがサポートしながら銃を撃つようだ。
次々に出てくる的を銃で射抜く。
いくらデュノアのサポートがあっても、流石に初めてということで的の真ん中には当たっていない。だが真ん中に近いところには当たっている。
まあ一夏は銃で戦うわけではないから、あれぐらいにできれば十分だとは思うが。
終わってみると、全て的の真ん中から少しずれた位置を射抜いていた。
「おお!」
「どう?」
「ああ、なんかあれだな。とりあえず速いって言う感想だな。陸斗はなんか気付いたことはないか?」
「そうだな、正直なところ銃撃戦を専門として戦うのなら使えないが、近接タイプとしては十分いい線行ってると思うぞ。」
「本当か!?」
「ああ。」
一夏がはしゃぎ出す。そんなに嬉しかったのか?
「ねえ、西條君もやってみない?」
「ん?俺は遠慮しとくよ。一応射撃訓練ならしたことあるし。」
「そういえばさっきの山田先生との模擬戦で銃使ってたね。」
「まあな。」
俺と一夏とデュノアが3人で楽しそうに話していると、横でいつもの女子3人組が俺たちの方(主に一夏)をジト目で見てくる。
全く、恋する乙女もいいが、周りにまでそのプレッシャーを与えないでいただきたいものだ。
そんなことを考えていると、周りにいた他の女生徒がざわつき始めた。
「ね、ねえあれ!」「うそ!ドイツの第三世代じゃない!」「まだ本国でのトライアル段階だって聞いたけど…。」
アリーナのISの出撃ゲートの方を見ると、そこには黒いISを纏ったボーデヴィッヒ立っていた。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「何!あいつなの!?入学早々一夏を叩こうとした代表候補生って!」
「むっ………。」
先ほどまで俺たちのことをジト目で睨んできていた女子3人組が、今度はラウラに向けて今にも飛びかからろうとするぐらいの殺気を向けている。
「織斑一夏」
「なんだよ?」
一夏がデュノアに訓練の時に借りていた銃を返しながら返事をする。
「貴様も専用機持ちだそうだな?ならば話が早い。私と闘え。」
「え?」
「嫌だ。」
驚くデュノアとあっさりと拒否する一夏。ボーデヴィッヒが出てきたあたりからこうなるんじゃないかとは思っていたが、こうも予想通りにいくとはな。全く、軍人だというのに考えていることが他人に読まれてどうするつもりだ、あの黒ウサギは。
「理由がねえよ。」
「貴様になくても、私にはある。」
「今じゃなくてもいいだろ?もうすぐクラスリーグマッチがあるんだから、その時で。」
闘う意思のない一夏に、ボーデヴィッヒがレールカノンを向ける。
「ならば」
そしてそのまま一夏に向けて砲弾を発射する。
「えぇっ!」
突然のことで一夏は反応できていなかったが、デュノアが咄嗟に反応し、一夏の前に出る。
俺はと言うと、デュノアが反応して一夏の安全が確保されたことを確認してから、ボーデヴィッヒの方へと飛んだ。
ボーデヴィッヒのところへ着くと、展開したブレードをボーデヴィッヒの首筋へと当てる。
「ボーデヴィッヒ、お前は何様のつもりだ?」
「ふ、副教官!わ、私は織斑一夏と闘おうと!」
「一夏に戦う意思がないのに何の意味がある?」
「そ、それは教官の足手纏いになる織斑一夏を」
「ならここで問題を起こして千冬さんに迷惑をかけるお前を殺してもいいんだな?」
一般人なら確実に足に力が入らなくなるくらいの殺気をボーデヴィッヒにぶつける。こいつは軍人だからこれぐらいしても大丈夫だろう。
「で、ですが!」
「言い訳は不要だ。お前はあの頃から何も成長していないな。全く、失望させてくれるな。」
『そこの生徒!何をやっている!』
アリーナの担当の先生のアナウンスが入った。おそらくこのただならぬ雰囲気を感じたのだろう。…というより首にブレードを突き立てていたのが原因か。
「今日はもう帰って頭を冷やせ。」
「………分かりました、副教官。」
「ボーデヴィッヒ、ここでは俺は副教官じゃない。呼び方を改めろ。」
「失礼します。」
「はぁ。」
ボーデヴィッヒはISを解除し、そのままアリーナを立ち去った。
まったく、あいつはあの頃から何も変わっていないじゃないか。もう少し成長していてほしかったものだが。
一夏は、去っていくボーデヴィッヒを神妙な顔つきで見つめていた。
ボーデヴィッヒが完全にいなくなった後、場の緊張はひとまずなくなり、俺は一夏たちのところへと降りた。
「どういうことだ、一夏!」
「一体、あの方と一夏さんの間に何がありましたの!?」
一触即発の緊張がとかれた途端に、箒とオルコットが一夏に詰め寄る。
「………悪い、その話はまた今度にしてくれないか。」
一夏のいつもと違う雰囲気に、2人は納得はしないまでも引き下がった。
そんな中、鈴だけは一夏に対して何も言わない。いつもなら箒とオルコットと同様に一夏に質問責めをするはずだが、今日は違った。
俺はそのことに妙な違和感を感じ、鈴に声をかける。
「なあ鈴、お前は気にならないのか?」
「え!?あ、あ~、うん。まあ人には知られたくないことの1つや2つはあるもんでしょ。」
いつもの鈴らしくない、歯切れの悪い返答。
(もしかして、鈴はあのことを知っているのか?)
そう言えば一夏と鈴は中2まで同じクラスだったな………。なら知っていてもおかしくないか?一応探ってみるか。
「鈴、この後少し時間あるか?」
「な、何よ。陸斗がそんなこと言うなんて珍しいわね。」
「ちょっと五反田のことで聞きたいことがあってな。」
ここは悟られないように別の話題を振っておこう。この前弾と一夏が鈴の話をしていたということは、おそらく仲が良かっただろうから、これなら食いついてくるだろうしな。
「え、あんた弾のこと知ってるの?」
「まあな。この前一夏に紹介してもらって、一緒に飯も食った。」
「へぇ~、そうなんだ。分かったわ、私はどうすればいい?」
「着替えたら俺の部屋に来てくれ。」
「了解。」
一夏たちの方を向くと、どうやら箒とオルコットは帰ったようで、一夏とデュノアだけが佇んでいた。
「一夏、俺は先に上がらしてもらうな。お前ももうすることがないなら早く部屋に持って休めよ。」
「あ、ああ。分かった。じゃあまた明日な。」
「おう、また明日。デュノアもまた明日な。」
「うん、また明日ね。」
俺と鈴は一夏たちを残してアリーナを後にした。