~一夏side~
キーンコーンカーンコーン
朝のHR終了のチャイムが鳴る。
「これで朝のホームルームは終わりだ。織斑、デュノア、この後私のところに来い。1時間目の授業は気にしなくていい。それでは解散!」
千冬姉が『授業を気にするな』だって?一体何があるんだ?陸斗のことだとは思うんだが、それにしては少し大げさな気もするんだが………。
「一夏、早く行こ?陸斗のことかもしれないよ?」
「あ、ああ、そうだな。」
シャルの言葉を受けて、クラスメイトからの視線を浴びながら千冬姉のところへと向かった。
~陸斗side~
時刻は8時15分、場所は応接室。
「フランスとの時差を考えると向こうは夜中か。それでも向こうはこちらの呼びかけに応じるとは思うがな。」
大きなモニターを前に、椅子に座ってとある人物が現れるのを待つ。
何故俺が今ここにこうして待っているのかというと、時間は昨日の夜にまでさかのぼる………。
~昨日の夜~
一夏との揉め事の件で山田先生と千冬さんに連れられて生徒指導室へと向かっている。
(にしてもさっきのデュノアの話、どこか引っかかるな………。)
男装させてまで自分の娘をIS学園に送り出す。一昔前のことならとてもいい手段だったかもしれない。だが今の女尊男卑の時代だ、あまりにリスクが大きい。
いくら愛人の子だからと言って、社長である父親がわざわざ自分の地位を危うくするような行為をするだろうか?
俺だったら女性のまま送り出す。確かに一夏には近づきにくくなるが、それでも男性として送り出して注目を浴びる方がよっぽどばれる可能性も高いし、危険性がぐんと上がる。
となると………
(もしかして裏で糸を引いている『女性』がいる?)
そう考えたほうがつじつまが合う。間違いなく操っているのは男性ではない。これは断言できる。なにせ女性を男性と偽らせるなんてこのご時世どうなるかなんてわかったものではない。いくら社長でもそんなことが世間に公表されたら信用はガタ落ちだし、重要な取引相手のIS委員会を相手にまわしかねない。となるとデュノア社長は誰かの指示を受けている可能性が高い。
デュノア社長を操れて、なおかつデュノアを送り出すのになにもためらいのない女性となると………。
(………デュノア社長の『本妻』か。そういえばさっき『泥棒猫って言われて叩かれた』とデュノア自身も言ってたな。)
デュノア社長を社長の座から降ろせば本妻が後を引き継ぐことになる。そう考えればシャルルを男装させた方がいろいろとアドバンテージが大きい。これで辻褄が合った。
となると、デュノアを助けるためにできることと言ったら………俺には2つか3つだけか。まあいい、あとは一夏とデュノア次第だ。
「着いたぞ。入れ。」
気が付くと生徒指導室に到着していた。
「分かりました。」
千冬さんに促されるままに生徒指導室の中に入り、椅子に座った。
「それで陸斗、今回のこと、お前のせいだけじゃないのだろう?」
「え、織斑先生、それはどういう………」
「山田先生、少し席を外していただけませんか?」
「は、はい。織斑先生がそう言うのであれば………。」
山田先生が生徒指導室を出ていく。ここで千冬さんに言うべきかどうか………。一夏にはああ言った手前、自分から千冬さんに頼ることを覚えてほしい。ここで俺が伝えた方が早いし確実なのは確かだ。さて、どうする………。
「陸斗、お前は何を隠している?」
「自分は何も隠してません。隠してるのは俺じゃない男子生徒2人ですよ。」
千冬さんが『フッ』と微笑む。この人絶対気付いてるな。ここまで来ると勘が鋭いとか言うレベルじゃないぞ。
「………陸斗、失礼なことを考えているのなら今すぐお前を反省室にぶち込んでもいいんだぞ?」
「すみませんでした。」
0.1秒で椅子から立ち上がり0.1秒でお辞儀をし0.1秒で謝罪の言葉を述べる。計0.3秒、自分でも驚くべき数字だ。世界記録も狙えるのではないかというほどだ。それだけ今の千冬さんのプレッシャーがすごいということだ。
「それで、陸斗、お前はどうするつもりだ?」
「そうですね、あいつら2人がおそらく千冬さんのところに相談に行くと思うので、それまでに自分のできる範囲で行動を起こそうと思います。」
「具体的には?」
「………デュノア社長とコンタクトとれませんかね?」
あのあと、千冬さんがブリュンヒルデの称号を使ってまで(本人は権力振り回すようでこの名前を使うのが嫌いらしい)このアポを取ってくれた。
そんなこんなで今に至る。約束の時間になったため、改めて相手の失礼にならないように身だしなみをチェックする。その時、何かが作動するような音が鳴り、スクリーンにスーツを綺麗に着こなした男性の姿が映る。
『おはよう、西條君。少し約束の時間を過ぎてしまったかな?私がデュノア社の社長のセドリック・デュノアだ。』
スクリーンに映ったのはデュノア社長だった。
「いえ、時間ピッタリですよ。初めまして、西條陸斗です。IS学園1年1組、シャルル君のクラスメイトをさせてもらってます。」
『シャルル君』という言葉を聞いた瞬間、一瞬だけ顔がピクッと動いた。
『時間ピッタリか。社会人としてはあまりよろしくないね。まあそれはさておき、本題に入ろうか。私に聞きたいことって言うのは何かな?』
画面の向こうでデュノア社長が座り直した。…ここが運命の分かれ道だな。俺の聞き方もあるが、デュノア社長の答えによって今後の俺の動きが変わってくる。頼むから変な答えを返さないでほしいところだ。だがそれはデュノア社長の本心次第で、俺にはどうもできない。
俺は覚悟を決めて行動に移した。
「そうですね、それでは単刀直入に聞きます。デュノア社長………いえ、セドリックさん………。」
――――――――あなたはシャルルを愛していますか?―――――――――――――――
~一夏side~
「織斑先生、何か用ですか?」
シャルルと一緒に千冬姉のところに行く。
「………織斑、デュノア、用があるのはお前達の方ではないのか?」
「っ!?なぜそれを!?」
シャルルが大声を上げる。ただでさえ視線を集めていたのに、その声のせいでさらに視線を集めることとなった。
「………ここでは注目を浴びすぎるか。織斑、デュノア、ついて来い。」
千冬姉が歩きはじめ、俺とシャルルはその後を追った。
応接室の前で千冬姉が歩みを止めた。俺たちの方に振り返り、シャルルと俺を見ながら徐に口を開いた。
「織斑、デュノア、私に何か用か?」
「あ、ああ。確かに用があるのは俺達の方なんだけど………。」
「お、織斑先生はなんで僕たちが先生に用があることを知っているんですか………?」
千冬姉が少しだけ溜息を吐き、俺たちの方に向き直った。
「本人には黙ってくれって言われたんだがな…。西條からある程度事情は聞いた。」
「り、陸斗が!?千冬姉、陸斗はどこにいるんだ!?」
「落ち着け、織斑。ここでは織斑先生だ。それと、陸斗なら大丈夫だ。それよりも今はデュノアの件の方が先だ。」
千冬姉に呆れた顔をされる。
「それで、お前たちはどうしたい?」
これはシャルルが答えを出すべきだ。シャルルの方を向いて1度頷くと、シャルルが頷き返してきた。
「織斑先生、父さんと話をさせてください。織斑先生の方からコンタクトを取ってもらえませんか?僕だけでは父と話をさせてもらえるとは………。」
「分かった。良いだろう…というよりももう今すぐにでも話せる状況なのだがな。」
「えっ!?な、なんで!?」
シャルルが驚きを隠せずにいると、千冬姉は『フッ』と少しだけ微笑んで放し始めた。
「先ほどまで西條が話していてな。これも本当は黙っておかなければいけなかったんだが、まあいいだろう。それにしても全く、西條には掌の上で踊らされているようで少し癪に障るな………。」
千冬姉が少し苛立ちを隠せずにいたが、不気味で意地悪そうな笑みに変わった。と思ったらすぐに普通の顔に戻った。こんなに千冬姉の表情がコロコロ変わるのって珍しいな。
「それはさておき、デュノア、お前には今から1対1でデュノア社長と話してもらう。覚悟はいいな?」
「………はい。大丈夫です。」
「お、俺も行きます!」
「ダメだ。これは家族内の問題であってお前が首を突っ込んでいい話ではない。お前にはここで待っていてもらう。」
「そ、そんな!シャルルについていっても「大丈夫だよ、一夏。」…シャルル?」
「昨日も西條君が言ってたでしょ?『自由を勝ち取りたいなら、必死にもがいてみろ』って。いつまでも一夏に頼ってばかりじゃなくて、いつかは1人で立ち向かわなきゃいけないんだよ。…そして今がその時なんだと思う。」
シャルルの顔が今まで見た顔の中で1番深刻な顔になる。シャルルもそれだけ必死なんだな。
「分かった。でも何かあったら隠すなよ?俺はシャルルの味方だからな。」
「ありがとう、一夏。………織斑先生、連れて行ってもらえますか?」
「……良いだろう。ついて来い、デュノア。」
千冬姉に連れられてシャルルは応接室に入っていった。
~シャルルside~
応接室に入ると、大きなスクリーンとそこに移った男性が目に入った。
「………デュノア社長。」
いくら僕がスパイを嫌がっていたとしても、自分は任務を失敗した身。何を言われるか分かったものではないせいで『お父さん』と呼ぶのは少し憚られた。
「…久しぶりだな、シャルル…いや、シャルロット。」
(本名を呼ばれたのはいつ以来かな………?お母さんが死んで引き取りに来たときだったかな………)
本名を呼ばれたことに少し戸惑いを覚えたが、それでもまだ警戒を解いてはならない。
「お久しぶりです。今日はあなたにお願いがあり、失礼とは思いましたがこのような場を設けていただきました。」
「お願い、か………。すまないがシャルロット、そのお願いを聞く前に私に話をさせてくれないか?」
父さんからの話なんて碌なことにならない。そう思っていたが今の父さんの様子を見ていると少しくらい聞いてもいいと思える。それに、いざという時は僕には頼れる人たちがいる。
(一夏、西條君、僕、父さんと向き合うよ。)
「………分かりました。」
「ありがとう、シャルロット。」
「いえ、これでも一応親子ですから。それで、その話というのは何ですか?」
「『一応』か………。そう言われても何も言えないところもまた私の情けないところだな。私は父親としてお前を護れなかった…。西條君に言われるまで決心もつかない臆病者だった………。」
あの父さんがここまでしおらしくなるなんて、西條君は一体何を言ったのだろう?父さんの話の途中にはなるが、尋ねずにはいられなかった。
「西條君に何を言われたのですか?」
「そうだな、そのことも含めてシャルロットに話をしよう。」
―――――少し前――――――
~陸斗side~
「あなたはシャルルを愛していますか?」
「な、何を言う?シャルルは私の愛人の娘だ。それ以上でもそれ以下でもない。」
………父親からの命令としてシャルルをここに来させてる手前、本当のことを言うことが出来ないのか?
「そうですか………。ならばスパイをしかけてきた相手として殺してもいいんですね?当然国家機密にも匹敵するほどの専用機の情報を盗もうとしたのですから、それぐらいは当然ですよね?」
少し内容はきつすぎたかもしれないが、これくらい言わないとこの人の本心を聞き出すことは出来ないだろう。そう思って言ったのだが、どうやらビンゴだったようだ。セドリック社長の顔が引きつり、頬に一筋の汗が流れた。やはりシャルルのことが大事なのだろう。
「で、出来るものならやってみるがいい。国際問題に発展しても知らないからな。」
どこまでも貫き通すその姿勢は流石と言ったところか。だが今回の答えとしては不正解だ。
「………ちょっと失礼します。」
俺は今座ってる椅子から立ち上がろうとした。
「ま、待て!ど、どこに行くつもりだ!話の途中だぞ!」
「いえ、少し織斑先生のところに相談に行くつもりです。具体的な罰則が出なければ自分としても手は出せな「ま、待ってくれ!それだけはやめてくれ!」
画面の向こうでセドリック社長が慌てて立ち上がる。
「最初からそう言ってください、セドリック社長………いえ、セドリックさん。」
そう言って俺は立ち上がるのを中断し、もう一度椅子に座りなおした。セドリック社長は俺が素直に椅子に座ったのを見て『しまった』という顔をしたが、それ以上に愛娘の安全をとりあえず確保できたことに安心し、息を大きく吐きながら椅子に座った。
「セドリックさん、これからする質問に正直に答えてください。」
「……ああ。」
観念したかのように手を額に当てて返事をするセドリック社長。本心を聞き出すなら今しかない。
「セドリックさん、あなたはシャルルを護るためにこのIS学園に入学させたんですよね?」
「なっ!?なぜそれを!?」
おそらくここまでは予想されていないとでも思っていたのだろう、俺の質問にセドリックさんは目を見開いていた。
「あなたはシャルルを今の奥さんから守りたかった。おそらくシャルルはそちらの家で酷い扱いだったのでしょう。このご時世、あなたは奥さんに抗うこともできず、かといってその酷い扱いを見るに堪え兼ねたあなたは、シャルルを逃がすために『スパイ行為』という名目でこのIS学園に送り込んだ。そうですよね?」
「………ああ。」
「IS学園なら世界最強の織斑千冬がいる。彼女を敵にまわすようなことをする女性はまずいない。それに今年はその弟の一夏もいる。男性として入学させれば嫌でもIS学園で注目を浴びるから、今の奥さんも手を出しにくくなる。そこを狙って送り込んだんですよね?」
「その通りだ。」
ここまでは俺の予想通り。普通に考えたら導き出せる答え。…問題はこの後にある俺の最後の予想。正直どれくらい確証があるかと問われればフィフティーフィフティーというところだ。それでも俺はセドリック社長がここまでのことを思ってシャルルを逃がしたと思いたい。だからこの予想をセドリック社長にぶつけることにする。
「そして最後に、もしシャルルが女だとばれても、罪を被るのは自分だけで、上手くいけばそのまま同情を、特に一夏の同情を誘って日本に亡命できるかもしれない。そう考えて行動を起こしたんですよね?」
「………そこまで見抜かれていたらもう何も言うことはないよ。」
セドリック社長が両手を上げて『降参』のポーズをとる。よし、俺の予想は的中していた。これはとても大きい。シャルルを助けるためにたたみかけるならここだ。
「……セドリックさん、あなたは大バカだ。」
「なんだと!?若造が偉そうに言うな!私にはどうしようもなかったんだ!シャルルをこの家から解放するにはこうするしか「だからってあんたがいなくなったらシャルルはどうやって生きればいい!」…なに!?」
「この前シャルルから話を聞いたとき、シャルルはデュノア家での生活のことは『苦しかった』とは言っていたが、あなたのことを恨むような素振りは一度も見せなかった!酷い仕打ちをされたかもしれないが、シャルルはあなたに対する家族愛を捨て切れてなかったんだ!家族としての絆を断ち切ることが出来なかったんだ!それをあなたが一人で悩んで、自己犠牲という形であなたの方から捨ててしまっていいんですか!?シャルルが本当に1人になってしまったら、シャルルはどうすればいいんですか!?どうなんですか、セドリックさん!」
いつの間にか俺は席を立っていた。画面を見ると、そこには下を向きながら肩を震わせるセドリック社長の姿があった。
「そんなこと………そんなこと分かっている!だがどうすればいい!この世の中、男性は女性には逆らえないんだ!私にはシャルルを救うだけの力がなかった!だから私はこうするしかなかったんだ!」
セドリック社長は、自分の膝を拳で叩きながら叫ぶ。
「…シャルルを助けたいですか?」
「できるのか!?」
俺の言葉を聞いた瞬間、セドリック社長はすぐに顔を上げた。
「そのためにはあなたの協力が必要です。」
「俺にできることならなんだってする!」
「…たとえ今の奥さんを裏切ることになっても?」
「もちろんだ!実のところ、今の奥さんとは政略結婚だったんだ。私は彼女との結婚を望んではいなかったのだが、この会社を立て直すには仕方のないことだったんだ。だが今となってはシャルルを救うこと以上に大事なことなど何もない。」
「分かりました。では僕もシャルルを助けるために行動を起こします。あなたの力が必要になる時が来たらまた連絡します。
「私は何をすればいいんだ!?」
「…あなたは正直にすべてを話してください。今僕に足りないのは『公的な発言権』です。こちらは奥さんの裏で行った悪事を調べますから、後はあなたが正直に話してそれを確固たる証拠にしてください。それでは僕はいち早く情報を集めないといけないので、これで失礼します。」
そういて俺は椅子を立ち上がり、スクリーンに背を向けその場を後にしようとした。が、セドリック社長が俺を引き留めた。
「待ってくれ、西條君。君はどうしてそこまでしてくれるんだ………?助けてくれる相手に対してこんなこと言うのは気が引けるのだが、君と私は全くの赤の他人だろう?」
「………親と子というのはこの世で1番断ち切ってはいけない繋がりです。シャルルには………あんな思いはしてほしくないんです。」
最後の方だけわざと聞き取りにくいようにボソボソと呟くように言った。
「ですから、あなたはこれからシャルルともう一度仲のいい親子に戻れるようにだけ努力してください。後のことはこちらでどうにかしますし、その当てもあります。」
「あ、ああ、分かった。」
「それではこれで。」
俺はもう一度部屋を出ていこうとした。
「西條君!」
しかしもう一度セドリック社長に呼び止められた。
「なんですか?まだ何かありますか?」
振り返ってみると画面の向こうでセドリック社長が椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。
「ありがとう。私たち親子のために………本当にありがとう。」
「まだ救えると確定しているわけではないんです。お礼を言うにはまだ早いですよ。それに、自分にお礼を言うよりも先に、シャルルに言うべきことがあるでしょう?」
「ああ、もちろん分かっている。この後父親としてのケジメをつけさせてもらうよ。」
「………その言葉が聞けて良かったです。それではまた後日、全てが終わってからまた話しましょう。」
「…ああ。」
その言葉を最後に、今度こそ本当に部屋を後にした。
―――――現在――――――
~シャルルside~
「え、さ、西條君がそんなことを?」
僕は驚きを隠せずにいた。昨日、僕と一夏が相談したときは、西條君は少なくとも問題を解決できるような力はない、そう言っていたはずだった。でも今の話を聞く限り、西條君にはそれだけのことをやってのけるだけの力がある。
(一体、西條君は何者なんだろう………?何が目的なの?)
ますます西條君のことが分からなくなり、頭を悩ましていたが、そんななかでも父親の声だけははっきりと聞こえた。
「ああ本当だ。シャルロット、今まで本当にすまなかった。こんな不甲斐ない父親ですまなかった。…いや、もう父親と名乗る資格もないのかもな……。」
「そ、そんなこと言わないでよ!お父さんは僕のことをずっと思っていてくれたんでしょ!?」
「あ、ああ。だが私はそれでもお前に何も言わずに酷いことをしてしまった……。」
お父さんが俯く。罪の意識で潰されそうになってるんだ。僕もつい最近同じようになったばっかりだ。そんなところを一夏と西條君に救ってもらった。だから今度は僕の番だ。僕がお父さんを救うんだ。そのためにすることはたった1つ……いや、言う言葉はたった1つ。
「許すよ。」
僕の言葉を聞いて、お父さんの顔に驚愕の色が浮かぶ。
「私は…私は、何もできなかったんだぞ……?それでも私を父親と認めてくれるのか…?」
「認めるも何も、僕にはもうお父さんしかいないんだよ………。」
僕の頬を涙が伝う。
「あ、あれ…泣くつもりじゃなかったのに、何で………。」
「シャルロット………、ありがとう…ありがとう…。」
画面の向こうからも涙を啜る音が聞こえる。お父さんも泣いているみたいだ。
「今本当なら抱きしめてやりたい。だがそれは叶わない。あと少しだけ待っていてくれ。必ずこの問題を終わらせる。そしてお前を、シャルロットとして迎えに行くから。それまで…それまでシャルルとして我慢していてくれ。」
「うん、分かったよ…ありがとう、父さん。」
「礼を言うのはこっちのほうだ。私を許してくれてありがとう、シャルロット。」
ありがとう、一夏。ありがとう、西條君。